エスコフィエ『料理の手引き』全注解 Escoffier Le Guide Culinaire

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オーギュスト・エスコフィエ

『料理の手引き』全注解
五島

学

i

序
もう 20 年も前のことだ。本書の着想を我が尊敬する師、今は亡きユルバン・デュボ
ぜ

ひ

ワ1) 先生に話したのは。先生は是非とも実現させなさいと強く勧めてくださった。けれ
ようや

ども忙しさにかまけてしまい、漸く 1898 年になって、フィレアス・ジルベール2) 君と
話し合い協力をとりつけることが出来た。ところがまもなく、カールトンホテル開業
のために私はロンドンに呼び戻され、その厨房の準備や運営に忙殺されることとなっ
た3) 。本書の計画を実現させるために落ち着いた時間を取り戻さねばならなくなってし
まった。

1898 年から放置したままだった本書に再び着手出来たのは、多くの同僚たる料理人
諸君の助力と、友人でもあるフィレアス・ジルベール君とエミール・フェチュ4) 君の献
身的な協力を得られたからに他ならない。この一大事業を完成させることが出来たの
は、ひとえに皆の励ましと、とりわけ辛抱強く、粘り強く仕事を手伝ってくれた二人の
共著者5) のおかげだ。
私が作りたいと思ったのは立派な書物というよりはむしろ実用的な本だ。だから、執
筆協力者の皆には、作業手順を各自の考えにもとづいて自由にレシピを書いてもらい、
私自身は、40 年にわたる現場経験に即して、少なくとも原理原則、料理における伝統的
基礎を明確に説明するのに専念した6) 。
本書は、かつて私が構想したとおりとは言い難い出来だが、いずれはそうなるべく努
めねばなるまい。それでもなお、現状でも料理人諸君にとって大いに役立つものと信じ
ている。だからこそ、本書を誰にでも、とりわけ若い料理人にも買える価格にした7) 。そ
1) Urbain Dubois (1818〜1901)。19 世紀後半を代表する料理人。
2) Philéas Gilbert (1857〜1942)。19 世紀末から 20 世紀初頭に活躍した料理人。料理雑誌「ポトフ」を主宰した。
3) エスコフィエはセザール・リッツの経営するホテルグループにおいて料理に関わる重要な役割を一手に担っていた。1890 年〜
1897 年にかけてロンドンのサヴォイホテルの総料理長を勤めた後、1898 年にはパリのオテル・リッツの、1899 年にはロンド
ンのカールトンホテルの開業に携わり、1920 年までカールトンホテルで総料理長を務めた。
4) Emile Fétu 生没年不詳。
5) ジルベールとフェチュを指しているが、初版にはこの二人の他にも共著者として4人の名が挙げられている。第二版以降は共
著者としてジルベールとフェチュの名しかクレジットされていない。第二版は初版から構成も含め大幅な改訂が行なわれた。
その作業を実際に行なったのがジルベールとフェチュだったために、他の共著者のクレジットが抹消されたと考えられる。な
お、現行の第四版にはエスコフィエの名しかクレジットされていない。
6) このとおりであれば、具体的なレシピの執筆者は上記のように複数おり、エスコフィエ自身は各章、各節における「概説」に
相当する部分と「原注」を担当したことになる。とはいえ、第二版以降については、口頭によるコメントの「聞き書き」的なも
のが含まれている可能性が。原書の文体における「ゆらぎ」から推測されよう。つまり、エスコフィエは本書の制作にあたっ
ても、やはり「総料理長」であった、と考えていい。そしてそのことはエスコフィエの偉業である本書の価値をいっかな減ず
るものではない。
7) 1903 年の初版の売価は、フランス国立図書館蔵のものの表紙には、フランス国内で 12 フランと記したシールが貼られている。
また、リーズ大学図書館蔵の第二版にも同様に国内売価 12 フランのシールが貼られている。1912 年の第三版も同じく 12 フ
ランだった(フランス国立図書館蔵のものに価格を示すシールはないが、訳者個人蔵のものには 12 フランと記されたシール
が貼られている)。なお、辻静雄は「1903 年の初版発売当時は、800 ページでたった 8 フラン、全く破格の値段だった」(
「エ
スコフィエ 偉大なる料理人の生涯」、『辻静雄著作集』、新潮社、1995 年、729〜730 頁)と記しているが、その数字の典拠は
示されていない。現在と当時の通貨価値、物価の違いが分りにくいため、この「破格に安い」という言葉にはやや疑問が残る
だろう。1900 年当時の書籍広告において『料理の手引き』初版と同様の八折り版 800 ページの料理書が、フランス装 10 フラ
ン、厚紙の表紙のものが 11 フランとあるため、初版の 12 フランという価格は、むしろ料理書としては一般的だったと考えら
れる。つまり、豪華本ではなく、普通に利用できる料理書だということを強調しているに過ぎないと解釈すべきところだろう。
なお、八折り判というのは書籍の大きさを表す用語で、概ね縦 20〜25 cm、横 12〜16 cm 程度。この序文でことさらに「実用

ii

序
もら

もそも若い料理人諸君にこそこの本を読んで貰いたい。今はまだ初心者であったとして
も、20 年後には組織のトップに立つべき人材なのだから。
私はこの本を豪華な装丁の1) 、書棚の飾りのごときにはして欲しくない。そうではな
く、いつでも、どんな時でも手元に置いて、分からないことを常に明らかにしてくれる
めいゆう

盟友として欲しい。
本書には五千を越える2) レシピが掲載されているが、それでも私は、この教本が完全
だとは思っていない。たとえ今この瞬間に完璧であったとしても、明日にはそうではな
いかも知れぬ。料理は進化し、新しいレシピが日々創案されている。まことに困ったこ
とだが、版を重ねる毎に新しい料理を採り入れ、古くなってしまったものは改善せねば
なるまい。
ユルバン・デュボワ、エミール・ベルナール3) 両氏の著作4) に昔から慣れ親しみ、その
巨大な影がなおも料理の地平を覆い尽している現在、私としては本書がその後継になっ
て欲しいと思っている。カレーム以後、最高の料理の高みに逹した二人に対し、ここで
あらためて心から敬意を表させていただきいと思う。
調理現場を取り巻く諸事情により、私は、デュボワ、ベルナール両氏がもたらした
サービス(給仕)面での革新5) に対し、こんにちのようなとりわけスピードが重視され
る目まぐるしい生活リズムに合わせて、より大きな変更を加えざるを得なかった。そも
そも物理的理由から、料理を載せる飾り台6) を廃止して、シンプルな盛り付けにする新
たなメソッドと新たな道具を考案する必要があったのだ。デュボワ、ベルナール両氏が
推奨した壮麗な盛り付けを私自身が行なっていた頃はもちろん、今なお二方の思想には
まったく共感している。冗談でこんなことを言っているのではない。しかし、カレーム
ゆえ

そぐ

を信奉する者たちは、装飾の才があるが故に、時代にもはや似わなくなってしまった作
品に対して改良を加えようとはしなかった。時代に合わせて改良することこそまさに重
要ななのに、だ。本書で奨励している盛り付けは、少なくともそれなりの期間、有用で
あり続けると思う。全ては変化する。姿を変える。それなのに、装飾芸術の役割が変化
もうまい

しないとなどと主張するとは蒙昧ではないか。芸術は流行によって栄えるものだし、流
行のように移ろいやすいものだ。

1)
2)
3)
4)
5)

6)

性」や入手しやすい価格であることが強調されているのは、何度も言及されているデュボワとベルナールの名著『古典料理』
が四折り判(概ね縦 45 cm、横 30 cm)の豪華本であったことを意識していたためとも推測されよう。
かつてフランスでは、大判の紙の両面に印刷して折ったものを糸で綴じただけの状態(いわゆる「フランス装」
)で販売された
本を、書店で買い求めた者が別途、業者に製本、装丁の依頼をして自分の好みの想定にさせることが一般的に行なわれていた。
初版、第二版は「五千近い」。第三版になってようやくこの表現になった。
Emile Bernard (1827〜1897)。クラシンスキ将軍の料理人を務めた。
デュボワとベルナールの共著は他にもあるが、ここでは『古典料理』
(1856 年)を指している。
19 世紀後半に一般的となった「ロシア式サービス」のこと。中世以来、格式の高い宴席では、卓上に大皿の料理が一度に何種
も並べられ、食べる者がそれぞれ好きなように取り分けていた。そして卓上の料理がほぼなくなると、また何種類もの皿が卓
上に並べられる、というのが数回繰り返された。19 世紀中頃から、献立を食べる順に1種ずつ、大皿料理の場合は食べ手に見
せて回ってから、給仕が取り分けて供する方式に変えたものがロシア式サービスである。これと対比するかたちで旧来の方式
をフランス式サービスと呼ぶようになった。ロシア式サービスでは、食卓に大皿を並べない代わりに、花を飾りナフキンを美
しく折るなどの工夫により卓上も洗練されたものとなっていった。19 世紀パリに駐在していたロシア帝国の外交官クラーキン
が提唱したと言われている。デュボワとベルナールの『古典料理』序文において詳述されている。
socle ソークル。パンや米、ジュレなどで作った、料理を盛り付けるために銀の盆の上に据える飾り台。カレームの時代、つま
り 19 世紀前半にはその装飾に凝ることが多かった。食べもので作られてはいるが、料理の一部ではなく、あくまで装飾的要素
でしかなかった。この飾り台はロシア式サービスの時代になっても豪華絢爛たる宴席においては重要なものとして扱われてお
り、デュボワとベルナール『古典料理』でも相応のページ数を割いて説明がなされている。

iii
すで

だが、カレームの時代にはこんにちと同じく既にあり、料理が続く限りなくならない
フォンド キュイジーヌ

だろうものがある。それが料理の基礎だ。そもそも、料理が見た目にシンプルになって
も料理そのものの価値は失なわれないが、その逆はどうだろう? 人々の味覚は絶え間
なく洗練され続け、それを満足させるために料理そのものも洗練されることになる。こ
か

んにちの余剰活動が精神におよぼす悪影響に打ち克つためには、料理そのものがいっそ
う科学的な、正確なものとなるべきなのだ。
その意味で料理が進歩すればする程、我々料理人たちにとって、19 世紀、料理の行
く末に大きく影響を与えた三人の料理人の存在は大きなものとなるだろう。カレームと
デュボワ、ベルナールはともすれば技術的側面ばかり評価されるが、料理芸術の基礎に
おいて何よりも優れているのだ。
既に物故した名だけ挙げるが、確かにグフェ1) 、ファーヴル2) 、エルーイ3) 、ルキュレ4)
きたい

ひけん

はとても素晴らしい著作を残した。だが、『古典料理』という稀代の名著に比肩し得る
ものはひとつとしてない5) 。
料理人諸君に、新たに本書を使っていただくにあたり、言うべきことがある。いろい
ろな料理書、雑誌を読み散らかすのもいいが、偉大な先達の不朽の名著はしっかり読み
ことわざ

込むように、と。 諺にあるように「知り過ぎることなはい」のだ。学べば学ぶ程、さら
に学ぶべきことは増えていく。そうすれば、柔軟な思考が出来るようになり、料理が上
達するためのより効果的な方法を知ることも出来るだろう。
じょうし

ただ

ゆいいつ

本書を上梓するにあたって唯ひとつ望むこと、切に願う唯一のことは、上記の点にお
げん

いて、本書の対象たる読者諸君が我が言に耳を傾け、実践するさまを見ることに尽きる。

A. エスコフィエ
1902 年 11 月 1 日

1) Jules Gouffé (1807〜1877)。著書多数。主著『料理の本(1867 年)は前半が家庭料理、後半が高級料理(オート・キュイジーヌ)
の 2 部構成になっており、レシピもまず材料表を掲げた後に調理手順を説明するという現代の書き方に近く、挿絵も多く分り
やすい。この『料理の手引き』とともに 19 世紀後半のフランス食文化史における名著のひとつ。19 世紀前半からのヴィアー
ルやオドが版を内容を増補しながら版を重ねたのに対して、この本は再版の際もほとんど異同がない点もまた特徴のひとつ。

2) Joséph Favre (1849〜1903)。スイス生まれの料理人で、パリ、ドイツ、イギリス、ベルギー等において活躍した。著書『料理お
よび食品衛生事典』(1884〜1895 年)。この『事典』に収録されているレシピの数は 5,531 であり(番号が振られている)、エス
コフィエがレシピ数 5 千という表現にややこだわりを示しているように思われるのも、ほぼ同時代の出版物であるファーヴル
の『事典』を意識していた可能性はある。

3) Edouard Hélouis(生没年不詳)。イギリスのアルバート王配(ヴィクトリア女王の夫)(1819〜1861)やイタリアのヴィットー
リオ・エマヌエーレ二世(1820〜1878)に仕えたという。著書『王室の晩餐』(1878 年)。
4) 『実践的料理』(1859 年)の著者 C. Reculet のこと。
5) デュボワ、ベルナールの『古典料理』を称揚するあまりにこのような表現になっていると思われるが、そもそもファーヴルの
著書は『事典』であって教本ではない。また、グフェ『料理の本』については、掲載レシピ数は少ないものの、記述の明快さ
と、技術の習熟度合いに合わせて家庭料理と高級料理(haute cuisine オートキィジーヌ)の二部構成にするなどの配慮から、
こんにちでも充分に料理の入門〜中級教本として高く評価出来るものだろう。

iv

序

第二版序文1)
ここに第二版を上梓するに至ったわけだが、二人の共著者による熱意あふれる仕事のおかげで、私
の強い期待をさらに越える本書の成功が約束されたも同然だろう。だからこそ、共著者両君および本
書の読者諸君に心からの謝辞を申しあげる次第だ。また、ありがたいことに、称賛の言葉を寄せてく
ださった方々と、貴重な批判をくださった方々にも御礼申しあげる。批判については、それが正当な
ものと思われる場合については、本書に反映させるべく努めさせていただいた。
かくも多くの人々に本書を受け入れていただけたことへの謝意を表するには、本書における技術的
な価値を高め、初版ではロジカルにレシピを分類しようとしたが故に生じた欠点を解消する他ないだ
ろう。それは、調理理論とレシピを損なうことなしに、本書の計画段階において簡単に済まさざるを
あた

得ないと思われたテーマについて能う限り肉薄することでもある。私たちは本文の見直しをするとと
もに、多くのレシピを追加した。そのほとんどは調理法と盛り付けにおいて、こんにちの顧客のニー
かんが

ズを鑑みて着想したものであり、そのニーズが正当かつ実現可能な範囲において、顧客への給仕の
ペースが日増しに加速していく傾向をも考慮に入れたものだ。こういった傾向は数年来まさしく際
ゆえ

立ってきているが故に、我々としても常に気を配っておかねばならぬ。
「料理芸術」というものは、その表現形態において、社会心理に左右されるものだ。社会から受け
あらが

る衝撃に逆らわぬことも必要であり、抗えぬことでもある。快適で安楽な生活がいかなる心配事にも
乱されることのないような社会であれば、未来が保証され、財をなす機会もいろいろあるような社会
であれば、料理芸術はたゆまぬことなく驚異的な進歩を遂げるだろう。料理芸術とは、ひとが得られ
る悦びのうちでもっとも快適なもののひとつに寄与しているのだから。
あまた

反対に、安穏とした生活の出来ぬ、商工業からもたらされる数多の不安で頭がいっぱいになるよう
な社会において、料理芸術は心配事でいっぱいの人々の心のごく限られた部分にしか美味しさを届け
られない。ほとんどの場合、諸事という渦巻きに巻き込まれた人々にとって、食事をするという必要
な行為はもはや悦びではなく、辛い義務でしかないのだ。
か

なげ

いな

斯くのごとき生活習慣は嘆いていい、否、嘆くべきことなのだ。食べ手の健康という観点からも、
食べたものを胃が受け付けないという結果になるとしたら、それは絶対に生活習慣が悪いのだ。そう
いう結果を抑える力は私に出来る範囲を越えている。そういう場合に調理科学が出来ることといえ
あた

ば、軽率な人々に能うかぎり最良の食べものを与えるという対症療法だけなのだ。
顧客は料理を早く出せと言う。それに対して私たち料理人としては、ご満足いただけるようにする
か、失望させてしまうことのどちらかしか出来ない。料理を早く出せという顧客の要求を拒む方法が
あるとするなら、それ以上の方法で顧客にご満足いただけるようにすることしかない。だから、私た
ちは顧客の気まぐれの前に折れざるを得ないのだ。これまで私たちが慣れ親しんできた仕事のやり方
では、これまでの給仕のスタイルでは、顧客の気まぐれに応えることが出来ぬ。意を決して仕事の方
法を改革すべきなのだ。だがひとつだけ、変えてはならぬ、手をつけてはならぬ領域がある。料理ひ
とつひとつのクオリティだ。それは、料理人にとって仕事のベースとなるフォンや事前に仕込んでお
1) この第二版序文は文体が初版序文と異なり、とりわけ前半部分については、いわゆる「悪文」と見なさざるを得ないものと
なっている。また、前半と後半でも文体の「ゆらぎ」のようなものが認められる。内容から判断するかぎり、エスコフィエ自
身の言葉であることは確かだが、末尾に署名がなく日付のみ記されていることも含めて考えると、ジルベールとフェチュによ
る「聞き書き」によって作成された可能性も完全には否定できないと思われる。

v

第二版序文

いたストック類がもたらすゆたかな風味に他ならぬ。私たちは既に、盛り付けの領域においては改革
に着手した。足手まといにしかならぬ多くのものは既に姿を消したか、いままさに消え去らんとして
いる。料理の飾り台1) 、料理の周囲の装飾2) 、飾り串3) などのことだ。この方向性は推し進められると
思う。これについては後述しよう。私たちはシンプルであるということを極限まで追究したい。それ
と同時に、料理の風味や栄養面での価値を増すことも目指している。料理はより軽い、弱った胃にも
優しいものにしたいと考えている。私たちはこの点にのみ尽力したい。料理において役をなさない大
部分はすっかり剥ぎ取ってしまいたいと考えているのだ。一言でまとめると、料理は芸術であり続け
つつも、より科学的なものとなるだろうし、その作り方はいまだ経験則に基づいただけのものばかり
であるが、ひとつのメソッド、偶然などに左右されない正確なものになっていくことだろう。
こんにちは料理の過渡期にある。古典料理メソッドの愛好者はいまなお多く、私たちもそれを理解
し、その思想に心から共感するところもある。だが、食事というものがセレモニーであり、かつパー
ティであった時代を懐しんでどうするというのだ? 古典料理がこんにちの美食家に至福の時を与え
るために力を発揮出来る場がどこにあるというのだ? いったいどうすれば、美食と宴の神コモス4) に
捧げ物を供えるという幸せな機会を毎回得られるのだろうか? だから私たちは本書において、個人
的な創作よりむしろ伝統的なフランス料理のレシピ集として、こんにちの料理のレパートリーから姿
を消してしまったものも残すことに固執した。その名に値する料理人なら、機会さえ与えられたら王
侯貴族も近代の大ブルジョワもひとしく満足させるためには、知っておくべきものなのだ。時間のこ
となんぞ気にもせぬ穏かな美食家の方々にも、時こそ全てと言わんばかりの金融家やビジネスマンた
ちにも満足していただくために。だから、本書が新しいメソッドに偏ったものだという非難にはあた
らない。私はただ単に、料理芸術の進化の歩みをたどり、いまの時代に即しつつ、食べ手すなわち食
事会の主催者と招待客の皆様の意向を絶対的なものとして、それに従いたいと願っているだけなの
こうべ

だ。食べ手の意向に対して私たち料理人は頭を垂れて従うことしか出来ぬのだから。
私たちは、料理の美味しさを損なうことなくより早く料理を提供できるような方法を、料理人各人
いざな

が自らの嗜好を犠牲にすることなしに探求すべく誘うことこそが、料理人諸君にとって有益と信じて
いる。全体として、私たちのメソッドはまだまだ日々のルーチンワークに依存し過ぎているものだ。
顧客の求めに応えるため、私たちは既に仕事のやり方をシンプルなものにせざるを得なかった。だ
みちなか

が、残念ながらいまだ途半ばに過ぎぬと感じている。私たちは自己の信念をしっかり堅持しており、
どうしようもない場合にのみ自説を曲げることもある。だから、装飾に満ちた飾り台を廃止した一方
で、盛り付けに時間のかかる厄介で複雑なガルニチュールは残してある。こういったガルニチュール
を濫用することはガストロノミーの観点から言って、常に間違っているのは事実だが、残しておくべ
きものと思われる。それを求める顧客あるいは食事会主催者に絶対に従う必要のある場合はとりわけ
そうだ。ごく稀にとはいえ、料理の美味しさを損なうことなくそれらを実現可能なこともあるから
だ。時間と金銭、広くてスタッフの充実した会場、という 3 つの本質的要素を最大限活用可能な場合

1) socle(ソークル)、「序」p.ii、訳注 6 参照。
2) bordure ボルデュール。本書においてもガルニチュールの扱いにおいてこの指示はあるが、19 世紀のものと比較するとかなり
シンプルな内容になっている。

3) hâtelet アトレ。一方の端に動物などの姿の装飾の施された銀製の串に、トリュフやクルヴェット (海老) などを事前に別の串
(ブロシェット)で焼いてからこの飾り串に刺し直し、それを大きな塊肉や丸鶏、大型の魚 1 尾の料理に刺した。19 世紀初頭、
カレームの時代に全盛となり、その著書『パリ風料理』において詳述されている。19 世紀末まではこの装飾がなされることが
多かった。また、その飾り串そのものが美麗な装飾品であるためにコレクションの対象になっていた。

4) フランス語 Comus(コミュス)。ラテン語では同じ綴りでコムスと読む。ギリシア、ローマ神話における、悦びと美食の神。18
世紀の料理本作家マランの主著は『コモス神の贈り物』がタイトル。

vi

序

のことだが。
通常の厨房業務においては、ガルニチュールをかなりシンプルな、せいぜい 3〜4 種の構成要素か
らなるものに減らさざるを得なくなっている。そのガルニチュールを添える料理がアントレであれル
ルヴェ1) であれ、牛・羊肉料理であれ、家禽であれ魚料理であれ、そうせざるを得ない。そのようにし
て構成要素を減らしたガルニチュールは、素早い皿出しが要求される場合には必ず、ソースと同様に
別添で供するのがいい。その場合、盛り付けは奇抜というくらいシンプルなものとなるが……メイン
の料理はより冷めない状態で、より早く、よりきれいに供することが可能になる。給仕が料理を取り
皿に分けてお客様に出すにせよ、お客様が大皿を自分たちで受け渡して取り分けるにせよ、サービス
担当者は安心して仕事が出来るし、そのほうが容易だ。メインの大皿が山盛りになることはないし、
その上に盛り付けられたいろいろな素材のガルニチュールも簡単に取ることが出来るからだ。
こんにちの他のシステムだと、料理を載せるための台や装飾のための飾り串を作り、さらに料理の
周囲にガルニチュールを配置するのに、看過出来ぬ程の時間を要していた。こういう盛り付けという
のは、料理そのものがさして大きくないものであっても、食べ手の人数が少ない場合であっても、大
面積の皿を用いる必要があった。だから、お客様が料理を自分たちで受け渡して取り分ける必要が
ある場合などは、お客様にとっても、サービス担当者にとってもまことに窮屈なものであった。これ
は、複雑な構成のガルニチュールの持つ大きな欠点のひとつとして無視できないことだ。他の欠点と
いうのは、あらかじめ盛り付けを行なうことによって美味しさが減じてしまうこと、食べ手が少人数
の場合には必然的に、料理を見せて周る間に冷めてしまうこと、などがある。こういう愉快とは言え
ぬことの結果は何とも情けないことになる。つまり、お客様に大皿に盛り付けた料理をお見せするの
はほんの一瞬だけ、お客様は多少なりとも豪華で精密に盛り付けられた料理をちらりと見る暇がある
かないか、ということだ。昔日のごとき豪華壮麗な料理を供することの可能な場所もこんにちでは少
なくなってきたが、それ以外のところでもこういった悪習が頑固なまでに続けられているというの
は、それが昔からの習慣だということでしか説明がつかぬ。
給仕のスピードを容易に上げるために、大きな塊肉の料理でない場合には毎回、下の図のごとき四
角形の深皿を出来るだけ用いるよう是非ともお勧めしたい。温かい料理でも、冷製の料理でも、この
皿は非常に優れたものであるから、その目的において厨房に備えておくべきものとして他の追随を許
さないと言える2) 。
繰り返しになるが、本書が新しい方法を勧めているからといって、偏見で古典的なものを悪いと断
じているのでは決してない。私たちは、料理人諸君に、顧客たちの生活習慣や味の好みを研究し、自
いざな

らの仕事をそれらに適合させるよう誘いたいと思っているだけなのだ。我々料理人にとって高名な師
とも呼ぶべきカレームは、ある日、同業たる料理人のひとりとおしゃべりをしていた際に、その料理

1) 19 世紀前半まで主流であった「フランス式サービス」つまり、一度に多くの料理の皿を食卓に並べるという給仕方式におい
て、ポタージュを入れた大きな深皿が空くと、それを給仕が下げて、豪華な装飾を施した大きな塊肉の料理がポタージュを置
いてあった場所に据えられた。これを relevé ルルヴェ(交代したもの、の意)と呼んだ。エスコフィエの時代にはフランス式
サービスではなくロシア式サービスに移っており、大きな塊肉の料理や大型の魚 1 尾まるごとを大皿で出し、給仕が切り分け
て配膳するようになっていたが、名称はそのまま残った。Entrée アントレ(もとは「入口」の意)は現代において「前菜」の意
味で用いられているが、食卓に大皿で並べられた肉料理(場合によっては魚料理も含む)の総称としてこの語が用いられてい
た。本書はそれを踏襲している。本書においてルルヴェおよびアントレに分類されている料理の多くは現代においてコース料
理の「メイン」に相当するものが多く、実際、英語ではコース料理のメインのことを現在でもこの語で表わすことが多い(前
菜は appetizer アペタイザーと呼ぶ)。
2) この段落は、初版の序文の後にある「盛り付け方法をシンプルにすることについて」という挿絵付きの節の内容を短かく縮め
たために、ややわかりにくいものになっている。ただし、第二版および第三版においては序文の最後に皿の挿絵が添えられて
いる。

vii

第二版序文

人が仕えている主人の洗練さに欠けた食事の習慣や下卑た味覚を苦々しげに語るのを聞かされたとい
う。その食事の習慣と味覚に憤慨して、自分が人生をかけて追究してきた知的な料理の原則を曲げて
まで仕え続けるくらいなら、いっそ辞めてしまいたいと思っている、と。カレームはこう答えた。
「そ
んなことをするのは君のほうが間違っているよ。料理において原則なんていくつも存在しないんだ。
あるのはひとつだけ、仕えているお方に満足していただけるか、ということだけなんだよ」と。
今度は我々がその答を考える番だ。自分たちの習慣やこだわりを、料理を出す相手に押しつけるな
どと言い張るとしたら、まったくもって馬鹿げたことだ。我々料理人は食べ手の味覚に合わせて料理
することこそが第一でありもっとも本質的なことなのだと、私たちは確信している。
私たちがかくも安易に顧客の気まぐれにおもねったり、過度なまでに盛り付けをシンプルにするせ
いで、料理芸術の価値を下げ、単なる仕事のひとつにしてしまっている、と非難する向きもあるだろ
う。……だがそれは間違いだ。シンプルであることは美しさを排するものではない1) 。
ここで、本書の初版において盛り付けについて述べた部分を繰り返すことをお許しいただきたい。
「どんなにささやかな作品にも自らの最高の印をつけられる才というのは、その作品をエレガント
で歪みのないものに見せられるわけで、技術というものに不可欠だと私は信じている。
だが、職人が美しい盛り付けを行なうことで自らに課すべき目的とは、食材を他に類のない方法で
節度をもって用いつつ大胆に配置することによってのみ、実現されるのだ。未来の盛り付けにおいて
絶対に守るべきこととして、食べられないものを使わないこと、シンプルな趣味のよささこそが未来
の盛り付けに特徴的な原則となるだろうことを、認めるべきなのだ。
そのような仕事を成し遂げるために、能力ある職人にはいくつもの手段がある。トリュフ、マッ
シュルーム、固茹で卵の白身、野菜、舌肉などの食べられるものだけを用いて、素晴らしい装飾を組
み合わせ、無限に展開できるのだ。
王政復古期2) に料理人たちによって流行した複雑な盛り付けの時代は終わった。だが、特殊な例に
なるが、古い方法で盛り付けをしなければならない場合もあり、そういう時は何よりもまず、盛り付
けにかかる時間と利用できる手段を見積らなくてはならない。土台の形状を犠牲にしなくても、装飾
の繊細さを忘れなくても、風味ゆたかな素材を軽んじたり劣化させてしまっては、価値のないものに
しかならないのだ」
。
以上の見解はずっと変わっていない。料理は進歩する(社会がそうであるように)。だが常に芸術
であり続けるのだ。
例えば、1850 年から人々の生活習慣、習俗が変化したことを皆が認めるにやぶさかでないように、
料理もまた変化するのだ。デュボワとベルナールの素晴しい業績は当時のニーズに応えたものだ。だ
が、たとえ二人がその著書と同じく永遠の存在であったとしても、彼らが称揚した形態は、料理の知
識として、我々の時代の要求に応えうるものではない。
私たちは二人の名著を尊重し、敬愛し、研究しなくてはならない。それはカレームとともに、料理
いしずえ

人の仕事の礎たるものだ。だが、書いてあることを盲目的に真似るのではなく、私たち自身で新たな
ひら

道を切り拓き、私たちもまたこの時代の習俗や慣習に合わせた教本を残すべきと考える次第だ。

1907 年 2 月 1 日
1) この序文における名句のひとつ。ただし、エスコフィエの時代における「シンプル」とポストモダン以降の時代であるこんに
ちの「シンプル」はもはや具体的な意味がまったく違うことに留意。もちろん、理念として普遍的な価値を持つ名句であるこ
とは確かだろう。
2) 1814 年ナポレオンが退位して国外へ亡命、ルイ 18 世を戴く王政へ回帰した時期。1830 年まで続いたが 7 月革命でブルボン家
は断絶し、その後オルレアン朝による七月王政が 1848 年まで続いた。

viii

序

第三版序文
『料理の手引き』第三版を同業たる料理人諸賢に向けて上梓するにあたり、絶えず本書を好意的に
支持してくださったことと、多くの方々から著者一同にお寄せくださった励ましのお言葉に対し、あ
らためて深く御礼申しあげる次第だ。
第二版序文の内容につけ加えるべきことは何もない。というのも、第二版序文で料理という仕事に
ついて申しあげたことは、1907 年当時も今も変わっていない事実だからだし、今後も長くそうであり
続けるだろう。とはいえ、この第三版は内容を精査し、かなりの部分を改訂してある。かつては予測
でしかなかったことを実証し、この『料理の手引き』初版の序文においてエスコフィエ氏1) が以下の
ように書かれた約束も果せたと思う。
「本書には五千近くもの2) レシピが掲載されているが、それでも
私は、この教本が完全だとは思っていない。たとえ今この瞬間に完璧であったとしても、明日にはそ
うではないかも知れぬ。料理は進化し、新しいレシピが日々創案されているのだ。まことにもって不
都合なことだが、版を重ねる毎に新しい料理を採り入れ、古くなってしまったものは改良を加えねば
なるまい。」
この言葉が、前回の第二版から 300 ページを増やしたことの説明となっているわけで、この新版で
いくつかの変更を我々が必要と考えた理由でもある。

1. 判型の変更……あえて判型を大きくすることで、より扱いやすいものとしたこと3)
2. 巻末の目次の組みなおし……当初は料理の種類別であったが、本書全体の項目をアルファベット順に
まとめたこと4)

3. 時代遅れになったと思われるレシピを相当数削除し、その代わりとしてこの数年の間に創案され好評
を博したレシピを追加したこと
既に大著であって本書にこれらの変更を加えるために、我々は第二版の巻末に付されていた献立の
ページを削除せざるを得なかった。
献立についても内容を一新し、多くの献立例を追加して、『メニューの本』という独立した書籍と
して、この第三版と同時に刊行する予定となっている。この『メニューの本』において我々は献立と
その説明文はもちろんのこと、大規模な厨房における日々の業務配分を示す表を入れておいた。
このように別冊とすることで、献立の作成という非常に重要な問題を適切に展開し、ゆとりを持っ
て論じることが可能となったわけだ。
この新刊『メニューの本』は料理人諸賢だけではなくメートルドテル、食事施設の責任者に必携の
ものとなった。さらには必要なものを奇抜なまでに単純化してしまう家庭の主婦にとっても必携とな
ろう。我々は上記の改良点が、これまで多くの好意的見解をお寄せくださった料理関わる皆様方に、
好意的に受け容れていただけると信じている。また、料理芸術の栄光のもと未来に続くモニュメント
を建てるべく努めた我々のささやかなる尽力が、料理芸術に利をもたらさんことを信じる次第だ。

1912 年 5 月 1 日
1) この表現から、第三版序文がエスコフィエ自身ではなく、フィレアス・ジルベールかエミール・フェチュのいずれか、あるい
は二人によって書かれたと判断される。

2) 初版および第二版では「五千近い」となっており、第三版で「五千以上」と表現が変更された。
3) 初版および第二版はいわゆる「八折り版」約 21.5 cm×13.5 cm であったのに対し、第三版は約 24 cm×16 cm、つまり現代の B5
版よりほんの少し小さめの判型。

4) 原文では Table des Matière「目次」とあるが、これは巻頭の章を示す目次のことではなく、巻末の「索引」のこと。

ix

第四版序文

第四版序文
『料理の手引き』第三版刊行当時(1912 年 5 月)から後、他の職業、産業と同様に料理界もまた大
いなる危機に見舞われた1) 。こんにちもなお料理は厳しい試練にさらされている。しかしながら、料
理界はその試練に耐えてきたし、戦後のこの辛い時期に終止符を打ち、料理界がさらに前進し始める
のもさして遠いことではないと信じている。だが、目下のところ、あらゆる食材の異常なまでの高騰
により、料理長諸賢が責務を果すことがひどく難しくなっている。料理長がその責務を果すというこ
との困難さを経験上よく知っているからこそ、今回の版において我々は、多くのレシピ、とりわけガ
ルニチュールについて、その本質的なところを曲げることなしに、よりシンプルなものにすることに
こだわった。
さらに、もはやあまり興味を持たれないであろうレシピは全て削除して、その代わりに近年創案さ
れたレシピを収録することとした。
したがって、料理人諸賢および料理に関心を持つ皆様方に向けてこの『料理の手引き』第四版を上
梓するにあたり、旧版同様、皆様に温かく受け容れていただけると信じる次第である2) 。

1921 年 1 月

1) 第一次世界大戦(1914〜1918)による社会的影響を指している。フランスは戦中から戦後にかけて激しいインフレに見舞われ
た。なお、この第四版から出版社がそれまでのラール・キュリネールからフラマリオン社に変わった。

2) 原書の文体から、この序文も第三版序文と同様に、ジルベールとフェチュによって書かれた可能性も考えられる。

x

序

【参考】盛り付けをシンプルにするということ(初版のみ)
本書では、かつては料理の盛り付けによく用いられた飾り串1) 、縁飾り 2) 、クルトン3) 、チョップ花4) などを使
う指示がほとんど出てこない。著者としては、盛り付け方法を近代化すると同時に、ほぼ完全に上記のものども
を削除しなくしてしまいたいとさえ考えたくらいだ。
我らが先達が考えていたような盛り付けには、長所がたったひとつしかない。皿を荘厳に、魅力的な姿にする
ことで、料理を味わう前に、食べ手の目を楽しませ、喜んでいただくということだ。
だが、そうした盛り付けの作業は複雑で難しいものであり、かなりの時間を必要とする。比較的少人数の宴席
でないかぎりは、こうした盛り付けは事前に用意しておく必要がある。そのようにして作られた料理は、それを
置いておく場所のことを考えに入れないとしても、必ずといっていい程、冷めてしまっている。また、料理を載
せる台や縁飾り、飾り串に費す時間も考えなくてはならないし、そういった装飾にかかる費用も考えなくてはな
らない。忘れてはならないことだが、そのように装飾した皿の見た目の調和がとれている時間というのは、その
皿をお客様にお見せする間だけなのだ。メートルドテルのスプーンが料理に触れるやいなや、かくも無惨な姿と
なりお客様の目には不快なものとなってしまう。こういう不都合はなんとしても改善しなければならなかった
のだ。
ここで図に示すような四角形の皿を採用したことで、上記のような問題は解決したと考えている。この皿はパ
リのリッツホテルで初めて用いられ、ロンドンのカールトンホテルにおいて正式に採用されることとなったもの
だ。この皿を用いることの利点は絶大で、これを用いない盛り付けなどもはや考えられない程だ。この皿は場所
をとらず、皿の内側に盛り付けられた料理は冷めることがない。蓋との距離が近いから保温されているわけだ。
魚や肉の切り身は上に重ねて盛るのではなく、ガルニチュールとともに並べて盛り付けることが出来る。そうす
ることで、最初に給仕されるお客様から最後に給仕される方まで、料理は美味しそうな見た目を保つことが出来
るのだ。その結果、クルトンやチョップ花、皿の上にしつらえる料理を載せる台や縁飾り、飾り串、昔の給仕で
用いられた面倒なクロッシュ5) は不要なものとなる。
この皿は冷製料理にもまた便利に使うことが出来る。周囲に氷を積み重ねて囲うか、薄い氷のブロックの上に
盛り付ければ、飾りには、ごく繊細なジュレだけていい。そのような繊細なジュレを使うのは昔の方法では不可
能だった。かくして、邪魔にさえ思える飾り台も、皿の底の飾りも、アトレも必要なくなった。ショフロワは 1
切れずつ並べて、周囲を琥珀色のとろけるようなジュレで満たしてやればいい。ムースはもはや「つなぎ」を
まったく、あるいはほとんど必要としない。こういうことが、冷製料理の芸術的な見た目を、豪華さや美しさと
いう点でいっかな失なうことなく可能となるのだ。
この新式の什器とそれによって実現可能となる料理に習熟することについて料理人諸君にお報せすることは
我々の義務であると考える。利点がとても大きいので、あえて申しあげるが、これを使うことが、給仕を素早く、
きれいに、経済的に、そして文句ないまでに実践的なものにする唯一の方法である。

【参考】初版はしがき
本書はある特定の階層の料理人を対象としているものではなく、全ての料理人が対象であるため、本書のレシ
ピは、経済的観点や料理人が実際に利用可能な手段に応じて、改変できるものだということを述べておきたい。
本書に収められたレシピはすべて、グランドメゾンでの仕事における原則にもとづいて組み立てて調整してあ
る。だから、より格下の店舗などでも、必然的に量を減らせば作れるだろうし、適価で提供出来るようにもなる
だろう。
ひとつひとつの項目において、いろいろな飲食を提供する形態を網羅するようにレシピを書くことが不可能
だったということは理解されよう。料理人自身が自主性をもって本書の内容を補えるし、そうすべきなのだ。あ
る者たちにとって非常に大切なことが、大多数の者にとってはそこそこの興味しか引かず、一般的に見たら無益
で幼稚に思われることだってあるのだ。
だから、本書に収録したレシピは最大の分量でまとめられたものを考えるべきであり、必要に応じて、各人の
判断および物理的に出来る範囲に合わせて、量を減らして作るといい。
1)
2)
3)
4)
5)

hâtelet アトレ。
bordure ボルデュール。
菱形やハート形にしたパンを揚げたもの。

papillote パピヨット。紙製で、骨付き肉の先端を飾るもの。
cloche 主に金属製で半球形の保温を目的としたディッシュカバー。

1

I.

ソース

Sauces

フォン、その他のストック

Les Fonds de Cuisine

本書は実際に厨房で働く料理人を対象としたものだが、まず最初に料理のベースとして仕込んでス
トックしておくもの1) について少々述べておきたい2) 。我々料理人にとって重要なものだからだ。
ここで述べる料理のベースとして仕込んでストックしておくものは、実際、料理の土台そのもので
あり、それなしでは美味しい料理を作ることの出来ない、まず最初に必要なものだ。だからこそ、料
理のベースとして仕込んでおくストックはとても重要であり、いい仕事をしたいと努めている料理人
ほどこれらを重視している。
これらは、料理において常に立ち戻るべき出発点となるものだが、料理人がいい仕事をしたいと望
んでも、才能があっても、それだけでいいものを作ることは出来ない。料理のベースを作るにも材料
が必要なのだ。だから、必要な材料は良質のものを自由に使えるようにしなければならない。
筆者としては、むやみな贅沢には反対だが、それと同じくらい、食材コストを抑え過ぎるのも良く
ないと考えている。そんなことをしていては、伸びる筈の才能の芽を摘んでしまうばかりか、意識の
高い料理人ならモチベーションの維持すら出来ないだろう。
どんなに優秀な料理人だって、無から何かを作り出すことは不可能だ。期待される結果に対して、
素材の質が劣っていたり量が足りないことがあれば、それでも料理人にいい仕事をしろと要求するな
ど言語道断である。
料理のベースとして仕込んでおくストックに関する重要ポイントは、必要な材料は質、量ともに充
分に、惜しげもなく使えるようにすることだ。
ある調理現場で可能なことが、別の調理現場では不可能な場合があるのは言うまでもない。料理人
の仕事内容は顧客層によっても変わる。到達すべき目標によって手段も変わるということだ。
そういう意味で、何事も相対的なものであるとはいえ、こと料理のベースとして仕込んでストック
すべきものに関しては絶対に外してはならないポイントがあるわけだ。組織のトップがこの点で出費
を惜しんだり、コスト面で過度に目くじらを立てるようでは、美味しい料理なんて出来るわけがない
のだから、現実に厨房を仕切っている料理長を批判する資格もない。そんなのが根拠のない言い掛か
りなのは明らかだ。素材の質が悪かったり、量が足りないのであれば、料理長が素晴しい料理を出せ
ないのは言うまでもあるまい。ぶどうの搾りかすに水を加えて醗酵させた安ワインを立派な瓶に詰め
てしまえば高級ワインになると思う程に馬鹿げたことはないのだ。
料理人は、必要なものを何でも使っていいなら、料理のベースとして仕込んでおくストックにとり
わけ力を入れるべきであり、文句のつけようのない出来になるよう気を使うべきだ。そこに手間隙か
けていればそれだけ厨房全体の仕事がきちんと進むのだから、注文を受けた料理をきちんと作れるか
ひま

どうかは、結局のところ、料理のベースとなる仕込み類にどれだけ手間隙をかけるかということな
のだ。

1) 本書での fonds の語は fond(基礎、土台)、fonds(資産、資本)、そして料理用語として一般に用いられているフォン、のトリプ
ルミーニングになっている。そのまま「フォン」と訳したいところだが、日本語の場合「出汁」としての意味合いが強いため、
本文中では分りやすさを重視してやや冗長に「料理のベースとして仕込んでストックしておくもの」のように訳している。
2) この部分は経営者に向けて書かれているようにも読めるが、エスコフィエの時代以降、料理人がオーナーシェフとして経営に
携わるケースが激増したことを考えると、その先見の明に驚かざるを得ない。

2

I.

ソース

Sauces

主要なフォンとストック

Principaux Fonds de Cuisine
料理のベースとして仕込んでおくべきものは主として……

• コンソメ・サンプルとコンソメ・ドゥーブル
• 茶色いフォン、白いフォン、鶏のフォン、ジビエのフォン、魚のフォン……これらはとろみを付けた
ジュ、基本ソースのベースになる

• フュメ、エッセンス……派生ソースに用いる
• グラスドヴィアンド、鶏のグラス、ジビエのグラス
• 茶色いルー、ブロンドのルー、白いルー
• 基本ソース……エスパニョル、ヴルテ、ベシャメル、トマト
• 肉料理用ジュレ、魚料理用ジュレ
以下も日常的に使う料理のベースとして仕込んでおくものとして扱う。

• ミルポワ、マティニョン
• クールブイヨン、肉および野菜用のブラン
• マリナード、ソミュール
• 肉料理用ファルス、魚料理用ファルス
• ガルニチュールに用いるアパレイユ、など……
本書は上記を順に説明していく構成にはなっていない。グリル、ロースト、グラタン等の調理技法
についても順を追っていくわけではない。料理の種類ごとに一定の位置、つまりは関連の深い料理の
章の冒頭において説明していくことになる。
そのようなわけで、本書においては以下のようになる……

• フォン、フュメ、エッセンス、グラス、マリナード、ジュレの説明…… 第 1 章 ソース
• コンソメおよびそのクラリフィエ、ポタージュの浮き実についての説明……第 3 章ポタージュ
• ファルスとガルニチュール用アパレイユの作り方……第 2 章ガルニチュール
• クールブイヨン、魚料理用ファルス等……第 6 章魚料理
• グリル、ブレゼ、ポワレの調理理論……第 7 章 肉料理

3

基本ソース

基本ソース

Grandes Sauces de Base
• およびそれらを組み合せたり煮詰めるなどの方法で作る派生ソース
• イギリス風ソース(温製および冷製)
• いろいろな冷製ソース
• ブール・コンポゼ(ミックスバター)
• マリナード
• ジュレ

概説
ソースは料理においてもっとも主要な位置にある。フランス料理が世界に冠たるものであるのもひ
とえにソースの存在によるのだ。だから、ソースは出来るかぎり手間をかけ、細心の注意を払って作
るようにしなければならない。
ソースを作るうえでその基礎となるのが何らかの「ジュ」である1) 。すなわち、茶色いソースは「茶
色いジュ」
(エストゥファード)から作る。ヴルテには「澄んだジュ(白いフォン2) )を使う。ソース
を担当する料理人はまず第一に、完璧なジュを作るところから始めなければならない。キュシー侯
爵3) が言うように、ソース担当の料理人は「頭脳明晰な化学者4) でありかつ天才的なクリエイターで、
卓越した料理という建造物のいわば大黒柱たる存在」なのだ。
昔のフランス料理5) では、素材に串を刺してあぶり焼きするローストを別にすれば、どんな料理も
「ブレゼ」か「エチュヴェ」のようなものばかりだった。だが、その時代には既に、フォンが料理と
かなめ

いう大建築の丸天井の要だったし、材料コストが重視されるこんにちの我々と比べたら想像も出来な
いくらい贅沢に材料を使ってフォンをとっていたのだ。実際、アンヌ・ドートリッシュ6) がスペイン
からルイ 13 世に嫁いだ際に随行してきたスペインの料理人たちによってフランス料理にルーを用い
る方法が伝えられたが7) 、当時はほとんど看過された。ジュそれ自体で充分だったからだ。ところが
時代が下り、料理におけるコストの問題が重視されるようになった。ジュはその結果、貧相なものに
なってしまった。その美味しさを補うものとして、ルーを用いて作るソース・エスパニョルが欠くべ
からざる存在となった。
ソース・エスパニョルはその完成度の高さゆえに成功をおさめたわけだ。だが、すぐに当初の目的
を越えた使い方をされるようになった。19 世紀末には本当にこのソースが必要な場合以外にも使わ
れたわけだ。ソース・エスパニョルの濫用によって、どんな料理も固有の香りのない、全部の風味の
混ざりあったのっぺりとした調子のものばかりになってしまった。
ようやく近年になって、料理の風味がどれも同じようなものであることに批判が集まってきて、そ
の結果として激しい揺り戻しが起きたのだった。グランドキュイジーヌでは、透き通ったような薄い
色合いでしかも風味のしっかりした仔牛のフォンが見直されつつある。そのようなわけで、ソース・
1) ここではジュといわゆるフォンが同じ意味で使われている。
2) 日本の調理現場で「白いフォン」を意味する「フォン・ブラン」は主として鶏のフォンを指すことが多いが、本書で扱われて
いる白いフォンのうち標準的なものは仔牛肉、家禽類をベースとしており、鶏のフォンは別途説明されている。

3) 1767-1841。19 世紀の著名な美食家。著書に『食卓の古典』(1843) がある。料理名にキュシーの名を冠したものも多い。
4) 原文 chimiste。現代は分子ガストロノミーが盛んだが、料理を作る過程で起きる現象や結果を「化学」で説明しようとする試
みは少なくともカレームまで遡ることが出来る。茶色いフォンのレシピにおいて言及されるオスマゾームという想像上の物質
もその範疇に含まれるだろう。また、化学の前身たる「錬金術」的概念は中世以来いくつかの料理書において散見される。
5) 本書において「昔の料理」と表現される場合は概ね 17〜18 世紀末と考えていい。
6) 17 世紀に絶対王政を確立したルイ 14 世の母。
7) ルーがスペインからもたらされたというのは逸話、伝承の域を出ない。

4

I.

ソース

Sauces

エスパニョルそれ自体の重要性はだんだん減っていくだろうと思われる。
ソース・エスパニョルが基本ソースとして扱われるべき理由は何か?

ソース・エスパニョルそ

れ自体に固有の色合いや風味というものはなく、これらはどんなフォンを用いて作るかで決まる。ま
さにこの点にソース・エスパニョルの長所が存するのだ。補助材料としてルーを加えるが、ルーには
とろみを付けるという意味しかなく、風味にはまったく寄与しない。そもそも、ソースを完璧に仕上
げるためには、とろみ以外のルーに含まれる成分はソースからほぼ完全に取り除いてしまっても差し
支えはない。不純物を丁寧に取り除いたソースにはルーに含まれていたでんぷん質だけが残ってい
るわけだ。だから、ソースの口あたりを滑らかなものにするために必要なのがでんぷん質だけなら、
純粋なでんぷんだけを用いる方がずっと簡単で、作業時間も大幅に短縮されるし、その結果として、
ソースを火にかけ過ぎてしまうようなミスも防げる。将来的には、小麦粉ではなく純粋なでんぷんで
ルーを作るようになるかも知れない。
かんが

料理界の現状を鑑みるに、ソース・エスパニョルととろみを付けたジュをそれぞれ使い分けざるを
得ない。これにはさまざまな理由があるが、大きな仕立てのブレゼや、羊や仔羊以外を材料にしたラ
グーでは、肉汁が煮汁に染み出してきて美味しくなるわけだから、トマトを加えたソース・エスパ
ニョルを用いるのがいい。なお、ソース・エスパニョルをさらに丁寧に仕上げるとソース・ドゥミグ
ラスとなる。これはいろいろなソテーに不可欠なもので、今後も変わることはないだろう。
一方、牛や羊、家禽を使った繊細で軽い仕立ての料理にはとろみを付けたジュの方が好まれる。デ
グラセの際に少量だけ、料理の主素材と同じものからとったジュを用いる。
こんにちのフランス料理においては、肉とソースの調和がとれているべきという、まことに理に
適った厳守すべき決まりがある。
だから、ジビエ料理にはジビエのフォンを用いるか、とりたてて際立った個性を持たないフォンを
用いて作ったソースを添える。牛や羊のフォンは用いない。ジビエのフォンというのは、さほど濃厚
なものを作ることは出来ないが、素材の個性的な風味を表現するには最適だ。こういった事情は魚料
はま

理にも当て嵌る。ソースそれ自体が際だった風味を持たないものの場合には必ず魚のフュメを加えて
やるのだ。このようにしてそれぞれの料理に個性的な風味を実現させることになる。
もちろん、ここまで述べた原則を実現しようにも、コストの問題がしばしば起こることは承知して
いる。けれども、熱意のある、他者の評価を意識している料理人なら問題点を熟考して、完璧とは言
わぬまでも満足のいく結果を得ることが出来るだろう。

5

ソースのベース作り

ソースのベース作り

Traitement des Éléments de Base dans le Travail des Sauces
茶色いフォン(エストゥファード)

Fonds brun ou Estouffade
(仕上がり 10 L 分)
• 主素材……牛すね 6 kg、仔牛のすね 6kg または
仔牛の端肉で脂身を含まないもの 6 kg、骨付き
ハムのすねの部分 1 本(前もって下茹でしてお
くこと)、塩漬けしていない豚皮を下茹でした
もの 650 g。
• 香味素材……にんじん 650 g、玉ねぎ 650 g、
ブーケガルニ(パセリの枝 100 g、タイム 10 g、
ローリエ 5 g、にんにく 1 片)
。
• 作業手順……肉を骨から外す。
骨は細かく砕き、オーブンに入れて軽く焼き色
を付ける。野菜は焼き色が付くまで炒める。こ
れらを鍋に入れて 14 L の水を注ぎ、ゆっくり
と、最低 12 時間煮込む。水位が下がらぬよう
に、適宜沸騰した湯を足すこと。
大きめのさいの目に切った牛すね肉を別鍋で焼
き色が付くまで炒める。先に煮込んでいたフォ
ンを少量加えて煮詰める。この作業を 2〜3 回
行ない、フォンの残りを注ぐ。
鍋を沸騰させて、浮いてくる泡を取り除く。浮
き脂も丁寧に取り除く。蓋をして弱火で完全に
火が通るまで煮込んだら、布で漉してストック
しておく。
【原注】フォンの材料に牛の骨などが含まれて
いる場合には、事前にその骨だけで 12〜15 時
間かけてとろ火でフォンをとるといい。
フォンの材料を鍋に焦げ付くくらいまで強く
焼き色を付ける1) のはよろしくない。経験から
いって、丁度いい色合いのフォンに仕上げるに
は、肉に含まれているオスマゾーム2) の働きだ
けで充分だ。

白いフォン

Fonds blanc ordinaire
(仕上がり 10 L 分)
• 主素材……仔牛のすね、および端肉 10k g、鶏
の手羽やとさか、足など、または鶏がら 4 羽分、
• 香味素材……にんじん 800 g、玉ねぎ 400 g、ポ
ワロー 300 g、セロリ 100 g、ブーケガルニ(パ
セリの枝 100 g、タイム 1 枝、ローリエの葉 1
枚、クローブ 4 本)
。
• 使用する液体と味付け……水 12 L、塩 60 g。

• 作業手順……肉は骨を外し、紐で縛る。骨は細
かく砕く。鍋に肉と骨を入れ、水を注ぎ塩を加
える。火にかけ、浮いてくるアクを取り除き香
味素材を加える。
• 加熱時間……弱火で 3 時間。
【原注】このフォンは火加減を抑えて、出来る
だけ澄んだ仕上がりにすること。アクや浮き脂
は丁寧に取り除くこと。
茶色いフォンの場合と同様に、始めに細かく砕
いた骨だけを煮てから指定量の水を注ぎ、弱火
で 5 時間煮る方法もある。
この骨を煮た汁で肉を煮るわけだ。その作業内
容は上記茶色いフォンの場合と同様。この方法
は、骨からゼラチン質を完全に抽出出来るとい
う利点がある。当然のことだが、煮ている間に
蒸発して失なわれてしまった分は湯を足してや
り、全体量を 12 L にしてから肉を煮ること。

鶏のフォン(フォンドヴォライユ)

Fonds de volaille

白いフォンと同じ主素材、香味素材、水の量で、
さらに鶏のとさかや手羽、ガラを適宜増量し、
廃鶏 3 羽を加えて作る。

仔牛の茶色いフォン(仔牛の茶色いジュ)

Fonds, ou Jus de veau brun
(仕上がり 10 L 分)
• 主素材……骨を取り除いた仔牛のすね肉と肩肉
(紐で縛っておく)6kg、細かく砕いた仔牛の骨
5 kg。
• 香味素材……にんじん 600 g、玉ねぎ 400 g、パ
セリの枝 100 g、ローリエの葉 2 枚、タイム 2 枝。
• 使用する液体……白いフォンまたは水 12 L。水
を用いる場合は 1 L あたり 3 g の塩を加える。
• 作業手順……厚手の片手鍋または寸胴鍋の底に
輪切りにしたにんじんと玉ねぎを敷きつめる。
その他の香味素材と、あらかじめオーブンで焼
き色を付けておいた骨と肉を鍋に加える。
蓋をして約 10 分間、蓋をして弱火にかけた野
菜から水分が汗をかくように出るイメージで蒸
し焼き状態にし、素材の味を引き出す3) 。フォ
ンまたは水少量を加え、煮詰める。この作業を
さらに 1〜2 回行なう。残りのフォンまたは水
を注ぎ、蓋をし、沸騰させる。アクを丁寧に取
る。微沸騰の状態で 6 時間煮る。

1) パンセ pincer と呼ばれる手法。原義は「抓む」。材料が鍋底に張り付いて、トングなどでしっかり「抓ま」ないと取れないくら
い強く焼き付けることからそう呼ばれるようになった。古い料理書では推奨するものも多かった。

2) 19 世紀頃、赤身肉の美味しさの本質であると考えられていた想像上の物質。赤褐色をした窒素化合物の一種で水に溶ける性質
があるとされた。なお、当時のヨーロッパではグルタミン酸はもとよりイノシン酸が「うま味」の要素であるという概念すら
なく、「コクがある」corsé とか「肉汁たっぷり」onctueux(オンクチュー)や succulent(スュキロン)などの表現で肉料理や
ソースの美味しさが表現された。
3) suer(スュエ)シュエ。

6
布で漉し、ストックしておく。使用目的や必要
に応じて、さらに煮詰めてからストックしても
いい。

ジビエのフォン

Fonds de gibier
(仕上がり 5 L 分)
• 主素材……ノロ鹿の頸、胸肉および端肉 3 kg
(老いたノロ鹿がいいが、新鮮なものを使うこ
と)
、野うさぎ1) の端肉 1 kg、老うさぎ 2 羽、山
うずら 2 羽、老きじ 1 羽。
• 香味素材……にんじん 250 g、玉ねぎ 250 g、
セージ 1 枝、ジュニパーベリー 2) 15 粒、標準的
なブーケガルニ。
• 使用する液体……水 6 L および白ワイン 1 瓶。
• 加熱時間……3 時間。
• 作業手順……ジビエは事前にオーブンで焼き
色を付けておき、野菜と香草を敷き詰めた鍋に
入れる。野菜類も事前に焼き色を付けておくこ
と。ジビエを焼くのに用いた天板を白ワインで
デグラセし、これを鍋に注ぐ。同量の水も加え、
ほぼ水分がなくなるまで煮詰める。
この作業の後で、残りの水全量を注ぎ、沸騰
させる。丁寧にアクを引きながらごく弱火で
煮る3) 。

魚のフュメ(フュメドポワソン)4)

Fonds, ou Fumet de poisson
(仕上がり 10L 分)
• 主素材……舌びらめ、メルラン5) やバルビュ6)
のあら 10 kg。
• 香味素材……薄切りにした玉ねぎ 500 g、パセ
リの根7) と茎 100 g、マッシュルームの切りく
ず8) 250 g、レモンの搾り汁 1 個分、粒こしょう
15 g(これはフュメを漉す 10 分前に投入する)。
• 使用する液体と調味料……水 10 L、白ワイン 1
瓶。液体 1 L あたり 3〜4 g の塩。
• 加熱時間……30 分。
• 作業手順……鍋底に香味野菜を敷き詰め、魚の
あらを入れる。水と白ワインを注ぎ、強火にか
ける。丁寧にアクを引き、微沸騰の状態を保つ

1)
2)
3)
4)
5)
6)
7)
8)

9)

I.

