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1
1.1

化合物半導体の安定性と積層欠陥エネルギー
背景

Zincblende 構造 (ZB) と Wurtzite 構造 (WZ) の積層欠陥部は,それそれ WZ と ZB を有して
いる.したがって積層欠陥エネルギー(γ’)は,ZB と WZ の構造エネルギー差(∆E ZB−W Z )
と密接に相関していることが知られている.また,図 1 に示すように,竹内,鈴木によって実
験的に得られた γ’ は,有効電荷 e*および WZ の c/a 比 に強い相関をもつことが報告された.
本節では γ’ と,我々が第一原理計算で求めた ∆E ZB−W Z との依存性,および ∆E ZB−W Z と WZ
の c/a 比との依存性を調べ,ZB と WZ の安定性について検討した.

図 1: 積層欠陥エネルギー(γ’)との相関.(a) 有効電荷 e*,(b)WZ 構造の c/a 比.

1.2

計算モデル

III-V 族半導体,II-VI 族半導体から成る ZB と WZ のユニットセルを作り,第一原理計算ソ
フト VASP を用いてそれぞれのエネルギーを計算し,∆E ZB−W Z および WZ の c/a 比を求めた.
また,これらの結果から ZB と WZ の安定性について調べた.計算条件として,エネルギ−が
精度よく再現されるように,カットオフエネルギーを 1000 eV に設定した.

1.3

計算結果と議論

図 2 に,実験で得られた γ’ と,我々が計算で求めた ∆E ZB−W Z との相関関係を示した.γ’ と
∆E ZB−W Z は正の相関を示しており,これらの値の間には,線形近似が成り立つことを期待さ
せる.しかし,これらの相関はそれほど高くない.これは,積層間の相互作用が単純な 2 層間
の相互作用だけで決定しないことを示唆している.また,CdSe に関しては,実験的に得られた
安定構造を再現しておらず,矛盾が生じた.この矛盾に関しては,VASP の計算精度を再検討
する必要がある.

1

図 3 に,我々が計算で求めた ∆E ZB−W Z と WZ の c/a 比 との相関関係を示した.この結果
から,∆E ZB−W Z と WZ の c/a 比との間には線形近似が成立した.また,ZB については理想
的な軸比 c/a = 1.633 よりも大きいこと,WZ においては小さいことが示され,実験結果と整
合した.これは図 1(b) に示した γ’ と c/a 比の関係と,図 2 に示した γ’ と ∆E ZB−W Z の関係か
ら,理解できる.以上より,γ’ と ∆E ZB−W Z との相関性,および ZB と WZ の安定性は,第一
原理計算により求めた ∆E ZB−W Z や c/a 比からアプローチを行うことで議論できることを示唆
している.

図 2: 積層欠陥エネルギー (γ’) と,ZB と WZ の構造エネルギー差 (∆E ZB−W Z ) との相関.

図 3: 構造エネルギー差 (∆E ZB−W Z ) と,WZ の c/a 比 との相関.

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引用文献
[1] S. Takeuchi, and K. Suzuki, Stacking Fault Energies of Tetrahedrally Coordinated Crystals, Phys. Stat. Sol., (a) 171 (1999), 99-103.

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