ソース

Sauces

ようにする。30 分煮たら目の細かい網で漉す。
【原注】質の悪い白ワインを使うと灰色がかっ
たフュメになってしまう。品質の疑わしいワイ
ンは使わないほうがいい。
このフュメはソースを作る際に加える液体とし
て用いる。魚料理用ソース・エスパニョルを作
ることを想定する場合には、魚のあらをバター
でエチュベしてから水と白ワインを注いで煮る
といい。

赤ワインを用いた魚のフォン

Fonds de poisson au vin rouge
このフォンそれ自体を用意することは滅多にな
い。というのも、例えばマトロットのような料
理の魚の煮汁そのものだからだ。
とはいえ、こんにちでは魚のアラをすっかり取
り除いた状態で料理を提供する必要がますます
高まってきているので、ここでそのレシピを記
しておくべきだろう。このフォンの必要性と有
用さはどんどん高まっていくと思われる。
原則として、このフォンの仕込みには、料理
として提供するのと同じ種類の魚のアラを用
いて、その香りの特徴を生かす必要がある。だ
が、どんな種類の魚を使う場合でも作り方は同
じだ。
(仕上がり 5 L 分)
• 主素材……料理に用いるのと同じ魚種の頭と
アラ 2.5 kg。
• 香味素材……薄切りにして下茹でした玉ねぎ
300 g、パセリの枝 100 g、タイムの小枝 1 本、小
さめのローリエの葉 2 枚、にんにく 5 片、マッ
シュルームの切りくず 100 g。
• 使用する液体と調味料……水 3.5 L、良質の赤
ワイン 2 L、塩 15 g。
• 加熱時間……30 分。
• 作業手順……「魚の白いフォン9) 」と同様に
する。
【原注】このフォンは魚の白いフォンよりも濃
く煮詰めることが可能。とはいえ、保存のため
に煮詰めないでいいように、その都度、必要な

lièvre(リエーヴル)。
セイヨウネズの樹の実。
最後に布で漉す必要があるが、当然のこととして明記されていないので注意。
本質的には前出の「フォン」と同様のものだが、魚(およびジビエ)を素材としたフォンは香りがポイントとなるため、フュ
メ fumet (香気、良い香りの意) の名称のほうが一般的に使われている。
タラの近縁種。
ヒラメの近縁種。
パセリには根がにんじん形に肥大する品種もある(persil tubéreux 根パセリ。葉は平らでイタリアンパセリのように使う)
。
champignons de Paris(シャンピニョンドパリ)いわゆるマッシュルームは、ガルニチュールなど料理の一部として提供する際
に、トゥルネ tourner といって螺旋(らせん)状の切れ込みを入れて装飾したものを使う。その際に少なくない量、具体的に
はマッシュルームの重量で 15〜20 %程度が「切りくず」として発生するのでこれを利用する。この場合だと、少なくとも 650
〜750 g 程度のマッシュルームの下処理(トゥルネ)をする必要があるが、大きな調理現場以外で毎日それほどのマッシュルー
ムを消費するケースは少ないと思われるので、このレシピのとおりに作るには、切りくずを数日かけて冷蔵庫などで貯めてお
くなどの工夫が必要だろう。本書のレシピ、とりわけフォンやフュメ、ソースにおいてマッシュルームの切りくずを用いる指
示が少なくないので留意されたい。なお、tourner(トゥルネ)の原義は「回す」であり、包丁を持った側の手は動かさずに、
材料のほうを回すようにして切れ目を入れたり、アーティチョークや果物などの皮を剥くことを意味する。
前項のフュメドポワソンのこと。

7

ソースのベース作り
量だけ仕込むことを勧める。

魚のエッセンス

Essence de poisson
• 主 素 材 …… メ ル ラ ン1) お よ び 舌 び ら め の 頭、
アラ 2 kg。
• 香味素材……薄切りにした玉ねぎ 125 g、マッ
シュルームの切りくず 300 g、パセリの枝 50 g、
レモンの搾り汁 1 個分。
• 使用する液体……煮詰めていないフュメドポワ
ソン 1 1/2 L、良質の白ワイン 3 dL。
• 所要時間……45 分。
• 作業手順……鍋にバター 100 g と玉ねぎ、パセ
リの枝、マッシュルームの切りくずを入れ、強
火で色づかないようさっと炒める。アラと端
肉を加える。蓋をして約 15 分弱火で蒸し煮す
る2) 。その間、小まめに混ぜてやること。白ワ
インを注ぎ、半量になるまで煮詰める。最後に
フュメドポワソンを注ぎ、レモン汁と塩 2 g を
加える。
再び火にかけて、とろ火で 15 分程煮込んだら、
布で漉す。
【原注】魚のエッセンスは、舌びらめやチュル
ボ、チュルボタン、バルビュ3) などのフィレ4) を
ポシェする際に用いる。
さらに、このエッセンスを煮詰めて、上記でポ
シェした魚のソースに加えて風味を強くするの
に使う。

エッセンスについて

Essences diverses

その名のとおり、エッセンスとはごく少量にな
るまで煮詰めて非常に強い風味を持たせたフォ
ンのこと。
エッセンスは普通のフォンと本質的には同じも
のだが、素材の風味をしっかり出すために、使
用する液体の量はずっと少ない。したがって、
仕上げにエッセンスを加える指示がある料理の
場合でも、そもそも充分に風味ゆたかなフォン
を用いていれば、エッセンスは必要ないことが
分かるだろう。
まず最初に、美味しく風味ゆたかなフォンを
用いるほうが、あまり出来のよくないフォンで
調理し、後からエッセンスで欠点を補うよりも
ずっと簡単なのだ。その方がいい結果が得られ
るし、時間と材料の節約にもなる。
セロリ、マッシュルーム、モリーユ5) 、トリュフ
など、とりわけ明確な風味の素材のエッセンス
を、必要に応じて用いるにとどめるのがいい。
また、十中八九、フォンを仕込む際に素材その

ものを加えた方が、エッセンスを仕込むより
もいい結果が得られることは頭に入れておく
こと。
そのようなわけで、エッセンスについてこれ以
上長々と述べる必要もないと思われる。ベース
となるフォンがコクと風味がゆたかなものなら
であるなら、エッセンスはまったく無用の長物
と言える。

グラスについて

Glaces diverses
グラスドヴィアンド、鶏のグラス(グラスド
ヴォライユ)、ジビエのグラス、魚のグラスの
用途は多岐にわたる。これらは、上記いずれか
の素材でとったフォンをシロップ状になるまで
煮詰めたもののことだ。
これらの使い途は、料理の仕上げに表面に塗っ
てしっとりとした艶を出させるのに用いる場合
もあれば、ソースの味や色合いを濃くするため
に用いたり、あるいは、あまりに出来のよくな
いフォンで作った料理の場合にはコクを与える
ために使うこともある。また、料理によっては
適量のバターやクリームを加えてグラスそのも
のをソースとして用いることもある。
グラスとエッセンスの違いだが、エッセンスが
料理の風味そのものを強くすることだけが目的
であるのに対して、グラスは素材の持つコクと
風味をごく少量にまで濃縮したものだ。
だからほとんどの場合、エッセンスよりもグラ
スを使うほうがいい。
とはいえ昔の料理長たちの中には、グラスの使
用を絶対に認めない者もいた。その理由は、料
理を作る度に毎回その料理のためのフォンをと
るべきであり、それだけで料理として充分なも
のにすべき、ということだった。
確かに時間と費用の点で制限がなければその理
屈は正しい。だが、こんにちでは、そのような
ことの出来る調理現場はほとんどない。そもそ
もグラスは、正しく適量を用いるのであれば、
そのグラスが丁寧に作られたものであるなら
な、素晴しい結果が得られる。だから多くの場
合、グラスはまことに有用なものと言える。

グラスドヴィアンド

Glace de viande

茶色いフォン(エストゥファード)を煮詰めて
作る。
煮詰めて濃くなっていく途中、何度か布で漉し
て、より小さな鍋に移しかえていく。煮詰めて
いる際に、丁寧にアクを引くことが、澄んだグ

1) タラの近縁種。
2) 素材を入れた鍋に蓋をして弱火にかけ、少量の水分で蒸し煮状態にすることを étuver エチュベという。このフランス語をその
まま用いている調理現場も少なくない。

3) いずれも鰈、ひらめの近縁種。チュルボタンはチュルボの小さいものを言う。
4) 3 枚おろし、または 5 枚おろしにして、頭とアラを取り除いた状態。
5) morille キノコの一種。和名アミガサタケ。

8

I.

ラスを作るポイント。
煮詰めている際には、フォンの濃縮具合に応じ
て、火加減を弱めていくこと。最初は強火でい
いが、作業の最後の方は弱火にしてゆっくり煮
詰めてやること。
スプーンを入れてみて、引き上げた際に、艶の
あるグラスの層でスプーンが覆われ、しっかり
張り付いているくらいが丁度いい。要するに、
スプーンがグラスでコーティングされた状態に
なればいいということだ。
【原注】色が薄くて軽い仕上がりのグラスが必
要な場合には、茶色いフォンではなく、標準的
な仔牛のフォンを用いる。
鶏のグラス(グラスドヴォライユ)

ソース

Sauces

鶏のフォン(フォンドヴォライユ)を用いて、
グラスドヴィアンドと同様にして作る。
ジビエのグラス

Glace de gibier

ジビエのフォンを煮詰めて作る。ある特定のジ
ビエの風味を生かしたグラスを作るには、その
ジビエだけでとったフォンを用いること。
魚のグラス

Glace de poisson

このグラスを用いることはあまり多くない。日
常的な業務においては「魚のエッセンス」を用
いることが好まれる。そのほうが魚の風味も繊
細になる。魚のエッセンスで魚をポシェした後
に煮詰めてソースに加える。

Glace de volaille

ルー

Roux
ルーはいろいろな派生ソースのベースとなる基本ソースにとろみを付ける役目を持つ。ルーの仕込
みは、一見したところさほど重要に思われぬだろうが、実際には正反対だ。丁寧に注意深く作業する
こと。
茶色いルーは加熱に時間がかかるので、大規模な調理現場では前もって仕込んでおく。ブロンドの
ルーと白いルーはその都度用意すればいい。

茶色いルー

Roux brun

(仕上がり 1 kg 分)
1. 澄ましバター……500 g
2. ふるった小麦粉……600 g

ルーの火入れについて
加熱時間は使用する熱源の強さで変わってく
る。だから数字で何分とは言えない。ただし、
火力が強過ぎるよりは弱いくらいの方がいい。
というのも、温度が高すぎると小麦粉の細胞が
硬化して中身を閉じ込めてしまい、そうなると
後でフォンなどの液体を加えた際に上手く混ざ
らず、滑らかなとろみの付いたソースにならな
い。乾燥豆をいきなり熱湯で茹でるのと同じよ
うなことが起きるわけだ。低い温度から始めて

だんだんと熱くしていけば、小麦粉の細胞壁が
ゆるんで細胞中のでんぷんが膨張し、熱によっ
て発酵状態の初期のようになる。このようにし
て、でんぷんをデキストリンに変化させる1) 。
デキストリンは水溶性の物質で、これが「とろ
み」の主な要素なのだ。茶色いルーは淡褐色の
美しい色合いで滑らかな仕上がりにする。だま
があってはいけない。
ルーを作る際には必ず、澄ましバターを使うこ
と2) 。生のバターには相当量のカゼインが含ま
れている。カゼインがあると火を均質に通すこ
とが出来なくなってしまう。とはいえ、以下を
覚えておくといい。ソースとして仕上げた段階
で、ルーで使ったバターは風味という点ではほ
とんど意味が失なわれている。そもそもソース

1) 現代の科学的見地からすると必ずしも正確な記述ではないので注意。
2) 初版〜第三版では「澄ましバターまたは充分に澄ましたグレスドマルミット」となっている。グレスドマルミットとは、コン
ソメなどを作る際に、浮いてくる油脂を取り除く必要があるが、それを捨てずにまとめてから漉して澄ませたもののこと。基
本的に獣脂と考えていい。なお、同時代の料理書— 例えばペラプラ『近代料理技術』
(1935 年)— には、ルーを作るのにバター
を使う必要はなく、グレスドマルミットで充分、としているものもある。
1) dépouiller デプイエ。ソースや煮込み料理を仕上げる際に、浮き上がってくる不純物を徹底的に取り除き、目の細かい布など
で漉すこと。原義は動物などの皮を剥ぐ、剥くことの意で、野うさぎの皮を剥ぐ、うなぎの皮を剥く、という意味で現代の厨
房でも用いられているる。ソースの場合は表面に凝固した蛋白質や油脂の膜が出来、それを「剥ぐように」取り除くことから、
あるいは表面に浮いてくる不純物を徹底的に取り除いてきれいなソースに仕上げることを、動物の皮を剥いてきれいな身だけ
にすることになぞらえて、この用語が用いられるようになったようだ。なお、本書において écumer(エキュメ)が単に浮いて
くる泡やアクを取る、という作業であるのに対して、dépouiller(デプイエ)は「徹底的に不純物を取り除いて美しく仕上げ
る」という意味合いが込められている。現代では品種改良や農法の変化によって野菜のアクも少なくなり、小麦粉も精製度の
高いものを利用出来るなど、食材および調味料の多くで純度の高いものを使用する場合がほとんどであり、このデプイエとい
う作業は 20 世紀後半にはほとんど行なわれなくなり、écumer(エキュメ)という用語だけで済ませることがほとんど(cf. 辻

9

ルー
の仕上げに不純物を取り除く1) 段階でバターも
完全に取り除かれてしまうわけだ。だからルー
に用いるバターは小麦粉に熱を通すためだけの
ものと考えていい。
ルーはソース作りの出発点だ。だから次の点も

ないこと。材料コストが問題になる場合でも、
ソースの仕上げに不純物を取り除く際に多少の
注意を払えば、ルーに用いたバターを回収する
のはさして難しいことではない2) 。それを後で
他の用途で使えばいいだろう。

とど

記憶に留めること。小麦粉にでんぷんが含まれ
ているからこそソースに「とろみ」が付く。だか
ら純粋なでんぷん(特性が小麦のでんぷんと同
じでも異なったものでも)でルーを作っても、
小麦粉の場合と同様の結果が得られるだろう。
ただしその場合は小麦粉でルーを作る場合より
注意して作業する必要がある。また、小麦粉と
違って余計な物質が含まれていないために、全
体の分量比率を考え直すことになる。
【原注】本文で述べたように、茶色いルーを作る
際には澄ましバターを用いる。他の動物性油脂
はよほど経済的事情が逼迫していない限り使わ

ブロンドのルー

Roux blond

(仕上がり 1 kg 分)
材料の比率は茶色いルーと同じ。すなわちバ
ター 500 g と、ふるった小麦粉 600 g。
火入れは、ルーがほんのりブロンド色になるま
で、ごく弱火で行なう。

白いルー

Roux blanc
500 g のバターと、ふるった小麦粉 600 g。
このルーの火入れは数分、つまり粉っぽさがな
くなるまでの時間でいい。

静雄監訳『オリヴェソースの本』柴田書店、1970 年、27〜28 頁)
。
2) 既に述べたように初版〜第三版まではバターまたはグレスドマルミットという指示であったことに留意する必要はあるだろ
う。実際のところ、良質のバターを用いてルーを作ったほうが、軽やかな仕上りのソースになる傾向があることは言うまでも
ない。

10

I.

ソース

Sauces

基本ソース

Grandes Sauces de Base
ソース・エスパニョル1)

Sauce espagnole
(仕上がり 5 L 分)
• とろみ付けのためのルー……625 g。
• 茶色いフォン(ソースを仕上げるのに必要な
全量)……12 L。
• ミルポワ2) (香味素材)……小さなさいの目に
切った塩漬け豚ばら肉 150 g、2 mm 程度のさい
の目3) に切ったにんじん 250 g と玉ねぎ 150 g、
タイム 2 枝、ローリエの葉 2 枚。
• 作業手順
1. フォン 8 L を鍋で沸かす。あらかじめ柔らかく
しておいたルーを加え、木杓子か泡立て器で混
ぜながら沸騰させる。
弱火にして4) 微沸騰の状態を保つ。
2. 以下のようにしてあらかじめ用意しておいたミ
ルポワを投入する。ソテー鍋に塩漬け豚ばら肉
を入れて火にかけて脂を溶かす。そこに、細か
く刻んだにんじんと玉ねぎ、タイム、ローリエ
の葉を加える。野菜が軽く色づくまで強火で炒
める。丁寧に、余分な脂を捨てる。これをソー
スに加える。野菜を炒めたソテー鍋に白ワイン
約 100 mL5) を加えてデグラセ6) し、それを半量

まで煮詰める。これも同様にソースの鍋に加え
る。こまめに浮いてくる夾雑物を徹底的に取り
除き7) ながら弱火で約 1 時間煮込む。
3. ソースをシノワ8) で、ミルポワ野菜を軽く押し
ながら漉し、別の片手鍋に移す。フォン 2 L を
注ぎ足す。さらに 2 時間、微沸騰の状態を保ち
ながら煮込む。その後、陶製の鍋に移し、ゆっ
くり混ぜながら冷ます。
4. 翌日、再び厚手の片手鍋に移してから、フォン
2 L とトマトピュレ 1 L または同等の生のトマ
トつまり 2 kg を加える。
トマトピュレを用いる場合は、あらかじめオー
ブンでほとんど茶色になるまで焼いておくとい
い。そうするとトマトピュレの酸味を抜くこと
が出来る。
そうすればソースを澄ませる作業が楽になる
し、ソースの色合いも温かそうで美しいものに
なる。
ソースをヘラか泡立て器で混ぜながら強火で沸
騰させる。弱火にして 1 時間微沸騰の状態を
保つ。最後に、表面に浮いている不純物を、細
心の注意を払いながら徹底的に取り除く。布で
漉し、完全に冷めるまで、ゆっくり混ぜ続ける

1) 本節冒頭では、ルーがスペインの料理人によってもたらされ、その結果としてソース・エスパニョルが作られるようになった
と読める記述があるが、これはむしろ誤りと考えるべき。エスパニョル espagnol(e) は「スペイン(風)の」意だが、スペイン

2)

3)
4)
5)
6)
7)
8)

料理起源というわけでもない。スペインを想起させるトマトを使うから、あるいは、ソースが茶褐色なのがムーア系スペイン
人を想起させるから、など定説はない。カレーム『19 世紀フランス料理』第 3 巻に収められたソース・エスパニョルの作り方
は、フォンをとるところから始まり 4 ページにわたって詳細なものとなっている(pp.8-11)
。その中で、肉を入れた鍋に少量
のブイヨンを注いで煮詰めることを繰り返す。ここまでは 18 世紀の料理書で一般的な手法であるが、その後に大量のブイヨ
ンを注いだ後、いきなり強火にかけるのではなく、弱火で加熱していくやり方を「スペイン式の方法」と述べている。カレー
ムにおいては、これがソースの名称の根拠のひとつになっていると考えていいだろう。もちろん、ソース・エスパニョルとい
う名称のソースはカレーム以前からあり、1806 年刊のヴィアール『帝国料理の本』にもカレームのレシピより簡単だが、ほぼ
同様のものが基本ソースとして収録されている。また、それ以前にもソース・エスパニョルに類する名称のソースはあったが、
たとえば 1739 年刊ムノン『新料理研究』第 2 巻にある「スペイン風ソース」はかなり趣きが異なる(コリアンダーひと把みを
加えるのが特徴的)
。同じ料理名でも時代や料理書の著者によってまったく違う料理になっていることは、食文化史において珍
しいことではない。また、とりわけ料理名に地名、国名が冠されているものの中には根拠や由来のはっきりしないものも多い。
いずれにしても、本書のソース・エスパニョルの源流は 19 世紀初頭のヴィアールあたりからと考えられる。ソース・エスパ
ニョルは 19 世紀を通して普及し、茶色いソースの代表的な存在となった。こんにちでもフォンドヴォーをベースとしたソー
スは、ルーでとろみ付けこそしないが、仔牛の骨などから出るコラーゲンによるとろみを利用したもので、仕上がりの色合い
や、ごく標準的ともいえる風味付けの方法などが引継がれ続けている調理現場も少なくない。もっとも、上述のように本書で
は「茶色いルー」を使うところに「エスパニョル」であることの理由を見い出そうとしていると解釈される。
mirepoix(ミルポワ)。ソースやフォンにコクを与える目的で、細かいさいの目に切った香味野菜や塩漬け豚ばら肉を合わせた
もの。18 世紀にミルポワ公爵の料理人が考案したといわれているが真偽は不明。同様のものに matignon(マティニョン)が
ある。ミルポワより大きめのさいの目に切るのが一般的とされるが、調理現場によってはあまり区別せずミルポワとのみ呼称
するケースも多い。第 2 章ガルニチュール、ミルポワ訳注参照。
brunoise(ブリュノワーズ)。1〜2 mm のさいの目に切ること。couper en mirepoix(クゥペオンミルポワ)ミルポワに切ると
も言う。
原文から直訳すると「鍋を火の脇に置く」だが、現代の調理環境では単純に「弱火にする」と解釈していい。
原文 un verre de vin blanc(アンヴェールドヴァンブロン)
。直訳すると「グラス 1 杯の白ワイン」だが、本書において un verre
de 〜は「約 1 dL=100 mL」と覚えておくといいだろう。
dégrasser 鍋に粘液状になって付着している肉汁を酒類あるいは水で溶かし出してソースなどに利用すること。
dépouiller デプイエ。前節「ルーの火入れについて」訳注参照。
小さな穴が多く空けられた円錐形で、取っ手の付いた漉し器の一種。金属製のものが主流。

11

基本ソース
こと。
【原注】ソース・エスパニョルで仕上げに不純
物を取り除くのにかかる時間はいちがいには言
えない。これは、ソースに用いるフォンの質次
第で変わるからだ。
ソースにするフォンが上質なものであればあ
る程、仕上げに不純物を取り除く作業は早く済
む。そういう場合には、ソース・エスパニョル
を 5 時間で作ることも無理ではない。

魚料理用ソース・エスパニョル1)

Sauce espagnole maigre
(仕上がり 5 L 分)
• バターを用いて2) 作ったルー……500 g。
• 魚のフュメ(フュメドポワソン)(ソースを仕
上げるために必要な全量)……10 L。
• ミルポワ……標準的なソース・エスパニョルと
同じミルポワ野菜を同量と、塩漬け豚ばら肉の
代わりにバターを用い、マッシュルームまたは
マッシュルームの切りくず3) 250 g を加える。
• 作業手順……標準的なソース・エスパニョルと
まったく同様に作る。
• 加熱時間と不純物を取り除くのに必要な時
間……5 時間。
仕上げに漉してから、標準的なソース・エスパ
ニョルとまったく同様に、完全に冷めるまで
ゆっくり混ぜ続けること。
魚料理用ソース・エスパニョル補足 このソース
を日常的な料理のベースとなる仕込みに含める
かどうかについては意見が分れるところだ。
普通のソース・エスパニョルは、つまるところ

風味の点ではほとんどニュートラルなものだ
から、それに魚のフュメを加えれば、魚料理用
ソース・エスパニョルとして充分に通用するだ
ろう。どうしても上で挙げた魚料理用ソース・
エスパニョルが必要になるのは、宗教的に厳格
に小斉の決まりを守って料理を作る場合のみ
で、さすがにその場合は代用品などない。

ソース・ドゥミグラス4)

Sauce demi-glace

一般に「ドゥミグラス」と呼ばれているものは、
いったん仕上がったソース・エスパニョルをさ
らに、もうこれ以上は無理という位に徹底的に
不純物を取り除いたもののことだ。
最後の仕上げにグラスドヴィアンドなどを加え
る。風味付けに何らかの酒類5) を加えれば、当
然ながらソースの性格も変わるので、最終的な
使い途に応じて決めること。
【原注】ソースの色合いを決めるワインを仕上
げに加える際には、「火から外して」行なうこ
と。沸騰しているとワインの香りがとんでしま
うからだ。

とろみを付けた仔牛のジュ

Jus de veau lié
(仕上がり 1 L 分)
• 仔牛のフォン……仔牛の茶色いフォン 4 L。
• とろみ付け材料……アロールート6) 30 g。
• 作業手順……よく澄んだ仔牛のフォン 4 L を
強火にかけ、1/4 量つまり 1 L になるまで煮詰
める。
大さじ数杯分の冷たいフォンでアロールートを

1) フランス語のソース名にある maigre(メーグル)はこの場合、一般的に「魚用、魚料理用」と訳すが、厳密には「小斉の際の

2)

3)

4)

5)
6)

料理用」となろう。小斉とは、カトリックで古くから特定の期間、曜日に肉類を断つ食事をする宗教的食習慣。日本の「お精
進」とニュアンスは近いが、小斉においては忌避されるのは鳥獣肉のみであり、魚介や乳製品はいいとされた。こじつけのよ
うに、水鳥は水のものだから魚介扱いであり、またイルカも魚類として扱われていた。小斉が行なわれるのは復活祭の前 46 日
間(四旬節、逆に言えばカーニバルの最終日マルディグラの翌日から 46 日)と、週に一度(多くの場合は金曜)であった。合
計すると小斉が行なわれるのは年間 100 日近くもあり、中世から 18 世紀の料理人たちは小斉の宴席に供する料理に工夫を凝
らしていた。この習慣は 19 世紀になるとだんだん廃れていき、エスコフィエの時代には、料理人に対して小斉のための料理を
要求することは少なくなっていった。
初版〜第三版にかけては、茶色いルーを作るのに「バターまたは、きれいなグレスドマルミット(コンソメなどを作る際に表
面に浮いてくる脂をすくい取って、不純物を漉し取ったものであり、基本的に獣脂)
」を用いる、とある。上述のように、カト
リックにおける「小斉」の場合、獣脂は忌避されたがバターなどの乳製品は許容された。そのため特に「バターを用いて作っ
たルー」という指定がなされ、第四版では茶色いルーに澄ましバターのみを使う旨が強調されたが、ここでは初版以来の記述
がそのまま残っているために、やや冗長に思われる表現となっている。
champignons de Paris(シャンピニョンドパリ)いわゆるマッシュルームは、ガルニチュールなど料理の一部として提供する際
に、トゥルネ tourner といって螺旋(らせん)状の切れ込みを入れて装飾したものを使う。その際に少なくない量、具体的に
は重量で 15〜20 %程度が「切りくず」として発生するのでこれを利用する。なお、tourner(トゥルネ)の原義は「回す」であ
り、包丁を持った側の手は動かさずに、材料のほうを回すようにして切れ目を入れたり、アーティチョークや果物などの皮を
剥くことを意味する。
日本の洋食などで一般的な「デミグラス」あるいは「ドミグラス」」とはかなり異なった仕上りのソースであることに注意。
ソース・エスパニョルの仕上げにあたって、徹底的に不純物を取り除くことを何度も強調しているのは、透き通った茶色がかっ
た色合いの、なめらかなソースを目指すからであり、それをさらに徹底させるということは、透明度、なめらかさの面でさら
に上を目指すということを意味するからだ。ちなみに、アメリカに本社のあるメーカーの「デミグラスソース」の缶詰はもっ
ぱら日本で販売されている製品であり、ヨーロッパおよびアメリカでは同一ブランドに該当する商品は存在しないようだ。
本書ではマデイラ酒(マデイラワイン、ポルトガルの酒精強化ワイン、すなわちブドウ果汁が酵母により醗酵している途中で
蒸留酒を加えて醗酵を止める製法のもので、甘口のものが多い)が用いられることが多い。
allow-root 南米産のクズウコンを原料とした良質のでんぷん。日本では入手が難しいこともあり、コーンスターチが用いられ
ることがほとんど。

12
溶く。これを沸騰している鍋に加える。1 分程
度だけ火にかけ続けたら、布で漉す。
【原注】この、とろみを付けた仔牛のジュは、
本書では頻繁に使う指示をしているが、必ず、
しっかりした味で透き通った、きれいな薄茶色
に仕上げること。

ヴルテ1) (標準的な白いソース)

Velouté, ou sauce blanche graisse
(仕上がり 5 L 分)
• とろみ付けの材料……バターを用いて作った2)
ブロンドのルー 625 g。
• よく澄んだ仔牛の白いフォン……5 L。
• 作業手順……ルーをフォンに溶かし込む。フォ
ンは冷たくても熱くてもいいが、フォンが熱い
場合にはソースが充分なめらかになるよう注意
して溶かすこと。混ぜながら沸騰させる。微沸
騰の状態を保ちながら、浮いてくる不純物を完
全に取り除いていく3) 。この作業はとりわけ細
心の注意を払って行なうこと。
• 加熱時間と不純物を取り除く作業に必要な時
間……1 時間半。
その後、ヴルテを布で漉す4) 。陶製の鍋に移し
てゆっくり混ぜながら完全に冷ます。

鶏のヴルテ

Velouté de volaille
このヴルテの作り方だが、上述の標準的なヴル
テと、材料比率と作業はまったく同じ。使用す
る液体として鶏の白いフォン(フォンドヴォラ
イユ)を使う。

魚料理用ヴルテ

Velouté de poisson
ルーと液体の分量は標準的なヴルテとまったく
同じだが、仔牛のフォンではなく魚のフュメを
用いて作る。
ただし、魚を素材として用いるストックはどれ
もそうだが、手早く作業すること。不純物を取
り除く作業も 20 分程度にとどめること。その
後、布で漉し、陶製の鍋に移してゆっくり混ぜ

I.

ソース

Sauces

ながら完全に冷ます。

ソース・アルマンド(パリ風ソース5) )

Sauce parisienne (ex-Allemande)
(仕上がり 1 L 分)

標準的なヴルテに卵黄でとろみを付けたソー
ス。
• 標準的なヴルテ……1 L。
• 追加素材……卵黄 5 個、白いフォン(冷たいも
の)1/2 L、粗く砕いたこしょう 1 ひとつまみ、
すりおろしたナツメグ少々、マッシュルームの
煮汁 2 dL、レモン汁少々。
• 作業手順……厚手のソテー鍋にマッシュルー
ムの茹で汁と白いフォン、卵黄、粗く砕いたこ
しょう、ナツメグ、レモン汁を入れる。泡立て
器でよく混ぜ、そこにヴルテを加える。火にか
けて沸騰させ、強火で$2⁄3 量になるまで、ヘラで
混ぜながら煮詰める。
ヘラの表面がソースでコーティングされる状態
になるまで煮詰めたら、布で漉す。
膜が張らないよう、表面にバターのかけらをい
くつか載せてやり、湯煎にかけておく。
• 仕上げ……提供直前に、バター 100 g を加えて
仕上げる。
【原注】ソース・アルマンド(ドイツ風)とも呼
ばれるが、本書では「パリ風」の名称を採用し
た。そもそも「アルマンド」というの名称に正
当性がないからだ。習慣としてそう呼ばれてき
ただけであって、明らかに理屈に合わない名称
だ6) 。1883 年に雑誌「料理技術」に某タヴェル
ネ氏が寄せた記事には、当時ある優秀な料理人
がアルマンドなどという理屈に合わない名称を
使うのはやめたという話が出ている。
こんにち既に「パリ風ソース」の名称を採用し
ている料理長もいる。そう呼んだほうが好まし
いわけだが、残念なことにまだ一般的にはなっ
ていない7) 。

ソース・シュプレーム8)

Sauce supême

1) velouté(ヴルテ)原義は「ビロードのように柔らかな、なめらかな」。日本ではベシャメルソースと混同されやすいが、内容が
まったく異なるソースなので注意。

2) 魚料理用ソース・エスパニョル、訳注参照。
3) dépouiller(デプイエ)。ソース・エスパニョル、訳注参照。
4) ある程度濃度のある液体やピュレを布で漉す場合、昔は「二人がかりで行なう必要があり、それぞれが巻いた布の端を左手に
持ち、右手に持った木杓子を使って圧し搾る」
(『ラルース・ガストロノミーク』初版、1938 年)という方法が一般的だった。
5) 原書では「パリ風ソース(元ソース・アルマンド)」となっているが、後述のように、こんにちでもソース・アルマンドの名称
のほうが一般的であるため、ここでは Sauce Parisienne の「訳語」としてソース・アルマンドをあてることとした。
6) エスコフィエは普仏戦争に従軍した経歴があり、ドイツ嫌いとして知られていた。
7) エスコフィエの願いもむなしく、現代においてもソース・アルマンドの名称で定着している。この「全注解」においても以後
は「ソース・アルマンド」と訳しているので注意されたい。なお、
「ドイツ風」というソース名の由来について、ソースの淡い
黄色がドイツ人に多い金髪を想起させるからだとカレームは述べている。
8) suprême 原義は「至高の」だが、料理においてはしばしば鶏や鴨の胸肉、白身魚のフィレなどを意味する。また、このソース
のように、とくに意味もなくこの名を料理につけられているケースも多い。
1) フランスの生クリームのうち、料理でよく使われるのは、日本の生クリームにやや近い「クレーム・フレッシュ・パストゥリ
ゼ」(低温殺菌した生クリームで乳脂肪分 30〜38 %)のほか、「クレーム・フレッシュ・エペス」(低温殺菌後に乳酸醗酵さ
せたもので日本で一般的な生クリームより濃度がある)
、「クレーム・ドゥーブル」(殺菌後に乳酸醗酵させたもので乳脂肪分
40 %程度でかなり濃度がある)などがある。

13

基本ソース
鶏のヴルテに生クリーム1) を加えてなめらかに
仕上げ2) たもの。ソース・シュプレームは、正し
きわ

く作った場合「白さの際だったとても繊細な」
仕上がりのものでなくてはいけない。
(仕上がり 1 L 分)
• 鶏のヴルテ……1 L。
• 追加素材……鶏の白いフォン 1 L、マッシュルー
ムの茹で汁 1dL、良質な生クリーム 2 1/2 dL。
• 作業手順……鍋に鶏のフォンとマッシュルーム
の茹で汁、鶏のヴルテを入れて強火にかけ、ヘ
ラで混ぜながら、生クリームを少しずつ加え、
煮詰めていく。このヴルテと生クリームを煮詰
めたものの分量は、上で示した仕上がり 1L の
ソース・シュプレームを作るには、1/3 量まで煮
詰まっていなくてはならない。
布で漉し、仕上げに 1 dL の生クリームとバター
80 g を加えてゆっくり混ぜながら冷ますと、丁
度最初のヴルテと同量になる。

ベシャメルソース3)

Sauce Béchamel
(仕上がり 5 L 分)
• 白いルー……650 g。
• 使用する液体……沸かした牛乳 5 L。
• 追加素材……白身で脂肪のない仔牛肉 300 g を
さいの目に切り、みじん切りにした玉ねぎ(小)
2 個分とタイム 1 枝、粗く砕いたこしょう 1 つ
まみ、塩 25 g とバターを鍋に入れて蓋をし、色
付かないように弱火で蒸し煮したもの。
• 作業手順……沸かした牛乳でルーを溶く。混ぜ
ながら沸騰させる。ここに、先に蒸し煮してお
いた野菜と調味料、仔牛肉を加える。弱火で 1
時間煮込む。布で漉し4) 、表面にバターのかけ
らをいくつか載せて膜が張らないようにする。
肉類を絶対に使わない5) で調理する必要がある
場合は、仔牛肉を省き、香味野菜などは上記の
とおりに作ること。

このソースは次のようなやり方をすると手早く
作ることも出来る。沸かした牛乳に塩、薄切り
にした玉ねぎ、タイム、粗く砕いたこしょう、
ナツメグを加える。蓋をして弱火で 10 分煮る。
これを漉してルーを入れた鍋の中に入れ、強火
にかけて沸騰させる。その後 15〜20 分だけ煮
込めばいい。
トマトソース

Sauce tomate
(仕上がり 5 L 分)
• 主素材……トマトピュレ 4 L、または生のトマト
6 kg。
• ミルポワ……さいの目に切って下茹でしておい
た塩漬け豚ばら肉 140 g 、1〜2 mm 角のさいの
目に刻んだにんじん 200 g と玉ねぎ 150 g、ロー
リエの葉 1 枚、タイム 1 枝、バター 100 g。
• 追加素材……小麦粉 150 g、白いフォン 2 L、に
んにく 2 片。
• 調味料……塩 20 g、砂糖 30 g、こしょう 1 つ
まみ。

• 作業手順……厚手の片手鍋で、塩漬け豚ばら肉
を軽く色付くまで炒める。ミルポワの野菜を加
え、野菜も色よく炒める。小麦粉を振りかける。
ブロンド色になるまで炒めてから、トマトピュ
レまたは潰した生トマトと白いフォン、砕いた
にんにく、塩、砂糖、こしょうを加える。
火にかけて混ぜながら沸騰させる。鍋に蓋をし
て弱火のオーブンに入れ 1 時間半〜2 時間加熱
する。
目の細かい漉し器または布で漉す。再度、火に
かけて数分間沸騰させる。保存用の器に移し、
ソースが空気に触れて表面に膜が張らないよ
う、バターのかけらを載せてやる。
【原注】トマトピュレを使い、小麦粉は使わず、
その他は上記のとおりに作ってもいい。漉し器
か布で漉してから、充分な濃度になるまでしっ
かり煮詰めてやること。

2) monter モンテ。原義は「上げる、ホイップする」だが、ソースの仕上げの際などに、バターや生クリームを加えて、なめらか
に仕上げることも「モンテ」の語を使用する場合が多い。

3) 17 世紀にルイ 14 世のメートルドテルを務めたこともあるルイ・ベシャメイユ Louis Béchameil(1630〜1703)の名が冠されて
いるこのソースは、彼自身の創案あるいは彼に仕えていた料理人によるものという説もあったが真偽は疑わしい。17 世紀頃の
成立であることは確かだが、おそらくは古くからあったソースを改良したものに過ぎず、また、19 世紀前半のカレームのレシ
ピはヴルテを煮詰め、卵黄と煮詰めた生クリームでとろみを付けるというものだった。同様に 1867 年刊グフェ『料理の本』の
レシピも、炒めた仔牛肉と野菜に小麦粉を振りかけてからブイヨン注ぎ、これを煮詰め、漉してから生クリームを加えるとい
うものだった。
4) ヴルテ訳注参照。
5) 小斉のこと。魚料理用ソース・エスパニョル訳注参照。

14

I.

ソース

Sauces

ブラウン系の派生ソース

Petites Sauces Brunes Composées
ソース・ビガラード1)

Sauce Bigarade

仔鴨のブレゼ用 ……仔鴨をブレゼ2) した際の煮
汁を漉してから浮き脂を取り除き3) 、煮詰める。
煮詰まったらさらに目の細かい布で漉し、ソー
ス 1 L あたりオレンジ 4 個とレモン 1 個の搾り
汁でのばす。
仔鴨のポワレ用 ……仔鴨をポワレ4) のフォンか
ら浮き脂を取り除き、でんぷんで軽くとろみ付
けする。砂糖 20 g に大さじ 1/2 杯のヴィネガー
を加えて火にかけカラメル状にしたものを加え
る。ブレゼ用と同様に、オレンジとレモンの搾
り汁でのばす。
仔鴨のブレゼ用、ポワレ用いずれの場合も、細
かい千切りにしてよく下茹でしておいたオレン
ジの皮大さじ 2 とレモンの皮5) 大さじ 1 を加え
て仕上げる。
ボルドー風ソース

Sauce Bordelaise
赤ワイン 3 dL にエシャロットのみじん切り大
さじ 2、粗く砕いたこしょう、タイム、ローリ

エの葉 1/2 枚を加えて火にかけ、1/4 量になるま
で煮詰める。ソース・エスパニョル 1 dL を加え
て火にかけ、浮いてくる夾雑物を丁寧に取り除
きながら弱火で 15 分間煮る。目の細かい布で
漉す。
溶かしたグラスドヴィアンド大さじ 1 杯とレモ

ン汁 1/4 個分、細かいさいの目か輪切りにして
ポシェしておいた牛骨髄を加えて仕上げる。
……牛、羊の赤身肉6) のグリル用
【原注】こんにちではボルドー風ソースをこの
ように赤ワインを用いて作るが、本来的には誤
りである。元来は白ワインが用いられていた。
これはボルドー風ソース・ボヌフォワとして
後述。
ブルゴーニュ風ソース

Sauce Bourguignonne
上質の赤ワイン 1 1/2 L に、エシャロット 5 個

の薄切りとパセリの枝、タイム、ローリエの葉
1/2 枚、マッシュルームの切りくず7) 25 g を加え
て、半量になるまで煮詰める。布で漉し、ブー
ルマニエ 80 g (バター 45 g と小麦粉 35 g)を
加えてとろみを付ける。提供直前にバター 150
g を溶かし込み、カイエンヌ8) ごく少量で加え
て風味よく仕上げる。
……いろいろな卵料理や、家庭料理に好適な
ソース。
ブルターニュ風ソース

Sauce Bretonne
中位の玉ねぎ 2 個をみじん切りにして、バター
でブロンド色になるまで炒める。白ワイン 2 1/2
dL を注ぎ、半量になるまで煮詰める。ここに
ソース・エスパニョル 3 1/2 dL およびトマト
ソース同量を加える。7〜8 分間煮立ててから、

1) ビガラードは本来、南フランスで栽培されるビターオレンジの一種。
2) 料理の仕立てとしてのブレゼはたんに「蒸し煮」することではない。原則的な手順をごく簡単に述べておく。厚めに輪切りに
したにんじんと玉ねぎをバターまたはラードで炒め、ブーケガルニとともに鍋に入れる。表面を色よく焼き固めた肉を、脂身
の少ない肉の場合には豚背脂のシートで包んで素材がぴったり入る大きさ鍋に入れ、茶色いフォンを注ぎ、蓋をしてオーブン
に入れ、微沸騰の状態を保つようにして煮込む。火が通ったら肉を取り出し、鍋に残った煮汁でソースを作る。詳細について
は第 7 章 肉料理参照。
3) dégraisser デグレセ。
4) ポワレについても簡単に述べておく。本書においてポワレは「フライパンで焼く」という意味で用いられることは決してない
(フライパンで魚などを焼くことをポワレと呼ぶようになったのは 20 世紀後半のこと)
。本書では「ローストの一種」と定義さ
れており(この点がカレームとはまったく異なる)、3〜4mm 角に切った香味野菜(マティニョン)を生のまま鍋の底に入れ、
その上に味付けをした肉を置く。溶かしバターをかけてから、蓋をして中火のオーブンに入れて蒸し焼きにする。時折様子を
見て溶かしバターをかけてやること。肉に火が通ったら鍋から取り出し、茶色い仔牛のフォンを注いで弱火にかけて 10 分程煮
込み、マティニョンとして用いた野菜から風味を引き出してソースにする。これがレシピにある「ポワレのフォン」となる。
5) 柑橘類の表皮を薄く剥いてごく細い千切りにしたり、器具を用いておろしたものを zeste(ゼスト)と呼ぶ。千切りにしたもの
は苦味を取り除くために下茹ですることが多い。
6) 原文 viande noire de boucherie(ヴィヨンドノワールドブシュリ)逐語訳すれば「肉屋の赤身肉」(noir(e) は黒の意だが肉の場
合は赤身肉を指す)だが、一般的に viande de boucherie(ヴィヨンドドブシュリ)とだけ言えば、伝統的に肉屋で扱かわ
れてきた、白身肉を除く畜産精肉のことで、具体的には牛、羊、場合によっては馬も含まれる(馬肉は食材としてあまり一般
的ではないが、専門店がある)。副生物(内臓や足、耳、舌肉など)は含まれない。この場合の「白身肉」とは一般的に乳呑
仔牛、乳呑仔羊のことであり、鶏(およびその他の家禽)や豚は別扱いになる。ここでわざわざ viande noire 赤身肉と表現し
ているのは、19 世紀後半以降、上記のような区分がやや曖昧になったことによるものだろう。以下、本書の訳では viande de
boucherie の訳語として「牛、羊肉」をあてることにする。
7) 料理に使うマッシュルームは通常、トゥルネ(tourner 包丁を持った側の手は動かさずに材料を回して切ることからついた用
語)すなわち螺旋状に装飾して供するが、その際に少なくない量(具体的には重量で 15〜20 %)の切りくずが出るのでこれを
使う。
8) 赤唐辛子の粉末だがカイエンヌは本来、品種名。日本のタカノツメと比べると辛さもややマイルドで、風味も異なる。

15

ブラウン系の派生ソース
刻んだパセリを加えて仕上げる。
【原注】このソースは白いんげん豆のブルター
ニュ風以外にはほとんど使われない。

ソース・スリーズ1)

Sauce aux Cerises
ポルト酒 2 dL にイギリス風ミックススパイ
ス2) 1 つまみと、すりおろしたオレンジの皮を

大さじ 1/2 杯加えて 2/3 量になるまで煮詰める。
グロゼイユのジュレ 2 1/2 dL を加え、仕上げに
オレンジ果汁を加える。
……大型ジビエの料理用だが、鴨のポワレやブ
レゼにも用いられる。

ソース・シャンピニョン3)

Sauce aux Champignons
マッシュルームの茹で汁 2 1/2 dL を半量になる
まで煮詰める。ソース・ドゥミグラス 8 dL を
加えて数分間煮立てる。布で漉し、バター 50 g
を投入して味を調え、あらかじめ下茹でしてお
いた小さめのマッシュルームの笠 100 g を加え
て仕上げる。

ソース・シャルキュティエール4)

Sauce Charcutière

提供直前に、ソース・ロベール 1 L に細さ 2 mm
程度で短かめの千切り5) にしたもの 100 g を加
える(ソース・ロベール参照)
。

ソース・シャスール6)

Sauce Chasseur

生のマッシュルームを薄切りにしたもの 150 g
をバターで炒める。エシャロット7) のみじん切
り大さじ 2 1/2 杯を加えてさらに軽く炒め、白
ワイン 3 dL を注ぎ、半量になるまで煮詰める。
トマトソース 3 dL とソース・ドゥミグラス 2

dL を加える。数分間沸騰させたら、バター 150
g と、セルフイユ8) とエストラゴン9) をみじん切
りにしたもの大さじ 1 1/2 杯を加えて仕上げる。
ソース・シャスール(エスコフィエ流)

Sauce Chasseur (Procédé Escoffier)

生のマッシュルームを薄切りにしたもの 150 g
を、バターと植物油で軽く色付くまで炒める。
みじん切りにしたエシャロット大さじ 1 杯を加
え、なるべくすぐに余分な油をきる。白ワイン
2 dL とコニャック約 50 mL を注ぎ、半量にな
るまで煮詰める。ソース・ドゥミグラス 4 dL と
トマトソース 2 dL、グラスドヴィアンド大さじ
1/2 杯を加える。
5 分間沸騰させたら、仕上げにパセリのみじん
切り少々を加える。
茶色いソース・ショフロワ10)

Sauce Chaud-froid brune
(仕上がり 1 L 分)

ソース・ドゥミグラス 3/4 L とトリュフエッセ
ンス 1 dL、ジュレ 6〜7 dL を用意する。
ソース・ドゥミグラスにトリュフエッセンスを
加えて、強火で煮詰めるが、この時に鍋から離
れないこと。煮詰めながらジュレを少量ずつ加
えていく。最終的に 2/3 量程度まで煮詰める。
味見をして、ソースがショフロワに使うのに丁
度いい濃さになっているか確認すること。
マデイラ酒またはポルト酒 1/2 dL を加える。布
で漉し、ショフロワの主素材の表面に塗り付け
るのに丁度いい固さになるまで、丁寧にゆっく
り混ぜながら冷ます。
茶色いソース・ショフロワ(鴨用)

Sauce Chaud-froid brune pour Canards

1) cerise(スリーズ)さくらんぼの意。このレシピではグロゼイユ(すぐり)のジュレを用いるが、古くはさくらんぼを用いてい
たことからこの名称となったと言われている。

2) Mixed spice のこと。Pudding spice とも呼ばれる。シナモン、ナツメグ、オールスパイスの組み合わせが典型的。これにクロー
ブ、生姜、コリアンダーシード、キャラウェイシードなどが加わっていることも多い。

3) champignons キノコ全般を意味する語だが、単独で用いられる場合は champignons de Paris(シャンピニョンドパリ)いわゆ
るマッシュルームを指す。

4) シャルキュトリ(豚肉加工業)風、の意。Charcutrie の語源は char(肉)+cuite(調理された)+rie(業)。ハムやソーセージ

5)
6)
7)

8)
9)

10)

などと定番の組合せであるマスタードを使うソース・ロベールと、おなじく定番のつけ合わせであるコルニション(小さいう
ちに収穫してヴィネガー漬けにしたきゅうり。専用品種がある)を使うことに由来。
julenne(ジュリエーヌ)1〜2mm 程度の細さの千切りにした野菜などのこと。調理現場によって「ジュリエンヌ」「ジュリア
ン」
(なぜか男性名)と呼ぶところもある。
狩人風、の意。古くは猟獣肉をすり潰したものを使った料理を指したという説もある。マッシュルームとエシャロット、白ワ
インを使うのが特徴であり、このソースを使った料理にも「シャスール」の名が付けられる。
échalote 玉ねぎによく似ているが、小ぶりで水分が少なく、香味野菜としてよく用いられる。伝統的な品種は種子ではなく種
球を植えて栽培する。なお、日本でしばしば「エシャレット」の名称で流通しているものはラッキョウの若どりであり、フラ
ンス料理で用いるエシャロットとはまったく異なる。
cerfeuil 日本ではチャービルとも呼ばれるセリ科のハーブ。
estragon 日本ではタラゴンとも呼ばれるヨモギ科のハーブ。フランス料理ではとても好まれる重要なハーブのひとつ。フレン
チタラゴンとロシアンタラゴンの 2 種がある。料理に用いるのはフレンチタラゴンであり、この品種は種子ではなく株分けや
挿し芽で殖やして栽培される。寒さには比較的強いが、日本の梅雨の湿度や夏の暑さには弱い。
choud-froid (ショフロワ)は chaud ショ「熱い、温かい」と froid フロワ「冷たい」の合成語で、火を通した肉や魚を冷ま
し、表面にこのソース・ショフロワを覆うように塗り付け、さらにジュレを覆いかけた料理。料理の発祥については諸説あ
り、なかでもルイ 15 世に仕えていた料理長ショフロワ Chaufroix が考案したという説を支持してなのか、英語ではこの料理
を Chaufroix と綴ることも多い。Chaud-froid の表記は 19 世紀後半には文献に見られる。なお、複数形は chauds-froids と綴
る。トリュフの薄切りやエストラゴンなどのハーブその他で表面に華麗な装飾を施すことが 19 世紀には盛んに行なわれてい
た。現代でも装飾に凝った仕立てにするケースは多い。

16

I.

ソース

Sauces

ととの

作り方は上記、茶色いソース・ショフロワと同
様だが、トリュフエッセンスではなく、鴨のガ
ラでとったフュメ 1 1/2 dL を用いること。また、
上記のレシピよりややしっかり煮詰めること。
ソースを布で漉したら、オレンジ 3 個分の搾り
汁、とオレンジの皮をごく薄く剥いて細かい千
切りにしたもの1) 大さじ 2 杯を加える。オレン
ジの皮の千切りはしっかりと下茹でしてよく水
気をきっておくこと。

茶色いソース・ショフロワ(ジビエ用)

Sauce Chaud-froid brune pour Gibier

作り方は上記標準的なソース・ショフロワと同
じだが、トリュフエッセンスではなく、ショフ
ロワとして供するジビエのガラでとったフュ
メ2) 2 dL を用いること。

トマト入りソース・ショフロワ

Sauce Chaud-froid tomatée

良質で、既によく煮詰めてあるトマトピュレ 1
L を、さらに煮詰めながら 7〜8 dL のジュレを
少しずつ加えていく。全体量が 1 L 以下になる
まで煮詰めること。
布で漉し、使いやすい固さになるまで、ゆっく
り混ぜながら冷ます。

ソース・シュヴルイユ

Sauce Chevreuil

標準的なソース・ポワヴラードと同様に作るが、

1. マリネした牛・羊肉の料理に添える場合3) は、
ハム入りのミルポワを加える。

2. ジビエ料理に添える場合は、そのジビエの端肉
を加える。
素材をヘラなどで強く押し付けるようにして漉
す4) 。良質の赤ワイン 1 1/2 dL をスプーン 1 杯
ずつ加えながら煮て、浮き上がってくる不純物
を丁寧に取り除いていく5) 。
最後に、カイエンヌごく少量と砂糖 1 つまみを

加えて味を調え、布で漉す。

ソース・コルベール6)

Sauce Colbert

メートルドテルバターにグラスドヴィアンドを
加えたもののことだが、正しくは「ブール・コ
ルベール」と呼ぶべきものだ7) 。
また、ブール・コルベールとソース・シャトーブ
リアンとの違いを明確にさせようとして、メー
トルドテルバターにエストラゴンを加える者
もいる。だが、必ずそうすべきということで
はない。実際、ブール・コルベールとソース・
シャトーブリアンは明らかに違うものだから
だ。ソース・シャトーブリアンは軽く仕上げた
グラスドヴィアントにバターとパセリのみじん
切りを加えたものである。一方、ブール・コル
ベールあるいはソース・コルベールと呼ばれて
いるものはあくまでもバターが主であって、グ
ラスドヴィアンドは補助的なものに過ぎない。

ソース・ディアーブル8)

Sauce Diable

このソースはごく少量ずつ作るのが一般的だ
が、ここではそれを守らずに、仕上り 2 1/2 dL
として説明する
白ワイン 3 dL にエシャロット 3 個分のみじん
切りを加え、1/3 量以下になるまで煮詰める。
ソース・ドゥミグラス 2 dL を加えて数分間煮
立たせ、仕上げにカイエンヌの粉末をたっぷり
効かせる9) 。
……鶏と鳩のグリルに合わせる。
【原注】白ワインではなくヴィネガーを煮詰め、
仕上げにハーブを加えて作る調理現場もある
が、著者としては本書で示しているの作り方が
いいと思う。

ソース・ディアーブル・エスコフィエ

Sauce Diable Escoffier

1) zeste ゼスト。オレンジやレモンの皮の表面を器具を用いてすりおろすか、ナイフでごく薄く表皮を向き、細かい千切りにした
もの。ここでは後者を使う指定になっている。

2) ジビエのフォン参照。
3) chevreuil シュヴルイユはノロ鹿のことだが、このように事前にマリネした牛・羊肉を用いた料理にもこのソースを使い「シュ
うた

ヴルイユ(風)(仕立て)」と謳う。1806 年刊ヴィアール『帝国料理の本』においてノロ鹿のフィレは香辛料を加えたワイン
ヴィネガーで 48 時間マリネしてから調理すると書かれている。オド『女性料理人のための本』では、確認出来た 1834 年の第
4 版から 1900 年の第 78 版に至るまで、ノロ鹿の項において「一週間もヴィネガーたっぷりの漬け汁でマリネするのはやりす
ぎだが、強い味が好みなら 1〜4 日間」香辛料と赤ワインあるいはヴィネガーでマリネするといい、と説明されている。つま
り、ノロ鹿とは必ずマリネしてから調理するものという一種のコンセンサスがあったために、マリネした牛・羊肉の料理にも
「シュヴルイユ(風)」の名称が謳われるようになったと考えられる。
4) シノワ (ソース・エスパニョル訳注参照) などを用いる。
5) dépouiller デプイエ ≒ écumer エキュメ。
6) 17 世紀の政治家、ジャン・バティスト・コルベール(1619〜1683)の名を冠したもの。
7) 具体的なレシピはブール・コルベール参照のこと。
8) diable(ディアーブル)悪魔の意。
9) 「たっぷり」という表現に惑わされないよう注意。
1) 現在は市販されていないと思われる。フランスにおいては未確認だが、1980 年代までアメリカ合衆国ではナビスコがソース・
ロベール・エスコフィエとともに瓶詰めを生産、販売していた。初版ではこれら 2 つの製品への言及がなく、第二版で追加さ
れたことから、1903 年〜1907 年の間に製品化された可能性もある。また、第二版(1907 年)と同年の英訳版、第三版(1912
年)にはソース・スリーズ・エスコフィエの記述が見られるが、これは第四版で削除されており、生産中止になったと思われ
る。エスコフィエ・ブランドの既製品ソースはさらに他にもあったようだが詳細は不明。なお、エスコフィエは 1922 年頃、
ジュリユス・マジがブイヨンキューブ(日本では「マギーブイヨン」の商品名)を開発する際にも協力した。

17

ブラウン系の派生ソース
このソースは完成品が市販1) されている。同量
の柔くしたバターを混ぜ合わせるだけでいい。

ソース・ディアーヌ2)

Sauce Diane

不純物を充分に取り除き、コクと風味ゆたかな
ソース・ポワヴラード 5 dL を用意する。提供
直前に、泡立てた生クリーム 4 dL(生クリーム
2 dL を泡立てて倍量にする)と、小さな三日月
の形にしたトリュフのスライスと固茹で卵の白
身を加える。
……大型ジビエの骨付き背肉および、その中心
部を円筒形に切り出したもの3) 、フィレ料理用。

ソース・デュクセル4)

Sauce Duxelles
白ワイン 2 dL とマッシュルームの茹で汁 2 dL
にエシャロットのみじん切り大さじ 2 杯を加え

て、1/3 量まで煮詰める。ソース・ドゥミグラ
ス 1/2 L とトマトピュレ 1 1/2 dL、デュクセル・
セッシュ大さじ 4 杯を加える。5 分間煮立たせ、
パセリのみじん切り大さじ 1/2 を加える。
……グラタンの他、いろいろな料理に用いら
れる。
【原注】ソース・デュクセルはイタリア風ソー
スと混同されることが多いが、ソース・デュク
セルにはハムも、赤く漬けた舌肉も入れないの
で、まったく別のものだ。

ソース・エストラゴン5)

Sauce Estragon
(仕上がり 2 1/2 dL 分)
白ワイン 2 dL を沸かし、エストラゴンの枝 20
g を投入する。蓋をして 10 分間、煎じる6) 。2
1/2 dL のソース・ドゥミグラスまたは、とろみ
を付けた仔牛のジュを加え、約 2/3 量になるま
で煮詰める。布で漉し、みじん切りにしたエス
トラゴン小さじ 1 杯を加えて仕上げる。

……仔牛や仔羊の背肉の中心を円筒形に切り出
した料理や家禽料理用。

ソース・フィナンシエール7)

Sauce Financière

ソース・マデール 1 1/4 L を 3/4 量以下になるま
で煮詰め、火から外してトリュフエッセンス 1
dL を加える。布で漉して仕上げる。
……ガルニチュール・フィナンシエール用だ
が、その他の肉料理にも用いられる。

香草ソース8)

Sauce aux Fines Herbes
白ワイン 3 dL を沸かし、パセリの葉、セルフイ
ユ、エストラゴン、シブレットを各 1 つまみ強、
投入する。約 20 分間煎じる。布で漉し、ソー
ス・ドゥミグラスまたはとろみを付けた仔牛の
ジュ 6 dL を加える。仕上げに、煎じるのに使っ
たのと同じ香草を細かく刻んだもの計、大さじ
2 1/2 杯とレモンの搾り汁少々を加える。
【原注】古典料理ではこの「香草ソース」とソー
ス・デュクセルが混同されることもあったが、
こんにちではまったく違うものとして扱われて
いる。

ジュネーヴ風ソース

Sauce Genevoise

鍋にバターを熱し、細かく刻んだミルポワを色
付かないよう強火でさっと炒める。ミルポワの
材料は、にんじん 100 g、玉ねぎ 80 g、タイム
とローリエ少々、パセリの枝 20 g。そこにサー
モンの頭 1 kg と粗く砕いたこしょう 1 つまみ
を入れ、蓋をして弱火で 15 分程蒸し煮する。
鍋に残ったバターを捨て、赤ワイン 1 L を注ぐ。
半量になるまで煮詰める。そこに魚料理用ソー
ス・エスパニョル 1/2 L を加える。弱火で 1 時
間煮込む。漉し器を使い、材料を押しつけなが
ら漉す。しばらく休ませてから、表面に浮いた

2) ローマ神話の女神ディアーナのこと。ギリシア神話のアルテミスに相当し、狩猟、貞潔の女神。また月の女神ルーナ(セレー
ネー)と同一視された。ここでは大型ジビエ料理用のソースであるから、狩猟の女神という意味合いが強い。

3)
4)
5)
6)
7)

noisette ノワゼット。

デュクセル・セッシュ(第 2 章ガルニチュール)を用いることからこの名称が用いられている。
ヨモギ科のハーブ。ソース・シャスール訳注参照。
infuser(アンフュゼ)煮出す、煎じる、の意。なおハーブティはこの派生語 infusion(アンフュジオン)と呼ぶ。
Financier 徴税官(財務官)風の意。フランス革命以前の徴税官は、王に代わって徴税を行なう大貴族が就く役職であり、膨大
な利権によりきわめて裕福であったという。このソースと組み合わせるガルニチュール・フィナンシエールが、雄鶏のとさか
と睾丸、仔羊の胸腺肉、トリュフなどの比較的入手困難あるいは高級とされる食材で構成されていることが名称の由来と思わ
れる。ブリヤ=サヴァランは『美味礼讃』(味覚の生理学)において、徴税官たちは旬のはしりの食材を真っ先に食べられる、
いわば特権階級だと述べている。なお、カレーム『19 世紀フランス料理』においては、ソースとガルニチュールを分離せず、
「ラグー・アラ・フィナンシエール」として採りあげられているが、全ての素材を別々に加熱調理してソースと合わせるもの
であり、いわゆる「煮込み」とは呼びがたいものとなっている。フランス料理の影響が比較的強かった北イタリアにこの原型
に近いと思われるラグー「ピエモンテ風フィナンツィエラ」がある。鶏のとさか、肉垂、睾丸、鶏レバーおよび仔牛の胸腺肉
などを煮込んだものだが、レシピを読む限りにおいては比較的庶民的あるいは農民的料理に変化したものと思われる (cf. Anna
Gosetti della Salda, Le Ricette Regionali Italiane, Milano, Solares, 1967, p.57.)。ちなみに焼き菓子のフィナンシエ financier も同
語源だが、何故その名称になったかは不明。
8) 料理名では、いわゆる「ハーブ」についてかつて fines herbes の表現が多く用いられた。だが、こんにちでは特定のハーブ名を
ソースや料理名に添えて言うことが多い。例えば Côtelette de veau au thym コトレットドヴォオタン (仔牛の骨付き背肉、タイ
ム風味)、や Filet de bar poêlé, compote de tomate au basilic フィレドバールポワレコンポットートドトマトバジリック(スズキ
のフィレとトマトのコンポート、バジル風味)など。また、栽培レベルで「香草、ハーブ」の総称としては herbes aromatiques
(エルブザロマティック)、あるいはたんに aromatiques(アロマティック)が一般的。

18
油脂を取り除く1)
さらに赤ワイン 1/2 L と、魚のフュメ 1/2 L を加
える。ソースの表面に浮いてくる不純物を徹底
的に取り除き2) 、丁度いい濃さになるまで煮詰
める。
これを布で漉し、静かに混ぜながら、アンチョ
ヴィのエッセンス大さじ 1 杯とバター 150 g を
加えて仕上げる。
……サーモン、鱒料理用。
【原注】このソースはもともとカレームが「ジェ
3) と名付けたものだが、その後ルキュ
ノヴァ風」
レ、グフェ4) が立て続けに「ジュネーヴ風」の
名称を用いた。だが、ジュネーヴは赤ワインの
産地ではないから理屈としてはおかしい5) 。
間違っているとはいえ、ジュネーヴ風という
名称で定着してしまっているので、本書でも
そのままにしている。だが、ジュネーヴ風であ
れジェノヴァ風であれ、カレーム、ルキュレ、
デュボワ、グフェはいずれもこのソースに赤ワ
インを用いるよう指示している。つまり赤ワイ
ンを用いることがこのソースのポイント。

ソース・ゴダール6)

Sauce Godard

シャンパーニュまたは辛口の白ワイン 4 dL に
ハム入りの細かく刻んだミルポワ、ソース・
ドゥミグラス 1 L とマッシュルームのエッセン
ス 2 dL を加える。弱火に 10 分かけ、シノワ7)
で漉す。

I.

ソース

Sauces

2/3 量になるまで煮詰め、布で漉す。
……ガルニチュール ゴタール用。

ソース・グランヴヌール8)

Sauce Grand-Veneur

大型ジビエのフュメで澄んだ色合いに作った
ソース・ポワヴラードに、ソース 1 L あたり野
うさぎの血 1 dL をマリネ液 1 dL で薄めたもの
を加える。
火をごく弱くして、血が沸騰しないよう気をつ
けながら数分間煮る。布で漉す。

ソース・グランヴヌール(エスコフィエ流)

Sauce Grand-Veneur (Procédé Escoffier)
軽く仕上げたソース・ポワヴラード 1 L あたり
グロゼイユのジュレ大さじ 2 杯と生クリーム 2
1/2 dL を加える。
……上記 2 つのソースは鹿、猪などの大きな塊
肉の料理に用いる。

ソース・グラタン9)

Sauce Gratin

白ワインと、このソースを合わせる魚のアラな
どでとった魚のフュメ各 3 dL にエシャロット
のみじん切り大さじ 1 1/2 杯を加え、半量以下
になるまで煮詰める。
デュクセル・セッシュ大さじ 3 杯と、魚料理用
ソース・エスパニョルまたはソース・ドゥミグ
ラス 5 dL を加える。5〜6 分間煮立たせる。提
供直前に、パセリのみじん切り大さじ 1/2 を加
えて仕上げる。

1) dégraisser デグレセ。レードルなどを用いて浮いてきた余計な油脂を取り除く作業。
2) dépouiller デプイエ ≒ écumer エキュメ。
3) Sauce à la génoise au vin de Bordeaux ボルドー産ワインを用いたジェノヴァ風ソース (『19 世紀フランス料理』第 3 巻、80 頁)。
本書のこのレシピと同様に魚料理用ソースだ。ボルドーの赤ワインにみじん切りにして下茹でしたマッシュルーム、トリュフ、
エシャロットを加えてオールスパイスとこしょう少々を入れ、適度に煮詰める。ソース・エスパニョルと赤ワインを加え、湯
煎にかけておく。提供直前にバター少量を加えて仕上げる、というもの。本書においてこのソースを「原型」とするのには疑
問が残るところだろう。
4) グフェ『料理の本』
(1867 年)の 420 ページにあるジュネーヴ風ソースは、薄切りにした玉ねぎ、エシャロット、粗挽きこしょ
う、にんにく、バターを鍋に入れて色付くまで炒め、そこにブルゴーニュ産赤ワインを注ぐ。弱火で玉ねぎに火が通るまで煮
る。ソース・エスパニョルと仔牛のブロンドのジュを加えて煮詰め、布で漉す。提供直前にマデイラ酒の風味を加えて茹でた
トリュフのみじん切りとアンチョビバターを加える、というもの。赤ワインと玉ねぎ、仕上げにアンチョビを加える点は共通
しているが、グフェのが肉料理用であるのに対して、本書のこのソースは明らかに魚料理用であり、まったく同じソースと呼
べるとは言い難い。
5) 料理名に冠された地名は、由来が明確にあるものがある一方で、まったく意味不明か、あるいはいい加減な思い付きで付けら
れたのではないかとさえ思われるものも少なくない。(à la) russe「ロシア風」や (à la) moscovite「モスクワ風」などはロシア
料理起源か、あるいは 18 世紀末〜19 世紀前半にかけてロシア帝国の宮廷や貴族がこぞってフランスから料理人を招聘し、帰
国した彼らが創案した料理などはある程度しっかりとした由来がわかるものも多い。一方で、(à l’)espagnole「スペイン風」(à
l’)italienne「イタリア風」(à la) romaine「ローマ風」(à la grecque)「ギリシア風」(à l’)allemande「ドイツ風」(à l’)hollandaise
「オランダ風」などは由来の不明なケースが非常に多い。ソース・エスパニョルなどはその典型例とも言うべきものだろう。こ
の原注では由来に非常にこだわっているが、そもそもカレームのレシピは上述のように「ボルドー産ワインを用いたジェノバ
風ソース」であるから、赤ワインの産地かどうかということは実はさしたる問題にはならない。重要なのは後半の、赤ワイン
を用いることがこのソースのポイントということ。
6) ガルニチュール・ゴダールの構成要素がガルニチュール・フィナンシエールとよく似ている点などから、おそらくは 18 世紀の
徴税官(つまりフィナンシエ)であり作家としても活動したクロード・ゴダール・ドクール Claude Godard d’Aucour(1716〜
1795)の名を冠したものと考えられる。なお、底本とした現行版(第四版)では最後が d ではなく t となっているが、初版か
ら第三版にいたるまで d となっており、現行版は明らかな誤植。
7) ソース・エスパニョル訳注参照。
8) 王家や貴族に仕える狩猟長のことを grand-veneur(グランヴヌール)と呼ぶ。
9) 魚のグラタン用ソースだが、グラタンの技術的ポイントについては第 7 章「肉料理」のグタランの項目参照。

19

ブラウン系の派生ソース
……舌びらめ、メルラン1) 、バルビュ2) のフィレ
などのグラタン用。

ソース・アシェ3)

Sauce Hachée

玉ねぎの細かいみじん切り 100 g と、エシャ
ロットの細かいみじん切り大さじ 1 1/2 杯をバ
ターで色付かないよう炒める。ヴィネガー 3 dL
を注ぎ、半量まで煮詰める。ソース・エスパニョ
ル 4 dL とトマトソース 1 1/2 dL を加える。5〜
6 分煮立たせる。
ハムの脂身のない部分を細かく刻んだもの大さ
じ 1 1/2 杯と小ぶりのケイパー大さじ 1 1/2 杯、
[デュクセル・セッシュ] 大さじ 1 1/2 杯、パセ
リのみじん切り大さじ 1/2 杯を加えて仕上げる
……このソースはソース・ピカントと等価のも
のと考えていい。用途も同じ。
魚料理用ソース・アシェ

Sauce Hachée maigre

上記と同様に、玉ねぎとエシャロットを色付か
ないようバターで炒め、ヴィネガーを注いで煮
詰める。
魚のクールブイヨン 5 dL を注ぎ、茶色いルー
45 g またはブールマニエ 50 g でとろみを付け
る。弱火で 8〜10 分間煮込む。
提供直前に、細かく刻んだハーブミックス大さ
じ 1 杯とデュクセル・セッシュ大さじ 1 1/2 杯、
小粒のケイパー大さじ 1 1/2 杯、アンチョヴィ
ソース大さじ 1/2 杯とバター 60 g、または 80〜
100 g のアンチョヴィバターを加えて仕上げる。
……エイのような、あまり高級ではない茹でた
魚4) 用。

ソース・ユサルド5)

Sauce Hussarde
玉ねぎ 2 個とエシャロット 2 個を細かくみじ
ん切りにして、バターで色よく炒める。白ワイ
ン 4 dL を注ぎ、半量になるまで煮詰める。ソー
ス・ドゥミグラス 4 dL とトマトピュレ大さじ 2

1)
2)
3)
4)

5)

6)
7)
8)

9)
10)
11)

杯、白いフォン 2 dL、生ハムの脂身のないとこ
ろ 80 g、潰したにんにく 1 片、ブーケガルニを
加える。弱火で 25〜30 分煮込む。
ハムを取り出して、ソースをスプーンで押すよ
うにして布で漉す。
火にかけて温め、小さなさいの目6) に刻んだハ
ムと、おろしたレフォール7) 少々、パセリのみ
じん切りをたっぷり 1 つまみ加えて仕上げる。
……牛、羊肉のグリルまたは串を刺してロース
トしてアントレ8) として供する際に用いる。

イタリア風ソース9)

Sauce Italienne

トマトの風味の効いたソース・ドゥミグラス
3/4 L に、デュクセル・セッシュ大さじ 4 杯と、
加熱ハムの脂身のないところを小さなさいの目
に切ったもの 125 g を加える。5〜6 分間煮る。
提供直前に、パセリとセルフイユ、エスゴラゴ
ンのみじん切り大さじ 1 杯を加えて仕上げる。
……いろいろな肉料理に合わせる。
【原注】このソースを魚料理に合わせる場合、ハ
ムは使わずに魚のフュメを煮詰めて加える。

とろみを付けたジュ

Jus lié à l’Estragon

エストラゴン風味

仔牛のフォンまたは鶏のフォンに、エストラゴ
ン 50 g を加えて香りを煮出し10) たもの。
布で漉してから、アロールート11) または、でん
ぷん 30 g でとろみを付ける。
……白身肉のノワゼットや家禽のフィレなどに
添える。

とろみを付けたジュ

Jus lié tomaté

トマト風味

仔牛のフォン 1 L あたりトマトエッセンス 3 dL
を加え、4/5 量まで煮詰める。
……牛、羊肉料理用。

リヨン風ソース

Sauce Lyonnaise
中位の大きさの玉ねぎ 3 個をみじん切りにし、

タラの近縁種。
鰈の近縁種。この場合のフィレはいわゆる「五枚おろし」にしたもの。
細かく刻んだもの、の意。
原文 poissons bouillis。このフランス語の表現だと加熱する際に沸騰させているニュアンスがあるが、本書の「魚料理」の章に
おいて、魚を塩を加えて茹でる、あるいはクールブイヨンで煮る際に、沸騰しない程度の温度で加熱(ポシェ pocher)すべき
と強調されている。この表現は初版からのものであり、恐らくはこのソースの部分を実際に執筆した者と、魚料理の説明部分
を執筆した者が異なることによるわかりにくさ、という可能性も排除出来ない。いずれにしても、このソースの場合は、合わ
せる魚をクールブイヨンで沸騰しない程度の温度で加熱(ポシェ)し、そのクールブイヨンの一部をソースに加えていること
から、単に「茹でた魚」と言っても、本書における魚の加熱方法に則った調理をすべきと解されよう。
もとはハンガリーで農家 20 戸につき 1 人の割合で招集された騎兵 hussard を指す。この語は 16 世紀まで遡ることが出来るが、
のちに「乱暴者」といったニュアンスでも使われるようになった。à la hussarde は「乱暴に、粗野に」の意味でも用いられる
が、料理においてはレフォールを使ったものに名付けられることが多い。
brunoise ブリュノワーズ。
raifort(レフォール)いわゆる西洋わさび、ホースラディッシュ。
通常、ローストは料理区分としてアントレに含められることはないが、牛フィレは牛の部位のなかでも比較的小さいものとし
て、まるごと 1 本のローストであっても原則的にはアントレに分類される。このソースを用いる「牛フィレ ユサルド」は牛
フィレの塊に串を刺してローストし、ポム・デュシェスとマッシュルームを合わせる。
この「イタリア風」には根拠も由来も見出すことが出来ない。地名、国名を料理名に冠した代表例のひとつ。
imfuser アンフュゼ。
コーンスターチで代用する。

20
バターでじっくり、ごく弱火でブロンド色にな
るまで炒める。白ワイン 2 dL とヴィネガー 2
dL を注ぐ。1/3 量まで煮詰め、ソース・ドゥミ
グラス 3/4 L を加える。5〜6 分かけて表面に浮
いてくる不純物を丁寧に取り除き1) 、布で漉す。
【原注】このソースを合わせる料理によっては、
ソースを布で漉さずに玉ねぎを残してもいい。
ソース・マデール

Sauce Madère

ソース・ドゥミグラスを煮詰め2) 、火から外し
て、ソース 1 L あたりマデイラ酒 1 dL の割合で
加え、普通の濃度にする。
ソース・マトロット3)

Sauce Matelote

魚をポシェするのに使った赤ワイン入りの魚用
クールブイヨン 3 dL にマッシュルームの切り
くず 25 g を加え、1/3 量になるまで煮詰める。
煮詰めたら魚料理用ソース・エスパニョル 8 dL
を加えてひと煮立ちさせる。布で漉し、バター
150 g とごく少量のカイエンヌの粉末を加えて
仕上げる。
ソース・モワル4)

Sauce Moelle

ソースの作り方はボルドー風ソースとまったく
同じだが、バターを加えるのは何らかの野菜料
理に添える場合のみであり、その場合のバター
の量は通常どおりとするこ。
どんな場合にせよ、仕上げに、小さなさいの目
に切ってポシェしておいた骨髄をソース 1 L あ
たり 150〜180 g および刻んで下茹でしたパセ
リの葉小さじ 1 杯を加える。
モスクワ風ソース5)

Sauce Moscovite

I.

ソース

Sauces

大型ジビエのフュメで作ったソース・ポワヴ
ラードを 3/4 L 用意する。提供直前にマラガ酒
1 dL とジェニパーベリーを煎じた汁 7 cL6) 、焼
いた松の実かスライスして焼いたアーモンド
40 g、大きさを揃えてぬるま湯でもどしておい
たコリント産干しぶどう 7) 40 g を加えて仕上
げる。
……大型ジビエ8) の塊肉の料理用。

ソース・ペリグー9)

Sauce Périgueux

やや濃いめに煮詰めたソース・ドゥミグラス
3/4 L に、トリュフエッセンス 1 1/2 dL と細かく
刻んだトリュフ 100 g を加える。
……いろいろな肉料理、タンバル、温製パテに
合わせる。

ソース・ペリグルディーヌ10)

Sauce Périgourdine

ソース・ペリグーのバリエーション。トリュフ
を細かく刻むのではなく、オリーブ形か小さな
真珠のような形状にナイフで成形11) したもの
を加える。トリュフを厚めにスライスして加え
る場合もある。

ソース・ピカント12)

Sauce Piquante
白ワイン 3 dL と良質のヴィネガー 3 dL にエ
シャロットのみじん切り大さじ 2 1/2 杯を合わ
せて半量に煮詰める。
ソース・エスパニョル 6 dL を加え、浮いてくる
不純物を取り除きながら13) 10 分間煮る。
火から外し、コルニション14) 、パセリ、セルフ
イユ、エストラゴンを細かく刻んだもの大さじ
2 杯を加えて仕上げる。

1) dépouiller デプイエ。現代ではエキュメと呼ぶ現場が多い。
2) ソース・ドゥミグラスは既に煮詰めて仕上がった状態のものなので、9 割程度にまでしか煮詰めないことに注意。
3) 水夫風、船員風、の意。トゥーレーヌ地方の郷土料理 Matelote d’anguille(マトロットダンギーユ)うなぎの赤ワイン煮込み、

4)
5)

6)
7)
8)
9)
10)
11)
12)
13)
14)

1)

が有名。とはいえ本書にも数種のレシピが収録されているように、赤ワイン煮込みにとどまらず、マトロットの名称を持つ料
理は他にも複数存在する。
moelle 骨髄のこと。
moscovite(モスコヴィット)すなわちモスクワ風の名称を持つ料理や菓子は多い。18 世紀後半から 19 世紀前半にかけて、ロ
シアの宮廷や貴族らの間でフランスの食文化が流行し、多くのフランス人料理人が招聘され、彼らはロシア料理のレシピをフ
ランスに持ち帰った。クーリビヤックなどが代表的な例だろう。また、19 世紀後半になると、とりわけフランス料理において
もロシア料理からの影響が多く見られるようになる。キャビアとウォトカを食前に愉しむのが流行したのもその時代からであ
る。フランスとロシアの食文化は相互に影響関係にあったと言えよう。
1 cL(センチリットル)= 10 mL、つまりこの場合は 70 mL。
小粒で黒いギリシア産干しぶどう。
venaison ヴネゾン。ジビエのうち大型のものを指す。実際はノロ鹿や猪を指すことがほとんど。
トリュフの産地として有名なペリゴール地方の町の名。
périgourdin(e)(ペリグルダン/ペリグルディーヌ)ペリゴール地方風の意。
tourner トゥルネ。包丁を持っている側の手は動かさずに材料を回すようにして形を整えること。
piquant(e)(ピカン、ピカント)一般的には唐辛子などが「辛い」の意だが、このソースでは唐辛子の類は使われておらず、む
しろ酸味の効いたソースと言えよう。古くからのソース名。
dépouiller デプイエ。エキュメ écumer と呼ぶ現場も多い。
専用品種のきゅうりを小さなうちに収穫して酢漬けにしたもの。同様のピクルス用きゅうりとしてガーキンスという品種系
統があるがもっぱらアメリカのハンバーガーに挟まれるようなサイズで収穫して漬けたものであり、フランス料理では用い
ない。
bouilli 茹で肉。もとはブイヨンをとった後の茹で肉のことを指した。単純に「茹でた肉」としてもいいのだが、17 世紀にはこ
の食べ方が流行したという歴史もあり、野菜などと共に、あるいは他の素材なしに茹でた肉はたんに「ブイイ」bouilli と呼ば

21

ブラウン系の派生ソース
……豚肉のグリル焼き、ブイイ1) 、ローストに
よく合わせるソース。牛肉のブイイや牛や羊の
エマンセにも合わせることが出来る。

ソース・ポワヴラード2) (標準)

Sauce Poivrade ordinaire

細かいさいの目に切ったにんじん 100 g と玉ね
ぎ 80 g、刻んだパセリの茎、タイム少々、ロー
リエの葉少々からなるミルポワを油で色付くま
で炒める。
ヴィネガー 1 dL とマリナード 2 dL を注ぎ、1/3
量になるまで煮詰める。ソース・エスパニョル
1 L を注ぎ、約 45 分間煮込む。
ソースを漉す 10 分前に、大粒のこしょう 8 個
を叩きつぶして加える。ソースにこしょうを入
れてからの時間がこれ以上少しでも長いと、こ
しょうの風味が支配的になり過ぎることになる
ので注意。
漉し器で香味素材を軽く押すようにして漉す。
マリナード3) 2 dL でソースをのばす。火にかけ
て 35 分間、所定の量4) になるまで煮詰めなが
ら、表面に浮いてくる不純物を徹底的に取り
除く5) 。
さらに布で漉し、バター 50 g を加えて仕上
げる6) 。

ソース・ポワヴラード(ジビエ用)

Sauce Poivrade pour Gibier

細かいさいの目に切ったにんじん 125 g と玉ね
ぎ 125 g、タイムの枝と鳥類ではないジビエ7)
の端肉 1 kg からなるミルポワを油で色よく炒
める。
ミルポワが色付いてきたら、鍋の油を捨てる。
ヴィネガー 3 dL と白ワイン 2 dL を注ぎ、完全

に煮詰める。
ソース・エスパニョル 1 L とジビエの茶色い
フォン 2 L、マリナード 1 L を加える。
鍋に蓋をして弱火にかける。可能ならオーブン
がいい。3 時間半〜4 時間加熱する。
ソースを漉す 8 分前に、大粒のこしょう 12 個
を叩きつぶして加える。
漉し器で材料を押すようにして漉す。
これをジビエのフォン 1/4 L とマリナード 1/4 L
でのばし、再び火にかけて 40 分間、表面に浮
いてくる不純物を丁寧に取り除きながら、1 L
になるまで煮詰める。
これを布で漉し、バター 75 g を加えて仕上
げる。
【原注】一般的にはジビエ料理のソースにはバ
ターを加えないことになっているが、本書では
軽くバターを加えることを推奨する。そうする
と、ソースの色の赤みは薄まるが、繊細で滑ら
かな口あたりに仕上がる。

ソース・ポルト

Sauce au Porto
マデイラ酒ではなくポルト酒を用いて、ソー
ス・マデールと同様に作る。

ポルトガル風8) ソース

Sauce Portugaise
(仕上がり 1 L 分)
大きめの玉ねぎ 1 個を細かくみじん切りにす
る。鍋に油を熱し、強火で玉ねぎを炒める。玉
ねぎがブロンド色になったら、皮を剥いて種子
を取り除き、粗みじん切りにしたトマト 750 g
と、つぶしたにんにく 1 片、塩、こしょうを加
える。トマトの酸味が強い場合は砂糖少々も加

れる。

2) このソースは遅くとも 16 世紀まで遡ることが出来る。1505 年に出版された『フランス語版プラティナ』が poivrade というフ
ランス語の初出。この本において「ジビエ用こしょうのソース、ポワヴラード」Saulce de poyvre ou poyvrade pour saulvagie

3)
4)
5)
6)
7)
8)

1)

としてレシピが見られる。パンをよく焼いてヴィネガーに浸してすり潰す。水でもどした干しぶどうと獣の血を加えて混ぜ、
玉ねぎと未熟ぶどう果汁、パンを浸した残りのヴィネガーを加えて漉し器か布で漉す。これを鍋に入れ、こしょう、生姜、シ
ナモンを入れて炭火の上で 30 分程煮込む。獣の肉を獣脂を熱したフライパンで焼き、皿に盛る。上からポワヴラードをかけ
て供する、という内容(f.LXII)。またこの本には、魚料理用のポワヴラードも掲載されている。ただし、これが現代まで続く
ソース・ポワヴラードの原型と捉えるのは早計に過ぎる。ここで注目すべきは、最終的に肉あるいは魚のような主素材とソー
スが一体化したものは中世〜ルネサンス期にはポタージュと呼ばれていたのに対し、ここではソースを別のものと捉えている
点である。ポワヴラードという語そのものは「こしょうを効かせたもの」という意味に過ぎず、1660 年刊ピエール・ド・リュ
ヌ Pierre de Lune 『新フランス料理』における Poivrade de pigeonneaux 若鳩のポワヴラードは、背開きにした若鳩を平たく
のばし、塩、こしょうをして弱火でグリルする。薔薇の香りもしくはにんにく風味のヴィネガーを添えて供する、というもの
(p.190)。ピエール・ド・リュヌのレシピにおいてソースに相当するものはヴィネガーであり、むしろ味付けでこしょうを効か
せているということが料理名の根拠となっているに過ぎない。ちなみに、生食可能な小さなサイズのアーティチョークも古く
からポワヴラードと呼ばれている。
ヴィネガーやワイン、香味素材、塩などを合わせて肉を漬け込む液体。マリネ液と呼ぶこともある。
明記されていないが、ここでは約 1 L。
dépouiller デプイエ。現代では écumer エキュメの語を使う現場が多い。
現代では、バターでモンテする monter au beurre という表現を用いる現場も多い。
gibier à poil 逐語訳すると「毛の生えているジビエ」すなわち」鹿、猪、野うさぎなどを指す。
日本でもフランス語のままソース・ポルチュゲーズと呼ばれることは多い。フランス料理においてポルトガル風の名称を付け
た料理はトマトをベースとしたものがほとんど。ただし、トマトを使うからといってポルトガル風の名が必ず付くというわけ
ではない。
仕上がりの全体量が 1 L なので、トマトソースを加える量は、グラスドヴィアンドを加える前の段階で 0.9 L 程度になるよう調
整する。

22
える。鍋に蓋をして、弱火で煮る。トマトエッ
センス少々と、薄めに作ったトマトソースを適
量1) 、温めて溶かしたグラスドヴィアンド 1 dL、
新鮮なパセリの葉のみじん切り大さじ 1 杯を加
えて仕上げる。

I.

ソース・ロベール6)

Sauce Robert
(仕上がり 5 dL 分)
大きめの玉ねぎを細かくみじん切りにし、バ
ターで色付かないよう強火でさっと炒める。
白ワイン 2 dL を注ぎ、1/3 量になるまで煮詰め
る。ソース・ドゥミグラス 3 dL を加え、弱火で
10 分間煮る。
シノワ7) で漉し(これは任意。漉さなくてもい
い)
、火から外して、粉砂糖 1 つまみとマスター
ド大さじ 1 杯を加えて仕上げる。

Sauce Provençale

ソース・ロベール・エスコフィエ

Sauce Robert Escoffier

このソースは完成品が市販されている8) 。
温かい料理にも冷たい料理にもよく合う。温か
い料理に合わせる場合は、同量の仔牛の茶色い
フォンと混ぜること。
……豚、仔牛、鶏、魚のグリル焼きに特によく
合う。

ソース・レジャンス4)

Sauce Régence

ライン産ワイン 3 dL に、細かく刻んであらかじ
め火を通しておいたミルポワ 1 dL と生トリュ
フの切りくず 25 g を加え、半量になるまで煮詰
める。トリュフのシーズンでない時季はトリュ
フエッセンスを使う。ソース・ドゥミグラス 8
dL を加え、数分間弱火にかけて浮いてくる不

Sauces

純物を丁寧に取り除き5) 、布で漉す。
……牛、羊の大きな塊肉の料理用。

プロヴァンス風ソース
大ぶりのトマト 12 個の皮を剥き、つぶして種
子は取り除いて、粗く刻む2) 。ソテー鍋に 2 1/2
dL の油を熱し、そこにトマトを入れる。塩、こ
しょう、粉砂糖 1 つまみで味を調える。しっか
りつぶしたにんにく(小)1 片と細かく刻んだ
パセリ小さじ 1 杯を加える。
蓋をして弱火で 30 分間程、煮溶かす。
【原注】このソースについてはさまざまな解釈
があるが、本書ではブルジョワ料理における本
物の「プロヴァンス風ソース」のレシピ、つま
りはトマトの「フォンデュ」3) 、を収録した。

ソース

ローマ風9) ソース

Sauce Romaine
砂糖 50 g を火にかけてブロンド色にカラメリ
ゼ10) する。これをヴィネガー 1 1/2 dL でのばす。
砂糖を完全に溶かし込めたら、ソース・エスパ

2) concasser コンカセ。
3) 加熱によって溶かしたもの、の意。このレシピはあくまでも「ソース」であり、料理を作る際のアパレイユ≒ パーツとしての
いわゆるトマトフォンデュについては第 2 章ガルニチュール、温製ガルニチュール用のアパレイユなど、の項を参照。
4) Régence(レジョンス)はこの場合固有名詞としての「摂政時代」を指す。すなわちオルレアン公フィリップがルイ 15 世の幼
少期に摂政を務めていたた時代(1715〜1723 年)のこと。オルレアン公は美食家として有名で、とりわけシャンパーニュを好
んだという。この時期はフランス宮廷料理の絶頂期でもあった。

5) dépouiller デプイエ ≒ écumer エキュメ。
6) この名称のソースは古くからある。文献で初めて出てくるのは 16 世紀フランソワ・ラブレーの小説『ガルガンチュアとパン
タグリュエル』。その「第四の書」で料理人の名が大量に列挙される章がある。そのうちの多くは架空の人名だが、その中の
ロベールという料理人がこのソースを考案したと書いている。ただし、具体的にどのようなソースかまでは描写されておらず
「うさぎのロースト、鴨、加工していない豚肉、卵のポシェ、塩漬けのメルラン [鱈の近縁種]、その他まことに多くの料理に欠
かせないソース」と書いてあるのみ(第 40 章)
。どんな料理にも合うと書かれてしまうとむしろ特徴を捉え難くなってしまう。
いずれにせよ、遅くとも 16 世紀には「ソース」として成立していたと考えられる。また、17 世紀のシャルル・ペロー著『物語
集』の「眠れる森の美女」においても、このソース名が登場する一節がある。このように 16 世紀以降多くの文学作品をはじめ
とする文献にこのソース名は見られる。レシピとしては、1651 年刊ラ・ヴァレーヌ『フランス料理の本』における「豚腰肉
ソース・ロベール添え」がもっとも古いもののひとつだろう。概略は、豚腰肉を、ヴェルジュ [未熟ぶどう果汁、中世料理にお
いてよく用いられた] とヴィネガー、セージを振り掛けながらローストする。下に置いた脂受け皿に焼いた豚肉から流れ落ち
た脂がたまるので、これを使って玉ねぎをこんがり炒める。炒めた玉ねぎの上に豚後ろ身を載せ、豚腰肉をローストする際に
かけたのと同じソースをかける。このソースはソースロベールと呼ばれている (p.51)。また、干鱈のソース・ロベール添えの
場合は、バターとヴェルジュ少々、マスタードで作るが、ケイパーやシブール [葱] を加えてもいい (p.202) とあり、同じ名称
のソースとは見做しがたい。18 世紀以降のソース・ロベールは多かれ少なかれいずれもマスタードを加える点が共通している
ので、名称が先にあり、内容が時代とともにはっきりしたものになっていたのだろう。
7) 主として金属製で円錐形に取っ手の付いた漉し器。清朝の高級役人がかぶっていた帽子の形状から「中国の」を意味する
chinois の名称となったと言われている。
8) ソース・ディアーブル・エスコフィエ訳注参照。
9) フランス料理における「ローマ風」の名称は「イタリア風」と同様にとくに根拠や由来が見出せないものが多い。このソース
の場合は松の実を使うところから、20 世紀前半に活躍したイタリアの作曲家レスピーギのローマ三部作のうちの「ローマの
松」を想起させるが、残念ながらこの曲が作曲されたのは 1924 年、つまり本書より後なので関係はない。だが、松の実を採る
イタリアカサマツは、アッピア街道の並木などで有名なように、イタリアとりわけローマ近辺において多く見られる(だから
こそレスピーギが曲の題材にしたわけだが)
。その意味においては、松の実を使っているということがこのソース名の根拠と見
ることも不可能ではないだろう。しかしながら、それを証明する文献、史料があるかは不明。
10) 焦がさないように弱火で混ぜながら熱で砂糖を溶かしていく。

ブラウン系の派生ソース
ニョル 6 dL とジビエのフォン 3 dL を加える。
これを 3/4 量弱まで煮詰める。布で漉し、松の
実 20 g をローストしたものと、大きさが揃る
よう選別したスミヌル干しぶどう1) 20 g および
コリント干しぶとう2) 20 g を温湯でもどしたも
のを加えて仕上げる。
【原注】上記のとおり作る場合、このソースは大
型ジビエ料理用だが、ジビエのフォンではなく
通常の茶色いフォンを使えば、マリネした牛、
羊肉の料理に合わせることも可能。

ルーアン風3) ソース

Sauce Rouennaise
(仕上がり 5 dL 分)
ボルドー風ソース 4 dL を用意する。ただし、良
質な赤ワインを使って作ること。(ボルドー風
ソース参照)。
中位の大きさの鴨のレバー 3 個を裏漉しする。
こうして出来たレバーのピュレをソースに加
え、沸騰させない程度の温度で火を通す4) 。絶
対に沸騰させないこと。沸騰させてしまうと途
端にレバーのピュレが粒状になってしまう。
布で漉し、塩こしょうを効かせる。
このソースの特質……エシャロットを加えた赤
ワインを煮詰めたものに鴨の生レバーのピュレ
を加えたもの。
……ルーアン産鴨のローストには、いわば必須
といってもいいソース。

ソース・サルミ5)

Sauce Salmis

1)
2)
3)
4)
5)

23
ソースというよりはむしろクリ6) と呼んだほう
がいいこのソースの作り方はどんな場合も一点
を除いて変わることがない。それは、このソー
スを合わせるジビエ(鳥)の種類によって、つ
まり普通に肉料理として扱えるジビエか、肉断
ち7) の際の食材として扱えるもの8) かで、どん
な液体を用いるかということだけだ。
細かく刻んだミルポワ 150 g をバターでじっく
り色付くまで炒める。そこに、その料理で用い
ているジビエの手羽と腿の皮、ガラを細かく刻
んで加える。
白ワイン 3 dL を注ぎ、1/3 量まで煮詰める。ソー
ス・ドゥミグラス 8 dL を加えて、約 45 分間弱
火で煮込む。漉し器で漉すが、その際に香味野
菜とガラのエキス9) が得られるよう、強く押し
絞ってやること。こうして出来たクリを、この
ソースを合わせる鳥と同種のものでとったフォ
ン 4 dL で薄める。
ジビエが肉断ちの食材と見做されるもので、な
おかつそれを厳格に守って作らなければならな
い場合は、このときフォンの代わりにマッシュ
ルームの茹で汁を用いればいい。
約 45 分〜1 時間、弱火にかけて浮いてくる不純
物を丁寧に取り除いてやる10) 。さらにソースを
2/3 以下の量になるまで煮詰める。これにマッ
シュルームの茹で汁とトリュフエッセンスを適
量加えて丁度いい濃度になるよう調製する。
布で漉し、軽くバターを加えて仕上げる11) 。

トルコ産の白い干しぶどう。
ギリシア産の黒い小粒の干しぶどう(モスクワ風ソース参照)
。
ルーアンは野生の colvert コルヴェール、いわゆる青首鴨を家禽化したルーアン鴨の産地として有名。
pocher ポシェする。
語源は「ごった煮」を意味する salmigondis とするのが定説のようだが、salmigondis がその意味で用いられるようになったの
は 19 世紀以降と考えられ、それ以前は ragoût ラグーと同義と見なされていた。ラグーはその語源的意味が「食欲をそそるも
の」であり、17 世紀に、それまでポタージュと呼ばれていた煮込み料理についてラグーの名称をつけることが流行した。ま
た、salmigondis の古い語形のひとつ salmigondin は 16 世紀の小説家フランソワ・ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュ
エル』の「第四の書」において用いられているが、日本語の「ごった煮」のニュアンスとはかなり違う意味で、美味な料理の
ひとつとして挙げられている。いずれにしても、salmigondin, salmigondis というラグーの別称が、ある時期から鳥類を材料に
したものに限定されるようになったことは確かで、カレームの『19 世紀フランス料理』では salmis の語で、野鳥などのラグー
を呼んでいる。例えば「ベカスのサルミ」「ペルドローのサルミ」など。
6) coulis < couler クレ「流れる」から派生した語だが、料理用語としては、やや水分の多いピュレと理解するといい。日本では
「クーリ」と呼ぶことも多い。ここでは二つの解釈が可能で、ひとつはポタージュ・クリに近いという意味。もうひとつは「昔
ながらのソース」の意。後者の場合、エスコフィエが「古典料理」と呼ぶ 17、18 世紀においてソースのことをクリと呼んでい
たのを踏まえていると考えられる。
7) 小斉のこと。カトリックの習慣として(厳密な教義ではない)四旬節(復活祭までの 46 日間)や毎週金曜などに行なわれる、
肉食を断つ行為のこと。
8) ある種の水鳥はイルカと同様に魚と同等のものと見做され、小斉の場合にも食材として認められていた。具体的にはハシヒロ
鴨、オナガ鴨、サルセル鴨など。もっとも、水鳥を肉断ちの際の食材として扱うというのは一種の詭弁ともいえなくないわけ
で、このソースを作る際に魚料理用ソース・エスパニョルをベースとしたソース・ドゥミグラスを使うとは考え難く、本文に
あるようにフォンの代用としてマッシュルームの茹で汁を用いるという指示を守るだけで、厳密に小斉の料理として成立する
レシピと言えるかは疑問の残るところだ。
9) 原文 quintessence(カンテソンス)。本来の意味は錬金術でいう「第五元素」。16 世紀の作家フランソワ・ラブレーは存命当時、
自著を筆名「カンテサンス抽出をなし遂げたアルコフリバス師」で出版していた時期がある。もっとも、このカンテサンスと
いう語自体は中世以来、料理において「エキス」「美味しさの本質」程度の意味でよく用いられた。
10) dépouiller デプイエ。現代では écumer エキュメの語を用いる現場が多い。
11) 原文は légèrement beurrer でありそのまま訳したが、現代の調理現場では monter au beurre バターでモンテする、という表現
がよく使われる。

24
【原注】仕上げの際に、ソース 1 L あたりバター
約 50 g を加えるが、これは任意。

ソース・トルチュ1)

Sauce Tortue
2 1/2 L の仔牛のフォンを鍋で沸かし、セージ 3
g、マジョラム 1 g、ローズマリー 1 g、バジル 2
g、タイム 1 g、ローリエの葉 1 g、パセリの葉
1 つまみ、マッシュルームの切りくず 25 g を投
入する。蓋をして 25 分間煎じる。こうして煎
じた液体を漉す 2 分前に大粒のこしょう 4 個を
加える。
布で漉し、ソース・ドゥミグラス 7 dL にトマ
トソース 3 dL を合わせたものに、上記で煎じ
た液体を、風味が際立つ程度に適量加える。3/4
量まで煮詰め、布で漉す。仕上げにマデラ酒 1
dL とトリュフエッセンス少々を加え、さらに
カイエンヌで風味を引き締める。
【原注】このソースはある程度まとまった量で
作る必要がある。カイエンヌを使う指示がある
からだ。それでも、カイエンヌはとても気をつ
けて量を加減する必要がある2) 。

ソース・ヴネゾン3)

Sauce Venaison

完全に仕上げた「ジビエ用ソース・ポワヴラー
ド」3/4 L に、グロゼイユのジュレ大さじ 3 杯強
を生クリーム 1 dL で溶いてから加える。
グロゼイユのジュレと生クリームを加えるの
は、鍋を火から外して、提供直前にすること。
……大型ジビエ料理用。

赤ワインソース

Sauce au Vin rouge
「赤ワインソース」という場合、煮詰めてから
ブールマニエでとろみを付けるブルゴーニュ風
の仕立てか、魚を煮るのに用いた赤ワインを使
うことが特徴である「ソース・マトロット」の
いずれかから派生したものなのは言うまでもな
い。もっとも、後者の場合はワインの風味は失
われてしまっていてソースの水気と味付けの意
味しか持っていないと言える。
両者どちらもまさしく「赤ワインソース」だが、
ブルゴーニュ風ソースとソース・マトロットは

I.

ソース

Sauces

それぞれ作り方も用途も違うから別々の名称
として、この「茶色い派生ソース」の節で説明
した。
筆者としては、本当の「赤ワインソース」は以
下のように作るものと考えている。
ごく細かく刻んだ標準的なミルポワ 125 g をバ
ターで炒める。良質の赤ワイン 1/2 L を注ぐ。
半量になるまで煮詰める。つぶしたにんにく 1
片、ソース・エスパニョル 7 1/2 dL を加え、12
〜15 分、火にかけて浮いてくる不純物を丁寧に
取り除く4) 。
布で漉し、バター 100 g とアンチョビエッセン
ス小さじ 1 杯、カイエンヌ 1 つまみを加えて仕
上げる。
……魚料理用ソース。

ソース・ザンガラ5) A

Sauce Zingara A

このソースは古典料理のガルニチュール・ザン
ガラとはまったく関係がない。むしろイギリス
料理に由来し、本書でもイギリス風ソースの節
において似たようなものをいくつか採り上げて
いる。
ヴィネガー 2 1/2 dL にエシャロットのみじん切
り大さじ 1 杯を加えて半量になるまで煮詰め
る。茶色いジュ 7 dL を注ぎ、バターで揚げたパ
ンの身 160 g を加える。弱火で 5〜6 分間煮る。
パセリのみじん切り大さじ 1 杯とレモン 1/2 個
分の搾り汁を加えて仕上げる。
ソース・ザンガラ B

Sauce Zingara B
白ワイン 3 dL とマッシュルームの茹で汁 3 dL

を合わせて 1/3 量になるまで煮詰める。
ソース・ドゥミグラス 4 dL とトマトソース 2
1/2 dL、白いフォン 1 dL を注ぐ。浮いてくる不
純物を徹底的に取り除きながら 5〜6 分火にか
ける。
仕上げに、カイエンヌ 1 つまみで風味を引き締
め、太さ 1〜2 mm の千切りにした6) ハム(脂身
のないところ)と赤く漬けた舌肉 70 g および
マッシュルーム 50 g、トリュフ 30 g を加える。
……仔牛料理、鶏料理用。

1) tortue(トルチュ)は海亀のこと。古くは海亀料理用のソースだったが、19 世紀以降は仔牛の頭肉料理に合わせるのが一般的に
なった。なお、tortu(e) という形容詞があり「曲がりくねった、(性格が)ひねくれた」という同音異義語があるが、このソー
スの由来とは無関係。

2) フランス料理において(というよりも伝統的かつ一般的なフランス人にとって)、唐辛子の辛さは嫌われる傾向が非常に強い。
3) Venaison(ヴネゾン)とはノロ鹿 chevreuil や猪 sanglier などの大型ジビエのこと。なおニホンジカやエゾジカは cerf(セー
ル)に分類され、フランス料理の食材としてはあまり高く評価されない傾向がある。

4) dépouiller デプイエ ≒ écumer エキュメ。
5) もとの語形は zingaro ザンガロ、またはヂンガロ。ジプシー、ボヘミアンの意。料理ではパプリカ粉末やカイエンヌを用いた
ものに命名されることが多い。

6) julienne(ジュリエーヌ)。日本語では「ジュリエンヌ」と言うことが多いが、「ジュリヤン」のように言う調理現場もある。

25

ホワイト系の派生ソース

ホワイト系の派生ソース

Petites Sauces Blanches, Composées et de Réductions
ソース・アルビュフェラ1)

Sauce Albuféra

ソース・シュプレーム 1 L あたりに、溶かした
ブロンド色のグラスドヴィアンド 2 dL と、標
準的な分量比率で作った赤ピーマンバター 50 g
を加える。
…… 鶏 な ど 家 禽 の ポ シ ェ2) ま た は ブ レ ゼ3) に
ソースとして添える。

ソース・アメリケーヌ

4)

Sauce Américaine

このソースはオマール・アメリケーヌという料
理そのものと言っていい(
「魚料理」の章、甲殻
類、オマール・アメリケーヌ参照)
。

このソースは通常、オマール5) の身をガルニ
チュールとした魚料理に添えられる。オマール
の身をやや斜めになるよう厚さ 1 cm 程度の輪
切りにし6) 、魚料理のガルニチュールとして供
するわけだ。
アンチョビソース

Sauce Anchois

ノルマンディー風ソース 8 dL を、バターを加え
る前の段階まで作る。アンチョビバター 125 g
を混ぜ込む。アンチョビのフィレ 50 g を洗い、
よく水気を絞ってから小さなさいの目に切った
のを加えて仕上げる。
……魚料理用。

1) ナポレオン軍の元帥、ルイ・ガブリエル・スーシェ Louis-Gabriel Suchet, duc d’Albufera (1770〜1826)のこと。スペイン戦役
の際にそれまでの軍功を称えられ、ナポレオンが 1812 年にアルビュフェラ公爵位を新設して授けた。帝政期の英雄のひとり
であり、アルビュフェラおよびスーシェの名を冠した料理がいくつかある。1814 年に帝政が崩壊した後も軍務、政務に携わ
り、最終的にフランス貴族院議員の地位を得た。アルビュフェラ公爵位については、1815 年 7 月 24 日の勅令においてに正式

2)

3)
4)

5)
6)
1)

に抹消されている。このソースの特徴は赤ピーマン(パプリカ)を加熱してなめらかにすり潰し、バターに練り込んだものを
使う点にあるが、どのような経緯でこのソースに赤ピーマンを用いるようになったのかは不明。ただし、このソースを合わせ
る「肥鶏 アルビュフェラ」は詰め物(ファルス)に米を用いるが、アルビュフェラは湖の周辺の湿地帯で米の生産がおこな
われているという点では一応の関連性が認められよう。なお、アルビュフェラはバレンシアの湖とそこに形成された潟であり、
現在はバレンシア州のアルブフェーラ自然公園となっている。
ポシェは通常、沸騰させない程度の温度で茹でること、だが、ここで想定しているのは丸鶏をポシェしたもの。つまりは「仕
立て」であり、前の注で触れた「肥鶏 アルビュフェラ」がこれに相当する。
「仕立て」としての鶏のポシェは通常、中抜きし
た部分に詰め物(ファルス)をして手羽を脚を畳むようにしてまとめて糸で縫い(brider ブリデ)
、さらに豚背脂のシートで包
んでちょうどいい大きさの鍋に入れて、あらかじめ用意しておいた白いフォン) が鶏にかぶる程度まで注ぐ。鍋を火にかけて
いったん沸騰したら、火を弱めるかオーブンに入れて、蓋をしてポシェの温度すなわち微沸騰を保つようにして加熱する。詳
しくは第 7 章肉料理「ポシェ」の項参照。
ポシェと同様に丸鶏をブレゼという「仕立て」に調理したものを想定しているので注意。肉料理の「仕立て」としてのブレゼ
については第 7 章肉料理「ブレゼ」の白身肉のブレゼ参照。
オマール・アメリケーヌという料理の由来は諸説あるが、19 世紀フランスの料理人ピエール・フレス Pierre Fraysse がアメリ
カで働いた後にパリで 1853 年に開いたレストラン「シェ・ピーターズ」でこの料理名で提供したというのが定説。ただし、
1853 年以前にレストラン「ボヌフォワ」に「ラングドック産オマール ソース・アメリケーヌ添え」というメニューあり、フ
レスはその料理に改変を加えたか、名前だけをシンプルに「アメリケーヌ」とした程度という説もある。かつては、オマール
の主産地のひとつブルターニュ地方を意味する古い形容詞 armoricain(e) アルモリカン、アルモリケーヌの音が変化した料理
名だと主張されることもあったが、19 世紀には南仏産が中心であったトマトを用いる点で矛盾が生じてしまう。いずれにして
も、この料理名がフレスの店シェ・ピーターズを基点として広く知られるようになったことは事実。1867 年のグフェ『料理の
本』にはソース・エスパニョルをベースに白ワインとトマトで作るオマール・アメリケーヌのレシピが掲載されているので、
比較的短期間で広まった料理なのは確か。また、オマールではないが、その 20 年程前に遡ってカレーム『19 世紀フランス料
理』には、「海亀のポタージュ アメリカ風」Potage de tortue à l’américaine およびその派生型「海亀のソース アメリカ風」
のレシピが掲載されている。レシピに先立って、カレームは「アメリカでも海亀のポタージュは本書のイギリス風海亀のポ
タージュと同様に、つまりロンドン風に調理するという。ところが、ボストンとニューヨークで暮したことのある人々から、
アメリカ人は海亀のポタージュにうなぎのフィレを加えることを伝え聞いた。当然ながらイギリス風の海亀のポタージュとは
異なる味わいのものとなる (t.1, pp.289-290」と述べている。ここではソースのほうの概要を見ておこう。皮を剥いた小さめの
うなぎを筒切りにする。これをラグー鍋に入れてシャンパーニュを注ぐ。洗ったアンチョビのフィレとにんんく、玉ねぎ、薄
切りにしたマッシュルーム、タイム、バジル、ローリエの葉、ローズマリー、マジョラム、サリエット、メース少々、粗く砕い
たこしょう、カイエンヌ少々を加える。弱火にかけて煮込み、煮詰めていく。これを布で絞り漉す。ここにコンソメとソース・
エスパニョルを加え、再度火にかけていい具合になるまで煮詰める。シャンパーニュをグラス 1/2 杯加えて布で漉す。提供直
前にバター少々と鶏のグラス、レモン果汁を加える (t.3, pp.81-82)、というもの。
homard ロブスターのこと。なお高級料理では 800〜900 g 程度の大きなものが好んで使用される。。
escalopper(エスカロペ)。エスカロップ、すなわち厚さ 1〜2 cm 程度の円形に切ることだが、オマールの場合はやや斜めに切
るようにして面積を大きくすることが一般的。ここで使用するオマールは 900 g〜1 kg 程度のものを想定していることに注意。
夜明けの光、曙光のこと。オーロラの意味もあるため、日本では「オーロラソース」と呼ばれることもあるが、マヨネーズとト
マトケチャップを同量で混ぜ合わせたものもそう呼ばれることが多いので注意。なお、Sauce à l’aurore というほぼ同じ名称の
ものが 1806 年刊ヴィエアール『帝国料理の本』に掲載されているが、これはヴルテにレモン果汁とこしょう、ナツメグを加え

26

I.

ソース・オーロール1)

Sauce Aurore

ヴルテに真っ赤なトマトピュレを加えたもの。
分量は、ヴルテが 3/4 に対し、トマトピュレ 1/4
とする。仕上げに、ソース 1 L あたり 100 g の
バターを加える。
……卵料理、仔牛、仔羊肉の料理、鶏料理用。
魚料理用ソース・オーロール

Sauce Aurore maigre

魚料理用ヴルテに、上記と同じ割合でトマト
ピュレを加える。ソース 1 L あたりバター 125
g を加えて仕上げる。
……魚料理用
バイエルン風ソース

Sauce Bavaroise
ヴィネガー 5 dL にタイムとローリエの葉少々
とパセリの枝 4 本、大粒のこしょう 7〜8 個と、
おろした2) レフォール3) 大さじ 2 杯を加え、半
量になるまで煮詰める。
この煮詰めた汁に卵黄 6 個を加え4) 、オラン
デーズソースを作る要領で、バター 400 g と大
さじ 1 1/2 杯の水を少しずつ加えながら、ソー
スがしっかり乳化するまで混ぜていく。布で
漉す。
エクルヴィスバター 100 g と泡立てた生クリー
ム大さじ 2 杯、さいの目に切ったエクルヴィ
ス5) の尾の身を加えて仕上げる。
……魚料理用のこのソースは、ムースのような
仕上がりにすること。

ソース・ベアルネーズ

6)

Sauce Béarnaise
白ワイン 2 dL とエストラゴンヴィネガー 2 dL
に、エシャロットのみじん切り大さじ 4 杯、枝

2)
3)
4)
5)

6)

7)

ソース

Sauces

のままの粗く刻んだエストラゴン 20 g、セルフ
イユ 10 g、粗挽きこしょう 5 g、塩 1 つまみを
加えて、1/3 量になるまで煮詰める。
煮詰まったら、数分間放置して温度を下げる。
ここに卵黄 6 個を加え、弱火にかけて、生のバ
ター(あるいはあらかじめ溶かしておいてもい
い)500 g を加えて軽くホイップしながらなめ
らかになるよう混ぜる。
卵黄に徐々に火が通っていくことでソースに
とろみが付くので、絶対に弱火で作業をする
こと。
バターを混ぜ込んだら、布で漉して味を調え
る。カイエンヌごく少量を加えて風味を引き締
める。仕上げに、刻んだエストラゴン大さじ杯
とセルフイユ大さじ 1/2 杯を加える。
……牛、羊肉のグリル用。
【原注】このソースを熱々で提供しようとは考
えないこと。このソースは要するにバターで
作ったマヨネーズなのだ。ほの温い程度で充分
であり、もし熱くし過ぎてしまうと、ソースが
分離してしまう。
そうなってしまったら、冷水少々を加えて泡立
て器でホイップして元のあるべき状態に戻して
やること。

トマト入りソース・ベアルネーズ/ソース・ショ
ロン7)

Sauce Béarnaise tomatée, dite Sauce Choron

ソース・ベアルネーズを上記のとおりに作る
が、最後にセルフイユとエストラゴンのみじん
切りは加えない。充分固めに作っておき、ソー
スの 1/4 量の、充分に煮詰めたトマトピュレを
加える。ソースの濃度が丁度いい具合になるよ

たものを用意し、別に茹で卵の黄身を用意する。茹で卵の黄身を漉し器に圧し付けるようにして麺状に引き出す。提供直前に、
ソースにこの黄身の麺を加える。ここからは決して沸騰させないこと、というもの (p.59)。麺状にした卵黄を朝の光の筋に見
立てたもので、鍋で加えるか、ソース入れにソースを入れた上に載せるなどの方法も考えられるが、いずれにしてもヴィアー
ルの時代(19 世紀初頭)はフランス式サーヴィスつまり大きな食卓に何種もの料理を一度に並べるという方式だったために、
このソースの見た目の美しさをある程度じっくりと食べ手は楽しむことが出来ただろう。その後の文献ではオドもカレームも
この名称のソースには触れておらず、デュボワとベルナールの『古典料理』
(1867 年)において、Sauce à l’Aurore として、ベ
シャメルソースに煮詰めた仔牛のブロンドとマッシュルームの茹で汁、トマトソースを添加して、スライスしたマッシュルー
ムを加えるというレシピが掲載されている (p.57)。初期のロシア式サービスにおいては、客に料理を最初に見せてまわり、そ
の後に切り分けて供するという方式であったために、おそらくヴィアールの「ソース・アローロール」では一瞬で失なわれて
しまったであろう美しさのポイントが、このようにソース色合いそのものに代えたことで、最後の食べ手の分を取り分けるま
で美しさを維持できるようになった、つまりは初期のロシア式サービスの欠点を補うものとなったと考えられよう。なお、19
世紀はトマトが食材として急激に普及、流行した時代であったこともこのソースの変化と関係があると思われる。
原文 râpé < râpe ラープと呼ばれる器具を用いておろすが、日本のおろし金と目の大きさが違うので注意。多くの場合、マンド
リーヌ mandrine と呼ばれる野菜用スライサーにこの機能が付属している。
raifort 西洋わさび、ホースラディッシュ。
卵黄を加える前に一度漉しておいたほうがいいだろう。
ざりがにのこと。通常はヨーロッパザリガニ écrevisse à pattes rouges エクルヴィスアパットルージュを指す。高級食材として
とても好まれている。現在は代用として écrevisse de Californie エクルヴィスドカリフォルニ(ウチダザリガニ)が用いられる
こともある。日本在来のニホンザリガニや、外来種だが多く生息しているアメリカザリガニは通常、フランス料理には用いら
れない。いずれもジストマ(寄生虫)のリスクがあるため、生食は厳禁。
ベアルヌは旧地方名で、フランス南西部、現在のピレネー・アトランティック県のことを指すが、このソースはその地方と
まったく関係がない。19 世紀パリ郊外のレストラン Pavillon Henri IV(日本語に訳すと「アンリ 4 世亭」となろうか)が店名
に掲げているアンリ 4 世がベアルヌのポー生まれであることにちなんで命名したソース名というのが定説。
19 世紀後半、パリで有名レストラン「ヴォワザン」の料理長を務めたアレクサンドル・ショロン Alexandre Choron(1837〜
1924)。自ら考案し、命名したという。

27

ホワイト系の派生ソース
う注意すること。
……トゥルヌド・ショロン、および他のさまざ
まな料理に添える。

グラスドヴィアンド入りソース・ベアルネーズ/
ソース・フォイヨ/ソース・ヴァロワ1)

Sauce Béarnaise à la glace de viande, dite
Foyot, ou Valois

標準的なソース・ベアルネーズを上記の分量
で、固めに作る。溶かしたグラスドヴィアンド
1 dL を少しずつ加えて仕上げる。
……牛、羊肉のグリル用。

ソース・ベルシー2)

Sauce Bercy

細かくみじん切りにしたエシャロット大さじ 2
杯をバターでさっと色付かないよう炒める。白
ワイン 2 1/2 dL と魚のフュメか、このソースを
合わせる魚の茹で汁 2 1/2 dL を注ぐ。
2/3 量弱まで煮詰めたら、ヴルテ 3/4 L を加え
る。ひと煮立ちさせてから、鍋を火から外し、
バター 100 g とパセリのみじん切り大さじ 1 杯
を加えて仕上げる。

ソース・オ・ブール/ソース・バタルド3)

Sauce au Beurre, dite Sauce Bâtarde
小麦粉 45 g と溶かしバター 45 g をよく混ぜ合
わせ粘土状にする。そこに、7 g の塩を加えた
熱湯 7 1/2 dL を一気に注ぎ、泡立て器で勢いよ
く混ぜ合わせる。とろみ付け用の卵黄 5 個を生
クリーム大さじ 1 1/2 杯でゆるめたものと、レ
モン汁少々を加える。
布で漉し、鍋を火から外して、良質なバター
300 g を加えて仕上げる。
……アスパラガスや、さまざまな茹でた魚4)
【原注】このソースはとろみを付けた後、湯煎
にかけておき、提供直前にバターを加えるよう
5)
にするといい。

ソース・ボヌフォワ/白ワインで作るボルドー風
ソース6)

Sauce Bonnefoy, ou Sauce Bordelaise au vin
blanc

ブラウン系の派生ソースの節で採り上げた、赤
ワインを用いて作るボルドー風ソースとまった
く同じ作り方だが、赤ワインではなく、グラー
ヴかソテルヌの白ワインを用いる。またソー
ス・エスパニョルではなく標準的なヴルテを使
うこと。
このソースは仕上げに、みじん切りにしたエス
トラゴンを加える。
……魚のグリル、白身肉のグリル用。

ブルターニュ風ソース

Sauce Bretonne
長さ 3〜5 cm 位の、ごく細い千切り7) にしたポ
ワローの白い部分 30 g とセロリの白い部分 30
g、玉ねぎ 30 g、マッシュルーム 30 g をバター
で完全に火が通るまで鍋に蓋をして弱火で蒸し
煮する8) 。
魚のヴルテ 3/4 L を加え、しばらく弱火にかけ
て浮いてくる不純物を丁寧に取り除く9) 。生ク
リーム大さじ 3 杯とバター 50 g を加えて仕上
げる。

ソース・カノティエール10)

Sauce Canotière

淡水魚を煮るのに用いた、白ワイン入りクール
ブイヨンを 1/3 量に煮詰める。クールブイヨン
にはしっかり香り付けしてあり塩はごく少量し
か入っていないこと。
1 L あたり 80 g のブールマニエを加えてとろみ
を付ける。軽く煮立たせたら、鍋を火から外し
てバター 150 g とカイエンヌごく少量を加えて
仕上げる。
……淡水魚のクールブイヨン煮用。

1) ソース・フォイヨの名称は、19 世紀〜20 世紀初頭にパリにあったレストランおよびそのオーナーシェフの名によるもの。この
ソースを使った「仔牛の背肉・フォイヨ」がスペシャリテだったという。ソース・ヴァロワについては、ヴァロワ王家および
ヴァロワ公爵であったルイ・フィリップ(7 月王政期のフランス国王。在位 1830〜1848)にちなんだ名称。前出のフォイヨは
レストランを開く以前、ルイ・フィリップに仕えていた。
2) パリ東部、セーヌ川左岸にある地名。かつては荷揚げ港があり、19 世紀には小さなレストランが多く店を構えていたという。
3) バタルドは「雑種の、中間の」の意。卵黄とバターだけでとろみを付けるソース・オランデーズと似てはいるが小麦粉も使う
ことからこの名が付いたと言われている。なお、パンのバタール bâtard も同じ語だが、細いバゲットと太いドゥーリーヴルの
「中間」の太さとだからというのが通説。
4) 魚料理用ソース・アシェ訳注参照。
5) 本書には、日本でもかつて有名だった、エシャロットのみじん切りを加えたヴィネガーを煮詰めてバターを溶かし込んだ魚料
理用ソース「ソース・ブールブラン」Sauce (au) Beurre blanc は収録されていない。このソース・ブールブランはナント地方や
アンジュー地方で淡水魚アローズやブロシェに合わせる伝統的なソース。1890 年頃にナント地方の女性料理人クレマンス・ル
フーヴルが、ソース・ベアルネーズを作るつもりが誤って卵を加えるのを忘れてしまった結果として出来たものだとも言われ
ている。
6) ソース・ボヌフォワの名称は、19 世紀中頃にあったレストランの名による。このレストランで考案されたソースだという説も
ある。
7) julienne(ジュリエーヌ)。
8) étuver エチュヴェ。本来は油脂とごく少量の水分を加えて弱火で蒸し煮することだが、野菜については、バターだけを使う場
合も多い。ほぼ同様の加熱方法に étouffer(エトゥフェ)がある。後者の原義は「窒息させる」
。
9) dépouiller デプイエ ≒ écumer エキュメ。
10) 小舟の漕ぎ手、の意。

28

I.

【原注】バターでグラセした小玉ねぎと小ぶり
のマッシュルームを加えると、
「白いソース・マ
トロット」の代用となる。

ケイパー入りソース

Sauce aux Câpres

上記のソース・オ・ブールに、ソース 1 L あた
り大さじ 4 杯のケイパーを提供直前に加える。
……いろいろな種類の魚を煮た料理に用いる。

ソース・カルディナル1)

Sauce Cardinal

ベシャメルソース 3/4 L に、(1)魚のフュメと
トリュフエッセンスを同量ずつ合わせて 3/4 量
まで煮詰めたものを 1 1/2 dL 加える。(2)生ク
リーム 1 1/2 dL を加える。
鍋を火から外し、真っ赤に作ったオマールバ
ターを加え、カイエンヌごく少量で風味を引き
締める。
……魚料理用。

マッシュルーム入りソース

Sauce aux Champignons

マッシュルームを茹でた汁 3 dL を 1/3 量まで煮
詰める。ソース・アルマンド 3/4 L を加え、数
らせん

分間沸騰させる。あらかじめ螺旋状に刻みを入
れて整形2) してから茹でておいた真っ白で小さ
なマッシュルーム 100 g を加えて仕上げる。
……鶏料理用。魚料理に添えることもある。魚
料理に合わせる場合は、ソース・アルマンドで
はなく魚料理用ヴルテを用いること。

ソース・シャンティイ3)

Sauce Chantilly

まれにこれを「ソース・シャンティイ」と呼ば
れることもあるが、これは後述の「ソース・ム
スリーヌ」に他ならない4) 。

ソース

Sauces

ソース・シャトーブリヤン5)

Sauce Chateaubriand
(仕上がり 5 dL 分)
白ワイン 4 dL に、みじん切りにしたエシャロッ
ト 4 個分とタイム少々、ローリエの葉少々、マッ
シュルームの切りくず 40 g を加え、1/3 量にな
るまで煮詰める。
仔牛のジュ6) 4 dL を加え、半量になるまで煮詰
める。布で漉し、鍋を火から外して、メートル
ドテルバター 250 g と細かく刻んだエストラゴ
ン小さじ 1/2 杯を加えて仕上げる。
……牛、羊の赤身肉のグリル用。

白いソース・ショフロワ(標準)

Sauce Chaud-froid blanche ordinaire
(仕上がり 1 L 分)……標準的なヴルテ 3/4 L、鶏
でとった白いジュレ 6〜7 dL、生クリーム7) 3
dL。
厚手のソテー鍋にヴルテを入れる。強火にか
け、ヘラで混ぜながらジュレと用意した生ク
リーム 1/3 量を少しずつ加えていく。
所定の分量にするには、2/3 量くらいまで煮詰
めることになる。
味見をして、固さを確認する。これを布で漉
す8) 。生クリームの残りを少しずつ加え、ゆっ
くり混ぜながら、ショフロワに仕立てる食材を
覆うのにいい固さになるまで冷ましてやる。

ブロンドのソース・ショフロワ

Sauce Chaud-froid blonde

上記と同様に作るが、ヴルテではなくソース・
アルマンドを用いる。また、生クリームの量は
半分に減らすこと。

ソース・ショフロワ・オーロール9)

Sauce Chaud-froid Aurore

すうききよう

1) カトリックの枢機卿(カルディナル)の衣が伝統的に赤いものであること、およびオマールが「海の枢機卿」と呼ばれること
に由来。

2) tourner トゥルネ。原義は「回す」。包丁を動かさずに材料の方を回すようにして切る、刻み目を入れることがこの用語の由来。
マッシュルームの場合はその際に大量の切りくず(具体的には重量で 15〜20 %)が発生するので、それをソースなどの風味付
けに利用する。

3) 料理および製菓では生クリームをホイップしたクレーム・シャンティイが有名だが、元来はパリ北方に位置する町の名。ここ
のシャンティイ城で 17 世紀に、歴史上主要なメートルドテルのひとりヴァテルが自害した事件は有名で小説化、映画化もさ
れた。

4) むしろ、初版から掲載されている冷製ソースのソース・シャンティイと混同しないよう留意すべきだろう。
5) 料理において通常、シャトーブリヤンは牛フィレの中心部分を 3 cm 程度の厚さに切ったものを指す。この名称の由来には
主に 2 説あり、ひとつはフランスロマン主義文学の父と言われる小説家フランソワ・ルネ・シャトーブリヤン François René
Chateaubriand(1768〜1848)の名を冠したというもの。ちなみにフランスロマン主義文学の母と呼ばれているのはスタール
夫人 Anne Louise Germaine de Staël(1766〜1817)。料理におけるシャトーブリヤンという名の由来のもうひとつの説は、ブ
ルターニュ地方で畜産物の集積地であったシャトーブリヤン Châteaubriant という地名に由来するというもの。なお、本書の
初版および第四版では Chateaubriand の綴り、第二版は Châteaubriant であり、第三版は Châteaubriand という奇妙な綴りと
なっている。

6) 本書では「仔牛の茶色いジュ」のレシピは掲載されているが、仔牛の「白い」ジュについての言及はない。ここでは通常の仔
牛の茶色いジュを用いればいい。また、ソース・コルベールの項(第二版で加えられた)で、ブール・コルベールとこのソー
スを比較するにあたり、このソースを「軽く仕上げたグラスドヴィアンドにバターとパセリのみじん切りを加えたもの」と述
べている(ソース・コルベール本文参照)
。このため、なぜこのソース・シャトーブリヤンが「ブラウン系の派生ソース」の節
ではなく「ホワイト系の派生ソース」に分類されているのか疑問が残るところ。
7) フランスの生クリームについてはソース・シュプレーム訳注参照。
8) 粘度の高いソースなどを布で漉す方法については、ヴルテ訳注参照。
9) 夜明け、曙光の意。

29

ホワイト系の派生ソース
標準的な白いソース・ショフロワを上記のとお
り作る。そこに、真っ赤なトマトピュレを布で
漉したもの 1 1/2 dL とパプリカ粉末 0.25 g を少
量のコンソメで煎じた1) ものを加える。
……鶏のショフロワ用。
【原注】あまり鮮かな色にしたくない場合は、パ
プリカを煎じた汁は数滴だけ加えるにとどめる
といい。
ソース・ショフロワ・ヴェールプレ2)

Sauce Chaud-froid au Vert-pré
鍋に白ワイン 2 dL を沸かし、セルフイユとエ

ストラゴン、刻んだシブレット、刻んだパセリ
の葉を各 1 つまみずつ投入する。蓋をして火か
ら外し、10 分間煎じてから布で漉す。
最初に示したとおりの分量で標準的なソース・
ショフロワを作り、煮詰めながら、上記の香草
を煎じた液体を少しずつ混ぜ込む。この段階で
1 L になるまで煮詰めておくこと。
ほうれんそうから採った緑の色素をソースに加
え、ほんのり薄い緑色にする。
この色素を加える際にはよく注意して、上で示
したとおりの色合いになるよう少しずつ投入す
ること。
このソースは各種の鶏3) のショフロワ、とりわ
け「ショフロワ・プランタニエ」に用いる。
魚料理用ソース・ショフロワ

Sauce Chaud-froid maigre

作り方の手順と分量は標準的なソース・ショ
フロワとまったく同じだが、以下の点を変更
する。
(1)通常のヴルテではなく魚料理用ヴル
テを用いる。
(2)鶏のジュレではなく白い魚の
ジュレを用いること。
【原注】一般的に、このソースは魚のフィレや
エスカロップ、甲殻類にコーティング用マヨ
ネーズの代わりとして用いることをお勧めす
る。コーティング用マヨネーズにはいろいろ不

都合な点があり、そのうちの最大のものは、ゼ
ラチンが溶けるにつれて油が浸み出してきて
しまうことだ。こういう不都合はこの魚料理
用ソース・ショフロワを使う場合には出てこな
い。このソースは風味も明確ですっきりしてい
るからコーティング用マヨネーズよりも好まし
いだろう。

ソース・シヴリ4)

Sauce Chivry
白ワイン 1 1/2 dL に以下を各 1 つまみずつ投入

する5) ……セルフイユ、パセリ、エストラゴン、
シブレット、時季が合えばサラダバーネット6)
の若い葉。蓋をして鍋を火から外し、10 分間煎
じる7) 。布で絞るようにして漉す。
こうしてハーブ類を煎じた液体を、あらかじめ
沸かしておいたヴルテ 3/4 L に加える。火から
外し、ブール・シヴリ 100 g を加えて仕上げる
(合わせバターの節参照)
。
8)
……ポシェ あるいは茹でた鶏の料理用。
【原注】サラダバーネットは生育するにつれて
苦味が強くなるの、必ず若いものを使うこと。

ソース・ショロン

Sauce Choron

トマト入りソース・ベアルネーズ参照。

ソース・クレーム

Sauce à la Crème
ベシャメルソース 1 L に生クリーム 2 dL を加
えて、ヘラで混ぜながら強火で、全体量の 3/4
になるまで煮詰める。
布で漉す9) 。フレッシュなクレーム・ドゥーブ
ル10) 2 1/2 dL とレモン果汁半個分を少しずつ加
えて仕上げる。
……茹でた魚、野菜料理、鶏、卵料理用。

ソース・クルヴェット11)

Sauce aux Crevettes

魚料理用ヴルテまたはベシャメルソース 1 L

1) infuser アンフュゼ。煮出す、煎じる、の意。
2) 緑の野原、草原、の意。
3) 日本語では鶏と一言で済ませるが、フランス語では poussin プサン(ひよこ、ひな鶏)、poulette プレット(若い雌鶏)、poulet
プレ(若鶏)、poule プール(雌鶏)、poulet de grain プレドグラン(50〜70 日の若鶏)、poulet reine プレレーヌ(若鶏と肥鶏
の中間のサイズでソテーやローストにする)、poulet quatre quarts プレカトルカール(45 日程で食用にする)
、poularde プラ
ルド(肥鶏、1.8 kg 以上のものが多く、AOC を取得している産地もある)
、chapon シャポン(去勢鶏、最大で 6kg 程になると
いうが、肉質は雌鶏に近く、高級品とされている)、coq コック(雄鶏)などに細かく分類されている。
4) 19 世紀フランスの作家フレデリック・スリエ Frédéric Soulié(1800〜1847)の劇『ディアーヌ・ド・シヴリ』Diane de Chivry
(1838 年) あるいは 1897 年に新聞「フィガロ」に掲載されたエルネスト・カペンデュの小説『ビビタパン』の登場人物名 Chivry
にちなんだか、あるいはまったく別の人物の名を冠したものかは不明。
明記されていないが、この時点で白ワインは沸かしておく。
pumprenelle パンプルネル、和名ワレモコウ。
infuser アンフュゼ。
pocher 原則的には、沸騰しない程度の温度で加熱調理すること。この場合は、下処理した鶏一羽まるごとをぎりぎり入るくら
いの大きさの鍋に入れて水あるいはクールブイヨンを用いてゆっくり火を通す調理を意味している(温度管理が難しい場合は
オーブンを用いることもある)。
9) 粘度や濃度の高いソースを漉す方法についてはヴルテ訳注参照。
10) 乳酸醗酵させた濃度の高い生クリーム。詳しくはソース・シュプレーム訳注参照。
11) 小海老のこと。フランスでよく料理に用いられるのは生の状態で甲殻が灰色がかった小さめの crevettes grises(クルヴェット・
グリーズ)と、やや大きめでピンク色の crevettes roses(クルヴェット・ローズ)。美味しい。ちなみに日本でよく食べられて
いるブラックタイガーはフランス語にすると crevette géante tigrée と言う。

5)
6)
7)
8)

30

I.

に、生クリーム 1 1/2 dL と魚のフュメ 1 1/2 dL
を加える。
火にかけて 9 dL になるまで煮詰める。鍋を火
から外し、ブール・ルージュ 25 g(ソース全体
に淡いピンクの色合いを付けるのが目的)を足
したクルヴェットバター 100 g を加える。殻を
剥いたクルヴェットの尾の身大さじ 3 杯を加
え、カイエンヌ 1 つまみで風味を引き締めて仕
上げる。
……魚料理およびある種の卵料理用。

カレーソース

Sauce Currie
以下の材料をバターで軽く色付くまで炒め
る……玉ねぎ 250 g、セロリ 100 g、パセリの
根1) 30 g、これらはすべてやや厚めにスライス
する。タイム 1 枝とローリエの葉少々、メー
ス少々を加える。小麦粉 50 g とカレー粉2) 小さ
じ 1 杯弱を振り入れる。小麦粉が色付かない
程度に炒めて火を通したら、白いコンソメ 3/4
L を注ぐ。沸騰したら、弱火にして約 45 分煮
る。軽く押し絞るように布で漉す。ソースを温
めて、浮いてきた油脂は取り除き3) 、湯煎にか
けておく。
……魚料理、甲殻類、鶏、さまざまな卵料理に
合わせる。
【原注】ココナツミルクをソースに加えること
もある。その場合、白いコンソメの 1/4 量をコ
コナツミルクに代えること。

インド風カレーソース

ソース

Sauces

理に合わせるか、魚料理に合わせるかで、ヴル
テも標準的なものを使うか、魚料理用を使うか
決めること)。弱火で 15 分程煮る。布で漉し、
生クリーム 1 dL とレモン果汁少々を加えて仕
上げる。
【原注】ここで示した量のココナツミルクは、生
のココヤシの実 700 g をおろして、4 1/2 dL の温
めた牛乳で溶いて作る。それを布で強く絞って
漉してから使うこと。
ココナツミルクがない場合には、同量のアーモ
ンドミルクを用いてもいい。
インドの料理人によるこのソースの作り方はさ
まざまで、基本だけが同じというものだ。
だが、本来のレシピがあったところで、使い物
にはならないだろう。インドのカレーは我が国
の大多数にとっては我慢ならぬものだろうか
ら。ここで記した作り方は、ヨーロッパ人の味
覚を勘案したものなので、本来のものよりいい
筈だ。

ソース・ディプロマット5)

Sauce Diplomate
すで

既に仕上げでおいたノルマンディ風ソース 1 L
に、オマールバター 75 g を加える。
さいの目に切ったオマールの尾の身大さじ 2 杯
と同様にさいの目に切ったトリュフ大さじ 1 杯
を加えて仕上げる。
……大きな魚一尾まるごとの6) 料理用。

スコットランド風ソース

Sauce Currie à l’Indienne

Sauce Ecossaise

みじん切り4) にした玉ねぎ 1 個と、パセリ、タイ
ム、ローリエ、メース、シナモン各少々のブー
ケガルニを、バターとともに弱火にかけて色付
かないよう蒸し煮する。
カレー粉 3 g を振り入れ、ココナツミルク 1/2 L
を注ぐ。ヴルテ 1/2 L を加える(ソースを肉料

上記の分量どおりに作ったソース・クレーム 9
dL に以下を加えて作る。1〜2 mm の細さに千
切りにしたにんじん、セロリ、さやいんげん
をバターを加えて鍋に蓋をして弱火で蒸し煮
し7) 、白いコンソメに完全に浸したものを 1 dL。
……卵料理、鶏料理に添える。

1) パセリには根パセリ persil tubéreux(ペルスィチュベルー)といって根が肥大する品種系統もある。平葉で、葉の香りはフラ
ンスで一般的なモスカールドタイプ (葉の縮れるタイプ) とやや異なる。イタリアンパセリのように用いることが可能。
2) カレーは植民地インドの料理としてイギリスに伝わり、18 世紀には C&B 社によって混合スパイスであるカレー粉が開発され
た。フランスはあまりインドやその他のカレーの食文化と接することもなかったために、こんにちでも「珍しい料理」の範疇
にとどまっている。とはいえ、19 世紀にインドからアンティル諸島のうちの英領地域に連れて来られたインド人たちがカレー
を伝え、それが広まってフランス領アンティーユにおいてコロンボ colombo というカレーのバリエーションが成立した。コロ
ンボはこんにちのフランスでも(インドのカレーとは別のものとして)比較的よく知られたものとなっている(少なくとも
curry, currie という語よりは一般的認知度が高いと言えるだろう)。
3) dégraisser(デグレセ)。
4) 原文 ciseler シズレ。鋭利な刃物でみじん切りにすること、スライスすること。原義は「ハサミで切る」。なお、日本語でみじ
ん切りに相当する用語には hacher アシェもある(hache 斧から派生した語)。後者は野菜の他、肉類を細かく刻む際にも用い
られる。ミートチョッパーをフランス語では hachoir アショワールと呼ぶ。
5) 外交官風、の意。繊細で豪華な仕立ての料理に付けられる名称。
6) relevé(ルルヴェ)。17 世紀〜19 世紀前半ににスタイルとして完成したフランス式サービスでは、豪華な装飾を施した飾り台
(socle ソークル)に載せられ、皿の周囲を飾るようにガルニチュールが配され(bordures ボルデュール)、主役である大きな
塊肉や魚まるごと 1 尾の料理にはしばしば飾り串(hâtelet アトレ)が刺してある、きわめて壮麗な大皿料理が置かれた。なお
そぐ

『料理の手引き』ではこうした仕立てについては時代に似わないものとして、ごく簡潔にしか説明されていないが、初版、第二
版に付属している献立表、および第三版以降独立して出版された『メニューの本』にはルルヴェの語はしばしば見られる。
7) étuver エチュヴェ。
1) ヨモギ科のハーブ。詳しくは茶色い派生ソースのソース・シャスール訳注参照。

31

ホワイト系の派生ソース

ソース・エストラゴン1)

Sauce Estragon

エストラゴンの枝 30 g を粗く刻み2) 、強火で下
茹でする3) 。水気をしっかりときり、エストラ
ゴンをスプーンですり潰し、あらかじめ用意し
ておいたヴルテを大さじ 4 杯加える。これを布
で漉す。こうして作ったエストラゴンのピュレ
を鶏のヴルテまたは魚料理用ヴルテ 1 L に混ぜ
込む。どちらのヴルテを使うから、合わせる料
理によって決めること。味を調え、みじん切り
にしたエストラゴン大さじ 1/2 杯を加えて仕上
げる。
……卵料理、鶏肉料理、魚料理に合わせる。

香草ソース

Sauce aux Fines Herbes
(仕上がり 5 dL 分)
あらかじめ 2 種のうちどちらかの方法(白ワイ
ンソース参照)で作っておいた白ワインソース
1/2 L に、エシャロットバター 40 g と、パセリ、
セルフイユ、エストラゴンのみじん切りを大さ
じ 1 1/2 杯加える。
……魚料理用。

ソース・フォイヨ

Sauce Foyot

⇒ グラスドヴィアンド入りソース・ベアルネー
ズ参照。

ソース・グロゼイユ4)

Sauce Groseilles

緑色の濃いグーズベリー 500 g を銅の片手鍋で
下茹でする。
5 分間煮立てたら、水気をきって、粉砂糖大さ
じ 3 杯と白ワイン大さじ 2〜3 杯を加えて、完
全に火をとおす。布で漉す。
こうして出来たピュレに、ソース・オ・ブール
5 dL を加え、よく混ぜる。

……このソースはグリルあるいはイギリス風5)
に茹でた鯖によく合う。とはいえ、他の魚料理
にも合わせてもいい。
【原注】このソースは緑色の房なりのグロゼイ
ユ6) でも作ることが可能。

オランデーズソース7)

Sauce Hollandaise
大さじ 4 杯の水とヴィネガー大さじ 2 杯に、粗
挽きこしょう 1 つまみと肌理の細かい塩 1 つま

みを加えて、1/3 量まで煮詰める。この鍋を熱源
のそばか、湯煎にかける。
大さじ 5 杯の水と卵黄 5 個を加える。生のま
ま、あるいは溶かしたバター 500 g を加えなが
らしっかりホイップする。ホイップしている
途中で、水を大さじ 3〜4 杯、少量ずつ足して
やる。水を足すのは、軽やかな仕上がりにする
ため。
レモンの搾り汁少々と必要なら塩を足して味を
調え、布で漉す。
湯煎にかけておくが、ソースが分離しないよう
に、温度は微温くしておく。
……魚料理、野菜料理用。
【原注】ヴィネガーを煮詰めて使うのは、いつ
も最高品質のものが使えるとはかぎらないか
らで、水は 1/3 量まで減らしたほうがいい。た
だし、煮詰める作業を完全に省いてしまわない
こと。

ソース・オマール

Sauce Homard

魚料理用ヴルテ 3/4 L に、生クリーム 1 1/2 dL と
オマールバター 80 g、赤いバター 40 g を加え
て仕上げる。
……魚料理用。
【原注】このソースを魚 1 尾まるごとの料理に
添える場合には、さいの目に切ったオマールの

2) concasser コンカセ。
3) blanchir ブランシール。
4) 日本語で「すぐりの実」のことだが、こんにちでは「黒すぐり」の方が一般的かも知れない。黒すぐりはフランス語では
cassis カシスと呼ばれる。一般的なグロゼイユにはフサスグリと呼ばれる groseille rouge グロゼイユ・ルージュ(赤すぐり)と
groseille blanche グロゼイユ・ブランシュ(白すぐり)の 2 種があり、どちらもブドウのように房なりする。上記とは別に、こ
のソースで用いられる groseille à maquereau グロゼイヤマクロー(maquereau は鯖の意。日本では英語経由のグーズベリーま
たはグースベリーの名称でも呼ばれることが多い。単に西洋すぐりとも呼ぶ)という比較的大粒で薄く縞模様の入る種類もあ
る。これは通常は緑色だが、まれに紫色になる変種もあるという。いずれもフランスでは料理や菓子作りによく用いられる。
5) à l’anglaise(アラングレーズ)。通常は塩適量を加えた湯でボイルすることを指す。
6) 一般的なフサスグリであれば白系統の「未熟果」を用いるということと解釈される。
7) ニューヨーク発祥の朝食メニューとして知られるエッグ・ベネディクト Egg Benedict に必ず用いられることで有名なうえ、一
般的には「バターで作るマヨネーズ」のイメージが強いかも知れない。実際のところは、ラ・ヴァレーヌ『フランス料理の本』
(1651 年)において「アスパラガスの白いソース添え」Asperges à la sauce blanche というレシピにおいて、このオランデー
ズソースの原型ともいうべきものが示されている。アスパラガスは固めに塩茹でする。「新鮮なバター、卵黄、塩、ナツメグ、
ヴィネガー少々をよくかき混ぜる。ソースが滑らかになったら、アスパラガスに添えて供する (p.238)」
。簡潔な記述だが、こ
れがオランデーズソースの原型であることは間違いないだろう。おそらくはラ・ヴァレーヌ以前から存在していた可能性も否
定できない。なお植物油を用いたマヨネーズが文献上で確認されるのが 18 世紀以降で、19 世紀初頭から爆発的に流行し、広
まったもの。また、マヨネーズについては、現代ヨーロッパにおいても卵黄ではなく全卵を用いて作るほうが多数を占めてい
る点が異なることに注意。なお、オランデーズとは「オランダ風」の意だが、なぜこの名称となったのかについては不明な点
が多い。また、2007 年版の『ラルース・ガストロノミック』では、オランデーズソースを作る際には温度に注意することと、
よくメッキされた銅鍋かステンレス製の鍋を用いる必要があり、アルミ製の鍋だと緑色に変色する可能性があることに注意を
促している (p.455)。

32

I.

尾の身を大さじ 3 杯加える。

ハンガリー風ソース

大きめの玉ねぎ 1 個のみじん切りをバターで色
付かないよう強火で炒める。塩 1 つまみとパプ
リカ粉末 1 g で味付けする。
このソースを添える料理に合わせて標準的なヴ
ルテあるいは魚料理用ヴルテ 1 L を加え、数分
間軽く煮立てる。
布で漉し、バター 100 g を加えて仕上げる。
このソースは淡いピンク色に仕上げるべきであ
り、その色を出しているのがパプリカ粉末だけ
によるものだということに注意。
……仔羊や仔牛のノワゼット2) にとりわけよく
合う。卵料理、鶏料理、魚料理にも。

牡蠣入りソース

Sauce aux Huîtres
後述のノルマンディ風ソースに、ポシェ3) して
周囲をきれいにした牡蠣の身を加えたもの。

インド風ソース

Sauce Indienne
⇒ インド風カレーソース参照。

ソース・イヴォワール4)

Sauce Ivoire

ソース・シュプレーム 1 L に、ブロンド色のグ
ラスドヴィアンド大さじ 3 杯を加え、象牙のよ
うなくすんだ色合いにする。

Sauces

……低めの温度でしっとり仕上がるよう茹で
た5) 鶏に添える。

1)

Sauce Hongroise

ソース

ソース・ジョワンヴィル6)

Sauce Joinville

ノルマンディ風ソース 1 L を、仕上げる直前の
段階まで作る7) 。エクルヴィスバター 60 g とク
ルヴェットバター 60 g を加えて仕上げる。
このソースを添える魚料理にガルニチュールが
既にある場合は、これ以上は何も加えない。
ガルニチュールを伴なわない大きな茹でた魚8)
に添える場合には、細さ 1〜2 mm の千切りに
した真黒なトリュフを大さじ 2 杯加えること。
【原注】同様のソースはいろいろあるが、最後
の仕上げにエクルヴィスバターとクルヴェット
バターを組み合わせて加える点がソース・ジョ
ワンビルが他のものと違うポイント。

ソース・ラギピエール9)

Sauce Laguipière

上述のとおりに作ったソース・オ・ブール 1 L
に、レモン 1 個の搾り汁と魚のグラスまたはそ
れと同等に煮詰めた魚のフュメ大さじ 4 杯を加
える。
このソースは茹でた魚に添える。
【原注】カレームが考案したこのソースのレシ
ピに、本書で加えた変更点はただ 1 箇所のみ、
鶏のグラスではなく魚のグラスに代えたことだ
けだ。さらに言うと、このソースはカレームに

1) 原書でも用いられている語 paprika パプリカはハンガリー語。唐辛子、ピーマンの仲間であり、16 世紀以降 17 世紀にヨーロッ

2)
3)
4)
5)
6)
7)
8)
9)

パ全土に広まり、その土地ごとの風土に合わせて品種が多様化した。パプリカはとりわけ辛味成分をほとんど含んでいないの
が特徴。ただし、ハンガリーの食文化において大きな役割を果すようになったのは 19 世紀以降になってからと言われている。
noisette ロースの中心部分を円筒形に切り出して調理したもの。
pocher < poche ポシュ(ポケット)、からの派生語。ポーチドエッグを作る際に、ポケット状になるところからこの用語が定着
した。沸騰しない程度の温度で加熱調理すること。
象牙、の意。
pocher(ポシェ)。
19 世紀、7 月王政期の国王ルイ・フィリップの第 3 子、フランソワ・ドルレアン・ジョワンヴィル海軍大将(1818〜1900)の
こと。エクルヴィスとクルヴェットを用いた料理に彼の名が冠されたものがいくつかある。
すなわち、布で漉すところまで。
魚の場合は、クールブイヨンを用いてやや低めの温度で煮たもの。魚料理用ソース・アシェ訳注参照。
18 世紀末〜19 世紀初頭にかけて活躍したフランスを代表する料理人の名(? 〜1812)。はじめコンデ公に仕え、革命時にコン
き

か

デ公の亡命にも随行したが、後にフランスに帰国し、ナポレオン麾下に入った。ナポレオン自身は食に無頓着であったが、直
接的にはミュラ元帥のもとで料理長として活躍した。タレーランに仕えていたアントナン・カレームは 2 年程の期間であった
が、ラギピエールとともに宴席の仕事に携わり、生涯を通して師と仰ぐ程に尊敬してやまなかった。当然だが料理においてカ
レームはラギピエールから大きく影響を受け、そのことを後年、数冊の自著で明記している。ラギピエール自身はミュラ元帥
に従ってロシア戦線に赴き、その撤退の途中、極寒の地で凍死した。カレームは 1828 年刊『パリ風の料理』の冒頭 2 ページを
「ラギピエールの想い出に」と題し、とても力強い文体でその死を悼んだ。
1) カレームの未完の大著『19 世紀フランス料理』第 3 巻に、このソースのレシピが掲載されている。少し長くなるが引用すると
「ラグー用片手鍋に、魚料理用グランドソースの章で示したソース・オ・ブールをレードル 1 杯入れる。ここに上等のコンソメ
大さじ 1 杯か鶏のグラス少々を加える。塩 1 つまみ、ナツメグ少々、良質のヴィネガーまたはレモン果汁適量を加える。数
秒間煮立たせ、上等なバターをたっぷり加えてから供する。(中略) ソースに火を通してからバターを加えるというこの方法に
よって、なめらかな口あたりで、油っぽくならない仕上がりになる。だからこそ私はこのソース・オ・ブールをグランドソー
スに分類しなかったのだし、バターを加える派生ソースにおいてこれは重要なことだからだ。それは魚料理用ソースについて
も同様のことだ (pp.117-118)」
。このレシピにおいて、カレームの表現には矛盾がある。
「魚用グランドソースの章で示した」と
あるのに「グランドソースに分類しなかった」となっていることだ。実際、ソース・オ・ブールそれ自体はこの「ラギピエー
ル風」の直前にある。さて、このソースが「ラギピエール風」であることの理由だが、同じ巻の「魚料理用ソース・エスパニョ
ル」の説明の冒頭において、ラギピエールから聞いた話として、四旬節の期間(小斉=肉断ちをする慣習がカトリックに根強く
あった)に、魚料理用のソースにコンソメや仔牛のブロンドのジュを混ぜている修道士料理人がいたの、と述べている。それ
なら美味しくて当然だろう、とカレームが問うと、ラギピエールは「そうやって作った料理は、通常の肉を食べていい時の料

33

ホワイト系の派生ソース
よって「ソース・オ・ブール ラギピエール風」
と名付けられたものだ1) 。

リヴォニア風ソース2)

げる。
……アスパラガスに添える。

ソース・マリニエール10)

Sauce Livonienne

バターを加えて仕上げた3) 魚のフュメで作った
ヴルテ 1 L に、1〜2 mm の細さで長さ 3〜4 cm
の千切り4) にしたにんじん、セロリ、マッシュ
リューム、玉ねぎをあらかじめバターを加えて
弱火で蒸し煮5) しておいたもの 100 g を加える。
最後に、1〜2 mm の細さのトリュフの千切りと
粗く刻んだパセリを加える。……その後、味を
調えること。
……このソースは、トラウト、サーモン、舌び
らめ、チュルボタン6) 、バルビュ7) のような魚に
よく合う。

マルタ風ソース8)

Sauce Maltaise

前述のとおりに、ソース・オランデーズを作
り、提供直前に、ブラッドオレンジ 2 個の搾り
汁を加える。ブラッドオレンジを用いないとこ
のソースは成立しないので注意。オレンジの皮
の表面をおろしたもの9) 1 つまみを加えて仕上

Sauce Marinière

ソース・ベルシーを本書で示したとおりの分量
で用意する。これにムール貝の茹で汁を詰めた
もの大さじ 3〜4 杯を加え、卵黄 6 個でとろみ
を付ける11) 。
……ムール貝の料理専用。

白いソース・マトロット12)

Sauce Matelote blanche

白ワインで作った魚のクールブイヨン 3 dL に
フレッシュなマッシュルームの切りくず13) 25 g
を加えて 1/3 量まで煮詰める。
魚料理用ヴルテ 8 dL を加える。数分間煮立た
せる。布で漉し、バター 150 g を加える。
カイエンヌ14) ごく少量で風味を引き締める。
ガルニチュールとして、下茹でしてからバター
で色艶よく炒めた15) 小玉ねぎ 20 個と、あら
かじめ茹でておいた小さな白いマッシュルー
ム16) 20 個を加える。

理とは違うものであり、かといって肉断ちの料理でもない、まさに中間のものだ。その判定は天のみぞ知るところだろう。結
局のところ、修道士たちは元気に暮していたのだから、それは正しかったのだよ」と煙に巻いたという。カトリックの習慣と
しての小斉=肉断ちのための魚料理用ソースに、肉由来である鶏のグラスもしくはコンソメを加えるというところが、ラギピ
ゆえん

エール風と名付けた所以であり、まさにこれこそがソース・ラギピエールの重要なポイントと考えられる。
『料理の手引き』に
おいてこのレシピを担当した執筆者はこのエピソードを読んでいなかったのだろうか? あるいは何らかの誤解ゆえに改変をし
ゆえん

2)

3)
4)
5)
6)
7)
8)

9)
10)
11)

12)
13)
14)
15)

16)

たのか、ラギピエール風の所以である鶏のグラス、コンソメを用いるべきところを、魚のグラスに代えてしまい、このソース
名の由来を換骨奪胎してしまう結果となっている。本書の初版において、原注がその文体から、エスコフィエの手になるもの
か、あるいは聞き書きしたコメントであることはほぼ明らかなので、なぜエスコフィエがこの点を見逃したか、あるいは許容
したのかは非常に興味深い。ところで、カレームが、バターを仕上げの際に加えるということ、いわゆるブールモンテ monter
au beurre によってソースの口あたりをなめらかなものにし、色艶をよくするということをことさらに言及しているの点もま
た、注目に値すべきだろう。
現在のラトビア東北部からエストニア南部にかけての古い地域名、いわゆるバルト三国の一地域と捉えていい。本書執筆時に
はロシア帝国の一部となっていた。なお、料理名に冠される地名のうちの少からずのものに明確な由来のないのと同様に、こ
のソースについても名称の由来は不明。
monter au beurre バターでモンテする。
julienne ジュリエンヌ
étuver au beurre バターでエチュヴェする。
turbotin < turbo チュルボ。鰈の近縁種。
barbue 鰈の近縁種。
シチリアの南方に位置するマルタ島を中心とした国、マルタはオレンジをはじめとした柑橘類の産地であり、とりわけ 19 世
紀にはマルタ産のブラッドオレンジが人気であった。一例としてバルザックの小説『二人の若妻の手記』において、つわりに
苦しむ妻のために夫がマルセイユの街で「マルタ産、ポルトガル産、コルシカ産のオレンジを買い求めた」(p.312) と書かれて
いる。
zeste ゼスト。
marinier/marinière < mare ラテン語「海」から派生した語。貝や魚を白ワインで煮た料理にも付けられる名称。
卵黄でとろみ付けをする場合、あらかじめ生クリームあるいは茹で汁などで乳化させてからよく混ぜながら加えるのであれば、
必ずしも弱火でなくても問題ない。ただし、沸騰状態だと滑かに仕上がらないリスクが残るので、ある程度は弱火にした方が
いいだろう。
水夫風、船員風、の意。
料理、ガルニチュールとして供するマッシュルームは、トゥルネといって螺旋(らせん)状に切り込みを入れて装飾するのが
一般的。その下ごしらえの際に大量のマッシュルームの切りくず(おおむねに重量比で 15〜20 %)が出るのを利用する。
cayenne 唐辛子の 1 品種。日本で一般的なカエンペッパーよりは辛さがマイルドで風味も異なる。
glacer au beurre(グラセオブール)。バターでグラセする、と表現する調理現場も多い。glace グラス(鏡)が語源であるため、
本来は「光沢を出させる、照りをつける」の意だが、食材や料理によってその手法はさまざま。にんじんや小玉ねぎの場合に
はあらかじめ下茹でしておく必要がある。
これを用意している段階で、上述のトゥルネを行なう。常識的なこととして明記されていないことに注意。この作業の結果、
ソースを作る際に魚の茹で汁(クールブイヨン)に加えるマッシュルームの切りくずが発生する。

34
ソース・モルネー1)

Sauce Mornay

ベシャメルソース 1 L に、このソースを合わ
せる魚の茹で汁 2 dL を加え、2/3 量程に煮詰め
る2) 。おろした3) グリュイエールチーズ 50 g と
パルメザンチーズ 50 g を加える。少しの間、火
にかけたままにしてよく混ぜ、チーズを完全に
溶かし込む。バター 100 g を加えて仕上げる4) 。
【原注】魚以外の料理に合わせる場合5) も作り方
はまったく同じだが、魚の茹で汁は加えない。

ソース・ムスリーヌ/ソース・シャンティイ6)

Sauce Mousseline, dite Sauce Chantilly

前述のとおりの分量と作り方でオランデーズ
ソースを用意する(オランデーズソース参照)
。
提供直前に、固く泡立てた生クリーム大さじ 4
杯7) をソースに混ぜ込む。
……このソースは、茹でた魚や、アスパラガス、
カルドン8) 、セロリ9) に添える。

ソース・ムスーズ10)

Sauce Mousseuse

沸騰した湯の中に、小さめのソテー鍋を入れて
熱し、水気をよく拭き取る。このソテー鍋に、
あらかじめ充分に柔らかくしておいたバター
500 g を入れる。塩 8 g を加え、泡立て器でしっ
かり混ぜながら、レモン 1/4 個分の搾り汁と冷
水 4 dL を少しずつ加える。

I.

ソース

Sauces

最後に、固く泡立てた生クリーム大さじ 4 杯を
混ぜ込む。
このレシピは、ソースに分類してはいるが、む
しろ合わせバターというべきものだ。茹でた
魚11) に合わせる。
茹でた魚から伝わる熱だけでバターは充分に溶
けるので、見た目も風味も溶かしバターをソー
スにするよりずっといいものだ。

ソース・ムタルド12)

Sauce Moutarde

普通、このソースは提供直前に作ること。
必要の分量のソース・オ・ブールを用意する。
鍋を火から外し、ソース 2 1/2 dL あたり大さじ
1 杯のマスタードを加える。
このソースを仕上げて、提供するまで時間を
空けなくてはならない場合は、湯煎にかけてお
く。沸騰させないよう注意すること。

ソース・ナンチュア13)

Sauce Nantua

ベシャメルソース 1 L に生クリーム 2 dL を加
え、2/3 量まで煮詰める。
布で漉し、生クリームをさらに 1 1/2 dL 加えて、
通常の濃度に戻す。
良質なエクルヴィスバター 125 g と、小さめの
エクルヴィスの尾の身14) 20 を加えて仕上げる。

1) 19 世紀中頃にパリのレストラン、デュランの料理長ジョゼフ・ヴォワロンが創案したと言われている。モルネーは人名だが、
具体的に誰を指しているかについては諸説ある。

2) 初版ではこの煮詰める作業はなく「固めに作ったベシャメルソース 1 L に対し、魚の茹で汁 2 dL を加える」となっている。
3) râper(ラペ)< râpe(ラープ)という器具を用いておろすこと。パルメザン(パルミジャーノ)は硬質チーズなので一般的な半

4)
5)
6)

7)

8)

9)

10)
11)
12)
13)
14)
1)

筒形のチーズおろし器でいいが、グリュイエールは比較的軟質なので、より目の粗い器具(例えばマンドリーヌに付属してい
る機能のうち、にんじんをおろす際に使う部分など)を用いるといい。
monter au beurre モンテオブール。バターでモンテする、と表現することも多い。
例えば茹でた野菜などにかけて、サラマンダー(強力な上火だけのオーブンの一種)に入れて軽く焦げ目を付け、グラタンに
するようなケースも多い。
mousseline < mousse ムース。-ine は「小さい」を意味する接尾辞。その前に L の文字が入るのは、mousse の語源がメソポタミ
アの都市 Mossoul(モスリン布の生産地だった)であることによる。シャンティイの名称で呼ばれることがあるのは、固く立て
た生クリームすなわち crème Chantilly(クレーム・シャンティイ)を加えるところから。ソース・シャンティイ訳注も参照。
大さじ 1 杯 = 15 cc という考えにとらわれないよう注意。この計量単位は日本で戦後普及したものに過ぎず、本書においては
文字通りに「大きなスプーンで 4 杯」という大雑把な単位として考える必要がある。このソースの場合は「固く泡立てた生ク
リームを適量」と読み替えてもいいだろう。名称どおりに滑らかでふんわりとした口あたりに仕上げるのがポイント。
cardon アーティチョークの近縁種で、アーティチョークが開花前の蕾を食用とするのに対し、カルドンは軟白させた茎葉を食
用とする。フランスではトゥーレーヌ地方産が有名。草丈 1.5 m 位まで成長させた株を紐で束ねて軟白する。厳冬期は株元か
ら刈り取って小屋などで保管するのが伝統的な手法。イタリア北部ピエモンテでは株を倒してその上に土を被せて軟白すると
いうユニークな方法で栽培する cardo gobbo カルドゴッボもよく知られている。
セロリには緑の濃い品種系統と、やや緑が薄く、中心部が自然に軟白されたようになる系統がある。野菜料理として用いられ
るのは主として後者の芯に近い、自然に軟白された部分。coeur de céleri クールドセルリと呼ぶ。前者については、もっぱら
香味野菜としてフォンやポタージュ、煮込み料理などに用いられる。このタイプは風味に癖があるため、生食にはあまり適し
ていない。
細かく泡立った、の意。なお、シャンパーニュのような vin mousseux ヴァン・ムスー(発泡ワイン)のムスーは同じ語の男
性形.
クールブイヨンなどを用いてやや低温で煮た魚、の意。魚料理用ソース・アシェ訳注参照。
マスタードのこと。マスタードソースと呼んでもいいが、アメリカ風の印象を与えるかも知れない。
ローヌ・アルプ地方にあるナンチュア湖でエクルヴィスが穫れることに由来したソース名。エクルヴィスについて詳しくはバ
イエルン風ソース訳注参照。
しっかり下茹でして殻を剥いたものを用いること。
ここでは英語由来のソース名のため英語風にカタカナ書きしたが、フランスでは「ニュブール」のように発音されることも
多い。

35

ホワイト系の派生ソース

活けオマールで作るソース・ニューバーグ1)

Sauce New-burg avec le homard cru
800〜900 g のオマールを切り分ける。

胴の中のクリーム状の部分をスプーンで取り出
し、これをよくすり潰して 30 g のバターを合
わせ、別に取り置いておく。
バター 40 g と植物油大さじ 4 杯を鍋に入れて
熱し、切り分けたオマールの身を色付くまで焼
く。塩とカイエンヌで調味する。殻が真っ赤に
なったら、鍋の油を完全に捨て、コニャック大
さじ 2 杯と、マルサラ酒もしくはマデイラの古
酒 2 dL を注いで火を付けてアルコール分を燃
やす2) 。注いだ酒が 1/3 量になるまで煮詰めた
ら、生クリーム 2 dL と魚のフュメ 2 dL を注ぐ。
弱火で 25 分間煮る。
オマールの身をざるにあげて水気をきる。殻か
ら身を取り出して、さいの目に切る。
取り置いておいたオマールのクリーム状の部分
をソースに混ぜ込み、完全に火が通るように軽
く煮立たせてやる。さいの目に切ったオマール
の身を加えて混ぜる。味見をして、必要なら塩
を加えて修正する。
【原注】さいの目に切ったオマールの身をソー
スに混ぜ込むのは絶対必要というわけではな
い。薄くやや斜めにスライスして、このソース
を合わせる魚料理に添えてもいい。

茹でたオマールで作るソース・ニューバーグ

3)

Sauce New-burg avec le homard cuit

オマールを標準的なクールブイヨンで茹でる。
尾の身を殻から外し、やや斜めに厚さ 1cm 程
度の筒切りにする4) 。ソテー鍋の内側にたっぷ
りとバターを塗り、そこに切ったオマールを並
べるように入れる。塩とカイエンヌでしっかり
と味を付け、表皮が赤く発色するように両面を
焼く。上等なマデラ酒をひたひたの高さまで注
ぎ、ほぼ完全になくなるまで煮詰める。»»»>

Stashed changes
オマールを標準的なクールブイヨンで茹でる。
尾の身を殻から外し、やや斜めに厚さ 1 cm 程
度にスライスする5) 。ソテー鍋の内側にたっぷ
りとバターを塗り、そこに切ったオマールを並

べるように入れる。塩とカイエンヌでしっかり
と味を付け、表皮が赤く発色するように両面を
焼く。上等なマデイラ酒をひたひたの高さまで
注ぎ、ほぼ完全になくなるまで煮詰める。
提供直前に、オマールのスライスの上に、生ク
リーム 2 dL と卵黄 3 個を溶いたものを注ぎ、火
から外して、ゆっくり混ぜながら6) しっかりと
とろみを付ける。
【原注】ソース・アメリケーヌと同様に、これら
2 種のソースも元来はオマールを供するための
料理だった。ソースとオマールが、要するにひ
とつの料理を構成していたわけだ。
ところが、そのような料理は午餐(ランチ)で
しか提供することが出来ない。多くの人々は胃
が弱く、夕食では消化しきれないのだ7) 。
そうした問題解決のために、我々はこれを、舌
びらめのフィレやムスリーヌに添えるオマール
のソースとして使うことにしたのだ。オマール
の身はガルニチュールとして添えるにとどめる
ことにした。結果は好評であった。
カレー粉やパプリカ粉末を調味料として用いれ
ば、このソースのとてもいいバリエーションが
作れる。とりわけ舌びらめや脂身の少ない白身
魚によく合う。……その場合、魚に少量のイン
ド風ライスを添えるといい。

ソース・ノワゼット8)

Sauce Noisette

ソース・オランデーズを本書のレシピのとお
りに作る。提供直前に仕上げとして、上等なバ
ターで作ったブール・ド・ノワゼット 75 g を加
える。
……ポシェ9) したサーモン、トラウトにとても
よく合う。

ノルマンディ風ソース

Sauce Normande

魚料理用ヴルテ 3/4 L に10) 、マッシュルームの
茹で汁 1 dL とムール貝の茹で汁 1 dL、舌びら
めのフュメ11) 2 dL を加える。レモン果汁少々
と、とろみ付け用に卵黄 5 個を生クリーム 2dL
で溶いたものを加える。強火で 2/3 量つまり約
8 dL まで煮詰める。

2) flamber(フロンベ)フランベする。
3) このソースの元となった料理「オマール・ニューバーグ」は、19 世紀後半にニューヨークのレストラン、デルモニコーズで常

4)
5)
6)
7)
8)
9)
10)
11)

連客のアイデアをもとにフランス出身の料理長シャルル・ラノフェール(チャールズ・レンフォーファー)が完成させたと言
われており、そのレシピがラノフェールの著書『ジ・エピキュリアン』
(英語)に掲載されている (p.411)。現在もデルモニコー
ズのスペシャリテ。なお、これらソースのレシピは第二版で追加されたが、もとの料理は初版から収録されている。
détailler en escalopes(デタイエオネスカロプ)= escalopper(エスカロペ)エスカロップ(厚さ 1〜2 cm 程度の薄切り)に切る。
détailler en escalopes(デタイエオネスカロプ)= escalopper(エスカロペ)エスカロップ(厚さ 1〜2 cm 程度の薄切り)に切る。
vanner ヴァネする。
レシピにおいて指示されているオマールが大きなものであることに注意。
ヘーゼルナッツ、はしばみの実。
pocher 沸騰しない程度の温度で茹でること。魚の場合はクールブイヨンを用いてやや低めの温度で火を通すこと。
原書にはリットルの表記がないが、本書における標準的な仕上がり量が 1 L であることと、文脈から訳者が補った。
舌びらめの料理に合わせるソースであるために、舌びらめのアラなどが必然的に出るのを無駄にせず使うということだが、現
代のレストランの厨房などではかえって無理が生じることになる。このレシピ通りに作る場合は何らかのオペレーション上の
工夫が必要。

36
布で漉し、クレーム・ドゥーブル1) 1 dL とバター
125 g を加える。
……このソースは舌びらめのノルマンディ風専
用。とはいえ、使い方によっては無限の可能性
がある。
【原注】基本的に本書では、どんなレシピにお
いても、牡蠣の茹で汁は使わないことにしてい
る。牡蠣の茹で汁は塩味がするだけで風味がな
い。だから、可能であればムール貝の茹で汁を
大さじ何杯か加えるほうがずっといい2) 。

オリエント風ソース3)

Sauce Orientale

ソース・アメリケーヌ 1/2 L を用意し、カレー
粉で風味付けをして 2/3 量まで煮詰める。鍋を
火から外し、生クリーム 1 1/2 dL を混ぜ込む。
……このソースの用途はソース・アメリケーヌ
と同じ。

ポー風ソース4)

Sauce paloise

ソース・ベアルネーズを本書に書いてあると
おりの方法と分量で用意する(ソース・ベアル
ネーズ参照)が、以下の点を変える。
1. 香りの中心となるエストラゴンを同量のミン

I.

ソース

Sauces

ト5) に変更し、白ワインとヴィネガーを煮詰め
る際に加える。
2. さらに、仕上げの際に、細かく刻んだエストラ
ゴンも使わない。細かく刻んだミントを使う。
……このソースの用途はソース・ベアルネーズ
とまったく同じ。

ソース・プレット

Sauce Poulette

マッシュルームの茹で汁 2 dL を 1/3 量まで煮詰
める。ここにソース・アルマンド 1 L を加え、
数分間沸騰させる。鍋を火から外し、レモン果
汁少々とバター 60 g、パセリのみじん切り大さ
じ 1 杯を加えて仕上げる。
……このソースは野菜料理に合わせるが、羊の
足の料理にもよく合う。

ソース・ラヴィゴット6)

Sauce Ravigote
白ワイン 1 1/2 dL とヴィネガー 1 1/2 dL を半量
になるまで煮詰める。標準的なヴルテ 8 dL を
加え、数分間煮立たせる。鍋を火から外し、エ
シャロットバター 90〜100 g と、セルフイユ7)
とエストラゴン8) 、シブレット9) を細かく刻ん
だものを同量ずつ合わせたもの計大さじ 1 1/2

1) 乳酸醗酵した濃い生クリーム。ソース・シュプレーム訳注参照。
2) このレシピは初版からの異同が大きい。初版では「魚料理用ヴルテ 1 L あたり卵黄 6 個でとろみを付け、牡蠣の茹で汁 2 dL と
魚のエッセンス、生クリーム 2 dL を加えながら煮詰める。仕上げにバター 100 g とクレーム・ドゥーブル 1 dL を加える」と

3)

4)
5)
6)

7)
8)
9)
1)

なっており、用途には触れられていない。第二版、第三版ではやや細かなレシピとなり用途も「舌びらめのノルマンディ風」
と指定されて現行版に近いものになるが、牡蠣の茹で汁を使うことは初版と同じ。つまり、第四版で牡蠣の茹で汁からムール
貝の茹で汁を使うことに変更し、この原注が付けられた。このソースにおける改変は、前出のソース・ラギピエールのケース
とやや似ているところもある。牡蠣を用いることから、牡蠣の産地であるノルマンディ風という名称となったソースであるの
に、そこから牡蠣を排除するという、いわば換骨奪胎がなされているからだ。
フランス語の orient オリヨン(東方)は、具体的にいうと北アフリカの一部、アラビア半島、西アジアくらいまでを指すのが
一般的。その意味では、カレー粉を加えたことで「オリエント風」と称するのは、当時のフランス人にとって、理解できなくも
ないだろうが実感は伴わなかった可能性がある。フランス人にとっての「オリエント」である北アフリカやトルコといった地
域の食文化は 19 世紀にはかなりフランスに伝わっていたからだ。こういった文化的なイメージのずれは、エスコフィエ本人
が料理長としてのキャリアの大半をイギリスで過ごしたこととも関係があると思われる。つまり、フランス人にとっての「オ
リエント」とインドという植民地を持つイギリス人の「オリエント」は同じ言葉であっても、想起される具体的な内容が違う
ということである。
ポーは 15 世紀以来、ベアルヌ地方の中心都市。
フランス料理よりはむしろイギリス料理でよく使われるミントを用いたこのソースをポー風と呼ぶのは、かつてこの地がイギ
リス貴族たちに保養地として好まれたことにちなんでいるという説もある。
ravigote < ravigoter 身体を丈夫にする、元気にさせる、の派生語。香草を主体として酸味を効かせたソース(および煮込み料
理)は中世以来あったが、18 世紀以降 ravigote という呼び名が一般的となり、19 世紀以降はこの表現がしばしば使われるよ
うになった。ソース・ラヴィゴットは冷製と温製の 2 種がある。なお、ソース・ラヴィゴットのレシピとして最初期のものの
ひとつ、1755 年刊ムノン『宮廷の晩餐』第 1 巻に掲載されているソース・ラヴィゴットの作り方は、薄切りにしたにんにく、
セルフイユ、サラダバーネット、エストラゴン、クレソンアレノワ(オルレアン芹)
、シブレットを洗ってから圧し潰し、コッ
プ 1 杯のコンソメ(=この当時のコンソメはグラスドヴィアンドに近いものであることに注意)に入れて沸騰させないよう 1
時間以上かけて煎じる。漉し器で押すようにして漉し、ブールマニエ、塩、こしょうで味付けをして火にかけ、レモンの搾り
汁で仕上げる、というもの (p.135)。
cerfeuil チャービル。
estragon フレンチタラゴン。詳しくはソース・シャスール訳注参照。
ciboulette 日本ではチャイブとも呼ばれる。アサツキと訳されることもあるが、風味がまったく異なるので代用は不可。春に
紫色の小さくてきれいな花をたくさん咲かせるので、エディブルフラワーとしてもよく用いられる。
家畜の副生物すなわち正肉以外の部分のうち、内臓を abats アバと呼ぶ。そのうちの、心臓、レバー、舌などは abats rouge ア
バルージュ(赤い内臓)
、耳、尾、胃、腸、足、頭、仔牛および仔羊の胸腺肉(ris de veau リドヴォー、ris d’agneau リダニョー)
や腸間膜(fraise フレーズ)などは abats blanc アバブロン(白い内臓、白い副生物) を呼ばれている。こうした副生物の料理は
古くから好まれ、16 世紀フランソワ・ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル』においてもしばしば登場する。とりわ
け「ガルガンチュア」の冒頭では、出産間近なお妃が臓物料理を食べ過ぎるなどというエピソードが印象深い。なお、鶏の副
生物(とさか、内臓、脚など)は abattis アバティと呼ばれるので混同しないよう注意。

37

ホワイト系の派生ソース
杯を加えて仕上げる。
……茹でた鶏に合わせる。白い内臓1) 料理にも
合わせることがある。

魚料理用ソース・レジャンス2)

Sauce Régence pour Poissons, et garnitures de
Poissons
ライン産ワイン 2 dL と魚のフォン 2 dL に新鮮
なマッシュルームの切りくず 20 g と生トリュ
フの切りくず 20g を加えて半量になるまで煮詰
める。
煮詰まったら布で漉し、仕上げた状態のノルマ
ンディ風ソース 8 dL を加える。
トリュフエッセンス大さじ 1 杯を加えて仕上
げる。

鶏料理のガルニチュール用ソース・レジャンス3)

Sauce Régence pour garnitures de Volaille
ライン産白ワイン 2 dL とマッシュルームの茹
で汁 2 dL にトリュフの切りくず 40 g を加え、
半量になるまで煮詰める。
ソース・アルマンド 8 dL を加え、布で漉す。
トリュフエッセンス大さじ 1 杯を加えて仕上
げる。

ソース・リッシュ4)

Sauce Riche

ソース・ディプロマットを本書で示したとおり
の分量と作り方で用意する。
トリュフエッセンス 1 dL と、さいの目に切っ
た真黒なトリュフ 80 g を加えて仕上げる。

ソース・ルーベンス

5)

Sauce Rubens
1〜2 mm 角の小さなさいの目6) に切った標準的
なミルポワ 100 g をバターで色付くまで炒め
る。白ワイン 2 dL と魚のフュメ 3 dL を注ぎ、
25 分間火にかけておく。

目の細かいシノワ7) で漉す。数分間静かに休ま
せてから、浮いてきた油脂を丁寧に取り除く8) 。

1/2 dL になるまで煮詰め、マデイラ酒大さじ 1
杯を加える。
ここに卵黄 2 個を加えてとろみを付け、普通の
バター 100 g と色付け用の赤いバター 30 g、ア
ンチョビエッセンス少々を加えて仕上げる。
……茹でた、すなわちポシェ9) した魚にこの
ソースはとてもよく合う。

サンマロ風ソース10)

Sauce Saint-Malo
(仕上がり 5 dL 分)
本書で示したとおりに作った白ワインソース
1/2 L に細かく刻んで白ワインで茹でたエシャ
ロット大さじ 1 杯、もしくは、可能なら、エ
シャロットバター 50 g と、マスタード大さじ
1/2 杯、アンチョビエッセンス少々を加える。
……海水魚のグリルに合わせる。

ソース・スミターヌ11)

Sauce Smitane

中位の大きさの玉ねぎ 2 個を細かくみじん切り
にし、バターで色付くまで炒める。白ワイン 2
dL を注ぎ、完全に煮詰める。サワークリーム
1/2 L を加える。5 分間沸騰させたら、布で漉す。
サワークリームの風味を生かすために、必要に
応じてレモンの搾り汁少々を加える。
……ジビエのソテーやカスロール仕立て12) 用。

ソース・ソルフェリノ

Sauce Solférino

よく熟したトマト 15 個をしっかり搾って、そ
の果汁を器に入れる。これを布で漉し、濃いシ
ロップ状になるまで煮詰める13) 。
溶かしたグラスドヴィアンド大さじ 3 杯とカイ
エンヌ 1 つまみ、レモン 1/2 個分の搾り汁を加
える。
火から外して、エストラゴン風味のメートルド
テルバター 100 g とエシャロットバター 100 g
を加える。

2) ソース・レジャンスという名称については「ブラウン系の派生ソース」のソース・レジャンス訳注参照。
3) わかりやすい例としては、後述のガルニチュール・レジャンス B 参照。
4) リッチな、裕福な、の意。ソース・ディプロマットがそもそも豪華な料理に合わせるものであり、さらにトリュフを足すこと
でより一層「リッチ」なものにした、ということ。

5) フランドル派の画家、Peter Paul Rubens ピーテル・パウル・ルーベンス(1577〜1640)のこと。フランスでは古くから Pierre
Paul Rubens ピエール・ポール・リュベンスの表記が定着している、現代フランスでは原語のままの綴り、発音を尊重するこ
とが多い。

6)
7)
8)
9)
10)
11)

brunoise ブリュノワーズ
円錐形で取っ手の付いた漉し器。

dégraisser デグレセ。

魚の場合はクールブイヨンを用いて、沸騰しない程度の温度で加熱調理すること。
ブルターニュ地方の港町。観光地として有名であり、バカンスシーズンには多くの人が訪れる。
サワークリームを意味するロシア語 Сметана スメタナが由来。ロシア料理とフランス料理との相互影響関係にいては、序 p.II
訳注 3 およびモスクワ風ソース訳注参照。
12) 原文は gibiers sautés, ou cuits à la casserole となっており、ジビエのソテーまたはカスロール(片手鍋)で火を通したもの、と
いうのが逐語訳だが、ここでは en casserole に解釈して訳した。雉、ペルドロー (山うずらの若鳥)、野生のうずらなどの en
casserole が本書にも多数収録されているためである。カスロール仕立て en casserole とは、油脂を熱したカスロールで肉を焼
いた後に取り出し、フォンなどを加えてソースを作り、肉を鍋に戻し入れて鍋ごと供する仕立てのこと。なお、casserole のう
ちフランスに古くからあるタイプのものは比較的浅い鍋で、ソースパンとも呼ばれる。深いものは casserole russe カスロール
リュス(ロシア式片手鍋)と言う。
13) 第 2 章ガルニチュール、トマトエッセンスも参照。

38
……このソースはどんな肉のグリルにもよく
合う。
【原注】言い伝えによると、フランス軍がたび
たび進軍して戦ったロンバルディア平野で、た
くさんの料理が創作された。このソースもその
ひとつであり、カプリアナ村においてフランス
とサルデーニャの連合軍司令官の昼食に供され
たという。その村の近くであの苛烈きわまるソ
ルフェリノの戦い1) が繰り広げられたのだ。
伝えられているレシピはおそらくは調理担当軍
人によるものだろうが、充分に日常的に使える
ものだった。このソースは、Sauce Saint-Cloud
ソース・サンクルー2) と呼ばれることもあるが、
それは誤りだ。作り方も材料もソース・サンク
ルーの名を付けるにはまったく値しない程の誤
りだ。
ソース・スビーズ/玉ねぎのクリ・スビーズ3)

Sauce Soubise, ou Coulis d’oignons Soubise
このソースの作り方には以下の 2 つがある。
1. 玉ねぎ 500 g を薄切りにする4) 。これをしっか

り下茹でしておく。
玉ねぎはしっかりと水気をきって、バターを加
えて鍋に蓋をして弱火で色付かないよう注意
して蒸し煮する5) 。ここに濃厚に作ったベシャ
メルソース 1/2 L を加える。塩 1 つまみと白こ
しょう少々、粉砂糖 1 つまみ強を加える。
オーブンに入れてじっくり火入れする。布で漉
し、鍋に移したソースを熱する。バター 80 g と
生クリーム 1 dL を加えて仕上げる。
2. 上記と同様に薄切りにした玉ねぎを下茹でし、
水気をきる。豚背脂の薄いシート6) を敷き詰め
た丁度いい大きさの深手の片鍋7) に、下茹でし
て水気をきった玉ねぎをすぐに入れ、カロライ
ナ米8) 120 g と白いコンソメ 7 dL、塩、こしょ
う、砂糖は上記と同様に加え、さらにバター

I.

ソース

Sauces

25g も加える。
強火にかけて沸騰したら、オーブンに入れて
ゆっくり加熱する。
鉢に米と玉ねぎを移し入れてすり潰す。これを
布で漉し、温める。上記と同様にバターを生ク
リームを加えて仕上げる。
【原注】スビーズはソースというよりはむしろ
クリ9) であって、真っ白な仕上がりにすべきだ。
ベシャメルを用いた作り方のほうが米を用いる
よりもいいだろう。というのも、より滑らかな
口あたりのクリになるからだ。その一方、米を
使うとよりしっかりした仕上がりになる。
どちらの方法で作るかは、このスビーズを合わ
せる料理の種類によって決めるべきだ。

トマト入りソース・スビーズ

Sauce Soubise tomatée

上記のいずれかの方法で作ったソース・スビー
ズに 1/3 量の、滑らかで真っ赤なトマトピュレ
を加える。

ソース・スーシェ10)

Sauce Souchet

オランダおよびフランドル地方のワーテルゾイ
から派生したソース。
いくらか変化したかたちでイギリス料理に取り
入れられ、近代料理の原則に合うようにさらに
手を加えたもの。
細さ 1〜2 mm 角、長さ 3〜4 cm の千切り11) に
した、にんじん、根パセリ、セロリ計 150 g を
用意する。
これを鍋に入れてバターを加え、蓋をして蒸し
煮する12) 。魚のフォン 3/4 L と白ワイン 2 dL を
注ぐ。弱火で煮て、このクールブイヨン13) を漉
す。千切りにした野菜は別に取り置いておく。
このクールブイヨンで、切り分けた魚を煮る。
魚に火が通ったら、魚の身を取り出して、クー

1) 1859 年に起きたフランス=サルデーニャ連合軍とオーストリア帝国軍の戦闘。戦場視察したナポレオン三世はその光景のあま
りの悲惨さにイタリア独立戦争への介入から手を引くことを決意したともいう。

2) サンクルーはパリ近郊の地名。普仏戦争時(1870〜1871)にパリ包囲戦の舞台となり、休戦協定の結ばれた 2 日後に大火に見

3)
4)
5)
6)

7)
8)
9)
10)
11)
12)
13)
1)

舞われた。いずれにせよ戦争の悲惨さを蔭に持つソース名ということになるが、エスコフィエ自身が普仏戦争において従軍し
たために、その名称をこのソースに付けることは許し難かったのだろう。
18 世紀の代表的料理人のひとり François Marin フランソワ・マラン(生没年不詳)が仕えたシャルル・ド・ロアン・スビーズ
元帥のこと。マランは 4 巻からなる『コモス神の贈り物、あるいは食卓の悦楽』
(1739 年刊)を著した。
émincer(エモンセ)日本ではエマンセと言うことが多い。
étuver エチュヴェ。
barde de lard(バルドドラール)豚背脂を薄くスライスしたもの。ベーコンと誤解されがちなので注意。エスコフィエ以前の時
代のフランス料理ではきわめて多用されるとても重要なものなのでぜひとも覚えておきたい。自作する際には、豚背脂の塊を
冷凍した後、適度な固さに戻してから機械などを使用してスライスすると作業が容易になる。
casserole russe ソース・スミターヌ訳注参照。
長粒種。リゾットなどに適している。
クリ coulis については、ソース・サルミ訳注参照。
ナポレオン軍の元帥を務めたルイ・スーシェ・アルビュフェラ公爵のこと。正しくは Suchet だが、料理名としては Souchet と
も綴られる。ソース・アルビュフェラ訳注参照。
julienne ジュリエンヌ。
étuver au beurre エチュヴェオブール
court-bouillon 原義は「量の少ないブイヨン」。実際、魚などを茹でる(ポシェする)際には、ぎりぎりの大きさの鍋を用いて
茹で汁の量は出来るだけ少なく済むようにする。誤解しやすい用語なので注意。
円錐形に取っ手の付いた漉し器。

39

ホワイト系の派生ソース
ルブイヨンはシノワ1) 漉す。これを約 1/4 量す
なわち 2 1/2 dL になるまで煮詰める。白ワイン
ソースを加えて適当なとろみが付くようにす
る。あるいは単純にブールマニエでとろみを付
け、軽くバターを加えてもいい。
ソースの中に取り置いていた千切りの野菜を戻
し入れる。魚の切り身を覆うようにソースをか
けて供する。

チロル風ソース2)

Sauce Tyrolienne
ソース・ベアルネーズを作る場合とまったく同
じ要領で、白ワインとヴィネガー、香草類を煮
詰める(ソース・ベアルネーズ)参照。布で漉
してきつく絞る。
これに、よく煮詰めた真っ赤なトマトピュレ大
さじ 2 杯と卵黄 6 個を加える。鍋をごく弱火に
かけながら、マヨネーズを作る要領で植物油 5
dL を加えてしっかりと乳化させる。最後に味
を調え、カイエンヌ3) ごく少量で風味を引き締
める。
……このソースは牛肉、羊肉のグリルや魚のグ
リル焼きに合う。

クラシック4)

チロル風ソース

Sauce Tyrolienne à l’ancienne
大きめの玉ねぎ 2 個をごく薄くスライス5) して
バターで炒める。トマト 3 個を押し潰して皮を
剥き、種を取り除いてから加える。ソース・ポ
ワヴラード 5 dL を加える。7〜8 分間煮て仕上
げる。

ソース・ヴァロワ

Sauce Valois

グラスドヴィアンド入りソース・ベアルネーズ
のこと(ソース・ベアルネーズ参照)
。
【原注】「ソース・ヴァロワ」はグフェが 1863
年頃に創案したらしい。少なくともその頃に
作られるようになったものであろう。近年では
「ソース・フォイヨ」の名称のほうが一般的だ
が、いかにもあり得そうな異論反論を受けない
ためにもここでその起源を記しておくのがいい

と思われた。

ヴェネツィア風ソース6)

Sauce Vénitienne

エストラゴンヴィネガー 4 dL に、エシャロッ
トのみじん切り大さじ 2 杯とセルフイユ 25 g
を加え、1/3 量まで煮詰める。煮詰めたら布で漉
し、軽く絞ってやる。ここに白ワインソース 3/4
L を加える。色付け用の緑のバター 125 g と、
セルフイユとエストラゴンのみじん切り大さじ
1 杯を加えて仕上げる。
……さまざまな魚料理に添える。

ソース・ヴェロン7)

Sauce Véron

仕上げた状態の標準的なノルマンディ風ソー
ス 3/4 L に、チロル風ソース 1/4 L を加える。よ
く混ぜ合わせ、溶かしたブロンド色のグラスド
ヴィアンド大さじ 2 杯とアンチョビエッセンス
大さじ 1 杯を加えて仕上げる。
……魚料理用。

村人風ソース8)

Sauce Villageoise
標準的なヴルテ 3/4 L に、ブロンド色の仔牛の
ジュ9) 1 dL とマッシュルームの茹で汁 1 dL を
加える。2/3 量くらいまで煮詰め、布で漉す。
ベシャメルで作ったソース・スビーズ10) 2 dL
と、とろみ付けの卵黄 4 個を加える。沸騰させ
ないよう気をつけて温め、火から外してバター
100 g を加えて仕上げる。
……仔牛、仔羊などの白身肉に合わせる。

ソース・ヴィルロワ11)

Sauce Villeroy

ソース・アルマンド 1 L に、トリュフエッセン
ス大さじ 4 杯とハムのエッセンス大さじ 4 杯を
加える。
ヘラで混ぜながら強火にかけ、主素材となるも
のをソースに漬けて取り出したとき際に、全体
をソースが覆うようになるような濃さまで煮詰
めていく。

2) そもそもソース・ショロンをバターではなく植物油を用いて作るものであるから、オーストリアのチロル地方とはまったく関
係がない。1848 年のイタリア、チロルでのオーストリアに対する反乱を記念した命名だという説もあるが、真偽は不明。ただ
し、本書の初版からほぼ異同のない内容で収録されているため、それなりに古くから存在しているソースと思われる。

3) 赤唐辛子の一品種だが、日本のカエンペッパーより辛さもマイルドで風味が違うことに注意。
4) このレシピは第四版のみ。ここでの à l’ancienne は「昔ながらの」という意味ではないと解釈される。ベースとなっているソー
ス・ポワヴラードが古くからあるソースであることからこの名称を付けたのだろう。

5) émincer エマンセ。
6) ヴェネツィア料理ではさまざまな香草を用いるものがあることから、その影響を受けた、あるいは類似したものにこの名称が

7)

8)
9)
10)
11)

付けられることが多い。なお、ヴェネツィアの近く、漁港で有名なキオッジャ近郊は農業がとても盛んで、地場品種の野菜も
ビーツやカボチャ、ラディッキオにもキオッジャの名が付く品種がある。
Luis Véron (1798〜1867)。医師であり、文学愛好家、美食家としても有名だった。文芸誌「ルヴュ・ド・パリ」を主宰した後、
新聞「ル・コンスティチュショネル」の社主となり、ウージェーヌ・シューの新聞連載小説『彷徨えるユダヤ人』を掲載、大
ヒットに導いた。、自宅は文壇サロンのようだったという。主著『パリのとあるブルジョワの回想録』
(1853〜1955 年刊)
。
文字通り「村人風」の意。このソースの他にもこの名称を冠した料理はあるが由来などは不明。
本書には「仔牛の茶色いジュ」のレシピはあるが、ブロンド色のものについては記述がない。
2 つある作り方のうちの 1 の方。
ルイ 15 世の養育係を務めたヴィルロワ元帥 François de Villeroi の名を冠したものとされる。

40
【原注】このソースの唯一の使い途は、素材をこ
のソースで包み込んでから、イギリス式パン粉
衣を付けて揚げるものだ。この方法で調理した
ものは常に「ヴィルロワ風」の名称となる。こ
のソースは、古典料理において「隠れたソース」
と呼ばれていたもののうちの典型例と言える。

スビーズ入りソース・ヴィルロワ

Sauce Villeroy Soubisée

ソース・アルマンドに 1/3 量のスビーズのピュ
レ1) を加え、上記と同様に煮詰めて作る。
このソースを付ける素材や仕立てに合わせて、
ソース 1 L あたり 80〜100 g のトリュフのみじ
ん切りを加えることもある。

トマト入りソース・ヴィルロワ

Sauce Villeroy tomatée

標準的なソース・ヴィルロワとまったく作り方
は同じだが、ソース・アルマンドの 1/3 量の上

I.

ソース

Sauces

等で真っ赤なトマトピュレを加えて作る。

白ワインソース

Sauce vin blanc

このソースには以下の 3 種類の作り方がある。
1. 魚料理用ヴルテ 1 L に、ソースを合わせる魚で
とったフュメ 2 dL と、卵黄 4 個を加える。2/3
量まで煮詰め、バター 150 g を加える。この「白
ワインソース」は、仕上げにオーブンに入れて
照りをつける魚料理に合わせる。
2. 良質の魚のフュメ 1 dL を半分にまで煮詰める。
卵黄 5 個を加え、オランデーズソースを作る
際の要領で、バター 500 g を加えてよく乳化さ
せる。
3. 卵黄 5 個を片手鍋2) に入れて溶きほぐし、軽く
温めてやる。バター 500 g を加えて乳化させて
いく途中で、上等な魚のフュメ 1 dL を少しず
つ加えていく3) 。

1) ソース・スビーズは濃度があるのでピュレと呼んだと考えていいだろう。クリ coulis は「やや水分の多いピュレ」と同義だか
らだ。

2) casserole カスロール。
すで

3) いずれの作り方にも白ワインが出てこないのは、それぞれで使われている魚のフュメにおいて 既に白ワインを用いている
から。

41

イギリス風ソース(温製)

イギリス風ソース(温製)1)

Sauces Anglaises Chaudes
クランベリーソース2)

Sauce aux Airelles (Cranberries-Sauce)
クランベリー 500 g を 1 L の湯で、鍋に蓋をし
て茹でる。果肉に火が通ったら、湯をきって、
目の細かい網で裏漉しする。
こうして出来たピュレに茹で汁を適量加えてや
や濃度のあるソースの状態にする。好みに応じ
て砂糖を加える。
このソースは市販品があり3) 、水少々を加えて
温めるだけで使える。
……七面鳥のロースト用。

アルバートソース4)

Sauce Albert

(Albert-Sauce)
すりおろしたレフォール5) 150 g に白いコンソ
メ 2 dL を注ぎ、弱火で 20 分間煮る。
イギリス式バターソース 3 dL と生クリーム 2
1/2 dL、パンの白い身の部分 40 g を加える。強
火にかけて煮詰め、木ヘラで圧し絞るように
しながら布で漉す6) 。卵黄 2 個を加えてとろみ

を付け7) 、塩 1 つまみとこしょう少々で味を調
える。
仕上げに、マスタード小さじ 1 杯をヴィネガー
大さじ 1 杯で溶いてから加える。
……牛肉、主としてフィレ肉のブレゼに添える。

アロマティックソース

Sauce aux Aromates (Aromatic-Sauce)
コンソメ 1/2 L に、タイム 1 枝、バジル 4 g、サリ
エット8) 1 g、マジョラム 1 g、セージ 1 g、シブ
レット9) 1 を刻んだもの 1 つまみ、エシャロッ
ト10) 2 個のみじん切り、ナツメグ少々、大粒の
こしょう 4 個を入れて、10 分間煎じる11) 。

シノワ12) で漉し、バターで作った13) ブロンドの
ルー 50 g を入れてとろみを付ける。数分間沸
かしてから、レモン 1/2 個分の搾り汁と、みじ
ん切りにして下茹でしておいたセルフイユ14)
とエストラゴン15) 計大さじ 1 杯を加えて仕上
げる16) 。
……大きな魚まるごと 1 尾のポシェあるいは

1) この節では初版で 31、第二版は 33、第三版と第四版で 30 のレシピが掲載されている。1907 年刊の英語版 A Guide to Modern
Cookery でこの節に相当する “Hot English Sauces” には 10 のレシピしか掲載されていない。この大きな数の差をどう解釈する

2)
3)
4)

5)
6)
7)

8)
9)
10)
11)
12)
13)

14)
15)
16)
1)

かは意見の分かれるところだろうが、対象読者がフランス人であるかイギリス人であるかという違いを意識し、ニーズに応え
るかたちをとったと考えるのが妥当だろう。ただし、あくまでもエスコフィエあるいは共同執筆者の解釈を経た「イギリス風」
のソースがほとんどであることは、例えば「ローバックソース」においてソース・エスパニョルを用いていること、つまりは
エスコフィエが構築したソースの体系に組み込まれ得るものであることから判断がつく。
英語の cranberry はツルコケモモ(学名 Vaccinium oxycoccos)であり、フランス語 airelles rouges はコケモモ(学名 Vaccinium
vitis-idaea L.)で、非常によく似た近縁種であり、しばしば混同される。本書でもとくに区別されていない。
ソース・ロベール・エスコフィエなどのようなエスコフィエブランドの商品というわけではないと思われる。
ザクセン=コーブルク=ゴータ公アルバート王配(ヴィクトリア女王の夫)
(1819〜1861)のこと。女王エリザベス二世の高祖
父。本書序文 p.ii において触れられている料理人エルーイがアルバート王配に仕えていたことがある。なお、本書に掲載され
ていないが、Sole Albert「舌びらめ アルベール」という料理がある。しかしながら、これはパリのレストラン、マキシムズ
Maxim’s でメートルドテルを務めたアルベール・ブラゼール Albert Blazer の名を冠したもので 1930 年代に創案されたもの。
このソースとはまったく関係がないことに注意。
raifort ホースラディッシュ、西洋わさび。
二人で作業すると容易。ヴルテ訳注参照。
このソースの特徴として、イギリスのローストビーフに欠かせないものとされるレフォール(ホースラディッシュ)を用いて
いることの他に、とろみ付けにパンと卵黄を使っている点にも注目すべきだろう。とろみ付けの要素としてはきわめて中世料
理風と言ってもいい。ただし、中世の料理では、パンはこんがりと焼いてからヴィネガーなどでふやかしてよくすり潰し、さ
らに布で漉してとろみ付けに用いるのが一般的だった。パンの白い身の部分をそのまま使えるということは、それだけ小麦の
精白度合いが高いということでもある。
シソ科の香草。サマーセイヴォリー。和名キダチハッカ。
ciboulette チャイヴ。アサツキと訳されることもあるが、日本のアサツキとは風味が違うので注意。
玉ねぎによく似ているが小さくて水分量の少ない香味野菜。英語由来のシャロットと呼ばれることも。日本の青果マーケット
に見られる「エシャレット」はらっきょうの若どりであってまったく別のもの。
infuser アンフュゼ。
円錐形で取っ手の付いた漉し器。
本書第四版ではルーは必ずバターを用いる指示がなされているが、初版から第三版までは、バターもしくはグレスドマルミッ
ト(コンソメなどを作る際に浮いてきた油脂をすくい取って漉したもの)を使うという指示だっため、
「バターで作った」とい
う記述がこのように残っているレシピが散見される。
cerfeuil チャービル。
estragon フレンチタラゴン。
このソースで用いられている香草類の種類の多さは特筆に値するだろう。ブラウン系の派生ソースにある香草ソースおよびホ
ワイト系派生ソースの香草ソースと比較されたい。
relevé ソース・ディプロマット訳注参照。

42

I.

牛、羊肉の大掛かりな仕立て(ルルヴェ1) )に
添える。

バターソース

Sauce au Beurre à l’anglaise

(Butter Sauce)

フランスのソース・オ・ブールと同様に作るが、
より濃度の高い仕上がりにする点が違う。分量
は、バター 60 g、小麦粉 60 g、1 L あたり塩 7 g
を加えて沸かした湯 3/4 L。レモンの搾り汁 5〜
6 滴、バター 200 g。とろみ付け用の卵黄は用い
ない。

ケイパーソース

Sauce aux Câpres

(Capers-Sauce)
上記のバターソース 1 L あたり大さじ 4 杯のケ
イパーを加えたもの。
……茹でた魚に添える。また、イギリス風2) に
茹でた仔羊腿肉には欠かせない。

セロリソース

Sauce au Céleri (Celery-Sauce)
セロリ 6 株を掃除して、芯のところだけを使

う3) 。これをソテー鍋に並べ、白いコンソメを
セロリがかぶるまで注ぐ。ブーケガルニとク
ローブを刺した玉ねぎ 1 個を入れ、弱火で加熱
する。
セロリの水気をきり、鉢に入れてすり潰す。こ
れを布で漉す。こうして出来たセロリのピュレ
と同量のクリームソースを加える。セロリの茹
で汁を煮詰めたものを大さじ 2〜3 杯加える。
沸騰しない程度に温め、すぐに提供しない場合
は湯煎にかけておく。
……茹でた鶏または鶏のブレゼに添える。

ローバックソース4)

Sauce Chevreuil

(Roe-buck Sauce)

中位の大きさの玉ねぎを 1 cm 角くらいの粗み
じん切5) りにし、生ハム 80 g も同様に刻む。こ
れをバターで軽く色付くまで炒める。ブーケガ

ソース

Sauces

ルニを入れ、ヴィネガー 1 1/2 dL を注ぎ、ほと
んど完全に煮詰める。
ソース・エスパニョル 3 dL を注ぎ、15 分程弱
火にかけて、浮いてくる不純物を取り除く6) 。
15 分経ったら、ブーケガルニを取り出し、ポル
ト酒コップ 1 杯7) とグロゼイユのジュレ大さじ
1 杯強を加えて仕上げる。
……大型ジビエ肉8) の料理に添える。

クリームソース

Sauce Crème à l’anglaise (Cream-Sauce)
バター 100 g と小麦粉 60 g で白いルーを作る。
白いコンソメ 7 dL でルーをのばし、マッシュ
ルームのエッセンス 1 dL と生クリーム 2 dL を
加える。
火にかけて沸騰させる。小玉ねぎ 1 個とパセリ
1 束を加え、弱火で 15 分程煮込む。提供直前に
小玉ねぎとパセリは取り出す。
……仔牛の骨付き背肉の塊9) のローストに合わ
せる。

シュリンプソース

Sauce Crevettes à l’anglaise (Shrimps-Sauce)
カイエンヌ少量を加えて風味を引き締めたイギ
リス風バターソース 1 L に、アンチョビエッセ
ンス小さじ 1 杯と殻を剥いた小海老10) の尾の
身 125 g を加える。
……魚料理用。

デビルソース

Sauce Diable (Devilled Sauce)
1 1/2 dL のヴィネガーにエシャロットのみじん
切り大さじ 1 杯強を加えて、半量になるまで煮
詰める。ソース・エスパニョル 2 1/2 dL とトマ
トピュレ大さじ 2 杯を加え、5 分間程煮る。
仕上げに、ダービーソース11) 大さじ 1 杯とカ
イエンヌ 1 つまみ強を加え、シノワ12) か布で
漉す。

2) à l’anglaise アラングレーズ。茹でる(下茹でも含む)場合には、塩を加えた湯で茹でることを指す。なお、パン粉衣 pané à
l’anglaise という場合には、現代の日本でもなじみのある、小麦粉、溶きほぐした卵、パン粉の順で衣を付けて揚げることを言

3)
4)
5)
6)
7)
8)
9)
10)
11)

12)

う。調理法全体を通しての規則性はなく、あくまでも「イギリス風に由来する」または「イギリス風」を意味するものなので
注意。
緑色が薄いタイプのセロリは中心部が自然に軟白され、柔らかいので、フランス料理でも非常に好まれる。
roebuck 英語でノロ鹿のこと。
paysanne ペイザンヌに切る、と言う。主として野菜について言うが、1 cm 角で厚さ 1〜2 mm 程度。
dépouiller デプイエ ≒ écumer エキュメ。
約 1 dL。
この場合は当然、ノロ鹿の料理だが、フランス料理でノロ鹿は時間をかけてマリネしてから調理し、そのマリナード(漬け汁)
もソースに用いるのと比べると非常にシンプルなソースになっている点が興味深い。
carré カレ。もとは「四角形」の意。料理では、肋骨ごとに切り分けていない仔牛および仔羊の骨付き背肉の塊を指す。
フランス語は crevette(s) クルヴェット。ソース・クルヴェット訳注参照。
原文 Derby-sauce、1940 年代にアメリカで市販されていたのは確認されているが、ここで言及されているのとまったく同じか
は不明。なお、初版および第二版でこの部分は「ハーヴェイソースとウスターシャーソース各大さじ 1 杯」
、第三版では「ハー
ヴェイソースとエスコフィエソース各大さじ 1」となっている。
「ダービーソース」が当初「エスコフィエソース」として商品
化された後に何らかの事情により名称変更がなされたという可能性も否定できないが、第二版および英語版においてソース・
ディアーブル・エスコフィエおよびソース・ロベール・エスコフィエ、さらに第二版と同年刊の英語版のみに掲載されている
Sauce aux Cerises Escoffier ソース・オ・スリーズ・エスコフィエのように既にエスコフィエブランドの既製品ソースがあるた
めに、矛盾が生じてしまう。第三版の記述がソース・ディアーブル・エスコフィエを意味していると解釈すれば矛盾は生じな
いだろう。ハーヴェイソースについてはブラウングレイヴィー訳注参照。
円錐形で取っ手の付いた漉し器。

43

イギリス風ソース(温製)

100 g を加える3) 。

スコッチエッグソース

Sauce Ecossaise (Scotch eggs Sauce)
バター 60 g と小麦粉 30 g、沸かした牛乳 4 dL
でベシャメルソースを用意する。味付けは通
常どおりにすること。ソースが沸騰したらすぐ
に、固茹で卵の白身 4 個を薄切りにした1) もの
を加える。
提供直前に、茹で卵の卵黄を目の粗い漉し器で
漉したものを混ぜ込む。
たら

……鱈には欠かせないソース。

フェンネルソース2)

Sauce au Fenouil

(Fennel Sauce)
普通に作ったバターソース 2 1/2 dL あたり、細
かく刻んで下茹でしたフェンネル大さじ 1 杯を
加える。
……このソースは主として、グリルあるいは茹
でた鯖に合わせる。

グーズベリーソース

Sauce aux Groseilles (Gooseberry Sauce)
グーズベリー 1 L の皮を剥いて洗い、砂糖 125
g と水 1 dL を加えて火にかける。目の細かい漉
し器で裏漉しする。
……このピュレはグリルした鯖に合わせる。

ロブスターソース

Sauce Homard à l’anglaise

……魚料理用。

牡蠣入りソース

Sauce aux Huîtres (Oyster Sauce)
バター 20 g と小麦粉 15 g でブロンドのルーを
作る。
このルーを、牛乳 1 dL と生クリーム 1 dL で溶
く。塩 1 つまみを加えて調味し、火にかけて沸
騰させたら弱火にして 10 分間煮る。
布で漉し、カイエンヌを加えて風味を引き締め
る。沸騰しない程度の温度で火を通して周囲を
きれいに掃除した牡蠣の身 12 個を 1 cm 程度の
厚さに切って、ソースに加える。
……もっぱら茹でた魚4) に添える。

牡蠣入りブラウンソース

Sauce brune aux Huîtres (Brown Oyster Sauce)
上記の牡蠣入りソースと作り方はまったく同じ
だが、牛乳と生クリームではなく、茶色いフォ
ン 2 dL を使うこと。
……このソースは、グリル焼きした肉や、肉の
プディング5) 、生鱈のグリル焼きに合わせる。

ブラウングレイヴィー

Jus coloré

(Lobster Sauce)

カイエンヌを加えて風味を引き締めたベシャ
メルソース 1 L に、アンチョビエッセンス大さ
じ 1 杯と、さいの目に切ったオマールの尾の身

(Brown Gravy)

イギリス風バターソース 4 dL に、ローストの肉
汁 2 dL とケチャップ6) 大さじ 1/2 杯、ハーヴェ
イソース7) 大さじ 1/2 杯を加える。
……もっぱら仔牛のローストに添える。

1) émincer エマンセ、薄切りにすること。
2) 日本語でフェンネルと呼ばれるものは、
(a)主に香草として葉を利用するタイプ fenouil sauvage(フヌイユソヴァージュ)と、
(b) 白く肥大した株元を食用とするフローレンス・フェンネル fenouil de florence(フヌイユ・ド・フロロンス)または fenouil
bulbeux(フヌイユビュルブー)と呼ばれる 2 種がある。本書ではどちらを用いるのか明記されていないことが多いが、一般
に、葉を利用するタイプは香りが非常に強く、フローレンスフェンネルの葉も食用可能だが、香りは比較的おとなしい。

3) ホワイト系派生ソースの節にあるソース・オマールを比較すると、このソースのシンプルさが際立って見えるが、ベシャメル

4)
5)

6)

7)

を基本ソースにしている点で、やはり「ソースの体系」に組込まれたものであり、純粋にイギリス料理由来というわけでもな
いと思われる。なお、このレシピは初版からほぼ異同がなく、1907 年の英語版には含まれていない。
初版および第二版では「もっぱら茹でた生鱈に合わせる」とある。このレシピも 1907 年の英語版には掲載されていない。
本書にはイギリス風の肉料理としてのプディングのレシピも掲載されている。ビーフステークのプディング、ビーフステーク
とキドニーのプディング、ビーフステークと牡蠣のプディング。なお、本書での beefsteak ビーフステークとは肉の切り方の
ことを意味しており、グリル焼きあるいはソテーしたもののことではない。ここでは厚さ 1 cm 程度にスライスした牛肉のこ
とを指している。
ここではマッシュルームケチャップのこと。マッシュルームの薄切りを塩、こしょう、香辛料で 5〜6 日漬け込み、その絞り汁
を沸かして香辛料とトマトを加えて味を調え、漉してから保存する (『ラルース・ガストロノミック』初版)。なお、ketchup は
語源が、中国福建省アモイの方言で、香辛料を加えて醗酵させた魚醤の一種を意味するの kôe-chiap または kê-chiap(鮭汁)
だとされている。これがマレー語に伝播し、kecap(発音はケーチャプ)と変化し、17 世紀頃、現在のシンガポールおよびマ
レーシアを植民地支配していたイギリス人の知るところとなった。イギリスにも古くから魚醤の類はあり、そのバリエーショ
ンのひとつとして、マッシュルームとエシャロットを添加した魚醤を ketchup と呼ぶようになった。やがて魚醤文化の衰退と
ともに、ケチャップと呼ばれるものはマッシュルームが主原料となり、いわゆるマッシュルームケチャップが 18 世紀頃に成
立したとされる。これは、塩漬けにして醗酵させたマッシュルームの搾り汁にメース、ナツメグ、こしょうなどの香辛料を加
えて煮詰め、漉したもの。これにトマトを添加するようになった時期は判然としないが、おそらくは 19 世紀初頭だったと思わ
れる。フランスの料理書では 1814 年刊ボヴィリエ『調理技術』第 1 巻に作り方が詳述されているが (p.72)、トマトは用いない
マッシュルームケチャップのバリエーション。トマトを主原料としたケチャップは、アメリカのハインツ Heinz が 1876 年に
ハインツ・トマトケチャップを製品化して以降、徐々に広まっていった。このため、英語圏で成立、普及したトマトケチャッ
プがフランスにおいて知られるようになるのは、少なくとも上記『ラルース・ガストロノミック』初版(1938 年)よりも後の
ことであり、おそらくは第二次大戦後だろうと思われる。
Herwey Sauce 19 世紀〜20 世紀前半にかけて既製品が流通していた。現在は商品としては存在していないと思われる。原料は
アンチョビ、ヴィネガー、マッシュルームケチャップ、にんにく、大豆由来原料(詳細不明、おそらくは大豆レシチンすなわ
ち大豆油かと思われる)、カイエンヌ、コチニール色素などであったという。

44
エッグソース

Sauce aux OEufs à l’anglaise (Eggs Sauce)
小麦粉 60 g とバター 30 g で白いルーを作る。
あらかじめ沸かしておいた牛乳 1/2 L で溶く。
塩、白こしょう、ナツメグ少々で味を調える。火
にかけて沸騰したら弱火にして 5〜6 分間煮る。
固茹で卵 2 個を白身、黄身ともに、さいの目に
刻んでソースに加える。
……ハドック1) やモリュ2) の料理に合わせるの
が一般的。

エッグアンドバターソース

Sauce aux OEufs au beurre à l’anglaise (Eggs
and Butter Sauce)
バター 250 g を溶かし、塩適量、こしょう少々、
レモン 1/2 個分の搾り汁、固茹で卵 3 個を熱い
うちに大きめのさいの目に刻んだもの、みじん
切りにして下茹でしたパセリ小さじ 1 杯を加
える。
…… 茹 で た 魚 の 大 き な 仕 立 て の 料 理3) に 添
える。

オニオンソース

Sauce aux Oignons (Onions Sauce)
玉ねぎ 200 g を薄切りにする4) 。牛乳 6 dL に塩、
こしょう、ナツメグを加えて玉ねぎを茹でる。
火が通ったらすぐに、玉ねぎの水気をしっかり
きって、みじん切りにする。
バター 40 g と小麦粉 40 g で白いルーを作る。
これを玉ねぎを茹でた牛乳でのばす。火にか
けて沸騰させ、みじん切りにした玉ねぎを加
える。ソースはとても濃い状態になっているこ
と。そのまま 7〜8 分煮る。
……このソースは何にでも合わせられる。うさ
ぎ、鶏、牛などの胃や腸の料理5) 、茹でたマト
ン、ジビエのブレゼなど……このソースは必ず
合わせる肉の上にかけてやること6) 。

ブレッドソース

Sauce au Pain (Bread Sauce)
牛乳 1/2 L を沸かし、フレッシュなパンの白い
身 80 g を投入する。塩 1 つまみ強、クローブ

I.

ソース

Sauces

1 本を刺した小玉ねぎ 1 個、バター 30 g を加
える。
弱火で 15 分程煮る。玉ねぎを取り出し、泡立
て器でソースが滑かになるまでよく混ぜる。生
クリーム約 1 dL を加えて仕上げる。
……鶏やジビエ(鳥類)のローストに合わせる。
【原注】このブレッドソースを鶏のローストに
添える場合は、ローストの肉汁もソース入れ
で添えること。ジビエの場合はさらに、よく乾
かしたパンを揚げた「ブレッドクランプス」を
ソース入れに入れて添えること。また、フライ
ドポテトの皿も添えること。

フライドブレッドソース

Sauce au Pain frit (Fried bread Sauce)
コンソメ 2 dL に、小さなさいの目に切った脂
身のないハム 80 g とエシャロット 2 個のみじ
ん切りを加える。弱火で 10 分間煮る7) 。
その間に、バター 50 g を熱してパンの身 50 g
を揚げておく。提供直前に、揚げたパンをコン
ソメに入れる。パセリのみじん切り 1 つまみと
レモンの搾り汁少々で仕上げる。
…… このレシピは小鳥8) のロースト用。

パセリソース

Sauce Persil (Persley Sauce)
イギリス風バターソース 1/2 L に、パセリの香
りを煮出した湯9) 1 dL を加える。みじん切りし
て下茹でした10) パセリの葉大さじ 1 杯強を加
えて仕上げる。
……仔牛の頭肉、仔牛の足、脳などに合わせる。

魚料理用パセリソース11)

Sauce Persil pour Poissons
白いルー 60 g を、このソースを合わせる魚に火
を通すのに使ったクールブイヨン 1/2 L でのば
す。クールブイヨンはパセリの香りをしっかり
効かせたものであること。そうでない場合は、
パセリの香りを煮出した湯を加えてこのソース
の特徴をきちんと出してやること。
5〜6 分間煮て、細かく刻んで下茹でしたパセリ

1) Haddock 鱈の一種。フランス語では同じ綴りでアドックまたは églefin, aiglefin エーグルファンと呼ばれる。イギリスでは主に
塩漬けを燻製にしたものを指す。

2)
3)
4)
5)

morue モリュ。干し鱈、塩鱈のこと。生のものは cabillaud カビヨと呼ばれる。
relevé ルルヴェ。第二版序文訳注 2、およびソース・ディプロマット訳注参照。
émincer エマンセ。
tripes トリップ。主として反芻動物(すなわち牛)の胃腸の食材としての総称。日本では Tripes à la mode de Caen(トリップ
アラモードドコン)「カン風トリップ煮込み」が有名。

6) 本書におけるソースは特に指示がない場合はソース入れ(saucière ソシエール)で料理本体と別添して供すると考えておくと
いい。

7) mijoter ミジョテ。弱火で煮込むこと。
8) つぐみ(grive グリーヴ)など小さな鳥類のローストは、下処理した後に胸肉の部分を豚背脂のシートで一羽ずつ包み、数羽を
まとめて串刺しにしてローストするのが一般的だった。

9) infusion アンフュジオン< infuser アンフュゼ(煎じる、香りなどを煮出す)。なお、いわゆるハーブティは thé テよりもむし
ろ、infusion と呼ばれるのが一般的。
10) blanchir ブランシール。下茹ですること。モスカールド(葉の縮れるタイプ)のパセリは葉が厚く固くなりやすいためにこの
作業の指示が書かれているのだろう。新鮮で柔らかいパセリの葉であれば、細かく刻んでそのまま用いた方がいい結果を得ら
れる。
11) このソースは第二版から。英語名は付されていない。

45

イギリス風ソース(温製)
の葉大さじ 1 杯とレモン果汁少々で仕上げる。
アップルソース

Sauce aux pommes

(Apple Sauce)

普通にリンゴのマーマレードを作る。砂糖ごく
少なめにし、シナモンの粉末をほんの少量加え
ること。……これを提供直前に泡立て器で滑ら
かになるまでよく混ぜる。
……このマーマレードは微温い温度で供する。
鴨、がちょう、豚のローストなど、何にでも
合う。
【原注】ある種のローストにこのマーマレード
を添えるというのは、とくにイギリスに限った
ものではない。ドイツ、ベルギー、オランダで
も同様に行なわれていることだ。
これらの国では、ジビエのローストにはリンゴ
かコケモモのマーマレード、あるいは果物のコ
ンポート(冷製、温製どちらも)のいずれかを
必ず添えるものだ1) 。
ポートワインソース

Sauce au Porto (Porto Wine Sauce)
ポルト酒 1 1/2 dL にエシャロットのみじん切り
大さじ 1 杯とタイム 1 枝を加えて半量になるま
で煮詰める。オレンジ 2 個とレモン 1/2 個の搾

り汁を加える。オレンジの外皮の硬い部分を器
具でおろしたもの2) 小さじ 1 杯と塩 1 つまみ、
カイエンヌごく少量を加える。
これを布で漉し、美味しいとろみを付けた仔牛
のジュ 5 dL を加える。
……野生の鴨、その他のジビエ全般に合わせる。
【原注】このイギリス料理のソースは、フラン
スの多くの飲食店で使われている。
ホースラディッシュソース

Sauce Raifort chaude

(Horse radish Sauce)

アルバートソースの別名。
リフォームソース3)

Sauce Réforme (Reform Sauce)
ソース・ポワヴラードとソース・ドゥミグラス

を合わせ、ガルニチュールとして 1〜2 mm の
細さで短かめの千切り4) にした中位のサイズの
コルニション 2 個、固茹で卵の白身、中位の大
きさのマッシュルーム 2 個、トリュフ 20 g お
よび赤く漬けた牛舌肉5) を加える。
……このソースは「リフォーム風」羊のコト
レット6) 用。

セージと玉ねぎのソース

Sauce Sauge et Oignons (Sage and onions
Sauce)
大きめの玉ねぎ 2 個をオーブンで焼く。冷め

たら皮を剥き、みじん切りにする7) 。パンの身
150 g を牛乳に浸してから圧しつぶして水分を
抜く。これを玉ねぎにを混ぜ込む。
セージのみじん切り大さじ 2 杯と塩、こしょう
で調味する。
……これは鴨の詰め物にする。
【原注】鴨をローストした際のジュを大さじ 5〜
6 杯この詰め物に加えてソース入れで供する。
パンの身と同量の牛の脂身を茹でてみじん切り
にしたものを加えることも多い。

ヨークシャーソース8)

Sauce Yorkshire

オレンジの外皮の硬い表面だけを薄く削って細
かい千切りにしたもの大さじ 1 杯強を、ポルト
酒 2 dL でしっかり茹でる。
オレンジの皮の千切りを取り出して水気をき
る。ポルト酒の入った鍋に、ソース・エスパ
ニョル大さじ 1 杯強と、グロゼイユのジュレも
大さじ 1 杯強を加える。粉末のシナモン少々
と、カイエンヌ少々を加える。
わずかの時間、煮詰める。布で漉し、オレン
ジ 1 個の搾り汁と千切りにした皮を加えて仕上
げる。
……仔鴨のローストやブレゼ、およびハムのブ
レゼに添える。

1) 果物のコンポートへの言及は第三版から。また、1907 年の英語版 A Guide to Modern Cookery には原注そのものがない。英語
版のレシピは「中位の大きさのリンゴ 2 ポンド(約 900 g)を四つ割りにして皮を剥き、芯を取り除いて刻む。これをシチュー
鍋に入れ、大さじ 1 杯の砂糖とシナモン少々、水を大さじ 2〜3 杯加える。蓋をして弱火にかけて煮る。提供直前に泡立て器で
滑らかにする。このソースは微温い温度で、鴨、がちょう、うさぎのローストなどに添える」(p.45) となっている。
2) zeste ゼスト。オレンジやレモンの外皮の硬い部分(ごく表面の部分だけ)を薄く剥いて千切りにしたり、この場合のように
râpe ラップという器具でおろして風味付けに用いる。
3) 19 世紀ロンドンの会員制クラブ、リフォームでフランス人料理長アレクシス・ソワイエが考案したソース。このような場合、
Reform を固有名詞扱いとして英語のままとするのが現代のフランス語における考え方だが、20 世紀初頭にはまだ、固有名詞
さえもフランス語的に言い換えることがごく普通であった。

4) julienne courte ジュリエンヌクルト。
5) langue écarlate ラングエカルラット。
6) côtelette コトレット。羊、仔牛、仔羊の肋骨付きでカットした背肉のこと。牛の場合は côte コットと呼ばれるが、côte という
語そのものは元来「肋骨」の意。côtelette の -ette は「縮小辞」といって、より小さいものという意味を付加している。つま
り、牛の côte よりも小さいから côtelette となる。なおこの語が日本語の「カツレツ」の語源だといわれている。
7) hacher アシェ。
8) このレシピは初版からほぼ異同がなく(初版ではソース名が Yorkshire Sauce だったことと、「仔鴨とハムに合わせる」だった
のが第二版で現在とまったく同じになることのみ)、原注もない。1907 年版の英語版にも掲載されていないが、1903 年アメリ
カ、シカゴで刊行された『スチュワードハンドブック』のソースの項目のなかに、
「ヨークシャーソース……ハム用のオレンジ
ソース。エスパニョル、カラント(=グロゼイユ)ゼリー、ポートワイン、オレンジジュース、茹でて千切りにしたオレンジの
外皮」(p.434) とあり、エスコフィエの『料理の手引き』初版当時には既にアメリカで知られているソースであったことがわか
る。ただしイギリスのヨークシャー州とどのような関係あるいはソース名の由来があるのかは不明。

46

I.

ソース

Sauces

冷製ソース

Sauces Froides
アイヨリ/プロヴァンスバター1)

Sauce Aïoli, ou Beurre de Provence
にんにく 4 片(30 g)を鉢2) に入れて細かくす
り潰す。ここに生の卵黄 1 個、塩 1 つまみを加
える。混ぜながら、2 1/2 dL の油3) を初めは 1 滴
ずつ加えていき、ソースがまとまりはじめたら
糸を垂らすようにして加える。この作業は鉢に
入れたままで、棒をはげしく動かして行なう。
攪拌する作業の途中、レモン 1 個分の搾り汁と
冷水大さじ 1/2 杯を少しずつ加えて、ソースが
固くなり過ぎないようにしてやること。
【原注】このアイヨリソースが分離してしまい
そうな時は、卵黄をさらに 1 個足して、マヨ
ネーズと場合と同様に修正すること。

アンダルシア風ソース4)

Sauce Andalouse

ごく固く仕上げたソース・マヨネーズ 3/4 L に、
上等な赤いトマトピュレ 2 1/2 dL を加える。小
さなさいの目に切ったポワヴロン5) 75 g を仕上
げに加える。

ソース・ボヘミアの娘6)

Sauce Bohémienne

陶製の容器に、濃厚でよく冷やしたベシャメル
ソース 1 1/2 dL と卵黄 4 個、塩 10 g、こしょう
少々、ヴィネガー数滴を入れる。
泡立て器で全体をよく混ぜ、標準的なマヨネー

ズを作るのとまったく同じ要領で、油 1 L とエ
ストラゴンヴィネガー大さじ 2 杯程を加える。
……仕上げに、マスタード大さじ 1 杯を加える。

ソース・シャンティイ7)

Sauce Chantilly

酸味付けにレモンを用いて、固く仕上げたソー
ス・マヨネーズ 3/4 L を用意しておく。提供直前
に、ごく固く泡立てた生クリーム大さじ 4 杯8)
ととの

を加える。その後、味を調える。
……もっぱら、アスパラガスの冷製、温製に添
える。
【原注】生クリームを加えるのは、このソース
を使うまさにその時にすること。前もって加え
ておくと、ソースが分離してしまう恐れがある
ので注意。

ジェノヴァ風ソース9)

Sauce Génoise

殻と皮を剥いたばかりのピスタチオ 40 g と、松
の実 25 g、松の実がない場合はスイートアーモ
ンド 20 g を鉢に入れてよくすり潰し、冷めた
ベシャメルソース小さじ 1 杯程度を加えて練っ
てペースト状にする。これを目の細かい網で裏
漉しする。陶製の容器に卵黄 6 個、塩 1 つま
み、こしょう少々を入れる。泡立て器でよく混
ぜる。油 1 L と中位の大きさのレモン 2 個の搾

1) aïoli(アイヨリ)は ailloli とも綴るが、ail(にんにく)+ oil(油)の合成語。19 世紀前半には既にアカデミーフランセージの
辞書に収録されており、広く知られていたようだ。茹でた塩鱈やじゃがいも、茹で卵、アーティチョーク、さやいんげんなど
に合わせることが多い。Beurre de Provence(ブールドプロヴォンス)の名称を持つレシピとしてもっとも古いと思われるも
のは、1758 年刊マラン『コモス神の贈り物』の「鳩のプロヴァンスバター添え」だろう (t.2, pp.290-230)。ただし、このレシピ
は卵黄と油の乳化ソースではない。また、オリーブオイルそのものを beurre de Provence プロヴァンスバターと呼ぶことも多
かった。実際、オリーブオイルは品質にもよるが 5 ℃以下でほぼ固形化する。
2) この種の作業には、大理石製のものが伝統的によく用いられる。。
3) 原書ではとくに言及されていないが、プロヴァンス地方ではオリーブオイルを用いることが一般的。
4) いうまでもなくスペインのアンダルシア地方のことだが、トマトやオリーブオイル、チョリソなどこの地方を「想起」させる
食材が使われている料理などがこの名称になっている傾向がある。ところが、トマトにしろオリーブオイルにしろアンダルシ
ア地方特有というわけではなく、アンダルシアが産地として有名なチョリソくらいしか、料理名の根拠となり得るものはない。
逆に言えば、アンダルシア地方の食文化との関係は、そこに用いられている食材以外にはないものと考えてもいい。料理名に
付けられた地方名がとりたてて根拠や由来のないものであることを示す一例。
5) Poivron いわゆる日本で青果として輸入されているパプリカ(肉厚の辛くないピーマン)とほぼ同じものだが、香辛料として
用いられる粉末のパプリカと混同を避けるため、あえてフランス語をそのままカタカナに訳した。
6) アイルランド出身の作曲家マイケル・ウィリアム・バルフェ Michael William Balfe(1808〜1870)のオペラ The Bohemien Girl
『ボヘミアの少女』のフランス語版タイトル La Bohémienne『ラボエミエーヌ』にちなんだものと言われている。この作品はロ
ンドンで 1843 年初演、1862 年に四幕形式のフランス語版がパリのオペラ=コミック劇場で上演され、大ヒットしたという。こ
の名を冠した料理はいくつかあるが、いずれもチェコのボヘミア地方とは何の関連性も認められないため、オペラの人気作品
にあやかった料理名と考えるのが妥当だろう。
7) パリ近郊の地名。詳しくはホワイト系派生ソースのソース・シャンティイ訳注参照。
8) 大さじ 1 杯= 15 cc という概念にとらわれないよう注意。原文は、大きなスプーンで泡立てた生クリームをざっくりと 4 回加え
るイメージで書かれている。本書における通常のソースの仕上がり量が約 1 L であることを考慮すると、最低でも 100 mL 以
上は加えることになるだろう。
9) あまり明確な由来はないが、ジェノヴァが地中海に面した港町であり、このソースが魚料理用であるという点で一応の説明は
つくだろう。
1) 明記されていないが、ソースをしっかりと乳化させるためにはマヨネーズと同様に作業すること。

47

冷製ソース
り汁を少しずつ加えてよく混ぜて乳化させてい
く1) 。仕上げにハーブのピュレ大さじ 3 杯を加
える。これは、パセリの葉とセルフイユ、エス
トラゴン、時季が合えばサラダバーネットを同
量ずつ用意し、強火で 2 分間下茹でしてから湯
をきり、冷水にさらしてから水気を強く絞り、
裏漉しして作っておく。
……冷製の魚料理全般に合わせられる。

ソース・グリビッシュ

2)

Sauce Gribiche

茹であがったばかりの固茹で卵の黄身 6 個を
陶製のボウルに入れ、マスタード小さじ 1 杯、
塩 1 つまみ強、こしょう適量を加えてよく練
り、滑らかなペースト状にする。植物油 1/2 L と
ヴィネガー大さじ 1 1/2 杯を加えながらよく混
ぜて乳化させる。仕上げに、コルニションとケ
イパーのみじん切り計 100 g と、パセリとセル
フイユ、エストラゴンのみじん切りのミックス
を大さじ 1 杯、短かめの千切りにした固茹で卵
の白身 3 個分を加える。
……冷製の魚料理に添えるのが一般的。

レフォール風味のソース・グロゼイユ

Sauce Groseilles au Raifort

ポルト酒 1 dL にナツメグ、シナモン、塩、こ
しょう各 1 つまみを加え、を 2/3 量まで煮詰め
る。溶かしたグロゼイユのジュレ 4 dL と細かく
すりおろしたレフォール大さじ 2 杯を加える。
(さまざまな用途に使える)

イタリア風ソース3)

Sauce Italienne

仔牛の脳半分を、香草を効かせたクールブイヨ
ンで火を通し、目の細かい網で裏漉しする。同
量の牛あるいは羊の脳でもいい。
裏漉ししたピュレを陶製の器に入れ、泡立て器
で滑らかになるまで混ぜる。卵黄 5 個と塩 10
g、こしょう 1 つまみ強、油 1 L とレモン果汁 1
個分でマヨネーズを作り、そこの脳のピュレを
加える。パセリのみじん切り大さじ 1 杯強を加
えて仕上げる。
……どんな冷製の肉料理にも合う。

マヨネーズ4)

Sauce Mayonnaise
冷製ソースのほとんどはマヨネーズの派生ソー
スだから、ソース・エスパニョルやヴルテと同
様に基本ソースと見なされる。マヨネーズの作
り方はきわめてシンプルだが、以下に述べるポ

2) 由来不明の語。ノルマンディ方言で「子どもを怖がらせるおばさん」の意味で用いられるということが分かっているのみ。19
世紀後半以降に創案もしくは一般化したソースと思われる。本書初版には当然のように既に収録されており、その後の大きな
異同もない。ただ、本書初版以前に出版された料理書においてこのソースのレシピはまだ見つかっていない。ファーヴルは
1905 年刊『料理および食品衛生事典』第二版で「ある種のレムラードにレストランで付けられた名称」と定義し、掲載してい
るレシピは本書初版のものと大差ないが、「ウスターシャソース少々も加える」となっているところが目を引く。また、1913
年初版のプルーストの長編小説『失なわれた時を求めて』の「スワン家の方へ」冒頭において「彼 (=スワン) を招いていない
夕食会のために、ソース・グリビッシュやパイナップルのサラダのレシピが必要になるや、ためらいもなく探しに行かせたり
するのだった」(p.18)。もしこの語り手の記述が正確であるなら、19 世紀末には広く知られたものであったと考えるべきだが、
小説の場合は必ずしも歴史的事実と符号するわけではないので注意が必要。
3) このソースも温製のイタリア風ソースと同様に名称にとくに由来などはないと思われる。
4) このソース名の語源には諸説あり、未だ定説と呼べるものはない。Mayonnaise という綴りそのものは 1806 年のヴィアール
『帝国料理の本』が初出で、Saumon à la Mayonnaise, Filet de Sole en Mayonnaise, Poulet en Mayonnaise の 3 つのレシピが掲
載されている。そのうちのひとつ、サーモンのマヨネーズは、筒切りにしたサーモンを茹でて冷まし、ジュレを混ぜたマヨ
ネーズをかける、という内容であり、ソースについてはマヨネーズの項を参照となっているが、どういうわけかこの本にマヨ
ネーズそのもののレシピはない。また、「鶏のマヨネーズ仕立て」におけるソースはどう見てもこんにち我々が理解している
マヨネーズとまったく違い、鶏のゼラチン質を冷し固める要素として利用したものだ。同じヴィアールの改訂版ともいうべき
『王国料理の本』
(1822 年)にはマヨネーズのレシピが掲載されている。興味深いことに「このソースにはいろいろな作り方が
ある。生の卵黄を使うもの、ジュレを使うもの、仔牛のグラスを使うものや仔牛の脳を使うもの」として、もっとも一般的な
方法として生の卵黄を使う方法が示されている。生の卵黄に攪拌しながら少しずつ油を加えていき、固くなってきたらヴィ
ネガー少々を加えてコシをきる、という方法であり、こんにち我々の知るマヨネーズに非常に近いものとなっている。また、
1814 年刊ボヴィリエ『調理技法』のソース・マヨネーズは、焼き物の器に油大さじ 3〜4 杯とエストラゴンヴィネガー 2 杯を
入れる。細かく刻んだエストラゴン、エシャロット、サラダバーネットをたっぷり加え、ジュレ大さじ 2、3 杯を加える。ソー
スがまとまって、ポマード状になったら、味を調える (p.66)、というもの。ここでも卵黄と植物油の乳化ソースとはなってい
ない。綴りについては、カレームは magner(マニェ)捏ねる、という意味の動詞から派生したものだとして、magnonnaise も
しくは magnionnaise と綴るべきだと『パリ風料理の本』で力説している。グリモ・ド・ラ・レニェールは中世フランス語で卵
黄を意味する moyeu の派生語として moyeunnaise という綴りを使っている。そのほかフランス大西洋岸の地名バイヨンヌの
形容詞 bayonnais(バヨネ)が語源だという説もある。綴りの起源についてある程度有力視されているのは、1756 年にリシュ
リュー公爵が当時イギリスに占領されていたミノルカ島のマオン港 Mahon を奪取したことにちなんで、mahonnaise と名づけ
られたというもの。ところで、植物油ではなくバターを用いるものとして、オランデーズソースの原型ともいうべきレシピが
1651 年のラ・ヴァレーヌ『フランス料理の本』に、Asperges à la Sauce blanche アスパラガスのホワイトソース添え (p.238) と
して掲載されていることや、卵黄をポタージュやラグーのとろみ付けに使うことが古くから行なわれていたことなどを総合す
ると、良質のオリーブオイルやひまわり油を利用しやすい環境にある南フランスの方がどちらかといえば、卵黄と植物油の乳
化作用を利用したソースの発達、普及しやすい環境にあったとも想像されよう。なお、この『料理の手引き』では卵黄のみを
用いたレシピとなっているが、全卵を用いる場合もある。日本の市販品でも卵黄のみを使うメーカーと全卵を使用している
メーカーが混在している。なお、マヨネーズの仕上がりは、卵黄のみか全卵を用いるかという問題もあるが、どのような植物
油を使うかにも大きく左右されるので注意。

48
イントはしっかり頭に入れておく必要がある。
材料と分量 ……卵黄 6 個、「からざ」は取り除
いておくこと。油 1 L。塩 10 g、白こしょう 1
g、ヴィネガー大さじ 1 1/2 杯または、より白い
仕上がりを目指す場合にはヴィネガーと同等量
のレモン果汁。
1. 塩、こしょう、ヴィネガーまたはレモン果汁ほ
んの少々を加えて、泡立て器で卵黄を溶く。
2. 油を最初は 1 滴ずつ加えていき、滑らかにまと
まっり始めたら、糸を垂らすようにして油を加
えていく。
3. 何回かに分けてヴィネガーもしくはレモン果汁
を少量ずつ加え、コシを切ってやること1) 。
4. 最後に熱い湯を大さじ 3 杯加える。これは乳
化をしっかりさせて、作り置きしておく必要が
ある場合でもソースが分離しないようにする
ため。
【原注】1. 卵黄だけの段階で塩こしょうをする
とソースが分離してしまうのではないかという
のは思い込みに過ぎず、実際に調理現場で作業
している者はそう考えていない。むしろ、塩を
卵黄の水分に溶かし込んでおいた方が、卵黄が
まとまりやすくなることは科学的に証明されて
いる2) 。
2. マヨネーズを作る際に、氷の上に容器を置いて
作業するも間違いだ。事実はまったく逆で、冷
気が伝わることがもっとも分離させてしまいや
すい原因だ。寒い季節には、油はやや微温めか、
せめて厨房の室温くらいにするべきだ3) 。
3. マヨネーズが分離してしまう原因としては……

I.

ソース

Sauces

1. 最初に油を入れ過ぎてしまうこと。
2. 冷え過ぎた油を使うこと
3. 卵黄の量に対して油の量が多過ぎること。
卵黄 1 個につき油を乳化させることが出来
るのは、作り置きするのには 1 3/4 dL、すぐ
に使う場合でも 2 dL が限度4) 。
コーティング用マヨネーズ

Sauce Mayonnaise collée

コーティング用マヨネーズは、マヨネーズ 7 dL
に溶かしたジュレ 3 dL を混ぜ込んだもの。野
菜サラダをあえるのに使う他、
「ロシア風」ショ
フロワの素材を覆うのにも使う。
【原注】魚料理用ソース・ショフロワの項で述
べたように、このコーティング用マヨネーズの
代わりに魚料理用ソース・ショフロワを使う方
がいい。その方がコーティング用マヨネーズを
使う場合よりも風味も見た目もよくなる。とい
うのも、コーティング用マヨネーズは、冷気に
よってゼラチンが固まるとともに収縮し、マヨ
ネーズに圧力がかかるために、ソースで素材を
覆った表面に油が浸み出してしまう5) 。こうい
うふうに浸みが出ることを防ぐには、どんな場
合でも、このコーティング用マヨネーズではな
く魚料理用ソース・ショフロワを用いることを
お勧めする6) 。少なくとも、そうするのが一般
的になりつつある。

ロシア風ホイップマヨネーズ

Sauce Mayonnaise fouettée, à la Russe
陶製かホーローの容器に、溶かしたジュレ 4 dL
とマヨネーズ 3 dL、エストラゴンヴィネガー

1) 原文 rompre le corps de la sauce ソースの粘り気をヴィネガーなどを加えることで「ゆるめる」あるいは「のばす」こと。ここ

2)
3)
4)
5)

6)

では「コシをきる」と訳したが、日本の調理用語なので注意。この作業は、一見乳化したように見えてもまだ乳化が不完全で
あるため、何回かに分けて濃度を下げ、攪拌を続けることで乳化を促進させ安定したものにするのが目的。
当時の知見であることに注意。
オリーブオイルのように、飽和温度が高い種類の油ではよく見られる現象。ひまわり油でさえも寒さで濁るので、この指摘は
正しい。
卵黄の乳化能力は含まれているレシチンの量で決まるので理論上はもっと大量の油を乳化することが可能。風味や仕上がりを
考慮に入れて、この数字はあくまでも目安と考えたほうがいい。
初版における原注は、
「コーティング用マヨネーズで覆ったものは、数時間経つと、油の露で覆われたようになってしまうこと
がある。その原因は、冷気によってゼラチンが固まる際に収縮し、その結果マヨネーズに圧力がかかり、液体である油がソー
スを覆った表面に浸みだしてくることだ。これを避けるために、コーティング用マヨネーズはこんにちでは使われなくなって
おり、我々の場合だと、かなり以前から魚料理用ソース・ショフロワを用いている (p.163)」
。第二版以降、多少の異同はある
が、ほぼ第四版の記述と同様。いずれにしても、ジュレ(親水性アミノ酸であるコラーゲンが主体)を加えたことで、親水基
と疎水基を併せ持つ卵黄レシチンの乳化作用が崩れてマヨネーズが分離した結果だということには気付いていなかったと思わ
れる。
この『料理の手引き』ではジュレを加えたマヨネーズの使用に否定的だが、カレーム『19 世紀フランス料理』では Sauce
Magnonaise として、まず最初にジュレを加えるレシピが掲載されている。概略を示すと、氷の上に置いた陶製の容器に卵黄
2 個、塩、白こしょう少々、エストラゴンヴィネガー少々を入れる。木のさじで素早くかき混ぜる。まとまってきたら、エク
ス産の油大さじ 1 杯とヴィネガー少々を、少しずつ加えていく。容器の壁に叩きつけるようにしてソースを泡立てていく。こ
の作業でマニョネーズの白さが決まるという。また、油をごく少量ずつ加えていくことを強調している。粘度が出て滑らかに
なったら、最後に油をグラス二杯(≒ 2 dL)とアスピック用ジュレをグラス 1/2 杯、エストラゴンヴィネガー適量を加えて仕
上げる、というもの(t.3, p.132. 強調は引用者による)。また、カレームは卵黄に含まれるレシチンによって乳化作用が起きる
ことを経験的にさえも理解していなかったようであり、卵黄を用いないマニョネーズのレシピも掲載されている。なかでも特
徴的なのは、
「ジュレ入りの白いマニョネーズ」のレシピで、これは氷の上に鍋を置き、大きなレードル 2 杯の白いジュレと同
量の油、レードル 1 杯のヴィネガー、塩、こしょうを入れて卵白用の泡立て器でよく混ぜ、途中何回かレモン果汁を少しずつ
加えて白く仕上げるようにする、というもの (ibid., p.133)。とりわけ舞踏会や格式ある大規模な宴席で魚のフィレや鶏のアス
ピックを飾るのに適していると述べている。

49

冷製ソース
大さじ 1 杯、おろしてさらに細かく刻んだレ
フォール1) 大さじ 1 杯を入れる。
全体を混ぜ、容器を氷の上に置いて泡立て器
でホイップする。ムース状になり、軽く固まり
始めるまで、つまりこのソースを使うのに充
分な流動性がある状態のところで作業をやめ
る2) 。……主に、野菜のサラダを型に詰めて固
めるのに用いる。

マヨネーズのバリエーション

Sauce Mayonnaise diverses

オードブルや冷製料理に合わせるのに、大型甲
殻類3) およびエクルヴィス4) の卵やクリーム状
の部分を用いたり、クルヴェット5) 、キャビア、
アンチョビなどを加えることでマヨネーズにバ
リエーションを付けることが出来る。
上記の材料のいずれかをすり潰してから少量
のマヨネーズを加えてピュレ状にして布で漉
す。これを適量のマヨネーズに混ぜ合わせれば
よい。

ソース・ムスクテール

6)

Sauce Mousquetaire
マヨネーズ 1 L に以下を加える。ごく細かいみ
じん切りにしたエシャロット 80 g を白ワイン
1 1/2 dL に加えてほとんど煮詰めたもの。溶か
したグラスドヴィアンド大さじ 3 杯、シブレッ

1)
2)
3)
4)
5)
6)
7)
8)
9)
10)

1)

ト7) を細かく刻んだもの大さじ 1 杯強。カイエ
ンヌごく少量かミルで挽いたこしょう少々で風
味を引き締める。
……羊、牛肉の冷製料理に添える。
生クリーム入りソース・ムタルド

Sauce moutarde à la crème

陶製の容器にマスタード大さじ 3 杯と塩 1 つま
み、こしょう少々とレモン果汁少々を入れて混
ぜ合わせる。ここに少しずつ、マヨネーズを作
る要領で、ごく新鮮なクレーム・エペス8) 約 2
dL を加える。
……オードブル用。
くるみ入りソース・レフォール

Sauce Raifort aux noix

陶製の器に、おろしたレフォール 250 g と皮を
剥いて刻んだくるみ 250 g、塩 5 g、砂糖 15 g、
クレーム・エペス 3 dL を入れて混ぜ合わせる。
……オンブルシュヴァリエ9) の冷製用。
ソース・ラヴィゴット/ヴィネグレット10)

Sauce Ravigote, ou Vinaigrette
材料 ……油 5 dL、ヴィネガー 2 dL、小さめのケ
イパー小さじ 2 杯、パセリ 50 g、セルフイユと
エストラゴン、シブレットを刻んだもの 40 g、
細かくみじん切りにした玉ねぎ 70 g、塩 4 g、
こしょう 1 g。以上をよく混ぜ合わせる。
……仔牛の頭や足、羊の足などに合わせる。

ホースラディッシュ、西洋わさび。
分量比率を考えると、構造的には前項の注で言及したカレームのジュレを主体としたマニョネーズに近いものと思われる。
homard オマール、langouste ラングースト(≒ 伊勢エビ)など。
ざりがにのこと。詳しくはバイエルン風ソース訳注参照。
小海老のこと。詳しくはソース・クルヴェット訳注参照。
マスケット銃兵、近衛騎兵、の意。日本でも子どもむけに翻案されたもので有名な 19 世紀のアレクサンドル・デュマ(ペー
ル)の小説 Les Trois Mousquetaires『三銃士』の「銃士」がこれに相当する。
チャイヴ。アサツキとも訳されることがあるが、日本のものとは風味が異なるので注意。
乳酸醗酵させた、とても濃度のある生クリーム。
サケ科の淡水魚。体長 20〜30 cm のものが多く、最大で 70 cm を越えるものもいるという。日本の岩魚に近い。フランスでは
アルプスのドイツおよびイタリアとの国境付近に生息するが、現代では養殖も多いという。
ラヴィゴットの意味などについてはホワイト系派生ソースのソース・ラヴィゴット参照。現代フランス語の vinaigrette(ヴィ
ネグレット)はいわゆる「ドレッシング」を指す。語源的にはヴィネガーを意味する vinaigre(ヴィネーグル)に縮小辞-ette
を付けたもの。ヴィネグレットという名称のレシピとしてもっとも古いのは 14 世紀に成立したとされる「タイユヴァン」のも
ので、いわゆる「ヴァチカン写本」に収録されており、Potaige Lyans「とろみを付けた煮物」に分類されている。概要を示す
と、menue-haste ムニュアット(豚の脾臓およびレバー半分と腎臓) をローストする。火を通しすぎないよう注意。それを切り
分けて、鍋にラード、輪切りにした玉ねぎとともに入れて、炭火にかけ、よく混ぜながら火を通す。全体によく火が通ったら、
牛のブイヨンとワインを注いで沸かす。マニゲット、サフランなどを鉢でよくすり潰したらヴィネガーでのばして加え、再度
沸騰させる。全体にとろみがあって茶色に仕上げる、というもの (p.222)。これをほぼ書き写したと思われる 14 世紀末に書か
れた『ル・メナジエ・ド・パリ』のレシピでは、肉の下処理としてよく洗ってから湯通しすること、とろみ付けの要素として
こんがり焼いたパンを香辛料とともにすり潰してワインとヴィネガーで溶く、という指示が追加されている。また、こんがり
焼いたパンを使わずに茶色に仕上げられるわけがない云々という『ル・メナジエ・ド・パリ』の筆者自身の感想も記されてい
る。15 世紀に書かれたシカールの『料理について』でも豚のレバーを焼いてから煮込みヴィネガーを加えるもので、細部は違
うが基本的に似たものであり、中世においては豚レバーを煮込んでヴィネガーで味付けしたもの、ということになる。これが
変化したと思われるのは 17 世紀。1693 年刊マシアロ『宮廷およびブルジョワ料理の本』には Boeuf, Vinaigrette というレシピ
があり、牛肉に背脂を刺して塩茹でして冷まし、ヴィネガーをひと垂らししてレモンのスライスを添えるというとても単純な
もの。ところが、1694 年のアカデミーフランセーズの辞書には既に「ヴィネガー、油、塩、こしょう、パセリ、シブール [葱]」
で作る冷製ソース」という定義がなされている。こんにち我々がイメージするヴィネグレットの定義にほぼ近い。おおむね 17
世紀以降、とりわけ後半にヴィネガーと油、塩を合わせた冷製ソースというコンセンサスが形成されたと想像される。
ソース名としての初出はおそらくムノン『ブルジョワ屋敷勤めの女性料理人のための本』
(1734)における Sauce à la rémolade
[sic.] だろう。レシピの概要は、エシャロット、パセリ、シブール、にんにく 1 片、アンチョビ、ケイパー、いずれもごく細か
く刻んで鍋に入れ、塩、粗挽きこしょうを加え、マスタード少々と油、ヴィネガーでのばす、というもの。つまり、乳化ソース
であるマヨネーズをベースにした本書のレムラードと、乳化させないという点が異なるのみで、基本的なところは共通してい

50
ソース・レムラード1)

Sauce Rémoulade
マヨネーズ 1 L に以下のものを加える。マス
タード大さじ 1 1/2 杯。コルニション 100 とケ
イパー 50g を細かく刻んで、圧して余分な水気
を絞ったもの。パセリ、セルフイユ、エストラ
ゴンのみじん切り大さじ 1 杯。アンチョビエッ
センス大さじ 1/2 杯。

ロシア風ソース

Sauce Russe

鉢に、オマール2) かラングースト3) の胴のクリー
ム状の部分 100 g とキャビア 100 g4) 、マヨネー
ズ大さじ 2〜3 杯を加えてよくすり潰す。これ
を目の細かい漉し器で裏漉しする。こうして出
来たピュレに、マヨネーズ 3/4 L を加える。大さ
じ 1 杯強のマスタードと、同量のダービーソー

I.

ソース

Sauces

ス5) を加えて仕上げる。
……魚および甲殻類の冷製料理に添える。

タルタルソース6)

Sauce Tartare

固茹で卵の黄身 8 個をすり潰して滑らかになる
までよく練る。塩、挽きたてのこしょう各 1 つ
まみ強で味付けする。油 1 L とヴィネガー大さ
じ 2 杯を加えながらソースを立てていく7) 。若
どりの玉ねぎ8) の葉またはシブレット 20 g をす
り潰してマヨネーズ大さじ 2 杯でのばし、目の
細かい網で裏漉ししたものを加えて仕上げる。
……このソースは、冷製の家禽や肉料理、魚料
理、甲殻類いずれにも合う。また、
「ディアーブ
ル(悪魔風)
」仕立ての肉料理、鶏料理にも用い
られる。

ると見ていい。ヴィアール『帝国料理の本』第 7 版(1812 年)には Rémoulade の綴りで、緑色のレムラード、レムラード、イ
ンド風レムラードと 3 種のレシピが掲載されている(この版にはまだマヨネーズのレシピは掲載されていない)
。このうちの
レムラードのレシピの概要は、グラス 1 杯のマスタードを器に入れ、エシャロットのみじん切り少々と香草少々を加える。油
を大さじ 6〜7 杯、ヴィネガー大さじ 3〜4 杯、塩、粗挽きこしょうを加える。これらをよく混ぜ合わせ、生の卵黄 2 個を加え
てさらによく混ぜる。ソースがよくまとまるように気をつけてしっかり綷。やや濃い仕上がりにする、というもの (p.53)。手
順的にはやや異なるが、卵黄を用いて乳化させようとしていることがわかる。緑のレムラードも生の卵黄を用いるなど、香草
をすり潰すことと、ほうれんそうの緑の色素を用いる以外はレムラードと同様。なお、インド風レムラードの場合は固茹で卵
の卵黄 10 個をよくすり潰して大さじ 8 杯の油を加えてさらによく混ぜる。唐辛子とターメリックの粉末、塩、こしょう、ヴィ
ネガーを加える。出来るだけ粘りが出るようにする。これを布で漉して供する (id.)。カレームに至るとさらにレシピは洗練さ
れたものとなり、Sauce Rémoulade à la Ravigote(ソース・レムラード・アラ・ラヴィゴット)では、セルフイユとエストラゴ
ン、サラダバーネット、シブレットを茹がいて水にさらした後に水気を搾り、固茹で卵の卵黄を加えてよくすり潰し、塩、こ
しょう、ナツメグで調味して、上等のマスタードを加える。ここにエクス産の油とエストラゴンヴィネガーを少しずつ加えて
いく。最後に布で漉す (t.1, p.135) というもの。いずれにしてもマヨネーズを基本ソースとして展開するという『料理の手引き』
の発想、体系化にいたるまで 100 年近くを要したことになる。
2) homard ロブスター。
3) langouste ≒ 伊勢エビ。
4) チョウザメの卵の塩蔵品のことだが、「高級」とされる順に、beluga(ベルガ)、osciètre, ossetra(オシエートル、オセトラ)、
sevruga(セヴルガ)の種類がある(ここで示した読みがなはフランス語風のもの)。
5) 初版では原注として、風味付けにマスタードを加えることを示唆しているのみ。第二版では「マスタードとウスターシャソー
スを各大さじ 1 杯強」
、第三版では「マスタードとエスコフィエソースを大さじ 1 杯強」と変遷している。なお、ダービーソー
ス Derby Sauce の 1946 年の広告には、このブランド名でバーベキューソース、ステーキソース、ウスターシャソース、ホット
ソース、チャプスイソースのラインナップが記されている。現実問題として、もし加えるとするならリー&ペリンのようなウ
スターシャソースということになろうか。
6) タルタル(タタール)=フランス人から見て東方の蛮族、というイメージで語られがちだが、カレーム『19 世紀フランス料理』
にある Sauce Rémoulade à la Mogol [Mongole の誤植と思われる]「モンゴル風ソース・レムラード」および Sauce à la Tartare
「タルタル風ソース」のレシピを見るかぎり、誤解という可能性も感じられる。前者は固茹で卵の卵黄に塩、こしょう、ナツメ
グ、カイエンヌ、砂糖、油、エストラゴンヴィネガーを合わせてピュレ状にして布で漉し、サフランを煎じた汁で美しい黄色
に染め、刻んだシブレットを加えて仕上げるというもの。後者はソース・アルマンドとマスタード同量に生の卵黄 2 個を加え、
塩、こしょう、ナツメグで調味してエクス産の油レードル 2 杯分とレードル 1/2 杯のエストラゴンヴィネガーを少しずつ加え
ながら混ぜていく。みじん切りにして下茹でしたエシャロット少々とにんにく少々、エストラゴンとセルフイユのみじん切り
を大さじ 1 杯加える、というもの (pp.137-138)。少なくともこれらのレシピにおいて、タルタルすなわち野蛮、というニュア
ンスを見出すことは出来ないだろう。なお、Steak tartare タルタルステーキのレシピは本書には掲載されておらず、1938 年の
『ラルース・ガストロノミック』初版が初出と思われる (p.1019)。
7) 明記されていないが、マヨネーズやソース・グリビッシュと同様に作業すること。
8) いわゆる「オニオンヌーヴォー」だが、日本でこの名称で流通しているものは黄色系の品種が多いのに対し、フランスでは白
系品種(oignon blanc オニョンブロン)が多く、風味が異なることに注意。
1) 緑のソース、の意。この名称のソースは中世からある。このレシピではほうれんそうとクレソンが主体になっているが、時代
とともにその材料には変遷がある。中世においては、麦の若葉をすり潰して用いるレシピが多かった。
2) 日本では、ほうれんそうを葉のみではなく葉軸とともに利用するのが一般的だが、伝統的なフランス料理において葉軸は使わ
れないのが普通。そもそも日本のほうれんそうは密植して葉が立つように仕立てて比較的若どりするのに対して、ヨーロッパ
品種のほうれんそうは株間を充分にとってロゼッタ状に葉が広がるように栽培するのが伝統的な手法。この場合、葉は肉厚に
仕上がるが、葉軸は太くて固いため可食部と見なされなかった。昔のフランスの八百屋の店先では軸を切り捨てる作業風景が
よく見られたという。現代では機械収穫に適した立性の品種が増えており、専用の大型機械で株元近くから切り取り、自動的
に軸をある程度除去して併走する巨大なコンテナに移すという収穫方法が普及しており、量産品のピュレなどに使用されて

51

冷製ソース

ソース・ヴェルト1)

Sauce Verte

ほうれんそうの葉2) 50 g とクレソンの葉 50 g、
パセリの葉とセルフイユ、エストラゴンを同量
ずつ計 50 g を、沸騰した湯に投入し、強火で
5 分間茹でる。水気をきり、手早く冷水にさら
す。しっかりと圧し絞って水気をきり、鉢に入
れてすり潰す。これをトーション3) でくるんで
きつく絞り、葉の濃い汁を 1 dL 搾りだす。
固く立てて風味付けをしたマヨネーズ 9 dL に
この緑の汁を加える。
……冷製の魚料理や甲殻類に合わせる。
ソース・ヴァンサン4)

Sauce Vencent
作り方 (1) ……オゼイユ5) の葉とパセリの葉、セ
ルフイユ、エストラゴン、シブレット、サラ
ダバーネット6) のごく若い葉をきっちり同量ず
つ、計 100 g、クレソンの葉 60 g とほうれんそ
うの葉 60 g を沸騰した湯で強火で 2〜3 分間茹
がく。
湯をきって、冷水にさらす。しっかり水分を圧
し絞って、鉢7) に入れる。茹であがったばかり
の固茹で卵の黄身 6 個を加えて滑かになるまで
すり潰す。
これを布で漉し8) 、陶製の容器に移す。塩 1 つ
まみ強とこしょう適量、生の卵黄 5 個を加え
る。油 8 dL とヴィネガー適量を加えながら混
ぜ、滑らかに乳化させる。
風味付けにダービーソース9) 大さじ 1 杯を加え

て仕上げる。
作り方 (2) ……作り方 (1) の香草と葉菜のピュ
レを作るところまでは同じ。
これにマヨネーズを加えて、同様に仕上げる。
……冷製の魚料理、甲殻類にとりわけ合う。
【原注】このソースは 18 世紀の偉大な料理人
のひとり、ヴァンサン・ラシャペルが考案した
もの10) 。

スウェーデン風ソース11)

Sauce Suédoise

酸味のある固いリンゴを薄切りにして鍋にしっ
かり蓋をして煮る。普通の果肉が甘いリンゴを
使う場合にはレモン果汁数滴を加えること。リ
ンゴを煮る際には、白ワインを大さじ数杯だけ
加えればいい。リンゴを煮るというよりは蒸気
の圧力で溶かすイメージ。
これを目の細かい網で裏漉しする。このリンゴ
のピュレを 2 1/2 dL になるまで煮詰める。充分
に冷ましてから、マヨネーズ 3/4 L を加える。
風味付けにおろした(または細かく刻んだ)レ
フォール大さじ 1 1/2 杯を加えて仕上げる。
……このソースはとりわけ豚肉の冷製に合う。
がちょうのローストの冷製にもよく合う。
【原注】リンゴの時季でない場合は、リンゴの
ピュレの代わりに房なりの緑のグロゼイユ12)
またはグーズベリー13) のピュレ 2 1/2 dL を固く
立てたマヨネーズ 1 L に加える。このソースは
マスタードで風味付けしてもいい。

いる。

3) 綿などの天然素材で出来た調理場及びホール業務に用いられる布。サイズは 50〜55 cm×70〜80 cm のものが多い。
4) 18 世紀フランスを代表する料理人のひとり、Vincent La Chapelle ヴァンサン・ラシャペル(1690 または 1703〜1745)の名を
冠したソース。チェスターフィールド伯フィリップ・スタンホープに仕えていた頃に三巻からなる『近代料理』Modern Cook
英語版を 1733 年に上梓。そのフランス語版(全 4 巻)は 1835 年に Le Cuisinier moderne のタイトルでアムステルダムで刊行。
その後、全 5 巻からなる第二版を 1742 年に自費で出版した。
5) タデ科の葉菜。日本語ではソレルとも。日本のスカンポに近いが、オゼイユは野菜として品種の選抜育成が長期にわたって行
なわれたことに留意。

6)
7)
8)
9)
10)

pimprenelle パンプルネル。

伝統的には大理石製の鉢がこの種の作業には用いられた。
このように濃度のあるものを布で漉す方法についてはヴルテ訳注参照。
ロシア風ソース訳注参照。
ソース・マヨネーズの訳注において述べたように、卵黄と植物油をベースとした乳化ソースとしてのマヨネーズの起源は判然
としないところが多いが、19 世紀初頭のヴィアールやカレームの記述を読むかぎりにおいて、卵黄レシチンによる油と水分の
乳化作用については経験レベルでさえはっきりとは認識されていなかった。このソースあるいはこれに相当するレシピがヴァ
ンサン・ラシャペルの著書に掲載されていないこと、ヴァンラン・ラシャペルがレストランの店主ではなく貴族に仕えていた
料理人、メートルドテルであったことを考慮すると、このソースの考案者が彼である可能性も、自身の名をソース名に冠した
可能性もきわめて低い。もっとも、香草の扱いを得意としていたのは事実のようで、Sauce en Ravigote(ソース・オン・ラヴィ
ゴット)だけでも 5 種のレシピが掲載されている。香草と葉菜を茹でてすり潰したピュレをこれらのソースで使用しているこ
とから、後世にこの名称が付いた、あるいはこのソースの最大のポイントがヴァンサン・ラシャペルを思わせる香草のピュレ
だと考えるのが妥当だろう。
11) 基本的にソース名はアルファベット順に掲載されているのだが、このソースだけが後からとって付けたように末尾にある。実
際、このレシピは第二版から掲載となっているが、ある程度組版が進んだ段階で急遽追加されたのだろうか。なお、1907 年の
英語版には掲載されていない。原注の最後「このソースはマスタードで風味付けしてもいい」は第四版で追加されたものだが、
他は第二版からまったく異同がなく、掲載順も変化していないのはいささか不思議なところ。
12) すぐり。ここではホワイトカラントの若どりのものを指している。
13) groseilles à maquereau(グロゼイユザマクロー)。

52

I.

ソース

Sauces

イギリス風ソース(冷製)1)

Sauces Froides Anglaises
ケンブリッジソース2)

Sauce Cambridge (Cambridge-Sauce)
固茹で卵の黄身 6 個と、よく洗ったアンチョビ
のフィレ 4 枚、小さめのケイパー大さじ 1 杯、

セルフイユとエストラゴンとシブレットのみじ
ん切りを同量ずつ計大さじ 1 杯を鉢に入れてよ
くすり潰す。マヨネーズを作る際の要領で、マ
スタード小さじ 1 杯、油 1 1/2 dL3) とヴィネガー
大さじ 1 杯を加える。カイエンヌごく少量で風
味を引き締める。ヘラでソースを混ぜながら布
で漉し4) 、ボウルに入れる。泡立て器で軽く混
ぜて滑らかにしてやり、パセリのみじん切り小
さじ 1 杯を加えて仕上げる。
カンバーランドソース5)

Sauce Cumberland (Cumberland-Sauce)
鍋にグロゼイユのジュレ大さじ 4 杯を入れて溶
かし、そこにポルト酒 1 dL と細かいみじん切

りにして下茹でして水気を絞ったエシャロット
大さじ 1/2 杯、オレンジの表皮と6) とレモンの
表皮を薄く剥いてごく細い千切りにしてしっか
り下茹でしてよく水気をきって冷ましたもの各
大さじ 1 杯、オレンジ 1 個の搾り汁、レモン 1/2
個分の搾り汁、マスタード小さじ 1 杯、カイエ
ンヌごく少量、粉末の生姜少々を加える。
全体をよく混ぜる。
……大型ジビエの冷製に合わせる。
グロスターソース7)

Sauce Gloucester (Gloucester-Sauce)
ごく固く立てたマヨネーズ 1 L に、レモン 1/2
個分の搾り汁を加えたサワークリーム 2 dL と、
細かく刻んだフェンネル 1 つまみ、ダービー

ソース8) 大さじ 2 杯を加える。
……主として肉の冷製料理に合わせる。

ミントソース

Sauce Menthe (Mint-Sauce)
ミントの葉 50 g をごく細い千切りか、みじん
切りにする。これをボウルに入れて、白いカソ
ナード9) かパウダーシュガー 25 g とヴィネガー
1 1/2 dL、塩 1 つまみ、水大さじ 4 杯を加える。
全体によく混ぜること。
……仔羊10) の温製、冷製に添える。

オックスフォードソース11)

Sauce Oxford

(Oxford Sauce)

上述のカンバーランドソースと同様に作るが、
以下の 2 点を変更する12) 。
1. オレンジとレモンの外皮は千切りにするのでは
なく、器具を用いておろすこと。
2. その量は半分にする。つまり、おろした外皮は
それぞれ大さじ 1/2 杯にすること。
……用途はカンバーランドソースと同じ。

ホースラディッシュソース

Sauce Raifort

(Cold horseradish sauce)
陶製の器に、マスタード大さじ 1 杯、細かくお
ろしたレフォール 50 g、パウダーシュガー 50
g、塩 1 つまみ、生クリーム 5 dL、牛乳に浸し
てからよく圧したパンの身 250 g、ヴィネガー
大さじ 2 杯を入れて混ぜ合わせる。

……このソースは茹でた牛肉やローストに合わ
せる。よく冷やしてから供すること。
【原注】ソースにヴィネガーを加えるのは作業
の最後とすること。

1) この節に収録されているレシピは初版から第四版まで、表現の異同はあるが、項目に変化はない。興味深いことに、1907 年刊
の英語版 A Guide to Modern Cookery においても全て掲載されている。
2) ケンブリッジはイングランド東部のケンブリッジシャーの州都。大学都市として有名。
3) マヨネーズを作る際の要領で、と表現しているのに対して油の量が少なく思われるが、初版は「油 1 dL」、第二版以降は「1 1/2
dL」となっている。
4) 濃度のあるソースを布で漉す方法についてはヴルテ訳注参照。
5) イングランド北部の旧カウンティ(行政区分、ほぼ「州」と考えていい)のひとつ。現在はウェストモーランド、ランカシャー、
ヨークシャーの一部と統合され、カンブリアとなっている。

6) zeste ゼスト。柑橘類の硬い外皮を râpe(ラプ)と呼ばれる器具を用いておろした場合にもこの語を用いる。
7) イングランド南部、グロースターシャーの州都。
8) 初版と第二版は「ウスターシャソース数滴」、第三版は「エスコフィエソース数滴」となっている。ダービーソースについては
ロシア風ソース訳注も参照のこと。

9) 通常 cassonade すなわち粗糖は褐色のものが多い。
10) 本書で仔羊 agneau(アニョー)と言う場合はほぼ例外なく乳呑仔羊、agneau de lait(アニョードレ)を意味する。現代は仔羊
という語の意味する範囲が広くなり、牧草および飼料によりある程度まで肥育した羊の赤身肉も「仔羊」として扱うが、乳呑
仔羊は白身肉なので注意。
11) イングランド東部、オックスフォードシャーの州都。英語圏では最古の大学であるオックスフォード大学を中心とした学園都
市として有名。
12) オレンジとレモンの皮の扱いと量を変えただけで別のソースとして扱うことに疑問はあるが、これについては初版から一貫し
てまったく説明がない。何らかのエピソードがこれらのソース名にはあったと思われるが不明。

53

合わせバター

合わせバター
グリル、ソースの補助材料、オードブル用

Beurres Composés pour Adjuvants de Sauces et
Hors-d’oeuvre
概説
本書においてレシピを掲載している合わせバター1) のうちのほとんどは、甲殻類の合わせバターを
除いて、料理に直接用いられることがとても少ない。だが、合わせバターはさまざまなシチュエー
ションで役に立つ。ポタージュでは野菜の合わせバターが、その他の合わせバターはソース作りにお
いて有用だ。ソースの風味と性格を明確に伝える決め手になるからだ。
だから、読者である料理人諸君には、ここに書いてあることを真剣に読みとっていただきたい。
甲殻類のバターについては、経験上、湯煎にかけながら煮出して2) から、氷水で冷やした陶製の容
器に布で漉し入れるといい。そうすれば、冷たい状態で作るよりも赤みがきれいに出る。だが逆に、
熱によって風味の繊細さが失なわれてしまい、雑味さえも出てしまう。
この問題点を解決するために、我々は二種類の違うバターを作るという方式を採ることにした。ひ
とつは甲殻類の胴のクリーム状の部分と切りくずあるいは身そのものを生のバターとともに鉢ですり
潰して、目の細かい網で裏漉しするか、布で漉すというもの。このバターはソースに完璧ともいうべ
き風味を添えてくれる。とりわけベシャメルソースをベースとしたソースの場合はそうだ。
もうひとつは、甲殻類の殻だけを用いて、熱して作るものだ。これは「色付け」の役割しか持たな
い。この方式はまことに素晴しい結果を得られるので、ぜひとも実行していただきたい。
場合によっては、我々はバターを同様の上等な生クリームに代えることがある。生クリームのほう
がバターよりも、素材の持つ風味や香気をよく吸収する。こうすればソースやポタージュの仕上げに
加えるのに文句ないクリ3) を作ることが出来るわけだ。
色付け用のバターを使うと、ソースがきれいに色付き、個性的なソースとなる。どんな場合でも、
カルミン色素4) よりもずっといい。カルミン色素はソースやポタージュにくすんだ、なさけない色合

1) beurre composé ブール・コンポゼ。ミックスバターとも。バターはフランス食文化史において、少なくとも中世以来長く用い
られてきた食材だが、中世〜ルネサンスにおいては獣脂(もっぱらラード)のほうが料理に用いられる傾向にあった。17 世紀
以降はたとえばラ・ヴァレーヌ『フランス料理の本』におけるアスパラガスの白いソース添え(ソース・オランデーズ訳注参
照)のように、バターを料理に用いることが中世の料理書と比較すると圧倒的に増えた。ムノンの 1741 年刊『ブルジョワ屋敷
に勤める女性料理人のための本』のバターの項には「良質のバターを用いるのは料理でとても大事なことで、バターが悪い匂
いを放っていてはどんな素晴しい皿も台無しだ。料理担当の女中であればそれよく理解し、良質なバターを手に入れるのに金
を惜しんではならないと肝に銘じておくこと。いいバターは自然な黄色で、白いのは大抵さして美味しくない。バルボットと
かいう植物から採った黄色で着色したバターもある。こういうものは自然なバターの黄色よりもくすんでいるから、慣れれば
簡単に見分けられる (p.320)」と書いている。合わせバター(具体的にはアンチョビバター、エクルヴィスバターなど)への言
及は 1806 年刊ヴィアール『帝国料理の本』に既に見られる(この初版、第二版では残念なことにレシピそのものは記載されて
いない)。つまり合わせバターという概念および仕込んでおくものという認識は 19 世紀初頭までに成立していた。ところで、
現代フランスのバターは無塩のものと、ブルターニュ産に代表される有塩のものがあり、料理および製菓では基本的に無塩バ
ターを用いる。生乳をとる牛の品種や製法はさまざまだが、乳酸醗酵させたいわゆる醗酵バターが多い点が日本と大きく異な
る。なお、この節に限らず本書のレシピは、無塩バターの使用を前提にしていることに注意。
2) infuser(アンフュゼ)。
3) coulis(クリ)水分のやや多いピュレをイメージするといい。「クーリ」と呼ぶ日本の調理現場は多い。
4) コチニール色素ともいう。ラックカイガラムシなどを原料として抽出した色素。ヨーロッパでは古代から中世にかけてケルメ
スカイガラムシから抽出され利用されてきた、非常に歴史の古い色素。とりわけルネサン期には高級毛織物の染料として需要
が高まった。また絵の具にも使用された。その後、ウチワサボテンでエンジムシを大量に養殖していた中南米を支配下に置い
たスペインが、これを新大陸産のカルミンとしてヨーロッパ各国に売ることで巨万の富を得たという。かつて食品工業におい
て多用された。1838 年の『ラルース・ガストロノミック』初版では、「コチニールから抽出される鮮かな赤色色素で毒性はな
い。多くの食品に着色料として用いられている」とある。現在は使用が減りつつあり、代替品としてビーツから抽出したビー
トレッドなどが増えてきている。また、この本文でカルミン色素の使用を「くすんだ、情けない色合いを与える」として否定

54

I.

ソース

Sauces

いしか与えてはくれないのだ。
合わせバターは一般的に、使う際にその都度作る1) ものだが、作り置きしておかなければならない
場合は、白い紙で円筒形に包んで冷蔵保管すること。

にんにくバター

Beurre d’Ail

皮を剥いたにんにく 200 g を強火でしっかり茹
でる2) 。よく湯をきってから、鉢に入れてすり
潰し、バター 250 g と合わせ、布で漉す。
アンチョビバター

Beurre d’Anchois

アンチョビのフィレ 200 g をよく洗い、しっか
り水気を絞る。これを鉢に入れて細かくすり潰
す。バター 250 g を加えて布で漉す。
アーモンドバター

Beurre d’Amande
アーモンド3) 150 g を湯むきしてよく洗い、す

ぐに水数滴を加えてすり潰してペースト状に
する。これをバター 250 g と混ぜ合わせ、布で
漉す。
ブール・ダヴリーヌ4)

Beurre d’Aveline
アヴリーヌ 150 g を焙煎して丁寧に皮を剥く。
油が浮いてこないよう水を数滴加えてペースト
状にすり潰す。これとバター 250 g を混ぜ合わ
せる。目の細かい網で裏漉しするか、布で漉す。
ブール・ベルシー5)

Beurre Bercy
白ワイン 2 dL に細かく刻んだエシャロット大
さじ 1 杯を加えて半量になるまで煮詰める。生
温い程度まで冷ましてから、ポマード状に柔ら
かくした6) バター 200 g を混ぜ込む。牛骨髄 500
g をさいの目に切って7) 、沸騰しない程度の湯
で火を通し、よく湯ぎりをして加える。パセリ
のみじん切り大さじ 1 杯と塩 8 g、挽きたての
こしょう 1 つまみ強とレモン 1/2 個分の果汁を

1)
2)
3)

4)
5)
6)

7)
8)
9)
10)
11)
12)

加えて仕上げる。
キャビアバター

Beurre de Caviar
圧縮キャビア8) 75 g を細かくすり潰す。パター
250 g を加えて、布で漉す。
ブール・シヴリ/ブール・ラヴィゴット9)
Beurre Chivry, ou Beurre Ravigote
パセリの葉とセルフイユ、エストラゴン、シヴ
レット、若摘みのサラダバーネット 100 g を数
分間下茹でし、水にさらしてから圧して余分な
水気を絞る。エシャロットのみじん切り 25 g も
下茹でする。これらを鉢に入れてすり潰す。
バター 125 g を加え、布で漉す。
ブール・コルベール10)

Beurre Colbert

メートルドテルバター 200 g に、溶かしたグラ
スドヴィアンド大さじ 2 杯と細かく刻んだエス
トラゴン小さじ 2 杯を加える。
色付け用の赤いバター

Beurre Colorant rouge

出来るだけ沢山の甲殻類の殻などの残りをまと
めて用意する。殻の内側、外側に張り付いてい
る膜などをきれいに取り除く。よく乾燥させて
から、鉢11) に入れて細かく粉砕して、同じ重さ
のバターを加える。これを湯煎にかけてよく混
ぜながら溶かす。氷水を入れた陶製の器に、布
で漉し入れる。固まったバターをトーション12)
で包み、余計な水を絞り出す。
【原注】この色付け用のバターを作るのに用い
る甲殻類の殻がどうしてもない場合は、パプリ
カバターを用いてもいいだろう。だがいずれに
せよ、どんなソースであっても、仕上がりの色

的に扱っているのは、この色素が pH によって色調が変化し、なおかつ蛋白質を多く含む料理に加えると色素自体が紫色に変
化する(結果としてソースやポタージュ全体が濁ったような色になる)ことがあるためだろう。
原文 au moment(オモモン)その都度、の意。à la minute(アラミニュット)と呼ぶ調理現場もある。
生のにんにくには胃腸を刺激する酵素が含まれているが、熱により不活性化するので、よく火を通す必要がある。
アーモンドには一般的なスイートアーモンド amandes douces と、苦味のあるビターアーモンド amande amères の二種がある。
後者はごく微量の青酸化合物を含むのであまり多く使われることはないが、香りがいいためリキュールなどの香り付けにごく
少量が用いられることがある。
Aveline(アヴリーヌ)はヘーゼルナッツの仲間でセイヨウハシバミの大粒な変種。イタリア、ピエモンテ産やシチリア産が
有名。
ソース・ベルシー訳注参照。
ポマードは昔よく用いられた整髪料だが、現代では珍しいものとなってしまった。ただ、この表現は定型句のひとつであると
ともに、現代日本の調理現場で現在もこの表現を用いるところがあるため、あえてこの訳語を採用した。意味としては「指が
すっと入る程度の柔らかさ」であり、シリコンゴムのヘラなどで混ぜやすいけれども、溶けて液体にはなっているわけではな
い状態のことを意味している。
原文 couper en dés。フランス語のまま「デにする (切る)」と表現することもある。
もとはロシアで雪の中の樽で保存するために圧縮したもの。キャビアのグレードはベルガ、オセトラ、セヴルガが混ざってい
るのが多いという。比較的安価に利用できる。
それぞれの名称などについては、ソース・シヴリおよびソース・ラヴィゴット訳注参照。
ソース・コルベール本文および訳注参照。
伝統的には大理石製の鉢が用いられることが多かった。
ソース・ヴェルト訳注参照。

55

合わせバター
合いを決めるには、出来るだけ、他の植物由来
の赤色着色料の使用は避けることを勧める1) 。

色付け用の緑のバター

Beurre Colorant vert
ほうれんそうの葉 1 kg をよく洗い、しっかり
振って水気をきる。これを鉢に入れてすり潰
す。トーション2) で包んで緑の汁を絞り出す。
これをソテー鍋に入れて湯煎にかけ、水分を蒸
発させてペースト状にする3) 。
これを、ぴんと張ったナフキンの上に移し、さ
らに水気をきる。
パレットナイフを使って緑の色素を集め、鉢
に入れてその倍の重さのバターを加えて練り
込む。
……布で漉し、冷蔵保存する。
【原注】人工的な色素よりもこの緑の色素を用
いたほうが利点が大きい。

クルヴェットバター

Beurre de crevettes
クルヴェット・グリーズ4) 150 g を鉢に入れて
細かくすり潰す。バター 150 g を加えて、布で
漉す。

エシャロットバター

Beurre d’Echalote
エシャロット 125 g を鉢に入れてすり潰し、
さっと茹でて湯をきり、トーションに包んで圧

すようにして水気を取り除く。バター 125g を
加えて、布で漉す。
エクルヴィスバター

Beurre d’Ecrevisse

ビスクを作る要領で、ミルポワとともに茹でた
エクルヴィス5) の胴や殻、尾などを鉢に入れて
細かくすり潰す。これと同じ重さのバターを加
え、布で漉す。
エスカルゴ用バター

Beurre pour les Escargots
(エスカルゴ 50 個分)
バター 350 g に、細かいみじん切りにしたエ
シャロット 35 g と、にんにく 1 片をすり潰し

てペースト状にしたもの、パセリのみじん切り
25 g(大さじ 1 杯)、塩 12 g、こしょう 2 g を加
える。捏ねるようにしてよく混ぜ合わせ、冷蔵
する。
エストラゴンバター

Beurre d’Estragon

新鮮なエスゴラゴンの葉 125 g を 2 分間茹が
いてから湯きりして冷水にさらす。圧して余分
な水気を絞る。これを鉢に入れてすり潰す。バ
ター 125 g を加えて、布で漉す。
にしんバター

Beurre de Hareng

にしんの燻製のフィレ6) 3 枚の皮を剥いて、さ
いの目に切り、鉢に入れて細かくすり潰す。バ

1) この原注は第三版から。原文 le rouge colorant végétal 直訳すると「植物由来の赤色着色料」だが。ここではおそらくカルミン
色素(コチニール色素)のことと思われる(本節「概説」参照)
。他に赤系着色料として、ベニバナ色素、紅麹などもあるが、
いずれも中国や日本において発達しことを考慮すると、両大戦間である 1920 年頃に「避けるべき」というほど普及していたの
は、実際には昆虫由来であるコチニール色素と思われる。なお、ベニバナ色素も化学的にはカルミン酸色素。また、甲殻類の
殻を茹でると赤くなるが、この色素はアスタキサンチンといい、1938 年に物質として「発見」された。もちろんエスコフィエ
をはじめとする料理人は経験上、甲殻類の殻を適度に加熱することで、タンパク質と結びついていたアスタキサンチンがタン
パク質の熱変性によって遊離して取り出せることを経験的によく知っており、それを利用してこの赤いバターを考案したと考
えられる。ちなみにサーモン、鮭の身の赤色もおなじアスタキサンチンによるもので、近縁種の鱒と同様に本来は白身。
2) ソース・ヴェルト訳注参照。
3) 原文 coaguler 凝固させる、の意。ここでは説明的に意訳した。なお、ほうれんそうに限らず、植物の緑色は葉緑素(クロロ
フィル)によるものであり、葉緑素はマグネシウム(苦土)を核として窒素が周囲に結びついた構造を持つ化学物質。ほうれ
んそうの緑が濃いのは土壌からのマグネシウム吸収能力が高いため。食品に含まれるマグネシウムはカルシウムの吸収を促す
作用があるとされている。ただし、フランスの伝統的なほうれんそうの栽培方法は、夏の終わりから初秋にかけた種を蒔き、
11 月頃から大きくなった葉を順次かき取って収穫するというもの。露地栽培でも 1 株で 3 回程度は春になるまでに収穫できる
とされた。なお、フランス語で食材および調理したほうれんそうは常に épinards と複数形で表される。古くは 14 世紀の『ル・
メナジエ・ド・パリ』に espinars という綴りで言及があり「ポレ(ブレット)の一種で、葉が長くて茎が細く、緑は普通のポ
レよりも濃い。espinoches とも言う。四旬節の初め頃に食べる」(t.2, p.141) とある。
、中世・ルネサンス期のフランスでは、ほ
うれんそうの普及はり進まなかったようで、16 世紀末にオリヴィエ・ド・セールが『農業経営論』(1600 年)において「比較
的新しい野菜」として栽培方法も含めて紹介している。また、épinard の語源をオリヴィエ・ド・セールは種子が尖っている
(épineux)からだと書いているが、実際には、この野菜が西アジア起源のものであり、ペルシャ語の aspanā ḫ からフランス語
に入って現在の épinard という語形に至ったと考えられている。いっぽう、日本のほうれんそうはごく一部の地域を除いては、
戦後高度成長期に普及した葉菜のひとつであり、じつのところ歴史は浅い。しばしば言われる東洋系、西洋系の違いにしても、
普及当初からその交配品種が使われるようになっていたために、あまり意味はない。日本で青果として流通しているほうれん
そうのほとんどは、密植、立性にして比較的若どり(農協などの出荷団体によって違うが、概ね草丈 25cm 程度で 5 株から 10
株で 200 g の規格が平均的)のため、用いている品種がほぼ西洋系のものを交配親としている場合でも、立性に栽培するため
に、葉の厚みなどはあまり問題とされていない。上述のように、フランスではかつて、葉以外を可食部として見なさず、軸を
切り捨てるのが普通だったことと比べると、食文化の違いの大きさがよくわかる一例だろう。
4) フランスで好んで食される小海老の一種。ソース・クルヴェット訳注参照。
5) ヨーロッパざりがに。詳しくはバイエルン風ソース訳注参照。
6) 原文 hareng saur(アロンソール)。タイセイヨウニシンの内臓を抜いて 10 日程塩漬けにし、塩抜き後に 24〜48 時間乾燥させ
てから 15 時間以上、32 ℃程度で冷燻にしたもの。強い匂いが特徴。日本のにしんとは種が異なること、スモークサーモンと
同様に冷燻であることに注意。

56
ター 250 g を加え、布で漉す。
オマールバター

Beurre de Homard

使える範囲の量のオマールの胴のクリーム状の
部分と卵やコライユ1) を鉢に入れてすり潰す。
それと同じ重さのバターを加え、布で漉す。
白子バター

Beurre de Laitance

沸騰しない程度の温度で茹で、よく冷ました白
子2) 125 g を鉢に入れてすり潰す。バター 250 g
とマスタード小さじ 1 杯を加えて、布で漉す。
メートルドテルバター3)

Beurre à la Maître-d’hôtel
バター 250 g をポマード状に柔らかくする。パ
セリのみじん切り大さじ 1 杯強と塩 8 g、こしょ
う 1 g、レモン 1/4 個分の果汁を加えてよく混ぜ
合わせる。
【原注】このメートルドテルバターに大さじ 1
杯のマスタードを加えるのもバリエーションと

I.

ソース

Sauces

してお勧め。とりわけ牛、羊肉や魚のグリル焼
きによく合う。

ブールマニエ

Beurre Manié
これはマトロットの煮汁などに、手早くとろみ
付けをするのに用いる。小麦粉 75 g にバター
100 g の割合が原則4) 。
ブールマニエでとろみを付けたソースは、そ
の後は出来るだけ沸騰させないこと。さもない
と、生の小麦粉の不快な味が強まる危険性があ
るからだ。

ブール・マルシャンドヴァン5)

Beurre Marchand de vin
赤ワイン 2 dL に細かいみじん切りにしたエ
シャロット 25 g を加えて半量になるまで煮詰
める。塩 1 つまみ、挽きたて6) (または粗く砕
いた7) )こしょう 1 つまみ、溶かしたグラスド
ヴィアンド大さじ 1 杯、ポマード状に柔らかく

1) オマールの胴の背側にある朱色の内子。
2) 日本ではスケトウダラの白子が一般的だが、フランスの伝統的高級料理では鯉の白子がもっとも一般的。他に鯖やにしんの白
子も用いられる。

3) メートルドテル maître d’hôtel とは直訳すれば「館 [やかた] の主」あるいは「館の指導者」の意だが、時代および王家あるい
は貴族やブルジョワの館、近現代のレストランにおいてそれぞれ異なった意味で用いられる職名。(1)王家においては grand
maître グランメートルを補佐する仕事として食卓関連の仕事を取り仕切る職のこと。王と親しくすることが出来るために、有
力貴族がこの職に就くことを希望することが多かったという。(2)大貴族や大ブルジョワの館において、食材の手配やワイン

4)
5)
6)
7)

の管理、料理人の選抜などの一切を取り仕切り、とりわけ宴席においてはメニュー作りが重要な仕事のひとつとして課される
職。歴史上もっとも有名なメートルドテルのひとり、ヴァテルはこの職に相当する。コンデ公に仕え、シャンティイ城でルイ
14 世らを招いて数日にわたって開催された千人規模大宴席の一切を取り仕切り、最後に手配した魚が届かないと誤解して自害
した。彼が息を引きとってからすぐ後に魚は大量に届けられた、という(ソース・シャンティイ訳注も参照)
。
(3)近代から 20
世紀中葉にかけて、とりわけ料理人がオーナーではないレストランの場合はメニューの決定、ソムリエおよび給仕人の指揮、
客の応対などを担当し、その店で最高のサービス技術を誇る者のつく職名とされた。なお、現代ではほとんど「給仕長」程度
の意味しか持たなくなってしまった職名といえる。上記を総合すると、この beurre à la maître d’hôtel という名称は「当家(当
店)特製のバター」あるいは「当家(当店)自慢のバター」程度の意味ということになる。実際のところ、この名称の由来など
は不明だが、たとえばフランソワ・マラン François Marin(生没年不詳)の著書、
『コモス神の贈り物』のタイトルページに記
された著者の肩書は「スビーズ元帥のメートルドテル、フランソワ・マラン」となっているように、本来はもっとも料理に精
通した者の就く役職であった。このため、maître d’hôtel-cuisinier という語も 18、19 世紀には用いられていた。つまり、直接
的に包丁を握り鍋を振ることはなくても、献立を組み、料理のレシピを考えるのもまたメートルドテルの重要な仕事であった。
それを踏まえてカレームは 1822 年に、それ以前の主要な宴席の献立を詳細に分析した『フランスのメートルドテル』を出版し
た。つまり、カレームもまた、食卓外交の裏側でメートルドテル=キュイジニエの役割を果たしていたということになる。カ
レームをたんなるパティシエや料理人という現代的な狭い職の枠にはめて捉えることの出来ない時代だったとも言えよう。そ
れは、エスコフィエについても言えることであり、初版および第二版の末尾には献立例が掲載され、第三版以降は『メニュー
の本』として独立させたが、総料理長であるということは即ちかつて貴族の館に仕えたメートルドテルの仕事を勤めるに他な
らない、ということを示唆しているし、その点は現代の一流ホテルにおいてもあまり変化していないと思われる。
この合わせバターの名称も含めた原型のひとつとして、上述のマラン『コモス神の贈り物』第 2 巻には、
「いんげん豆のメート
ルドテル風」というレシピがある。これは水から茹でたいんげん豆を湯をきってから鍋に入れ、バター、パセリ、エシャロッ
トの細かいみじん切り、塩、こしょうで味付けし、最後にレモン果汁かヴィネガー少々で仕上げるというもの (p.380)。カレー
ムの未完の名著『19 世紀フランス料理』第 3 巻では、
「鯖用のメートルドテルバター」として、イジニー産バター 8 オンス(約
250 g 弱)と大きめのレモン 1 個分の搾り汁、細かく刻んだパセリ大さじ 2 杯、塩 2 つまみ強、細かく挽いたこしょう 1 つまみ
弱を木杓子を使ってよく混ぜ合わせる。食欲がわくような調味を心掛けるべし、とある (pp.128-129)。また、同じくヴィアール
の『王国料理の本』
(内容は 1806 年初版の『帝国料理の本』の改訂版であり、毎年のように改版され続けているために歴史的に
貴重な史料)1846 年版では、冷製メートルドテルとして、鍋に 1/4 ポンドのバターとパセリ少々、エシャロットのみじん切り
少々、塩、粗挽きこしょう、レモン果汁を入れ、木杓子でよく練る。これを肉料理あるいは魚料理の下にでも、中にでも、上に
でも流すといい、とある (p.48)。このように、19 世紀前半にはメートルドテルバターの性格がほぼ定着していたと言えよう。
このバターと小麦粉の割合は絶対というわけではなく、本書でもしばしば異なる割合で作ったブールマニエを用いる指示が見
られる。
「ワイン商人風」の意。煮詰めた赤ワインをバターを混ぜ込むところからの名称だろう。
原文 poivre de moulin(ポワーヴルドムラン)、直訳すると「ミルで挽いたこしょう」だが、その場合は即座に使用するのが一
般的なので、あえて「挽きたてのこしょう」と訳している。
原文 mignonette(ミニョネット)。ミルを用いずに、包丁の側面などで圧し砕いたこしょうを指す。

57

合わせバター
したバター 150 g、レモン 1/4 個分の果汁とパセ
リのみじん切り大さじ 1 杯を加える。全体をよ
く混ぜ合わせる。
……グリル焼きにした牛リブロース1) 用。

ムニエル用バター

Beurre à la Meunière
焦がしバターに、提供直前にレモン果汁数滴を
加えたもの。
……魚の「ムニエル2) 」用。

モンペリエバター

3)

Beurre de Montpellier
銅の鍋に湯を沸かし、クレソンの葉とパセリ
の葉、セルフイユ、シブレット、エスゴラゴン
を同量ずつ計 90〜100 g と、ほうれんそうの葉
25 g を投入する。これとは別の鍋で同時に、エ
シャロットの細かいみじん切り 40 g を下茹で
する。ハーブは湯をきって冷水にさらす。しっ
かり圧し絞って余計な水気を取り除く。エシャ
ロットも同様にする。これらを鉢に入れてすり
潰す。
中くらいのサイズのコルニション 3 個と、水気
を絞ったケイパー大さじ 1 杯、小さなにんにく
1 片、アンチョビのフィレ 4 枚を加える。全体
が滑らかなペースト状になったら、バター 750
g と固茹で卵の黄身 3 個、生の卵黄 2 個を加え
る。混ぜながら、最後に植物油 2 dL を少しずつ
加える。目の細かい漉し器か布で漉し、泡立て

ずに作る。平皿に流し入れて均等な厚みにして
やると細部の装飾作業が容易になる。

マスタードバター

Beurre de Moutarde
フランス産マスタード大さじ 1 1/2 杯をポマー
ド状に柔らかくしたバター 250 g に混ぜ込み、
冷蔵する。

格式ある宴席用焦がしバター4)

Beurre noir pour les grands services
(仕上がり 10 人分5) )
バター 125 g をフライパンに入れて火にかけて
溶かし、茶色くなるまで加熱する。布で漉して
ぬ

る

湯煎にかける。微温くなったら、粗く砕いたこ
しょう6) を加えて煮詰めたヴィネガー小さじ 1
杯を加える。提供直前に、丁度いい温度になる
まで温めなおす。揚げたパセリの葉とケイパー
大さじ 1 杯を料理にのせてから、この焦がしバ
ターをかけてやる。

ブール・ド・ノワゼット7)

Beurre de noisette

⇒ ブール・ダヴリーヌ参照。

パプリカバター

Beurre de Paprika
玉ねぎのみじん切り大さじ 1 杯とパプリカ 4 g
をバターでいい色合いになるまで炒め、ポマー
ド状に柔らかくしておいたバター 250 g に混ぜ
る。布で漉す。

ととの

器で混ぜて滑らかにする。塩味を調え、カイエ
ンヌごく少量で風味を引き締める。
……魚の冷製料理に添える。ビュッフェの場合
には魚に覆いかけて供する。

装飾用モンペリエバター

Beurre de Montpellier pour Croûtonnage de
plats
モンペリエバターを装飾のためだけに作る場合
には、植物油と茹で卵の黄身、生の卵黄は用い

赤ピーマンバター

Beurre de Pimentos
ブレゼ8) した赤いポワヴロン9) 100 g をバター
250 g と合わせて細かくすり潰し、布で漉す。

ピスタチオバター

Beurre de Pistache
殻から剥いて湯剥きしたばかりのピスタチオ
150 g を、水数滴を加えながら細かくすり潰す。
パター 250 g を加え、布で漉す。

1) 原文 entrecôte grillé(アントルコット グリエ)。
2) 小麦粉をまぶして、バターで焼く手法および仕立て。原文にある à la meunière を直訳すると「粉挽き女風」の意。かつては主

3)
4)

5)

6)
7)
8)
9)
1)

に水車を動力として石臼などを用い小麦を挽き、その後「ふるい」にかけていた。粉挽き職人は小麦粉の粉塵をかぶって真っ
白になっていることが多かったところから付いた料理名。
南フランスの都市。モンプリエのようにも発音される。どちらも正しい。複数の発音が正しいとされる例として有名なものの
ひとつ。
直訳すると、「大規模で格式の高い宴席において供する黒バター」
。かつてのフランス式サービスによる宴席ではルルヴェと呼
ばれる非常に壮麗な装飾を施した肉料理、魚料理がポタージュの後に供された。このバターはそういったケースを想定してい
る。実際、カレームが焦がしバターについてこの「黒バター」beurre noir という表現を好んで用いていたことからも、
『料理の
手引き』の時代においてはやや大時代的な、過去の華やかな宴席のためのもの、というイメージだったと考えられる。
原文 proportion pour un service(プロポルスィオンプーランセルヴィス)
、直訳すると「1 サーヴィスの分量」
。17、18 世紀か
ら 20 世紀初頭にかけて宴席での人数の単位に service(セルヴィス)という語があてられた。原則として 8〜12 人分とされた
が、ごく大雑把に 10 人前と捉えていい。舞踏会も含め、大規模で華やかな宴席が頻繁に行なわれていた時代においては、ある
程度大まかに料理の単位を決めておくことで、食材の手配から仕込み、調理などを効率化していた。このため『料理の手引き』
のレシピのほとんどは仕上がり量が 1 service になるよう記されている。
mignonette(ミニョネット)。こしょうの粒を肉叩きや包丁の側面などで押し潰して砕いたもの。
焦がしバターのことを一般に beurre noisette(ブールノワゼット)と呼ぶので、混同しないよう注意。
野菜のブレゼの方法については第 13 章野菜料理参照。
原文 poivron。日本の青果では「パプリカ」と呼ばれる肉厚で苦みの少ない品種。
「カリフォルニア・ワンダー」が代表的品種。
未熟なものは緑色だが完熟すると真っ赤になる。また、熟すと黄色、紫などになる品種もある。
原文 cuire à la noisette(キュイーラノワゼット)すなわち「茶色く」なるまで火を通すということ。現代では、焦がしバターの

58
ポーランド風バター

Beurre à la Polonaise
バター 250 g をヘーゼルナッツ色1) になるまで

火を通す。丁度いい色合いになったら、上等な
パンの身 60 g を投入する。
レフォールバター2)

Beurre de Raifort

器具を用いておろしたレフォール 50 g を鉢に
入れてすり潰す。バター 250 g を加え、布で
漉す。
ブール・ラヴィゴット/ブール・ヴェール

Beurre Ravigote ou Beurre vert

⇒ ブール・シヴリ参照。
スモークサーモンバター

Beurre de Saumon fumé
スモークサーモン 100 g とバター 250 g を鉢に

入れてよくすり潰し、布で漉す。
トリュフバター

Beurre de Truffe

真黒な黒トリュフ 100 g とベシャメルソース小
さじ 1 杯を鉢に入れてすり潰す。良質なバター
200 g を加え、布で漉す。
ブール・プランタニエ3) 各種

Beurres Printaniers

野菜の合わせバターはポタージュやソースの仕
上げによく用いられる。
野菜はまず、それぞれの種類に応じた方法で火
を通すこと。例えば、にんじんやナヴェ4) の場
合はバターを加えて弱火で蒸し煮してからコン
ソメで煮る。緑の野菜、例えばプチポワ5) 、さ
やいんげん6) 、アスパラガスの穂先などの場合
は、しっかり下茹でして火を通す。
その後、野菜と同じ重さのバターとともに鉢に

I.

ソース

Sauces

入れてすり潰し、布で漉す。

クリ7) 各種

Coulis divers
• エクルヴィス8) の殻、または
• クルヴェット9) の胴や殻、または
• オマールやラングスト10) の胴にあるクリーム

状の部分や卵、コライユ11)
を鉢に入れてすり潰す。
すり潰した材料 100 g あたり大さじ 4 杯の新鮮
な生クリームを加え、布で漉す。
これらのクリは提供直前に用いること。使い方
はこの「合わせバター」の節冒頭に記しておい
たので参照されたい。
甲殻類のオイル

Huile de Crustacés

このレシピは、オマールやラングストに添える
マヨネーズの仕上げに加えるため考案された
もので、言ってみればマヨネーズの新しいバリ
エーションだ。
使えるだけの甲殻類の殻などをすり潰し、バ
ターではなくオイルを同量、つまり甲殻類と同
じ重さだけ加える。つまり、オイルの重さが 1
dL あたり 95 g くらい、あるいは、すり潰した
甲殻類の殻が大さじ 6 杯に対してオイル 1 dL
ということになる。
甲殻類の殻をすり潰してペースト状になってき
たら、すりこ木でよく混ぜながら油を少量ずつ
加えていく。
まず目の細かい漉し器で漉し、さらに布で漉
し、冷やしておく。このオイルは絶対に熱を与
えてはいけない。

ことを beurre noisette(ブールノワゼット)と呼ぶことが多いが、本書においてはヘーゼルナッツバターという項目を立てて
いるために、混同を避ける意味で、このような表現になっていると思われる。
2) ホースラディッシュ、西洋わさび。
3) printanier(プランタニエ)春の、を意味する語で、とりわけ春先の「はしり」の野菜を用いる場合によくこの表現があてら
れる。
4) 原文 navet 蕪のことだが、日本の蕪とは調理特性および風味が異なるので注意。
5) 原文 petits pois いわゆるグリンピースのことだが、20 世紀以降、だんだん若どりのものが好まれる傾向が強まっており、日本
で一般的なグリンピースと比較するとかなり小さめの段階で収穫されるものが多く、火入れに必要な時間もごく短かい傾向に
ある。直径 7〜8mm 程度の若どりのものはグリンピース特有の青臭さが少なく、フレッシュであれば生食でも美味しい。フラ
ンスあるいはイタリア産の冷凍品が多く出回っているが加熱必須。
6) 原文 haricots verts(アリコヴェール)。
7) coulis(クリ)の基本概念としては、ピュレよりは水分の多いもの、と解していいのだが、ここではやや特殊な用法となってい
ることに注意。また、日本の調理現場では「クーリ」と呼ぶ傾向が根強く残っている。しかし、フランス語として見たとき、
この語それ自体のアクセント(フランス語のアクセントは長音)は最後の i の音にある。ou(発音記号/ u / )は日本語にない
音で、多くの日本人の耳には強く感じられるために、このような習慣が付いたのだと思われる。少なくとも日本語的な発音で
「クーリ」と覚えても、フランス語としては通じない可能性が高いので注意。
8) ヨーロッパザリガニ。詳しくはバイエルン風ソース訳注参照。
9) 小海老。詳しくはソース・クルヴェット訳注参照。
10) 原文 langouste ≒ 伊勢エビ。
11) 朱色がかった内子のこと。

59

マリナードとソミュール

マリナードとソミュール1)

Marinades et Saumures
マリナードとソミュールにはいろいろな種類があるが、最終的な目的は同じで、

1. 素材に料理で使う香辛料やハーブの香りを浸み込ませる
2. ある種の肉を柔らかくさせる
3. 場合によっては保存のために用いる。とりわけ温度と湿度で素材が駄目になってしまうような場合。
さらに、目指す料理の仕上がりに合わせて素材の状態を調節する

即席マリナード

Marinade instantanée

このマリナードはすぐに素材を使う場合、例え
ば赤身肉のグリル焼きや、ガランティーヌ、テ

1) マリナードはマリネ液とも言う。marinade < mariner(マリネ)語源はラテン語の mare(海)。中世フランス語ではもっぱら
「海で泳ぐ、海に潜る」の意で使われていたが、16 世紀には既に、料理用語として用いられていたようだ。ラブレー『ガルガ
ンチュアとパンタグリュエル』第四の書(1548 年)において、lancerons marinez(マリネしたブロシェの幼魚)という表現が
見られる。なおブロシェ brochet はノーザンパイク、和名キタカワカマス。川カマス属の淡水、汽水魚。この場面はパンタグ
リュエルに「小斉」のご馳走として捧げられた料理のリストの一部であり、「塩漬けのメルルーサ、卵料理各種、モリュ(塩
漬けにした鱈)、アドック(塩漬け後に燻製にした鱈)
」などとともに列挙されており、いずれも塩辛いために、それらを調理
したものを食べて消化をよくするために飲むワインの量が倍になった (p.681) とある。したがって、lancerons marinez のマリ
ネとは「海水あるいは塩水に漬けた」の意に解釈されよう。一方、ソミュールについては、11 世紀末頃に、「保存のため漬け
込む塩水」の意味で salmuire という語形が使用され、16 世紀には「塩水およびその他の液体からなるもの」として saumure
という現在とおなじ語形が記録されている。マリナードとソミュールが明確に分化したのはおそらく 17 世紀頃で、1651 年刊
ラ・ヴァレーヌ『フランス料理の本』に見られるマリナードの語には曖昧さを免れないものもあるが、例えば Poulets marinez
(鶏のマリネ)というレシピは「鶏を開いて叩き、しっかり味付けしたヴィネガーに漬ける。提供直前に小麦粉をまぶすか、卵
と小麦粉で作った衣を付け、ラードで揚げる。揚がったらマリナードに戻し入れて軽く弱火で煮てから供する (p.36)」あるい
は Longe de mouton (仔羊の腰肉のロースト)のレシピは、
「よく熟成させてから棒状に切った豚背脂をラルデ針を使って刺
し込み、串を刺してローストする。玉ねぎ、塩、こしょう、ごく少量のオレンジまたはレモンの外皮 [ゼスト] とブイヨンと
ヴィネガーでマリナードを作る。肉に火が通ったら、ソース [マリナード] とともに弱火で煮込む。とろみ付けには前項同様
にした小麦粉 [小麦粉をラードで茶色くなるまで炒めたもの、すなわち『料理の手引き』の時代のルーの原型] を少々加える
(p.80)」とあり、別の項目では「(串を刺した肉の下の受け皿にある)マリナードを小まめにかけながら [アロゼしながら] ロー
ストする (p.106)」という表現がある。レシピ数からいうとラ・ヴァレーヌにおいてマリナードとは中世のドディーヌにヴィネ
ガーを効かせたもののようにも受け取れるが、最初に見たように、
「漬け込む」ものとしてヴィネガーを用いている点に注目す
べきだろう。この流れは 18、19 世紀に引継がれる。1756 年マラン『コモス神の贈り物』第 1 巻において、Cervelle de veau en
marinade (仔牛の脳のマリナード仕立て)などのレシピがあり、血抜きした仔牛の脳を豚背脂のシートで包みブイヨン少々で
茹で、「冷ましてからヴィネガーもしくはレモン果汁に漬け込む。その後、水気をきって溶き卵に浸し、パン粉をつけて揚げ
る。小麦粉を溶いた揚げ衣に浸して揚げてもいい (p.206)」とある。19 世紀のヴィアールでも同様の料理は見られる。『帝国料
理の本』初版(1806 年)において、Pieds d’agneau en marinade 仔羊の足のマリナード仕立てなどいくつかの marinade を冠す
るレシピが掲載されている。肝心のマリナードについての記述は欠落しているが、この版においてはよく見られる現象。なお、
仔羊の足のマリナード仕立ては、マリナードがない場合には「塩、こしょう、ビネガーに茹でた仔羊の足を漬けてから、揚げ
衣を付けて揚げる (p.214)」となっている。1814 年ボヴィリエ『調理技法』では「加熱マリナード」のレシピが掲載されてい
る。これは、卵くらいの大きさのバターを鍋に入れ、輪切りにしたにんじん 1、2 本、同様にした玉ねぎ、ローリエの葉 1 枚、
にんにく 1 片、タイム、バジル、枝ごとのパセリ、シブール [≒ 葱]2〜3 本を加えて強火で炒める。野菜が色付きはじめたら、
約 250 mL の白ワインヴィネガーと約 0.5 L の水を注ぎ、塩、こしょうする。そのまま沸かして、漉し器で漉し、必要に応じて
使う (pp.60-61)、というもの。もっとも、仔牛の脳のマリナード仕立てなどマランのレシピと大差ない揚げものも同書では目
に付く。また、1834 年版のオドにおいても鶏のマリナードはラ・ヴァレーヌのものと同工異曲に留まっている。1837 年版では
ロースト用マリナードの項が追加され、豚背脂とにんにく 1 片を細かく刻み、パセリ 1 つまり、塩、こしょう、ヴィネガー大
さじ 1 杯、油大さじ 4 杯を合わせてよく混ぜる (p.419)。1853 年版ではマリネしたうなぎのグリル焼き、というレシピが掲載さ
れる。これは、皮を剥いてぶつ切りにし、バターでソテーしたうなぎを深皿に並べ、塩、こしょうハーブ、マッシュルーム、
細かく刻んだエシャロットとシブールを被せ、油大さじ 1 杯をかける。2〜3 時間マリネしたら、パン粉をまぶしてグリル焼き
する (p.310) というもの。いっぽう、mariner(マリネ)という動詞については、オドの 1834 年版で既に、ノロ鹿の腿肉のロー
ストにおいて、
「オリーブオイルと塩で 5〜6 時間マリネする」(p.155) という記述が見られる。1867 年刊グフェ『料理の本』に
おいては、ヴィネガーをベースとしたソースとしてのマリナード(p.404)と仕立てとしてのマリナードがあるが、後者はこん
にちの概念に近く、例えば Tête de veau en marinade(仔牛の頭 マリナード仕立て)は、仔牛の頭肉半分を 3 cm 角に切り、下
茹でしてから水にさらし、牛脂と小麦粉、香草類を加えたブランで茹でる。これを、塩、こしょう、油、ヴィネガーに 1 時間
漬け込む。水気をきって揚げ衣を付けて油で揚げる、というもの (p.156)。ここでは肉を漬け込む液体として marinade の語が
用いられている。このように、marinade という名詞と mariner「漬け込む」という動詞の用法にややずれが見られるため、
『料
理の手引き』におけるマリナードすなわちマリネ液、という概念は 19 世紀後半になってからのものと思われる。
1) 具体的にはファルスのこと。

60
リーヌ、パテのような冷製料理の補助材料1) に
する肉に用いる。
1. グリル焼きにする肉の場合……ごく薄くスラ
イスしたエシャロットとパセリの枝、タイムの
枝、ローリエの葉を肉の上に散らす。量は適宜
加減すること。レモン果汁 1/2 個分に対して油
大さじ 1 杯の割合で、上からかけてやる。
2. 仔牛、ジビエのフィレ肉、ハム、豚背脂などを
細かく切ったもの2) の場合……塩こしょうして
から、白ワイン 3、コニャック 3、油 1 の割合
のマリナードを上からかけてやる。
ここで用いた風味付けの材料は、後でファルス
にする際に加えることになる。
いずれの場合でも、マリナードに浸した肉を小
まめに裏返してやり、マリナードがよく浸み込
むようにしてやること。

牛、羊肉および大型ジビエ用の非加熱マリナード

Marinade crue pour viandes de boucherie ou
venaison
(仕上がり 2 L 分)
• 香味素材……にんじん 100 g、玉ねぎ 100 g、エ
シャロット 40 g、セロリ 30 g、にんにく 2 片、
パセリの枝 3 本、タイム 1 枝、ローリエの葉 1/2
枚、大粒のこしょう 6 個、クローブ 2 本。
• 使用する液体……白ワイン 1 1/4 L、ヴィネガー
5 dL、油 2 1/2 dL。
• 作業手順……マリネする素材に塩とこしょうを
振る。にんじん、玉ねぎ、エシャロットを薄切
り3) にし、半量を容器の底に敷く。容器の大き
さは素材とマリナードがぴったり入る程度の
ものを用いること。素材を入れて、残りの香味
野菜で蓋をするようにして、白ワインとヴィネ
ガー、油を注ぎ入れる。
冷蔵し、マリネ液に漬かった素材を小まめに裏
返してやること。

牛、羊肉および大型ジビエ用の加熱マリナード

Marinade cuite pour viandes de boucherie ou
venaison
(仕上がり 2 L 分)
• 香味素材……非加熱マリナードと同じ材料で同
じ分量

• 使用する液体……白ワイン 1 1/2 L、ヴィネガー
3 dL、油 2 1/2 dL。

I.

ソース

Sauces

• 作業手順……鍋に油を熱し、ごく薄くスライス
したにんじん、玉ねぎ、エシャロットおよびそ
の他の香味素材を軽く色付くまで炒める。
白ワインとヴィネガーを注ぎ、弱火で約 30 分
間火を通す。
必ず、マリナードが完全に冷めてからマリネす
る素材にかけること。

とりわけ大型のジビエ4) 用、非加熱および加熱マ
リナード

Marinade crue ou cuite pour grosse venaison
(仕上がり 2 L 分)
• 香味素材……牛、羊肉および大型ジビエ用のマ
リナードと同じだが、ローズマリー 12 g を追
加する。

• 使用する液体……ヴィネガー 16 dL、油 4 dL。
• 作業手順……非加熱、加熱ともに作業手順は上
記のレシピのとおり。

羊のシュヴルイユ仕立て用の加熱マリナード5)

Marinade cuite pour le mouton en chevreuil
(仕上がり 2 L 分)
• 香味素材……上記のとおりの分量の素材に、
ジュニパーベリー6) 10 粒とバジル 1 つまみ、
ローズマリー 1 つまみを足す。
• 使用する液体……牛、羊および大型ジビエ用の
加熱マリナードと同じ。
• 作業手順……鍋に油を熱し、薄切りにしたにん
じん、玉ねぎ、エシャロットおよびその他の香
味素材を軽く色付くまで炒める。
白ワインとヴィネガーを注ぎ、弱火で約 30 分
間火を通す。

羊のシャモワ仕立て7) 用の加熱マリナード

Marinade cuite pour le mouton en chamois
(仕上がり 2 L 分)
• 香味素材……非加熱マリナードと同じ分量の素
材に、ジュニパーベリー8) 15 粒とバジル 15 g、
ローズマリー 15 g を足す。
• 使用する液体……良質な赤ワイン 1 1/2 L、ヴィ
ネガー 3 dL、油 2 1/2 dL。
• 作業手順……上記と同じ。
このマリナードに上等な赤ワインを使える場合
には、素材の量を次のように調整すること。赤
ワイン 12 dL、ワインヴィネガー 6 dL、油は上
記の分量とする。

2) 原文 lardon(ラルドン)、通常は拍子木状に切ったものを言うが、ここではファルスとして後で細かく挽くことになるので、形
状はあまり問題にならない。

3) émincer(エマンセ)薄切りにする、スライスする。
4) 具体的には赤鹿 cerf(セール)や猪、トナカイの成獣など。ニホンジカやエゾジカは cerf に分類されるので、これを参考にす
るといいだろう。

5) ソース・シュヴルイユ参照。
6) セイヨウネズの実。ジンの香り付けに用いられている。
7) オートザルプ県の山岳地帯およびピレネー山脈に生息する野生の山羊。ピレネー山脈のものは Isard(イザール)と呼ばれる。
若い獣の肉は大型ジビエのなかでもとりわけ美味とされる。成獣の肉は固く、しっかりマリネする必要があると言われている。
しばしばノロ鹿と比較される。ここでは、羊肉を白ワインベースのマリナードに漬け込む仕立て、すなわちシュヴルイユ仕立
てとの対比として、赤ワインでより強い風味のマリナードに漬け込むことで、シャモワ仕立てとしている。なお、本書にシャ
モワ仕立てのレシピは掲載されていない。シュヴルイユ仕立てと同様と考えていい。
8) セイヨウネズの実。ジンの香り付けに用いられている。

61

マリナードとソミュール
ワインの酸味の強さによっては、ヴィネガーの
量をワインと同量にすることさえ可能。
マリナードについての注意事項 …… 1. 加熱マ
リナードを使用するのは、素材へのマリナー
ドの浸透作用を促進するのが目的。素材をマリ
ナードに漬け込む時間は、加熱、非加熱ともに、
素材の種類と大きさ、気温、環境の変化を勘案
して決めること。
2. 一般的な牛、羊肉と肉質の柔らかい大型ジビエ
に使うマリナードに純粋な酢酸を用いるのは絶
対にやめておくこと。酢酸の腐食作用によって

肉の風味が失なわれてしまうからだ1) 。猪、赤
鹿2) 、トナカイなどの固い肉についても、純粋
な酢酸だけを使うのは不可。

マリナードの保存方法

Conservation des marinades
マリナードを長期間保存しておく必要がある場
合には、とりわけ夏場は、本書で示した分量に
対して 2〜3 g のホウ酸を加えるといい。
さらに、夏のあいだは 2 日に一度、冬季は 4〜5
日に一度、マリナードを沸騰させ、冷めたら毎
回そのマリナードに使っているのと同じワイン
を 2 dL とヴィネガー 1 dL を足してやること。

ソミュール3)

Saumures

塩漬け用ソミュール

Saumure au sel

このソミュールは、グレーソルト4) 1 kg に対し
て硝石5) 40 g の割合で作る。この硝石入りの塩
の総量は、塩漬けにする肉の数と大きさで決ま
る。素材が完全に覆えて、重しが出来る分量と
すること。
• 作業手順……肉を塩漬けにする前にまず、太い
針を充分深く刺して穴を何箇所も空ける。次に
硝石の粉末を肉の表面にすり付ける。塩 1 kg
あたりタイム 1 枝、ローリエの葉 1/2 枚を加え
て肉と塩を容器に詰める。

舌肉用の液体ソミュール6)

Saumure liquide pour langues
• 材料……水 5 L、グレーソルト 2.25 kg、硝石
150 g、茶色いカソナード7) 300 g、こしょう 12
g、ジュニパーベリー 12 粒、タイム 1 枝、ロー
リエの葉 1 枚。
• 作業手順……充分な大きさの鍋に材料を全て入
れ、強火で沸騰させる。その後、完全に冷めて
から、針で穴を複数空けて硝石をしっかりすり
込んだ舌肉を入れた容器に注ぎ込む。平均的な
重さの舌肉を漬け込む期間は冬季で 8 日間、夏
季は 6 日間。

1) この注記は第二版から。内容が当時の知見にもとづいたものであることに注意。ただし、19 世紀には木酢液を原料として工業
用の氷酢酸が既に製造されていた。また、タンパク質は pH の変化によって分解されるので、マリナードにヴィネガーを加え

2)
3)
4)
5)

6)

7)
1)

るのは理にかなっている。なお、肉を柔らかくする効果のあるタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)の代表的なひとつである
パパインの発見は 1940 年代になってからのこと。パイナップルに含まれているブロメラインの効果は経験的に知られていた
可能性もあるが、この酵素が 60 ℃で不活性化することが広く知られるようになったのは、少なくとも日本では比較的近年の
ことに過ぎない。
cerf(セール)、ニホンジカやエゾジカもフランス語で表現するとこれに含まれるので、これらの料理について chevreuil(しゅ
う゛るいゆ)ノロ鹿の名をつけるは、厳密には誤り。
この見出しは第四版のみ。初版〜第三版にかけては、マリナードとソミュールのレシピの間に区切りをつけるものは何も挿入
されていない。
フランス語は sel gris(セルグリ)または gros gris(グログリ)
。灰色がかった粗塩。
原文 salpêtre(サルペートル)硝酸カリウム。殺菌作用と、肉類を赤く発色させる効果を持つ。現代の日本では亜硝酸カリウ
ム、亜硝酸ナトリウムが使われることが多い。いずれも日本では劇物指定されているが、シャルキュトリ(豚肉加工品の製造)
においては不可欠とも言われるな薬品であり、とりわけボツリヌス菌対策の効果が大きい。そのため劇物ではあるが、食品添
加物として認められており、使用限界量が厳密に定められている(食品添加物は国あるいは地域によって扱いが異なるので注
意)
。硝酸塩あるいは亜硝酸塩による肉の赤い発色を「着色料によるもの」と誤認する消費者は少なくない。これはかつて「魚
肉ソーセージ」がコチニール色素でピンク色に染められていたことから連想される誤認と思われる。また、食品添加物イコー
ル毒という安直な考えから忌避する消費者も少なくないのは事実だろう。こうしたことから、現代日本のレストランでは、製
造後すぐに提供可能であるために、これら硝酸塩、亜硝酸塩の類を用いないところもある。
このソミュールに舌肉を漬け込むと、硝石の作用で舌肉が赤く発色する。それを拍子木状などに切って鶏やフィレ肉の表面に、
同様に切ったトリュフや豚背脂などとともに刺して装飾することが 19 世紀〜20 世紀初頭までよく行なわれた。現代ではほと
んど行なわれなくなった装飾方法。この場合はあくまでも料理の装飾を目的としたものであり、牛や豚の舌肉を保存食として
利用する場合には塩漬けや燻製などの方法も用いられる。
砂糖きびを原料とした粗糖。通常は茶褐色のものが多く「赤糖」とも呼ばれるが、精白したものもある。精製が不完全である
ため独特の風味があり、料理および製菓でしばしば用いられる。
この項は第二版で追加された。通常はシャルキュティエすなわちシャルキュトリ専門の職人が行なう規模のものであり、料理
人の仕事の範疇をやや越えるとも考えられる。

62
グランドソミュール1)

Grande saumure
(仕上がり 50 L 分)
• 水……50 L
• 塩……25 kg
• 硝石……2.7 kg
• カソナード……1.6 kg
• 作業手順……メッキされた銅の鍋に材料を全て
入れ、強火にかける。沸騰したら、皮を剥いた
じゃがいも 1 個を投入する。じゃがいもが浮い
てくるようであれば、じゃがいもが沈みはじめ
る寸前まで水を足す。逆に、じゃがいもが完全
に底まで沈んでしまうようなら、じゃがいもが
水面に見えてくるまで煮詰める必要がある。
ソミュールがちょうどいい具合になったら、鍋
を火から外して、このソミュールで漬け込み槽
に注ぎ込む。漬け込み槽の素材は、スレート製、
岩製、セメント製、あるいはレンガ製でしっか
りエナメル引きしたものを用いること。
漬け込み槽の底に、木製の網を敷き、その上に
漬け込む肉を置くといい。肉が槽の底面に直接
当たっていると、肉の下側にソミュール液が浸
透しない可能性がある。

I.

ソース

Sauces

漬け込む肉は、たとえ小さなものであっても、
専用の携行可能な注入器具を使ってソミュール
を内部に注入してから、漬け込み槽に入れてや
ること。この準備作業を怠ると、肉全体が均等
に塩漬けにならない可能性がある。肉の中心部
がちょうどいい塩加減になる頃には外側は塩が
強すぎるということになってしまうのだ。牛の
ランプ、イチボなどの塊肉で、4〜5 kg の大き
さの場合は、ソミュール液を注入してやる方法
を使えば 8 日間で漬かる。
牛舌肉をこの方法で漬ける場合は、出来るだけ
新鮮なものを用いる必要がある。軟骨部分をき
れいに取り除いてやり、肉叩きか麺棒で丁寧に
叩いてやる。ブリデ針2) を使って、表面全体に
刺し穴をつけてやる。それからソミュールに漬
け込むが、何らかの重しをして浮き上がらない
ようにしてやること。
【原注】ソミュールはマリナードほどは腐敗し
にくいとはいえ、天候が悪い時季などはとりわ
け、よく様子を見て、時々は沸騰させてやるの
がいい。沸騰させれば多少は濃縮されてしまう
から、本文記載の方法でじゃがいもを用いて、
毎回少量の水を加える必要がある。

2) 主として鶏などの手羽や腿をまとめて整形し、その形状を保つよう糸で縫う際に用いる縫い針。

63

ジュレ

ジュレ

Gelées diverses
どんなジュレも、ベースとなっているのはほぼ全てフォンだ。だから、フォンのメインとなってい
おの

る素材によってジュレの風味が決まるわけだ。その結果としてジュレの用途も自ずと決まってくる。
人工的な凝固剤を使わずにジュレを確実に固めるためには、フォンのメインとなる素材に、仔牛の
足や豚皮のようなゼラチン質の量を計算して加えることになる。仔牛の足や豚の皮を使えば、ジュレ
を確実に凝固させられるし、しかも柔らかな口あたりに仕上げられる。
そうはいっても、とりわけ夏季には、クラリフィエ1) の作業を行なう前に必ず、フォンを氷の上に
垂らしてみて、固さと濃度を確認し、必要があれば板ゼラチンを何枚か加えてやること。
追加する板ゼラチンの量は、どんな場合でも、フォン 1 L あたり 9 g(6 枚)を越えないこと。板ゼ
にかわ

ラチンは、透き通っていてぱりぱりと割れやすく、膠っぽい味のしないものを選ぶこと。必ず冷水で
もどしてから使うか、せめてよく洗ってから用いること。
標準的なジュレを作る際に人工着色料を使うことはお勧め出来ない。標準的なジュレは充分に色よ
く仕上がるものだ。さらに、最後にマデイラ酒を加えてやれば充分に、標準的なジュレの特徴ともい
える淡い琥珀色に仕上がる。

標準的なジュレ用のフォン2)

Fonds pour gelée ordinaire
(仕上がり 5 L 分)
• 主素材……仔牛のすね肉とバモルソー3) 2 kg、細
かく砕いた仔牛の骨 1.5 kg、牛の脚肉 1.5 kg……
これらの肉と骨はオーブンで軽く色付けておく
こと。
• ゼ ラ チ ン 質 …… 骨 を 取 り 除 い て4) 下 茹 で し
た5) 仔牛の足 3 本、背脂を付けたままの生の
豚皮6) 250 g。
• 香味素材……にんじん 200 g、玉ねぎ 200 g、ポ

ワロー7) 50 g、セロリ 50 g、充分な香りと量の
ブーケガルニ。
• 使用する液体……水 8.5 L。
• 加熱時間……6 時間。
• 作業手順……ソース用の茶色いフォンとまった
く同じ。ただし、ジュレ用のフォンの色合いは
ソース用のフォンよりも薄くしておくこと。

1) clarifier > clarification 次項参照。
2) この項および次の「白いジュレ用のフォン」は初版と第二版以降の異同が大きい。この「標準的なジュレ用のフォン」は初版
では使用する液体が 8 litres et demi de remouillage いわゆる「二番のフォン」であり、加熱時間も 6 時間と短かい。第二版は
「水 8.5 L」になるが、加熱時間は 6 時間のままで、作業手順が「ソース用の白いフォンと同じ」となっている。第三版で現在
の記述となった。

3) 原文 bas morceaux 煮込みなどに用いる部位の総称。bas は「低い」が原義であり、食材として低級な部位というニュアンス。
4) 原文 désosser(デゾセ)骨を取り除く。
5) 原文 blanchir(ブランシール)。下茹ですることがだ、原義は「白くする」。もとは中世において肉を調理する際にはローストで
あれ煮込みであれ、ほぼ必ず下茹でしていた。赤い肉を茹でると表面が白くなることからこの用語が定着することになったが、
現在ではもっぱら野菜の下茹でなどについて言うことがほとんど。
「ブランシェ」と言う現場もあるようだが、もとのフランス
語からやや離れているので「ブランシール」で覚えるといいだろう。
6) 塩漬けなどの加工をしていない、ということ。
7) poireau(x) ポロねぎ。日本の長葱とは異なり、植物としてはむしろ、にんにくに近いが、風味はかなり異なる。古代ローマ時
代からヨーロッパで広く親しまれてきた野菜のひとつ。ローマ皇帝ネロが演説で大きな声を出すために、ポワローの蜂蜜漬け
を好んだという逸話がある。伝統的な栽培方法の場合、旬は秋〜冬。播種から収穫まで 10 ヶ月以上かかる品種も多い。太さ 3
〜5 cm、軟白部が 20〜40 cm くらいのものが多い。フランスの標準的な規格では軟白部 20 cm 以上。かつては日本の長葱と同
様に成長に応じて「土寄せ」して栽培していたが、その方法では内部に土砂が入りやすい。また、太さ 1 cm 程のミニ・ポワ
ローも付け合わせ用の高級野菜として人気がある。元来ミニ・ポワローは苗の「間引き」を利用したものだったが、現在では
ミニ・ポワローむけの品種も開発されている。いずれもヨーロッパでは大型機械を用いた大量生産が一般的。日本にも秋〜冬
季はヨーロッパ産が、春〜夏季はオーストラリア産が安定的に輸入されている。日本国内での生産も明治以降、試みられては
いるが、需給バランスとコスト的に見合わないために断念せざるを得ないケースも少なくないようだ。なお、第二次大戦前は
八丈島などでこうした西洋野菜の栽培が行なわれ、船便で東京まで運ばれていたという(cf. 大木健二『大木健二の洋菜ものが
たり』日本デシマル、1997 年)。なお、現代フランス語でブレット(ふだんそう)のことを poirée(ポワレ)とも呼ぶが、こ
れは ポワロー poireau と同語源。中世の料理書にはしばしば、野菜をペースト状になるまで煮込んだポタージュとして porée
(ポレ)というものが出てくるが、どちらを材料として用いているか判別できないケースもある。

64
白いジュレ用のフォン1)

Fonds pour gelée blanche
主素材、ゼラチン質、香味素材の種類と分量は
前記の標準的なジュレ用のフォンを参照。
使用する液体の量は標準的な白いフォンとまっ
たく同じにすること。
加熱時間も作業手順も同様。

鶏のジュレ用のフォン

Fonds pour gelée de volaille
(仕上がり 5 L 分)
• 主素材……仔牛のすね肉 1.5 kg、牛の脚肉 1.5
kg、細かく砕いた仔牛の骨 1.5 kg、鶏ガラ、と

•
•

•
•
•

さか、手羽先、足など(とりわけ湯通しした手
羽と足)、1.5 kg。
ゼラチン質……骨を取り除いて下茹でした仔牛
の足(小)3 本。
香味素材……材料の種類は標準的なジュレ用
のフォンと同じだが、量はやや少なめにする
こと。
使用する液体……軽く仕上げた白いフォン 8 L。
加熱時間……4 時間半。
作業手順……ソース用の鶏のフォンとまったく
同じ。

ジビエのジュレ用のフォン

Fonds pour gelée de gibier
(仕上がり 5 L 分)
• 主素材……仔牛のすね肉 1 kg、牛の脚肉 2 kg、仔
牛の骨 750 g、ジビエのガラやバモルソー2) 1.75
kg。これらはすべてオーブンで焼いて色付けて
おくこと。

• ゼラチン質……鶏のジュレ用のフォンと同じ。
• 香味素材……材料の種類は標準的なジュレ用の
フォンと同じだが、セロリとタイムを 1/3 量多
くすること。ジュニパーベリー3) 7〜8 粒を追加
すること。
• 使用する液体……水 8 L。
• 加熱時間……4 時間。

I.

ソース

Sauces

• 作業手順……ソース用のジビエのフォンとまっ
たく同じ。
標準的なジュレ用の魚のフォン

Fonds de poisson pour gelée ordinaire
(仕上がり 5 L 分)
• 主素材……グロンダン4) 、ヴィーヴ5) 、メルラ
ン6) などの安い魚 750 g、舌びらめのアラと端肉
750 g。
• 香味素材……薄切りにした7) 玉ねぎ 200 g、パセ
リの根 2 本、フレッシュなマッシュルームの切
りくず 100 g。
• 使用する液体……やや薄めで透き通った仕上が
りの魚のフュメ 6 L。
• 加熱時間……45 分間。
• 作業手順……魚のフュメと同じ。

赤ワインを用いた魚のジュレ用のフォン

Fonds pour gelée de poisson au vin rouge
このフォンは通常、鯉やトラウトなどの魚料理
に用いられる。
このフォンに使用する液体は、良質なブルゴー
ニュ産赤ワインと魚のフュメを同量ずつにす
る。魚のフュメは、ジュレが確実に固まるよう、
ゼラチン質が多めのものを用いること。
風味付けは、魚に火を通すのに使った香味野菜
によるもので充分だ。
ジュレ用のフォンについての注意
……ジュレ用のフォンは出来るだけ、使用する
前日に仕込んでおくこと。いい具合に煮込んだ
ら、浮き脂を取り除き8) 、漉してから陶製の容
器に入れて冷ます。
冷めるとフォンは凝固する。取り除ききれな
かったごくわずかな脂が表面に浮いてくるが、
板状に固まるので容易に取り除くことが出来
る。布あるいは漉し器でフォンを漉した際に
すり抜けてしまった堆積物も自重で容器の底
に沈むので、フォンを完全に澄ませることが出
来る。

1) 初版全文は「主素材、ゼラチン質、香味素材は上記のとおり。注ぐ液体は水(原文 mouillage à blanc)、作業手順は基本の白い

2)
3)
4)
5)
6)
7)
8)

フォンと同様」
。第二版で現在の記述となっている。この文脈からすると、白いフォンの二番を使うとも解釈され得るが、前項
の「標準的なジュレ用のフォン」が最終的に水を用いて作ることになっているのと比較すると、加熱時間および作業手順が何
と同様なのか曖昧になってしまうため、ここでは液体、加熱時間、作業手順を標準的な白いフォンと同じと解釈した。なお、
英訳第 5 版では、but use very white stock instead of water「水ではなく白いフォン」を注ぐとなっている。
標準的なジュレ用のフォン訳注参照。
セイヨウネズの実。ジンの香りを特徴付けているもの。
ホウボウ科の魚。和名カナガシラ。
ハチミシカ科の海水魚の総称。
鱈の近縁種。
émincer エマンセ。
dégraisser デグレセ。

65

ジュレ

ジュレのクラリフィエ1)

Clarification des Gelées

標準的なジュレ

2)

Gelées grasses ordinaires
(仕上がり 5 L 分)
1. まずフォンの濃度を確認する。必要に応じて追
加すべきゼラチンの量を調整する。

2. ジ ュ レ 用 の フ ォ ン は 充 分 に 浮 き 脂 を 取 り 除

き3) 、沈殿物も取り除い4) てあること。
3. 厚手で適切な大きさの片手鍋5) に、細挽き6) にし
た脂身のない7) 赤身の牛肉 500 g とセルフイユ
とエストラゴン計 10 g、卵白 3 個分を入れる。
4. 冷たい、あるいは生温い状態のジュレ用のフォ
ンを挽肉の上から入れ、泡立て器かヘラで混ぜ
る。
ゆっくり混ぜながら、強過ぎない程度の火加減
で沸騰させる。卵白に含まれるアルブミンの分
子が澄ませる作用を持っているので8) 、混ぜる
ことで卵白がまんべんなく広がるようにするわ
けだ。
15 分程、微沸騰の状態を保ち、目の詰まった布
で漉す。
【原注】ジュレに酒類を添加するのは、ほぼ冷
めた状態になってからにするのがいい。クラリ
フィエの作業中に酒類を加えるのは、沸騰して
いるために味が悪くなってしまうので、致命的
な誤りでさえある。
そうではなく、ほぼ冷めた状態のジュレに酒類
を添加すれば、その香気はそのまま保たれるこ
とになる。
作業の最後に酒類をジュレに添加すればジュ
レを薄めてしまう結果になるわけだからそれを
考慮して、添加する酒類の量によっては、あら
かじめジュレを充分に固めに作っておくのがい
い。そうすれば、ジュレが固まるのに充分なゼ

ラチンの濃度を保てるわけだ。
マデイラ酒、マルサラ酒、シェリー酒を加え
る場合の分量はジュレ 1 L あたり 1 dL とする
こと。
ライン産のワインやシャンパーニュ、銘醸白ワ
インを加える場合は、ジュレ 1 L あたり 2 dL
とすること。加える酒類がどんなものであって
も、文句ない程に良質のものを用いるべきだ。
質の悪い酒類を加えてジュレの仕上がりを台無
しにしてしまうくらいなら、加えないほうがま
だましと言える。

鶏のジュレ

Gelée de volaille
鶏のジュレのクラリフィエは標準的なジュレの
場合とまったく同じに行なう。香味素材(セル
フイユとエストラゴン)
、澄ませるための材料
(卵白)も同様にする。
ただし、味の補強に用いる肉については変更す
ること。すなわち牛の赤身肉を半量にして、残
り半量は鶏の首肉にする。つまり、牛肉 250 g
と鶏の首肉 250 g の挽肉を用いる。
【原注】鶏のローストのガラを粗く砕いてエ
チューヴ9) でよく乾燥させて脂気を抜いたもの
を、このクラリフィエの際に加えると、素晴し
い結果が得られる。

ジビエのジュレ

Gelée de gibier
クラリフィエの作業のやり方はまったく同様。
ただし、このジュレを作る際には、いくつか留
意すべきポイントがある。
標準的なジビエのジュレ、つまり特有の風味を
持たせないものの場合は、味の補強には牛の挽
肉 250 g とジビエの赤身の挽肉 250 g を用いる
こと。

1) clarification(クラリフィカスィオン)澄ませること、透明にさせること、の意の名詞だが、(1)本文にあるように、ただ単に
「澄ませる」だけではなく、風味を補ったり強化し、色合いを調節する作業も兼ねていること、
(2)現代日本の調理現場ではフ
ランス語の動詞 clarifier をカタカナにして「クラリフィエ」と呼ぶケースが多いことなどを考慮して、カタカナで動詞形のク
ラリフィエとした。なお、
「クラリフェ」と呼ぶ現場もあるようだが、もとのフランス語が clarifier と i の音があるのでこれは
許容しがたい。

2) この grasse < gras は「脂気のある、太った」の意ではなく、カトリックにおける「小斉」の食事を maigre と表現することと対

3)
4)
5)
6)
7)
8)

9)

になっているもの。すなわち「小斉ではない通常の」の意であることに注意。小斉については魚料理用ソース・エスパニョル
訳注およびソース・ラギピエール訳注参照。
dégraisser デグレセ。
décanter デカンテ。
casserole カスロール。
ミートチョッパーやフードプロセッサが一般化する以前はアショワール hachoir という、両側に柄の付いた刃が湾曲した専用
の包丁で細かく刻んでいた。
ここで原文は maigre を用いているが、これはもちろん「脂気のない」の意。
やや大雑把な説明になるが、液体中に浮遊している不純物を抱き込むかたちで卵白が熱変性により凝固する、その結果として
液体を「澄ませる」ことになる。ただし、これだけだと液体の味そのものや風味が薄くなってしまうために、それを補うある
いは強化する意味で挽肉や香草、香り付けの酒類を加える、ということ。
食品の乾燥などに主に用いられる低温のオーブンの一種。

66
ジュレに独特の香りを持たせる必要がある場合
には、必ず、肉それ自体に香気のあるジビエの
肉、すなわち、ペルドロー、雉、ジェリノット1)
などをクラリフィエの際に用いること。
どんなジビエのジュレでも仕上げに、ジュレ 1
L あたり大さじ 2 杯の上等なコニャックを加え
る。ただし、コニャックは絶対に良質のもので
なければいけない。平凡なコニャックしか使え
ないのなら、これは省いたほうがいい。
この香り付けをしなくても、ジュレは不完全な
ものとはいえ、一応使えるものになる。いっぽ
うで、ありきたりのコニャックで香り付けする
と、美味しくは仕上がらない。
魚の白いジュレ

Gelée de poisson blanche

魚のジュレのクラリフィエは以下のとおり2) 。
1. 卵白を使う場合、ジュレ 5 L あたり卵白 3 個
分に、クラリフィエによって薄まってしまうの
を補うためにメルランの身を細かく刻んだもの
250 g を加える。
2. もし可能なら新鮮なキャビア、なければ圧縮
キャビア3) をジュレ 1 L あたり 50 g 用いる。方
法は魚のコンソメのクラリフィエで説明してい
る4) (ポタージュの章を参照)
。
魚のジュレの香り付けには、辛口のシャンパー
ニュもしくはブルゴーニュの銘醸白ワインを用

1)
2)
3)
4)

I.

ソース

Sauces

いるといいが、標準的なジュレの注において説
明した酒類を加える場合の注意事項を勘案する
こと。
【原注】場合によっては、ジュレ 1 L あたり 4
尾のエクルヴィスを用いることで、魚のジュレ
に独特の風味付けをすることも出来る。エクル
ヴィスをソテーしてビスクを作る要領で煮てか
ら、鉢に入れて細かくすり潰し、最後に漉す作
業の 10 分前に魚のフォンに加える。
赤ワインを用いた魚のジュレ

Gelée de poisson au vin rouge

このジュレのクラリフィエには、ジュレ 5 L あ
たり卵白 4 個分を用いる。
赤ワインで魚を煮ている途中や、ジュレのクラ
リフィエ作業の際に、タンニン由来の色素にす
ぐ変化してしまうことがしばしば、というかほ
ぼ必ず起こる。ワインが分解してしまうのは魚
のフュメに含まれているゼラチン質と接触して
反応するためのようだ。こんにちに至るまで、
これを避ける方法は見つかっていない。
そのため、色合いの不足を補うには人工色素
(液体のカルミン5) か別の植物由来の色素)を加
える必要がある。ただし、使用量にはごく細心
の注意を払い、ジュレがやや深みをおびたバラ
色を越えてしまわないようにすること。

gélinotte 雷鳥の一種。
(1)または(2)の方法をとる、と解釈していいだろう。

キャビアバター訳注参照。
概要は、キャビアをピュレ状にすり潰し、冷たい魚のコンソメでのばして加える。火にかけて絶えず混ぜながら沸かし、微沸
騰の状態を 20 分保った後、布で漉す、という方法。
5) コチニール色素。合わせバター本文および訳注参照。

67

II.

ガルニチュール

Garnitures

料理においてガルニチュール1) は重要なものだから、料理人は決してガルニチュールの役割を軽視
してはいけない。ガルニチュールの構成をどうするかは、添える料理の主素材との関係性で決まる。
気まぐれ的なものや不自然なものは絶対にいけない。
ガルニチュールの構成要素は、場合によりけりだが、もっぱらどんな種類の料理に添えるかで決
まる。具体的には、野菜料理やパスタ、ファルスでさまざまな形状に作ったクネル2) 、あるいは雄鶏
のとさかとロニョン3) 、さまざまな種類の茸、オリーブとトリュフ、イカや貝および甲殻類、場合に
よっては卵、小魚、牛や羊の副生物4) など。
その昔、ガルニチュールというのは、マトロットやコンポート、ブルゴーニュ風料理などのように
風味付けのために用いた素材がそのまま添えられたものであった。
ガルニチュールにする野菜は、どういう仕立ての皿にするかで役割が決まり、それに合うように
切って形状を整え、調理する。ただし、野菜の調理法は「野菜料理」として調理する場合と同じだ。
パスタやイカ、貝類、甲殻類についても同様のことが言える。
この章では、それぞれのガルニチュールを構成する素材とその分量を示すに留めるので、各素材の
調理法ついてはその素材に対応する章を参照すること。

ファルス5)

Série des farces diverses
ガルニチュールの多くは、その構成要素にファルスあるいはファルスで作った「クネル」が含まれ
ている。ファルスはまた、多くの大きな仕立ての料理にも使われる。ここではまずファルスの材料お
よび作り方を示し、使い途については後で述べることにする。
ファルスは大きく 5 種に分類される。

1. 仔牛肉と脂で作るもの。すなわち古典料理におけるゴディヴォ。
2. 基本となる材料はさまざまだが、「つなぎ」に主としてパナードを使うもの。
3. 近代的な手法で、生クリームを用いてふんわり泡立てたファルス。ムース、ムスリーヌに用いる。
4. レバーをベースとした「ファルス・グラタン」。種類はいろいろだが作り方は常に同じ。
おも

5. 主にガランティーヌ、パテアンクルート、テリーヌなどの冷製料理に用いるシンプルなファルス。

1) garniture 一般的には「付け合せ」と訳すが、本書におけるガルニチュールはたんなる料理の「付け合わせ」にとどまらず、こ
んにちではそれ自体がひとつの料理として成立し得るものも多い。そのため、あえて片仮名でガルニチュールとした。なお、
「付け合わせ」の意味で「ガルニ」または「ガロニ」などというスラングを用いる調理現場もある。
2) quenelle 仔牛肉や鶏肉、豚肉などと獣脂をすり潰して、しばしば「つなぎ」として後述のパナードを加えて練り、スプーンな
どを用いて整形し、沸騰しない程度の温度で茹でる [ポシェ] またはオーブンで焼いたもの。スプーンを 2 つ使ってラグビー
ボールに似た形状にしたものが代表的だが、他にもいろいろな形状、大きさにする。
3) ガルニチュール・フィナンシエールやそのバリエーションともいえるガルニチュール・ゴダールで必須の素材。ロニョン
rognon は通常なら腎臓を意味するが、この場合のロニョンは rognon blanc ロニョンブラン(白いロニョン)とも呼ばれるも
ので、雄鶏の精巣のこと。
4) 正肉以外の部分。例えば内臓や骨髄など。Ris de vea(リドヴォー) 仔牛胸腺肉などはこれに含まれる。
5) 本来は「詰め物」の意で、鶏のローストの内臓を抜いた空洞部分に詰めたり、ガランティーヌやパテアンクルートの内部の詰
め物などの用途に用いられる。この意味はこんにちでも変化がないが、本文にあるように、クネルにしてガルニチュールの一
部にするなど、用途は多岐にわたる。本書ではファルスとして用いられるもののうち、肉および魚肉をベースにしたものをこ
の節にまとめて分類、説明している。したがって、ここでファルスとして挙げられていないファルスも料理によっては多い
(例えば丸鶏の空洞部分に米などを詰めるのもファルス)ことに注意。

68

II.

ガルニチュール

Garnitures

ファルス用のパナードについて1)

Les Panades pour Farces

ファルスに用いるパナードにはいくつもの種類がある。ファルスの種類や、そのファルスを添える
料理の性質によって使い分けることとなる。
原則として、パナードの分量は、ファルスのベースとする素材が何であれ、その半量を越えないよ
うにすること。
卵とバターを用いるパナードの場合はレシピの分量どおりに作らなければならないから、それを合
わせて作るファルスの全体量のほうを調節してやること。
パナード E 以外のパナードは使用する際には必ず完全に冷めた状態になっていること。パナードが
出来上がったら、バターを塗った平皿か天板に流し広げ、早く冷めるようにする。このとき、バター
を塗った紙で蓋をするか、表面にバターのかけらをいくつか置いてやり、パナードが直接空気に触れ
ないようにしてやること。
以下のパナードのレシピは仕上がり重量が正味 500 g になるように調整してある。
したがって、必要な量のパナードを作るのに材料を増やしたり減らしたりするのも難しくはないだ
ろう2) 。

パナード

Panades
A. パンのパナード
Panade au pain
(魚を素材にした固めのファルス用)
• 材料……沸かした牛乳 3 dL、固くなった白パ
ン3) の身 250 g、塩 5 g。
• 作業手順……パンの身を牛乳に浸して完全にも
どす。強火にかけて、ペースト状になったパン
がヘラから簡単に取れるくらいまで水気をとば
す。バターを塗った平皿か天板に広げ、冷ます。

B. 小麦粉のパナード
Panade à la farine
(肉、魚などあらゆるファルスに用いられる)

• 材料……水 3 dL、塩 2 g、バター 50 g、篩にか
けた小麦粉 150 g。
• 作業手順……片手鍋に水、塩、バターを入れて
火にかけ、沸騰させる。火から外して小麦粉を
加えて混ぜる。再度火にかけて、シュー生地を
作る要領で余計な水分をとばす。上記パナード

1) パナードは本来、パンと水、バターを弱火で時間をかけて煮た粥のようなものを意味した。本書ではその意味を拡大して肉や
魚肉をベースとしたファルスを加熱する際に崩れないようにする「つなぎ」として、この語を用いている。そのため、必ずし
もパンを材料としていないものが含まれている。
2) 原文では、Rien de plus simple, donc, que … となっており、直訳すると「これ以上に簡単なことはない」と言いきっているが、
都度計算しなければならないことに変わりはないので、多少ニュアンスを柔らげて訳した。
3) ここではいわゆるバゲットのようなパンの外側を削り落した白い部分、あるいは食パンの「耳」を切り落した白い部分を使う、
ということ。なお、フランスのパンは使う小麦粉の精白度や種類によって、pain complet(パンコンプレ)全粒粉パン、pain de
sègle(パンドセーグル)ライ麦パン、精白度の高い小麦粉と食塩、塩、パン種だけで作るバゲットなどの pain と、バターや
砂糖を加えて作るヴィエノワズリ(クロワッサンやパンオショコラ、ブリオシュなど)に分けられる。イギリスやアメリカの
いわゆる食パン(フランス語 pain de mie パンドミ)は小麦粉、バター、塩、イースト菌、牛乳などで作られている。また、
現代フランスでバゲットなどのパンに用いられている小麦粉の精白度は、T-55 と呼ばれる灰分 (小麦粉を燃やした際に残る炭
水化物およびタンパク質以外の要素)0.5〜0.6 %のものが主流であり、いわゆる食パン pain de mie(パンドミ)やヴィエノワ
ズリには T-45(灰分 0.5 %以下) が多く用いられている。このほか T-65(灰分 0.62〜0.75 %)および T-80(灰分 0.75〜0.9 %)、
T-110(灰分 1.0〜1.2 %)、T-150(灰分 1.4 %前後、いわゆる全粒粉)のように種類がある。このうち T-45 および T-55 は farine
blanche(ファリーヌブロンシュ)と呼ばれ、T-150 は farine complète(ファリーヌコンプレット)と通称されている。灰分が
高くなればそれだけ不純物が多いわけだから、粉は薄い茶色あるいはグレーがかった色合いになり、パンを焼く場合などはグ
ルテン形成が難しくなりやすい。そのいっぽうで、香りゆたかなパンを実現しやすいという面もある。結果として、例えば全
粒粉パンは香りはいいが固い仕上がりになりやすい。かつては精白度の低い(すなわち灰分の多い)粉ほど重量あたりの価格
が安く、パンの価格もそれに比例していた。中世においてはパンの価格は基本的に 1 ドゥニエ(通貨単位)で、精白度の高い
ものは 200〜300 g、精白度の低いものは 700〜800 g 程と大きな差があったという。ところで、本書では基本的に小麦粉を使う
場合にその精白度についての指示はないが、概ね T-55 または T-45 相当のもの考えていいだろう。なお、日本に輸入されてい
る小麦は北米産のものがほとんどで、硬質小麦を粉にしたものが「強力粉」
、軟質小麦の場合は「薄力粉」と呼ばれ、精白度合
いによる分類は通常なされていないが、製品としては概ね T-45 相当あるいはそれ以上の精白度のものが多い。

69

ファルス

A と同様にして冷ます。
C. パナード・フランジパーヌ1)
Panade à la Frangipane

• 作業手順……米を入れた鍋にコンソメを注ぎ、

(鶏のファルス、魚のファルス用)

• 材料……小麦粉 125 g、卵黄 4 個、溶かしバター
90 g、塩 2 g、こしょう 1 g、おろしたナツメグ
の粉ごく少量、牛乳 2 1/2 dL。
• 作業手順……片手鍋に小麦粉と卵黄を入れてよ
く練る。溶かしバター、塩、こしょう、ナツメ
グを加える。沸かした牛乳で少しずつ溶きのば
していく。
標準的なフランジパーヌと同様に、火にかけて
5〜6 分間、泡立て器で混ぜながら煮る。ちょ
うどいい漉さになったら、バットに移して2) 冷
ます。
D. 米のパナード

Panade au Riz

バターを加える。火にかけて沸騰させたら、オー
ブンに入れて 40〜45 分間加熱する。この間、米
に触れないようにすること。
オーブンから出したら、米粒がよく潰れるよう
にヘラでしっかりと混ぜる。その後、冷ます。

E. じゃがいものパナード
Panade à la pomme de terre
(仔牛および他の白身肉の、詰め物3) をする大き
なクネルに用いられる)
• 材料……茹でて皮を剥いたばかりの中位のサイ
ズのじゃがいも 2 個、牛乳 3 dL、塩 2 g、白こ
しょう 1/2 g、ナツメグ少々、バター 20 g。
• 作業手順……牛乳を 2.5 dL になるまで煮詰め
る4) 。バター、調味料、薄く輪切りにしたじゃ
がいもを加え、15 分間程加熱する。
ぬる

(いろいろなファルスに用いられる)
• 材料……米 200 g すなわち 2 dL あるいは大さ
じ 8 杯。白いコンソメ 6 dL、バター 20 g。

このパナードはまだ少し温いくらいで使用する
こと。完全に冷めてからではいけない。完全に
冷めてから練ると粘りが出てしまうからだ。

ファルス

Farces

ベースとなる素材が仔牛、鶏、ジビエあるいは甲殻類であっても、分量と作業手順はどんなファル
スでも同じだ。そのベースにする素材を代えればいいのだから、ここでは各種ファルスの典型的なレ
シピを示せば充分だろう。料理で用いられるファルスひとつひとつを説明するのに一章をあてる必要
はないと思われる。

1) フランジパーヌとは製菓で用いられる、小麦粉、砂糖、卵を混ぜて牛乳とバニラを加えて煮、砕いたマカロン macaron を加え
たクリーム。本文にあるように、このパナード・フランジパーヌにはマカロンは加えないので、作り方のプロセスが途中まで
似ていることからの命名だろう。なお、本来のクレーム・フランジパーヌに用いられるマカロンは、現代日本でよく知られて
いるタイプとは異なり、すり潰したアーモンドと卵白、砂糖を混ぜた生地を紙の上にクルミ大に絞り出してオーブンで焼いた
だけのシンプルなもの。Macaron craquelé(マカロンクラクレ)はこのタイプの代表的なもので、焼く際に膨らんで割れ目が
出来ることからクラクレ(裂け目のある)の名称が付けられた。ところで、日本にマカロンが伝わった時期は不明だが、この
タイプのものが太平洋戦争前には、アーモンドを落花生に代え、
「まころん」の名称でいくつかの製菓会社で製造されるように
なり、現在も生産されている。フランス語 macaron の初出はボッカッチョ『デカメロン』のフランス語訳で、原文 maccheroni
の訳語として現われる。ただ、このフランス語訳は異本も多く、そのうちの写本のひとつに macaron という語が見られるに過
ぎない点で、フランス語への影響という意味では微妙なところだ。むしろ既にフランス語として存在した macaron と音が似て
いるからというだけの理由で訳語としてあてた可能性さえある。ボッカッチョの原書におけるマッケーローニはこんにちのそ
れ(マカロニ)とは違い、ニョッキのようなものだったと解釈されるのが定説であり、
「マッケローニやラヴィオリを去勢鶏の
ブロードで煮る」という文脈で出てくる。次に macaron という語がフランス語の文献で現われるのは 16 世紀フランソワ・ラ
ブレーの小説『ガルガンチュアとパンタグリュエル』の「第四の書」であり、長い献立リストの一部として登場する (p.678)。
このリストにおいて “Poupelin, Macaron. Tartres vingt sortes.”「ププラン(パティスリの一種)、マカロン、20 種ものタルト」
と並んでいることから、ボッカッチョのマッケローニとはまったく違うものであることがわかる。また、17 世紀には上述の
ようなマカロンの存在は知られていたという説があり、さらにフランス革命期にカルメル会修道女たちが隠れて作っていた
という macaron des soeurs(マカロン・クラクレのタイプで平たい形状)はナンシーの名物としてこんにちも有名。なおこの
macaron des soeurs の soeurs は「姉妹たち」の意味ではなく「(修道女である)シスター」のことなので間違えないよう注意。
2) débarasser(デバラセ)バットなどに移す、片付ける、の意。とりわけ前者の意味に注意。
3) fourrré(フレ)詰め物をした。farci(ファルシ)も同様に「詰め物をした」の意だが、後者はより一般的で、前者はオムレツや
クレープに中身を詰めて「包む」のが本来の意味。すなわち、このパナードを加えたファルスで、何らかの素材を「包む」と
解釈してもいい。とりわけこの fourré には日本料理の用語「射込む」をあてる場合もある。
4) 原文は réduire le lait d’un sixième 直訳すると「牛乳を 1/6 量だけ煮詰める」すなわち「$5⁄6量まで煮詰める」のだが、かえって
分かりにくいため、具体的な数字に直して訳した。分量を代えて作る場合には 85 %まで煮詰めるくらいと考えてもいいだろ
う。そもそも、じゃがいもの重さが曖昧なのだから、あまり細かい数字にこだわらず臨機応変に考えること。

70

A. パナードとバターを用いるファルス
Farce à la Panade et au beurre
(標準的なクネル、肉料理1) の縁飾り etc.)
• 材料……ていねいに筋取りをした肉 1 kg、パ
ナード B 500 g、塩 12 g、こしょう 2 g、全卵 4
個、卵黄 8 個。
• 作業手順……肉をさいの目に切って鉢に入れ、
調味料を加えてすり潰す。いったん肉を取り
出して、パナードをよくすり潰しながらバター
を加える。肉を戻し入れ、すりこ木2) で力強く
練って全体をまとめる。
次に全卵と卵黄を加えて混ぜ合わせる。これは
2 回に分けても 1 回でやってもいい。裏漉しし
て陶製の容器に入れる。さらに泡立て器で滑か
になるまで混ぜる。
【原注】どんな種類のファルスを作る場合でも、
必ず少量を沸騰しない程度の温度で茹でて3) テ
ストしてから、クネルの整形に取りかかること。
B. パナードと生クリームを用いるファルス

Farce à la Panade et à la Crème

(滑らかな仕上がりのクネル用)

• 材料……筋取りをした肉 1 kg、パナード C 400
g、卵白 5 個分、塩 15 g、白こしょう 2 g、ナツ
メグ 1 g、クレーム・ドゥーブル 4) 1 1/2 L。
• 作業手順……どんな肉を使う場合でも、卵白を
少しずつ加えながらしっかりとすり潰すこと。
パナードを加え、すりこ木でしっかり練り、二
つの素材がよくよく混ざり合うようにする。
目の細かい網で裏漉しし、鍋にファルスを入れ
る。ヘラで滑らかになるよう混ぜ、鍋を氷の上
に置いて一時間ほど休ませる。
生クリームの 1/3 量を少しずつ加えながら、の
ばしていく。最終的に残りの 2/3 の生クリーム
も加えるが、これは先に泡立て器で軽く立てて
おくこと。
生クリームを全部加えた時点で、ファルスは

II.

ガルニチュール

Garnitures

真っ白で滑らかでしかも、ふんわりとした仕上
がりにならなくてはいけない。
【原注】手に入った生クリームが必ずしも最上
級のものでない場合には、パナード C を用い
てバターを用いたファルスを作った方がまだ
いい。

C. 生クリームを用いる滑らかなファルス/ファル
ス・ムスリーヌ

Farce à la Crème, ou Mousseline
(ムース、ムスリーヌ、ポタージュ用クネルなど)

• 材料……丁寧に掃除をして筋取りをした肉 1
kg、卵白 4 個分、クレーム・エペス5) 1 1/2 L、塩
18 g、白こしょう 3 g。
• 作業手順……肉と調味料を鉢に入れて細かくす
り潰す。卵白を少量ずつ加えていく。目の細か
い網で裏漉しする。
これをソテー鍋に入れ、ヘラで滑らかになるま
で混ぜたら、たっぷりの氷で鍋を囲むようにし
て 2 時間冷やす。
次に、生クリームを少しずつ加えながらファル
スをのばしていく。丁寧に練っていくこと。ま
たこの作業は鍋底を常に氷にあてた状態で行な
うこと。
【原注】…… 1. 上で示した生クリームの分量は
平均的な数字だ。ファルスのベースとなってい
る素材つまり肉、魚、甲殻類によってそれぞれ
タンパク質の特性が違うのだから、素材に吸収
される生クリームの量には多少の違いがでてく
るわけだ。
2. ここで示したファルスの作り方は、滑らかな仕
上がりのファルスの典型であって、これを越え
る繊細さを出せるものはないから、ファルスに
出来る材料すべて、つまり各種の肉、ジビエ、
鶏、魚、甲殻類などに適用していい。
3. 卵白の量は、ファルスのベースと素材によっ
て調整する必要がある。鶏や仔牛肉のようにア

1) 原文 entrée(アントレ)、現代では「前菜」の意味で用いられるが、本書では Relevé et Entrée「ルルヴェとアントレ」すなわち

2)

3)
4)
5)
1)

肉料理の章に収録されているレシピ、仕立てのこと。これらのうちとりわけ大掛かりな仕立てのものをルルヴェ、それ以外を
アントレと考えていい。本来ルルヴェもアントレも魚を主素材にした仕立てが少なからずあったり、17 世紀〜19 世紀前半に
かけての料理書では、いかに魚料理を大掛かりでゴージャスな仕立てでしかも美味なものにするか、が大きなテーマを占めて
いた。本書ではこれら四旬節の際などの「小斉」すなわち「肉断ちの料理」にあまりこだわらない傾向があるために「魚料理」
としてまとめられている。アントレの場合は、概ね 10 人前を一皿に盛ったものを指し、現代でも立派にメインの料理として通
用するものがほとんど。実際、英語での前菜は hors-d’oeuvre または appetizer の語を用い、メインデュッシュには entree(ま
たはフランス語のまま entrée)の語が現代でもあてられている。
pilon(ピロン)形状は日本のすりこ木をやや異なるのが多い。裏漉し用の漉し器(tamis タミ)とともに用いるピロンの場合
は、棒の端に円盤状のやや厚い板を付けた形状のものが多かった。現代の手動式のポテトマッシャーのようなイメージだろう
か。なお、ここでは大理石の鉢もしくは陶製のボウルを用いて作業していることに注意。現代ではフードプロセッサなどを用
いるところだろうが、かつては人力で、力を込めて丁寧に作業していたということは頭に留めておきたい。
pocher(ポシェ)。
乳酸発酵させた濃い生クリーム。フランスの生クリームについてはソース・シュプレーム訳注参照。
crème épaisse fraîche 低温殺菌の後、乳酸醗酵させたとても濃い生クリーム。前出のクレーム・ドゥーブルよりも濃い。
当時の知見であることに注意。卵白が主としてアルブミンで出来ているのは事実だが、肉については現代の知見と大きなズレ
がある。本書において、赤身肉は「オスマゾーム」という架空の、茶褐色をした美味しさのエキスのようなものが豊富に含ま
れており、仔牛などの白身肉はアルブミンが主体であるとする考え方が随所に認められる。現代ならイノシン酸の「うま味」
とテクスチュア、焼いた場合はメイラード反応による香気成分などが美味しさを感じさせる要素であると考えるところだが、
フランス料理は長い歴史においてイノシン酸というアミノ酸の一種が「うま味」成分であるということを知らずに、けれども
経験的にイノシン酸の比率が増えるようにブイヨンあるいはフォン、ソースなどの味を追究していった。イノシン酸やグルタ

71

ファルス
ルブミンが多く含まれていて1) 新鮮な肉であれ
ば、成獣の固くなった肉を使う場合よりも量は
少なくて済む。つまり、捌いたばかりでまだ温
かい若鳥の胸肉を使ってこのファルス・ムスー
ズを作るのであれば、卵白は省略してもいい。

4. 良質の生クリームが入手できる環境にあるな
ら、他のファルスを作るよりもこのファルスの
方がいいだろう。とりわけ、甲殻類をベースと
したファルスについては重要なことだ。

ゴディヴォ2) /仔牛肉とケンネ脂のファルス

Farce de Veau à la Graisse de boeuf, ou Godiveau
A. 氷を入れて作るゴディヴォ3)
Godiveau mouillé à la glace
• 材料……筋をきれいに取り除いた仔牛腿肉 1
kg、水気を含んでいない牛ケンネ脂4) 1.5 kg、全
卵 8 個、塩 25 g、白こしょう 5 g、ナツメグ 1
g、透明な氷 7〜800 g または氷水 7〜8 dL。
• 作業手順……はじめに、仔牛肉とケンネ脂を

別々に、細かく刻む。仔牛肉はさいの目に切り、
調味料と合わせておく。牛脂は細かくして、薄
皮は筋はきれいに取り除いておく。
仔牛肉と牛脂を別々の鉢に入れて、それぞれ
すり潰す。次にこれらを合わせてから、完全に
混ざり合って一体化するまでよくすり潰し、卵
を一個ずつ、すり潰す作業を止めずに加えて

ミン酸、グアニル酸などのアミノ酸による「うま味」の概念そのものが、20 世紀末になってようやく認知されるようになった
に過ぎない。あくまでも「経験則」にもとづいて美味しさの探求が行なわれてきたと言える。
2) ゴディヴォ godiveau はフランソワ・ラブレーの小説『ガルガンチュアとパンタグリュエル』の「第三の書」(1546 年)が初
出。原書の綴りは guodiveaulx。これは「アンドゥイエット(のようなもの)」と一般に解釈されている。ラブレーはこれに先
立つ 1534 年「ガルガンチュア」(=第一の書)において gaudebillaux という表現を用いている。これについては「ゴドビヨと
は、たっぷり肥育した牛のトリップ(胃と腸)のこと」と本文で説明している。これらを敷衍すると、ゴディヴォはもともと
牛などの胃や腸を刻んで詰めた腸詰すなわちアンドゥイエットのことだった、と考えたくなっても不思議はない。しかし、た
とえ 16 世紀のラブレーにおけるゴディヴォが当時アンドゥイエットと呼ばれるものとほぼ同じだったとしても、アンドゥイ
エット andouilette がアンドゥイユ andouille に縮小辞を付したものであることから、中世のアンドゥイユを確認する必要が出
てくる。14 世紀末に書かれた『ル・メナジエ・ド・パリ』においてアンドゥイユは確かに「細かく刻んだ胃や腸を、腸詰にす
る」という説明がまず出てくるが、その他に、牛の第1胃だけを詰めるもの、豚のコトレットを切り出した端肉を材料にする
もの、胸腺肉やレバーを掃除した残りの肉を材料にするもの、が挙げられている (t.2,p.127)。これに従うなら、中世におけるア
ンドゥイユとは素材の定義があまりはっきりしていなかったもの、言える。ところが 17 世紀、ピエール・ド・リュヌ『新料理
の本』
(1660 年)に「スペイン風アンドゥイエット」というレシピがある。概要を記すと、仔牛肉を細かく刻む。豚背脂少々、
香草、卵黄、塩、こしょう、ナツメグ、粉にしたシナモンを加える。豚背脂のシートで巻いてアンドゥイエットの形状にする。
串を刺してローストする。ローストする際に滴り落ちてくる肉汁は受け皿で受ける。火が通ったらその肉汁をかける。茹で卵
の黄身 8〜10 個分と細かくおろしたパン粉を順につけて、しっかりした衣を作る。提供時にレモン汁と羊のジュをかけ、揚げ
たパセリを添える、というものだ。1693 年刊マシアロ『宮廷および大ブルジョワ料理の本』では豚のアンドゥイユ、仔牛のア
ンドゥイユとともに、仔牛のアンドゥイエットというレシピが掲載されている。最後のものには材料として「細かく刻んだ仔
牛肉、豚背脂、香草、卵黄、塩、こしょう、ナツメグ、シナモンを加えて作る」とある (pp.108-109)。また、1750 年に出版され
た『食品、ワイン、リキュール事典』でも、アンドゥイエットは「細かく刻んだ仔牛肉を楕円形に巻いたもの」と定義されて
いる。実際、17、18 世紀の料理書に出てくるアンドゥイエットは腸詰であるかどうかは別にしても、仔牛肉を主材料にしたも
のが多い。18 世紀ヴァンサン・ラ・シャペル『近代料理』第 1 巻のアンドゥイエットも細かく刻んだ仔牛肉を豚の腸に詰めて
作る。さて、ゴディヴォに戻ると、17 世紀、1653 年刊の『フランスのパティスリの本』(ラ・ヴァレーヌが著者だと言われて
いる)には Faire un pasté de gaudiueau「ゴディヴォのパテの作り方」という節があり、仔牛腿肉あるいは他の肉と脂身を細か
く刻んだもの、をパテ(≒ パイ包み焼き)に入れる。つまりここでも「仔牛腿肉」の使用が前提となっている。したがって、こ
れら勘案すれば、ラブレーのゴディヴォもまた仔牛肉を材料にしていたものだった可能性は充分に考えられるだろう。もちろ
んゴドビヨという別の巻で出てくる名詞との関連性は無視出来ないものだが、中世〜ルネサンス期において、食にかかわる名
詞、概念がしばしば曖昧だったことを考えると、多少のわかりにくさは許容せざるを得ない。したがって、本書において仔羊
腿肉とケンネ脂を使うゴディヴォを「古典的」なファルスとして扱っているのはまことに正鵠を射ていると言えよう。
3) 氷を入れて作る方法についてはカレームが 1815 年刊『パリ風パティスリの本』の「シブレット入りゴディヴォ」原注において
詳しく論じている。
「不思議なことだが、氷を入れることでゴディヴォが滑らかなテクスチュアになり、素晴しくふんわりとし
てとてもいい柔らかさに仕上がる。ゴディヴォが変質してしまうと、部分的とはいえそのクオリティはまったく失なわれてし
まう。これは夏によく起こる事で、あまりに暑いとその熱で牛脂が仔牛肉としっかりつながらなくなってしまうからだ。一方
(仔牛肉)は水分を含んでいて、もう一方(牛脂)は脂質そのものだからだ。だから、夏の暑い時期には必ず氷を加えて作るべ
きであり、逆に冬場はそこまでする必要はない (p.142)」
。ほぼ同時期のヴィアール『王国料理の本』1817 年版においてゴディ
ヴォのレシピの末尾に、「夏に、水の代わりに少量でも氷を使えるならそのほうがずっといい仕上がりになる (p.145)」と書か
れている。これは、製氷機、冷凍庫が実用化されるのが 19 世紀中頃なので、それよりやや早い時代ということになり、カレー
ムの主たる活躍の舞台であった食卓外交というものが、いかに贅沢だったかを示しているとも言えよう。言うまでもなく、17
〜18 世紀の料理書、パティスリの本においてゴディヴォのレシピは多く見られるが、氷の使用について言及したものはいまの
ところ見つかっていない。
4) 腎臓の周囲を厚く覆っている脂肪。融解温度が低く、精製して牛脂(ヘット)の原料となる。

72

II.

いく。
裏漉しして、平皿に1) 広げ、氷の上に置いて翌
日まで休ませる。
翌日になったら、再度ファルスをすり潰す。こ
の時、小さく割った氷を少しずつ加えていき、
よく混ぜ合わせる。
ゴディヴォに氷を加え終わったら、必ずテス
ト2) を行ない、必要に応じて修正する。固すぎ
るようなら水を少々加え、柔らかすぎるような
ら卵白を少し加えること。
【原注】ゴディヴォで作ったクネルはもっぱら、
ヴォロヴァンの詰め物3) にしたり、牛、羊の塊
肉の料理に添えるガルニチュール・フィナンシ
エールに用いられる。
他のクネルがどれもそうであるように、沸騰し
ない程度の温度で茹でて4) 火を通せばいいが、
一般的には手で整形して塩を加えた沸騰しない
程度の温度の湯で茹でる。
だが、「ポシャジャセック5) 」と呼ばれる技法、
すなわち弱火のオーブンで焼くのがいちばん
いい。
以下に示す方法はとても短時間で出来るので特
にお勧めだ。
ゴディヴォは充分に氷を加えて水気を含んだ状
態にしておく。オーブンの天板に敷いたバター
を塗った紙の上に、丸口金を付けた絞り袋から
絞り出す。オーブンの天板にもバターを塗って
おくこと。絞り出したクネルは触れ合うように
していい。
これを低温のオーブンに入れて加熱する。
7〜8 分すると、クネルの表面に脂が水滴状に
浸み出してくる。これが、ちょうどいい具合に
火が通った合図だ。オーブンから出して、クネ
ルを別の銀製の盆か大理石の板の上に裏返しに
ぬ

る

広げる。クネルが微温くなるまで冷めたら、敷
いてあった紙を端のほうから引き剥して取り
除く。
クネルは完全に冷めるまで放置し、その後に皿
1)
2)
3)
4)
5)

ガルニチュール

Garnitures

に移すか、可能なら柳編みのすのこに載せてや
るのがいい。
B. 生クリーム入りゴディヴォ

Godiveau à la crème
• 材料……筋をきれいに取り除いた極上の白さの
仔牛腿肉 1 kg、水気を含んでいない牛ケンネ脂
1 kg、全卵 4 個、卵黄 3 個、生クリーム 7 dL、
塩 25 g、白こしょう 5 g、ナツメグ 1 g。
• 作業手順……仔牛肉とケンネ脂は別々に、細か

く刻む。これらを鉢に入れて合わせ、調味料、
全卵、卵黄をひとつずつ加えながら、力強く全
体をすり潰し、完全に一体化させる。
裏漉しして、天板に広げる。氷の上にのせて翌
日まで休ませる。
翌日になったら、あらかじめ中に氷を入れて冷
やしておいた鉢で再度すり潰す。この際に生ク
リームを少量ずつ加えていく。
クネルを整形する前にテストをして、必要があ
れば固さなどを修正してやること。
C. リヨン風ゴディヴォ6) /ケンネ脂入りブロシェ
のファルス

Godiveau Lyonnais ou Farce de Brochet à la
graisse
• 材料……皮とアラをきれいに取り除いたブロ
シェ7) の身(正味重量)500 g、筋を取り除き細
かく刻んだ水気を含んでいない牛ケンネ脂 500
g(またはケンネ脂と白い牛骨髄半量ずつ)、パ
ナード C500 g、卵白 4 個分、塩 15 g、こしょう
4 g、ナツメグ 1 g。
• 作業手順……まず鉢でブロシェの身をすり潰
す。これを取り出して、次にケンネ脂にパナー
ド(よく冷やしたもの)を加えてすり潰し、卵
白を少しずつ加えていく。ブロシェの身と調味
料を入れ戻す。すりこ木で力強く練り、裏漉し
する。
陶製の器に移し、ヘラで滑らかになるまで練
る。使うまで、氷の上に置いておく。
次のように作ってもいい。ブロシェの身を調
味料とともにすり潰し、そこにパナードを加え

大きなバット。
少量を、沸騰しない程度の温度で火を通し(ポシェ)て様子を見ること。
原文 garniture ガルニチュールの意味が広いことに注意。
pocher(ポシェ)。
pochage à sec 直訳すると「乾燥した状態でポシェすること」。つまり水(湯)を用いずに、pocher と同様に低めの温度で加熱
することを指している。
6) このレシピは第二版以降。このファルスが仔牛肉が材料ではなくパナードも使うにもかかわらずゴディヴォの名称である根
拠はおそらく、ケンネ脂を用いていることだろう。なお、これを用いたブロシェのクネルの起源については、リヨンのシャル
キュトリ(豚肉加工業者)であるオ・プチ・ヴァテルの店主ルイ・レグロスが 1907 年に創案したものだという説がある。しか
しこの説は、1907 年の本書第二版にファルスとクネル両方のレシピが収録されているといることで否定されよう。また、19 世
紀前半にオーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地方にある宿屋の主 J.-F. モワーヌなる人物が、宿泊客を呼び込むための料理として
ブロシェの身と卵、小麦粉で作ったクネルを創案し、これがリヨンに伝わったという説もある。ただしこれは信憑性がさほど
高くないうえに、そもそもケンネ脂を使わないのであれば、その後のリヨン風ゴディヴォとは似て非なるものということにな
ろう。魚のすり身をクネルにすることはローマ時代後期の『アピキウス』(この場合は人物ではなく料理書の意)以来、ヨー
ロッパにおいてごくあたりまえのように行なわれてきたことだ。いずれにしても、本書ではブロシェのクネル リヨン風のレ
シピでのみこのファルスが用いられることになる。その意味でも、「ブロシェのクネル リヨン風」という料理が 20 世紀初頭
に大流行したものだったことは間違いなく、そのことが理由で第二版においてレシピが追加されたと考えられる。
7) brochet ノーザンパイク、和名キタカワカマス。カワカマス属の淡水、汽水魚。

ファルス
る。裏漉しして、鉢に戻す。すりこ木で力強く
練ってまとまるようになったらケンネ脂を少し
ずつ加えるか、溶かしたケンネ脂と牛骨髄を加
えて、よくまとめる。陶製の器に移し、氷の上
に置いておく。

盛り付けの縁飾りおよび底に敷いたり、詰め物
をしたクネルに用いる仔牛のファルス

Farce de veau pour Bordures de dressage,
fonds, quenelles fourrées etc.
• 材料……筋をきれいに取り除いた極上の白さの
仔牛腿肉 kg、パナード E 500 g、バター 300 g、
全卵 5 個、卵黄 8 個、濃い冷えたベシャメル
ソース大さじ 2 杯、塩 20 g、白こしょう 3 g、ナ
ツメグ 1 g。
• 作業手順……鉢に仔牛肉と調味料を入れてて細
かくすり潰す。これを鉢から取り出す。
まだ温い状態のじゃがいものパナードを入れ、
すりこ木でペースト状になるまで練り、だいた
い冷めた頃に、先にすり潰した仔牛肉を戻し入
れる。全体によく混ぜながら、バター、全卵、
卵黄をひとつずつ加えていき、最後に冷たいベ
シャメルソースを加える。
裏漉しして、陶製の器に入れ、充分に滑らかに
なるまでヘラで練る1) 。

ファルス・グラタン2) A

Frace Gratin A

(標準的な温製パテ3) 、大皿料理4) の縁飾りなど)
• ファルス 1 kg 分の材料……豚背脂 250 g、筋
をきれいに取り除いた極上の白さの仔牛腿肉 1
kg、出来るだけ白い仔牛のレバー 250 g、バター
150 g、マッシュルームの切りくず 40 g、トリュ

73
フの切りくず(可能なら生のもの)25 g、卵黄 6
個、ローリエの葉 1/2 枚、タイム 1 枝、エシャ
ロット 4 個、塩 20 g、こしょう 4 g、ミックス
スパイス5) 2 g、マデイラ酒 1 1/2 dL、ソース・エ
スパニョル 1 1/2 dL (よく煮詰めてあって、冷
やしてあること)
。
• 作業手順……豚背脂をさいの目に切る。ソテー
鍋に 50g のバターを熱し、強火で色よく焼く。
背脂が色付いたらすぐに取り出して余分な脂
をきり、同じ鍋で、大きめのさいの目に切った
仔牛肉を色よく焼く。同様してに余分な脂は
きる。
同じく強火で、仔牛肉と同様に切ったレバー
を色よく焼く。仔牛肉と背脂を鍋に戻し入れ、
マッシュルームの切りくず、トリュフの切りく
ず、タイム、ローリエの葉、みじん切りにした
エシャロットと調味料を加える。2 分程火にか
けたままにし、バットにあける。ソテー鍋にマ
デイラ酒を注いでデグラセ6) する。
鉢に背脂、仔牛肉、レバーなどを入れて細かく
すり潰しながら、バターの残り(100 g)と卵黄
をひとつずつ加えていく。さらに煮詰めたソー
ス・エスパニョルとデグラセしたマデイラ酒を
加える。裏漉しして、陶製の容器に入れ、ヘラ
で滑らかになるまで練る。
【原注】このファルスのレシピでの仔牛のレバー
は鶏や鴨、がちょう、七面鳥のレバーに代えて
もいい。その場合は、胆汁および胆汁で汚れた
部分を丁寧に取り除く必要がある。

1) 装飾用、あるいは中に別の食材を射込んだ大きなクネルを作る目的なので、加熱後はしっかりとしたテクスチュアとなる。ク

2)

3)
4)
5)

6)

ネルにする場合も、アトレと呼ばれる飾り串を刺して料理を飾るのが主要な目的で、トリュフを射込むなど、料理としてきち
んと成立していた。なおアトレはエスコフィエの時代にフランスではほぼ用いられなくなっていたが、アメリカ経由で 19 世
紀中頃のフランス料理をベースに始まった日本の西洋料理では、20 世紀になってからも使われ続けていたという。
ここでゴディヴォのように小見出しがあって然るべきところだが、初版には小見出しの類が一切なかったので、第二版改訂の
際に見落とされてそのままになったのだろう。本書におけるファルス・グラタンの定義が、決して「グラタン用」ファルスで
はないことに注意。語源的には gratin < gratter(グラテ)引っ掻く、であり、元来は bouillie(ブイイ)という粥のようなもの
の鍋底や隅に貼り付いた部分のことをグラタンと呼んだ。18 世紀マラン『コモス神の贈り物』には「グラタン」という名称の
ファルスがある。これは、鶏胸肉、レバー、牛の骨髄、香草などと卵黄をすり潰して練ったもの (t.1, p.143)。また仕立てとし
てのグラタンは深皿にこのファルスを敷き詰め、その上に別途調理した素材をのせてソースをかけ、フルノーの端でファルス
が容器に貼り付く程度に加熱する(仔牛の耳のグラタン (id., p.209)、エクルヴィスのグラタン (id., pp.171-172)がある。その
後、グラタンという名称のファルスは他の料理書に記されなかったが、1868 年のデュボワとベルナールの『古典料理』におい
て farce à gratin de gibier, farce à gratin de foie-gras の 2 つのレシピが掲載され (p.125)、その約半世紀後『料理の手引き』にお
いて完全に復活したが、その頃にはグラタンという仕立てがまったく別の、こんにち我々がよく知っているものへと変わって
しまっていた。このため、本書におけるグラタンの説明 (原書 pp.405-407) においてもこれらのファルス・グラタンは用いられ
ない。
pâté とは本来、生地で素材を包んで焼いたもの全般を指す。こんにちではその意味が失なわれつつあり「パイ包み」のような
表現をとることも多い。決して英語の patty(小型のミートパイ、ハンバーガーのパティなど) と混同しないこと。
Entrée アントレ。パナードとバターを用いるファルス訳注参照。
原文は初版から一貫して、2 grammes d’épices 直訳すると「香辛料 2 g」としか記されていないが、フランスでもっともポピュ
ラーなミックススパイスである quatre-épices カトルエピスの場合は、こしょう、ナツメグ、クローブ、シナモンの粉末のミッ
クス。また「オールスパイス」単独を意味することもある。なお、1907 年の英語版には、ローリエ 5 オンス、タイム 3 オンス、
コリアンダー 3 オンス、シナモン 4 オンス、ナツメグ 6 オンス、クローブ 4 オンス、ジンジャーパウダー 3 オンス、メース 3
オンス、黒こしょうと白こしょう同量ずつ計 10 オンス、カイエンヌ 1 オンス、を粉末にして保存すべし (p.75)、とあるが、フ
ランス語原書にこのミックススパイスのレシピはいずれの版でも記されていない。
肉を焼く際に肉から浸み出た肉汁が濃縮して鍋底に貼り付いているのを、何らかの液体を注いで溶かし出すこと。意味として
は「焦げ」を取ることではないので注意。

74

II.

ガルニチュール

Garnitures

ファルス・グラタン B

ファルス・グラタン C

(ジビエの温製パテ用)
• ファルス 1 kg 分の材料……塩漬け豚バラ肉 250
g、穴うさぎの1) 肉(正味重量)250 g、鶏とジビ
エのレバー 250 g、マッシュルーム、トリュフ、
タイム、ローリエ、エシャロット、塩こしょう
はファルス・グラタン A と同じ。バター 50 g、
生あるいは加熱済みのフォワグラ 100 g、卵黄
6 個、マデイラ酒 1 1/2 dL、ジビエで作ったソー
ス・エスパニョルまたはソース・サルミをよく
煮詰めて冷ましたもの 1 1/2 dL。
• 作業手順……前項で説明したように、バターで
3 種の素材、つまり豚バラ、うさぎ肉、レバー
を別々に色よく焼く。これらをソテー鍋に調
味料、香辛料とともに入れ、軽く炒めたらマデ
イラ酒を注ぎ蓋をして弱火で 5 分程蒸し煮2) す
る。よく水気をきってから鉢に入れてすり潰
す。充分に滑らかになったら、フォワグラと卵
黄、冷めたソースとマデイラ酒を加える。裏漉
しして、ヘラで滑らかになるまで混ぜる。

(詰め物をしたクルトン、カナペ、小型ジビエ、
仔鴨用)
• ファルス 1 kg 分の材料……生のフレッシュな
豚背脂3) を器具を用いておろしたもの4) 300 g、
鶏レバー 600 g、エシャロット 4〜5 個の薄切り
5) 、マッシュルームの切りくず6) 25 g、ローリエ
の葉 1/2 枚、タイム 1 枝、塩 18 g、こしょう 3
g、ミックススパイス 3 g。
• 作業手順……ソテー鍋に豚背脂を熱して溶か
す。レバーと香辛料、調味料を加え、強火で
色付かないように炒める。
いま、色付かないように7) と書いたように、焼
き色を付けないようにすることがポイント。レ
バーはレアな焼き加減で血が滴るくらいにする
と、バラ色のきれいなファルスに仕上がる8) 。
材料がだいたい冷めたら鉢に入れてすり潰す。
裏漉しして、陶製の容器に移してヘラで練って
滑らかにする。バターを塗った紙で蓋をして冷
蔵する。

Frace Gratin B

Frace Gratin C

冷製料理用のファルス
(ガランティーヌ、パテアンクルート、テリーヌ)

Farces pour Pièces froides

(Galantines — Pâtés — Terrines)

味付けと「つなぎ」

Assaisonnement et Liaison
ガランティーヌや、パテアンクルート、テリー
ヌに用いる標準的なファルスは、ファルス 1 kg
あたり 25〜30 g のスパイスソルトで調味する。
最後に、肉 1 kg あたりコニャック 1 1/2 dL を振
りかける。

冷製料理用のファルスは以下のように 3 つに分
類される。これらは前述の滑らかな口あたりの
ファルスやファルス・グラタンとはまったく違
うものである。
「つなぎ」が必要な場合には、ファルス 1 kg あ
たり全卵 2 個を加えて調整する。

1) lapin de garenne (ラパンドガレーヌ)、野生の穴うさぎ。いわゆる野うさぎ lièvre(リエーヴル)とは肉質も違い、まったく別
のものとして扱われる。この穴うさぎを家畜化したものが、いわゆる lapin(ラパン)
。
2) étuver(エチュヴェ)。
3) 塩漬けなどの加工をしていないということ。なお、lard (gras)(ラール グラ)は「豚背脂」を意味し、lard maigre(ラールメー
グル)または lard de poitrine(ラールドポワトリーヌ)は塩漬け豚ばら肉およびそれを冷燻したものを意味する。後者はしば

4)
5)
6)

7)

8)

しば日本語で「ベーコン」と誤訳されるが、日本語でいう「ベーコン」は温燻、熱燻されたものであり、風味などが大きく異
なるので注意。近年は「生ベーコン」という商品名のものもあるらしく、紛らわしいので注意が必要だろう。いずれにしても、
豚背脂は薄いシート状または長い棒状、拍子木状にして、素材の油脂分と風味を補う目的で使われることが多く、豚ばら肉の
塩漬けおよびその冷燻品は拍子木状に切って(lardon ラルドン)各種料理に使われる。既に拍子木状にカットされたものがご
く一般的に市販されており、それぞれ lardon(ラルドン)
、lardon fumé(ラルドンフュメ)と呼ばれ非常にポピュラーな食材。
râper (ラペ) < râpe(ラープ)という器具を用いておろすこと。Mandeline(マンドリーヌ)と呼ばれる野菜スライサーにこの機
能が付属しているものは非常に多い。
émincé < émincer(エマンセ)薄切りにする、スライスする。
マッシュルームは通常、料理として提供する際には tourner(トゥルネ)と呼ばれる、螺旋状の切れ込みを入れて装飾したもの
が使われる。この際に少なくない量の切りくずが発生する(具体的には軸込みで 15〜20 %の廃棄率だが、このファルス・グラ
タンにおいては、口あたりを損ねる可能性があるので軸、石突きは使わないと考えるべき)のでそれを利用する。なお tourner
の原義は「回す」であり、包丁を持った側の手は動かさずに材料を回すようにして切れ目を入れたり皮を剥いたりすることを
意味する料理用語。
原文 raidir ou saisir(レディール ウ セジール)。前者は油脂を熱したフライパン等で、材料が色付かないように表面を焼き
固めること。後者「セジール」は焼く、炒める、茹でるなど方法は問わないが、熱によって表面だけを固める(タンパク質の
熱変性)ことを指す。
現代の衛生学的知見からすると、充分に加熱調理していないレバーには食中毒あるいは肝炎などのリスクがあるので注意。

75

ファルス

スパイスソルト

Sel épicé

スパイスソルトはよく乾燥した細かい塩 100 g
と、こしょう 20 g、ミックススパイス1) 20 g を
混ぜて作る。
すぐに使わない場合は、密閉できる缶に入れて
乾燥した場所で保存すること。
ファルス A(豚肉)

Farce A (Porc)

これは豚肉の脂身のない部分と、フレッシュ
な背脂を同量ずつ用いる。別々に細かく刻むこ
と。それを鉢に入れて合わせてすり潰し、調味
と風味付けを上記の分量比率で行なう。
ごく標準的なパテアンクルートやテリーヌに用
いらる。
これは「ソーセージ用の挽肉」2) としても使わ
れる。
ファルス B(仔牛肉と豚肉)

Farce A (Porc)
• 材料……仔牛腿肉の輪切り 250 g、さいの目に
切った豚肉の脂身を含まない部分 250 g、フ
レッシュな豚背脂 500 g、全卵 2 個、調味料と
コニャックは上記のとおり。

• 作業手順……仔牛肉、豚肉、背脂を別々に細か
く刻む。調味料とともに鉢に入れてよくすり
潰し、最後に、火を点けてアルコールをとばし
た3) コニャックを加える。裏漉しする。
このファルスは主としてガランティーヌに使
うが、パテアンクルートやテリーヌに用いても
いい。
ファルス C(鶏とジビエ)

このファルスの素材はいろいろだから、分量比
率は使用する鶏とジビエの肉の正味重量4) から
調節することになる。
例えば、中抜きしただけの丸鶏の重量5) が 1.5
kg の場合、ガルニチュールに使うフィレの量
は 500〜600 g に減ってしまうことになる。そ
のため、ファルスの材料の分量比率は以下のよ
うになる。
鶏肉 550 g、きれいに筋取りした仔牛肉 200 g、
豚肉の脂身のないところ 200 g、生の豚背脂
900 g、全卵 4 個、スパイスソルト 50〜60 g、コ
ニャック 3 dL。
作業手順……肉と背脂は別々にして、それぞれ
細かく刻む。これを鉢に入れて合わせ、調味料
を加える。細かくすり潰しながら卵を一個ずつ
加えていく。コニャックは最後に加えること。
裏漉しする。
ジビエのファルスも同様の材料の比率で、同じ
ように作る。
冷製料理用ファルスの補足
場合によっては、ファルス B(仔牛と豚)およ
びファルス C (鶏)に、ファルス 1 kg あたり
フォワグラ 125 g を加えることがある。その場
合フォワグラは出来るだけ新鮮なものを用い
て、裏漉しして加えること。あるいはトリュフ
のみじん切り 50 g を加えることもある。
ジビエのファルス C を極上の滑らかな仕上り
にするには、1/4 量のファルス・グラタン B と、
ファルスのベースにしたジビエのフュメをよく
煮詰めて少量加えるといい。

Farce C (Volaille et Gibier)

魚のブレゼ6) のガルニチュール用ファルス

Farces spéciales pour garnir les Poissons Braisés
ファルス A

Farce A
• 材料……細かく刻んだ生の白子7) 250 g、白いパ
ンの身 180 g を牛乳に浸して絞ったもの、塩
5g、こしょう 1 g、ナツメグごく少量、シブレッ
ト 10g とパセリの葉 5 g、セルフイユ 20 g をみ
じん切りにしたもの。バター 50 g、全卵 1 個、

卵黄 3 個。
• 作業手順……陶製の鉢に材料をすべて入れ、木
のヘラで全体をよく練り、完全にまとまるよう
にする。

ファルス B

Farce B
• 材料……白いパンの身 200 g を牛乳に浸して

1) ファルス・グラタン A 訳注参照。
2) chair à saucisses(シェラソシス)。料理書によってはよく出てくる表現なので覚えておくといいだろう。
3) flamber(フロンベ)。フランベする。鍋に入れて火にかけるとコニャックのようにアルコール度の高い酒類はすぐにアルコー
ル分が揮発して非常に燃えやすくなる。

4) poids net(ポワネット)。
5) 廃棄分なども含めた全重量は poids brut(ポワブリュット)。
6) 本書において魚を「煮る」あるいは「茹でる」場合、通常はクールブイヨンか塩水で沸騰させない程度の温度で火入れをする
(ポシェ)。料理の仕立てとしての「ブレゼ」は基本が牛、羊の赤身肉であり、仔羊、仔牛、家禽などはやや例外的な位置付け
として「ブレゼ」が存在する。同様に、サーモン、大型のトラウト、チュルボ、チュルボタンなどについても「ブレゼ」という
仕立ての方法が「第 6 章魚料理」において説明されているので併せて読んでおきたい。
7) laitance(レトンス)。伝統的な高級料理では鯉の白子が一般的に使用された。他に鯖や鰊の白子も食用とするが、日本のよう
にスケトウダラの白子を食材とするケースはほとんどないと思われる。

76

II.

絞ったもの。玉ねぎ 50 g とエシャロット 25 g
を細かいみじん切りにしてバターで炒めたも
の。ごく新鮮なマッシュルームをみじん切りに
し、圧して余分な水分を絞ったもの。パセリの

ガルニチュール

Garnitures

みじん切り大さじ 1 杯、叩き潰したにんにく 1
片、全卵 1 個、卵黄 3 個、塩 8 g、こしょう 2 g、
ナツメグごく少量。
• 作業手順……ファルス A と同じ。

クネル1)

Quenelles diverses
クネルは大きさや形状がさまざま。

1. 粉を打った台の上で転がして小さな円筒形にする
2. 絞り袋に詰めてバターを塗った天板に絞り出す
3. スプーンを使って整形する
4. 指で丸めて、雄鶏のロニョン2) のような形状にする
クネルの作り方のその他の詳細はよく知られていることだから、本書ではこれ以上は述べないこと
にする。加熱方法についても同様としたい。
ただ、以下の点には留意していただきたい。フィナンシエールやトゥールーズといった標準的なガ
ルニチュールに加えるクネルはコーヒースプーンを使って整形するか、丸口あるいは刻み模様が入る
口金を使って絞り出すこと。
こうやって作る場合のクネルは平均で、ひとつ 12〜15 g 程度となる。
ガルニチュール・ゴダールやレジャンス、シャンボールに使うような大きなクネルの場合は、必ず
スプーンを用いて整形し、20〜22 g の大きさにすること。
上記のような大がかりなガルニチュールでよく用いられる、装飾を施したクネルの場合、大きさは

40〜50 g、球形か卵形、あるいはやや長い卵形にすること。
装飾に用いる素材は、ほとんど常にトリュフ、赤く漬けた舌肉のどちらか、あるいは両方を用いて、
生の卵白でクネルに貼り付けて固定する。
ゴディヴォのクネルは茹でずに低めの温度のオーブンで加熱していいが、それ以外は 1 L あたり 10

g の塩を加えた湯で、沸騰しない程度の温度で茹でること。整形したクネルを並べたソテー鍋や天板
に、沸騰した塩湯を注ぎ、沸騰寸前の温度を保つようにして火を通すこと。

1) ローマ時代後期に成立した料理書アピキウスにも甲殻類やイカをはじめとした各種素材のすり身を丸めて作るクネルとも呼ぶ
べきレシピが多く見られるように、とても古くからある調理だが、フランス語の quenelle という語それ自体は意外と新しく、
18 世紀頃に定着したと思われる。語源はドイツ語の Knödel(クヌーデル)すなわちボール状にした食べものを意味する語か
らの移入と考えられている。荘厳で華麗な装飾を施した大掛かりな仕立てがとりわけ好まれた 17、18 世紀の宮廷料理におい
てその装飾の一部としてクネルの利用が広まり、発達したのだろう。また、ゴディヴォの訳注において触れたように、ピエー
ル・ド・リュヌのアンドゥイエットなどは仔牛肉をすり潰したものを棒状にして豚背脂で包んで焼くという、まさしく本書に
おけるゴディヴォの調理法に近いものであり、これもまた一種のクネルと言えるだろう。
2) ロニョン rognon は通常は腎臓のことだが、rognon de coq は精巣のこと。高級食材として珍重された。

77

温製ガルニチュール用アパレイユなど

温製ガルニチュール用アパレイユ1) など

Série des Appareils et Préparations diverses pour Garnitures
chaudes
クロメスキとクロケット2) のアパレイユ

Appareils à Cromesquis et à Croquettes
⇒

温製オードブルの章を参照。

じゃがいものドフィーヌ、デュシェス、マルキー
ズ3) のアパレイユ

Appareils à pomme Dauphine, Duchesse et
Marquise
⇒

野菜料理の章、じゃがいもの項を参照。

アパレイユ・マントノン4)

Appareils Maintenon

(羊のコトレット マントノン用)
ベシャメルソース 4 dL とスビーズ 1 dL を半量
になるまで煮詰める。
卵黄 3 個を加えてとろみを付ける。あらかじめ
マッシュルーム 100 g を薄切りにしてバターで
ごく弱火で鍋に蓋をして蒸し煮5) したものを加

える。

アパレイユ・モングラ6)

Appareils à la Montglas
(羊のコトレット モングラ用など)
赤く漬けた舌肉 150 g、フォワグラ 150 g、茹で
たマッシュルーム 100 g、トリュフ 100 g を通
常より太めで短かい千切り7) にする。
これらを、マデイラ酒風味の充分に煮詰めた
ソース・ドゥミグラス 2 1/2 dL であえ、バターを
塗った平皿に広げて使うまでそのまま冷ます。

プロヴァンス風アパレイユ8)

Appareils à la Provençale

(羊のコトレット プロヴァンス風用)
ソース・スビーズ 5 dL を充分に固くなるまで
煮詰める。潰したにんにく 1 片を加え、卵黄 3

1) 料理用語としての appareil アパレイユとは、具体的な何かを指す言葉ではなく、ある料理を作る過程において用いられる、複数
の材料を組み合わせたもの、という一種の概念。現実には、キッシュのアパレイユ(生クリームと卵、塩漬け豚バラ肉など)、
クレーム・ブリュレのアパレイユ(卵黄、砂糖、生クリーム、牛乳)というように用いられるが、概ね、加熱して凝固する液体
または半液状のもの、およびそれらを「つなぎ」として固形物をあえたものを指す、と考えていい。アパレイユの概念として
は、まったくの固形物である、3〜4 mm のさいの目に切った香味野菜(場合によってはハムも入る)であるマティニョンも
appareil à matignon と表現されることはフランスの料理書においては珍しくないし、本節のデュクセル・セッシュもまたアパ
レイユの一種に含められる。実際のところ、アパレイユという語はそれぞれの調理現場および料理人によって使い方がさまざ
まであり、概念としての理解も必ずしも共通しているとは限らない。本書では基本的に、上述のように加熱凝固する液体の場
合と、半固形状あるいはクリーム状のものを指す場合がほとんど。また、既出のソース・ヴィルロワなどもまた、ソースとい
うよりはむしろアパレイユと呼んでおかしくないものだろう。
2) クロケットは日本のコロッケの原型となったもので、細かく切った素材をじゃがいものピュレやベシャメルソースであえて円
盤または円筒形に整形してパン粉衣を付けて揚げたもの。クロメスキは正六面体(サイコロ形)にすることが多く、コロッケ
とアパレイユが共通のため、形状が違うだけでクロケットのバリエーションという見方もあるが、ポーランド語の kromesk
(薄く切ったもの)が語源とされる。
3) dauphin(王太子)、dauphine(王太子妃)、duc(公爵)、duchesse(公爵夫人)、mariquis(侯爵)、marquise(侯爵夫人)。いず
れも王家、貴族の位階(爵位)を表わす語だが、特に理由もなく料理名に付けられることが非常に多い。
4) マントノン夫人(出生名フランソワーズ・ドビニェ 1635〜1719)。はじめはマントノン侯爵夫人としてルイ 14 世とモンテスパ
ン夫人の間に生まれた子どもたちの非公式な教育係となり、モンテスパン夫人の死後、ルイ 14 世と結婚した。彼女の名を冠し
た料理はここで言及されている羊のコトレット マントノンの他、卵料理、菓子などにある。「羊のコトレット マントノン」
は彼女自身が考案したとも、ルイ 14 世付の料理人の考案ともいわれているが、いずれも憶測の域を出ない。なお、côtelette
(コトレット)とは仔牛、羊の背肉を骨付きで肋骨 1 本ずつに切り分けたもの。日本語では、仔羊の場合ラムチョップと呼ばれ
ることも多い。
5) étuver(エチュヴェ)。
6) Salpicon à la Monglas(サルピコンアラモングラ)とも呼ばれものとほぼ同じ。サルピコンはせいぜい 5 mm 角くらいの小さ
なさいの目に切ったもののこと。他の用途としては、ブシェ(パイ生地で作ったケースに詰め物をしたもの。本書ではオード
ブルに分類されている)やタルトレット(小さなタルト)のアパレイユにする。カレーム『19 世紀フランス料理』にはプロ
フィットロール(小さな丸いパンの中身を刳り貫いたもの)にフォワグラと赤く漬けた舌肉とマッシュルームのサルピコンを
詰めた「プロフィットロールのポタージュ モングラ」が掲載されている (t.1, p.180)。また 1806 年刊のヴィアール『帝国料
理の本』にはローストしたペルドローの胸肉とマッシュルーム、トリュフのサルピコンをソース・エスパニョルなどであえた
「ペルドロー モングラ」が掲載されている (pp.265-266)。それ以前の主な料理書にこの料理名は見当たらないが、17 世紀のモ
ングラ侯爵 François Clermont Marquis de Montglas(生年不詳〜1675)の名を冠したものらしい。
7) julienne(ジュリエーヌ)。
8) アパレイユ・マントノンからこれまでの 3 種のアパレイユはいずれも、羊のコトレット(ラムチョップ)の片面だけを焼いて、
その表面をよく拭い、まだ焼いていない面を下にして、焼いた側の面にこれらのアパレイユを塗る、あるいは盛り上げてから
オーブンに入れるという同工異曲とも言うべき仕立てに用いられる。ここで、アパレイン・マントノンとこのプロヴァンス風
アパレイユの「用途」の部分の原文には動詞 farcir あるいはその過去分詞 farci(es) が用いられているのはとても興味深いと言
えよう。farcir を日本語の「詰め物をする」と等価と考えてはうまく理解できないケースのひとつで、日本語としてはこの場合
「盛る」のほうがむしろ適切だろう。

78
個を加えてとろみを付ける。

ファルスで作る縁飾り

Bordures en farce

この縁飾りは、飾り付ける料理の素材とおな
じ材料を中心にしたファルス1) を使う。縁飾り
用の型2) はプレーンなものでも浮き彫り模様
のあるものでもいいが、たっぷりとバターを
塗ってからファルスを詰めて低めの温度で火を
通す3) 。
プレーンな型を使う場合、きれいに切ったト
リュフのスライスやポシェした4) 卵の白身、赤
く漬けた舌肉、ピスタチオなどで表面を装飾す
るといい。
浮き彫り模様の型を使うなら、上記のような装
飾は省いていい。
このようなファルスで作った縁飾りを使うの
はとりわけ、鶏肉料理、魚料理、牛や羊肉のソ
テーなど。

野菜で作る縁飾り

Bordures en Légumes
プレーンなボルデュール型の内側にたっぷりと
バターを塗り、下拵えしたさまざまな野菜を型
の底面と側面にシャルトルーズ5) 状に貼り付け

II.

ガルニチュール

Garnitures

るように敷き詰める。型の中にやや固めに作っ
たじゃがいもを「つなぎ」にした仔牛のファル
スをいっぱいに詰める(「縁飾り用仔牛のファ
ルス」参照)。低めのオーブンで湯煎焼きして
火を通す。
この縁飾りはもっぱら、牛、羊肉の料理で野菜
のガルニチュールをともなうものに使う。

白い生地で作る縁飾り6)

Bordures en pâte blanche
片手鍋に水 1 dL と塩 5 g、ラード7) 30 g を入れ、
火にかけて沸騰させる。ふるった小麦粉 100 g
を加えて、余分な水分をとばし、大理石板の上
に広げる。
捏ねながらでんぷん8) を練り込んでいく。10 回
生地を折ってから、生地を休ませる。
生地を厚さ 7 mm 程度にのす。これを専用の抜
き型で抜いて飾りのパーツをつくる。エチュー
ヴ9) に入れて乾燥させる。これを卵白に小麦粉
を加えた糊10) で皿の縁に貼り付ける。

ヌイユ生地で作る縁飾り

Bordures en pâte à nouille
ごく固めに捏ねたヌイユ生地を用いて作る縁飾
り。上記のように抜き型で抜いてもいいし、あ

1) 本文に指定はないが、原則としてはファルス A か、盛り付けの縁飾りおよび底に敷いたり、詰め物をしたクネルに用いる仔牛
のファルスを用いることになるだろう。

2) moule à bordure(ムーラボルデュール)、ボルデュール型ともいう。大きなリング型で、表面に山形の刻み目(浮き彫り模様)
の入ったタイプ(moule historié ムールイストリエ、または moule cannelé ムールカヌレ)と、特に模様の入っていないプレー
ンなもの (moule uni ムールユニ) の 2 種に大別される。
3) 原文 pocher(ポシェ)。ここまでにも何度も出てきた表現だが、茹でる場合は「沸騰しない程度の温度で加熱すること」であ
り、このように型に詰めた場合には湯をはった天板に型をのせてやや低温のオーブンに入れてゆっくり加熱することになる。

4) 原文 oeuf poché をそのまま訳したが、表面に飾りとして用いるのは固茹で卵の白身をスライスして型抜きあるいはナイフでき
れいに切ったものを使うことが多い。

5) chartreuse 本文にあるように、野菜を装飾に用いた仕立てのひとつ。シャルトル会修道院で作られている同名のスピリッツが

6)

7)
8)
9)
10)

あるが、料理におけるシャルトルーズ仕立てもシャルトル会修道院に由来しているという。シャルトル会は大斉、小斉の決ま
りに厳格で、野菜を多く食べる修道生活を送っていたことで有名。そのことにちなんだ仕立ての名称と言われている。この仕
立ての文献上の初出は 1914 年刊ボヴィリエ『調理技術』第 2 巻の「りんごのシャルトルーズ仕立て」と思われる。これは今で
いうデザートに位置するもので、りんごをサフランやアンゼリカとともに煮て黄色や緑に染め、もとの白い果肉、皮の赤など、
それら色合いを組み合わせて美しく型の底面を側面に貼り付け、内部をりんごのマーマレード(≒ ジャム)で満たす、という
もの (t.2, pp.149-150)。このボヴィリエのシャルトルーズは「原型」というよりはむしろ「バリエーション」的なものであるこ
とが、レシピ本文の文面から伺える。そのため、いつごろ成立した仕立てなのかは不明だが、いずれにしてもシャルトルーズ
はカレームが「アントレの女王」と呼んだ程に手の込んだ華やかな仕立てとして 19 世紀前半には定着していた。基本的には、
円筒形の型に拍子木に切ってそれぞれ下茹でしたにんじん、さやいんげん、かぶ、などの野菜をびっしりと貼りつけて崩れな
いようにファルスで塗り固める。その内側に、
「ペルドリのシャルトルーズ」の場合は、下茹でしたサヴォイキャベツとペルド
リ(ペルドロー≒ 山うずら、の成鳥)をブレゼしたものを詰め、型の上面(提供するときは底面になる)に蓋をするようにファ
ルスを塗ってから、湯煎にかけてファルスに火を通して固める。裏返して型から外して供する、というもの。野菜の配置、配
色が重要で技術のいる仕立て(ヘリンボーンのようなパターンが比較的多かったようだ)。なお、「ペルドローのシャルトルー
ズ」と「ペルドリとサヴォイキャベツのブレゼ」を混同しているケースが日本でよく見られるが、シャルトルーズとはあくま
でも数種類の野菜とファルスで表面を装飾する仕立てを意味しているので注意。
おなじ縁飾り(ボルデュール)でも、美味しく出来得るものと、食べもので出来てはいるけれども実際には食べないことを前
提とした装飾では、本書において明らかに扱いが異なる。この「白い生地で作る縁飾り」および次項「ヌイユ生地で作る縁飾
り」は後者にあたるため、さして重きを置いた説明になっていない。
saindoux(サンドゥー)精製した豚の脂
原文では fécule(フェキュール)すなわち「でんぷん」としか指示がないが、fécule de maïs(フェキュールドマイス)コンス
ターチがいいだろう。
野菜などを乾燥させるためなどの目的で使用する低温で用いるオーブンの一種。
repère(ルペール)ここでは小麦粉を卵白に加えて混ぜた糊のこと。通常は銀などの金属製の皿に装飾を貼り付ける際に用い
る。この場合は事前に皿を熱しておき、手早く装飾のパーツを貼る。現代ではほとんど行なわれていない手法。小麦粉と水で
作り鍋の蓋に目張りをするための生地も同じ用語だが、いずれのケースについても「ルペール」という用語は現代の日本の調
理現場であまり多用されていない。

79

温製ガルニチュール用アパレイユなど
るいは厚さ 6〜7 mm で高さ 4〜5 cm の帯状に
切ってもいい。後者は「エヴィドワール」と呼ば
れる専用の小さな抜き型を用いて模様をつけた
帯状の生地を皿の縁にしっかりと貼り付ける。
どちらの方法でも、ヌイユ生地を用いた縁飾り
には溶いた卵黄を塗ってから、乾燥させる。

クルトン

Croûtons
クルトンはいわゆる食パン1) で作る。形状や大
きさは、どんな料理に合わせるかで決まってく
る。これを澄ましバター2) で揚げるが、揚げる
のは必ず提供直前にすること。

デュクセル3) ・セッシュ4)

Duxelles sèche

デュクセルはベースとして必ず、みじん切りに
した茸を用いるが、食用のものならどんな茸で
も構わない。
バター 30 g と植物油 30 g を鍋に熱し、玉ねぎ
のみじん切りとエシャロットのみじん切りを各
大さじ 1 杯ずつ入れて、軽く炒める。マッシュ
ルームの切りくずと軸を細かくみじん切りにし
たもの 250 g を加え、よく圧して水気を出させ
る。水分が完全に蒸発するまで強火で炒め続け

る。塩こしょうで調味し、パセリのみじん切り
1 つまみを加えて仕上げる。陶製の器に移し入
れ、バターを塗った紙で蓋をする。
デュクセル・セッシュは多くの料理で使われる。

野菜のファルシ5) 用デュクセル

Duxelles pour légumes farcis
(トマト、茸などの詰め物用)
デュクセル・セッシュ 100 g、すなわち大さじ6) 4
杯を用意する。白ワイン 1/2 dL を加えてほぼ完
全に煮詰める。次に、トマトをソース・ドゥミ
グラス 1 dL と小さめのにんにく 1 片をつぶし
たもの、パンの身 25 g を加える。
ごく弱火にかけて煮込み、詰め物をするのに
ちょうどいい固さになるまで煮詰める。

ガルニチュール用デュクセル

Duxelles pour garnitures diverses
(タルトレット、玉ねぎ7) 、きゅうり8) 、などの
詰め物用)
デュクセル・セッシュ 100 g に、ファルス・ム
スリーヌまたはパナードを用いたファルスもし
くはファルス・グラタン 60 g のいずれかを料
理に合わせて加える。
このデュクセルを野菜の詰め物として用いた場

1) フランス語で pain(パン)とだけ言う場合はバゲットに代表されるリーンなパンを指すのが普通で、イギリス式およびアメリ
カ式の「食パン」は pain de mie(パンドミー)と呼ばれて区別される。
2) バターには少なからずカゼインなどの不純物が含まれており、それらが焦げや色むらの原因となるので、充分よく澄んだバ
ターを使うこと。

3) 俗説では 17 世紀にユクセル侯爵 Marquis d’Uxelles(マルキデュクセル)に料理長として仕えていたラ・ヴァレーヌが創案し、
主人の名を付けたとされている。d’ は de + 母音の短縮形(フランス語文法ではエリジオンという)。貴族の場合は領地名の前
に de (≒ of, from) を付ける慣習があり、爵位 de 領地名、というのが正式な呼び名として用いられていた。Uxelles は母音で
始まるから d’Uxelles となり、それが料理用語としてひとつの単語となり duxelles として定着したという。しかし、duxelles
(デュクセル)あるいはそれに類似する名称が用いられるようになったのは 19 世紀以降であり、文献によって綴りも安定して
いない。19 世紀末のファーヴル『料理および食品衛生事典』では duxel という綴りで項目が立てられている(なお、ファー
ヴルはデュクセルをアパレイユの一種と明確に定義している)
。さらに時代を遡っていくと、オドの 1858 年版では Durcelle
(デュルセル)または Duxelle という名称で呼ばれていると記述がある (p.167)。1856 年刊グフェ『料理の本』では d’Uxelles
(p.72)。1833 年刊カレーム『19 世紀フランス料理』第 3 巻には、sauce à la Duxelle「ソース・デュクセル」が掲載されている。

4)
5)
6)
7)

8)

これはあくまでも「ソース」ではあるが、ベースとしてマッシュルームのみじん切りを使っている点は他と同様。さらにヴィ
アール『王国料理の本』1820 年版 (p.74) および 1814 年刊ボヴィリエ『調理技術』(p.73) には、のちのデュクセル・セッシュ
とほぼ同様のものが Durcelle の綴りで掲載されている。カレームはマヨネーズの訳注でも見たとおり、料理名の綴りに独自の
こだわりを持つ傾向が強かったので、あるいはカレームが durcelle から duxelle への転換点として存在している可能性はある。
Durcelle の語としての成り立ちは不明だが、人名(名字)に時折見られる綴りのため、何かの由来があったことまでは推察さ
れる。以上を考慮すると、ユクセル侯爵の名を冠したという説がどんなに早くとも 19 世紀中葉以降のものだとわかる。フラン
ス語の/R/と/k/の音がやや似て聞こえることがあるために、はじめ durcelle と呼ばれていたアパレイユが duxelle となり、ひい
ては歴史上の人物 Marquis d’Uxelles ユクセル侯爵に結びつけられるようになった、と考えられよう。とはいえ、17 世紀はい
わゆるマッシュルームの人工栽培が実用化され、食材として流行した時代でもあっため、ラ・ヴァレーヌとユクセル侯爵をこ
のアパレイユに関連付けたもまったくの見当違いでとは言えまい。
sec / sèche(セック/セッシュ)乾燥した、水気のない、の意。
farci(ファルシ)詰め物をした、の意。
本書における「大さじ 1 杯」の表現は非常にあいまいで、ざっくりとした分量表示であることに注意。
玉ねぎには、完熟、乾燥させた際に表皮が黄色いタイプと白いもの、赤紫色の 3 系統がある。黄色系統の玉ねぎはフォンなど
に用いられることが多い(日本ではこのタイプがほとんど。また「泉州黄」という品種はフランスの野菜栽培の専門書でも言
及がある程に栽培特性とクオリティが高く評価されて、フランスでも栽培されている)
。白玉ねぎ(oignon blanche オニョンブ
ロンシュ)は生食やその他の調理、とりわけ小さいものは下茹でしてからバターで色よく炒めて(グラセ)ガルニチュールに
用いられる。火が通りやすく、甘いものが多い。赤紫のものは品種によって特性が違うが、加熱調理、生食いずれにも用いら
れる。
20 世紀末頃から日本の種苗メーカーが育種した品種も栽培されるようになってきているため、あえて「きゅうり」と訳した
が、伝統的な concombre(コンコンブル)は太さ 4〜5 cm、長さ 30〜45 cm 程度まで大きくするのが一般的で、日本の現代品
種と異なり表皮は固く、苦味やアクは少ない。種の部分をスプーンなどで取り除いて、そこに詰め物して加熱調理する。また、
生のまま輪切りにして食べることも多い。

80

II.

合は、表面を焦がさないように1) 、低温のオー
ブンに入れて加熱すること2) 。

デュクセル・ボヌファム3)

Duxelles à la bonne femme
(家庭料理用)
生のデュクセルに、しっかり味付けをしたソー
セージ用挽肉を同量加えるだけ。

トマトエッセンス

Essence de tomate
よく熟したトマトのジュースを漉し器で漉す。
これを片手鍋に入れて、弱火にかけてゆっくり
と、シロップ状になるまで煮詰める。
布で漉るが、圧したり絞らないこと。保存して
おく。
【原注】このトマトエッセンスはブラウン系の
派生ソースの仕上げに色合いを調節するのにと
ても便利だ4) 。

皿に敷いて料理をのせる台、トンポン、クルス
タード

Fonds de plats, Tampons et Croustades

皿に敷いて料理をのせる台、トンポン、クルス
タードの重要性は日々ますます失なわれつつ
ある。新しいサーヴィスの方式ではこれらをほ
ぼ完全に用いなてはいない。これらの装飾的な
台はパンや、一番多いケースは米を材料に作ら
れる5) 。

ガルニチュール

Garnitures

パンを使った台は、固くなったパンの身を切っ
て作る。これをバターで揚げ [^31]、小麦粉を卵
白に加えて作った糊6) で皿の底に貼り付ける。
米で作るトンポンとクルスタード ……パトナ米
2 kg を、水が完全に澄むまでよく洗う。
たっぷりの水に入れて火にかけ、5 分間茹でる。
鍋の湯を捨て、別の湯に漬けて米を洗う。再度
湯をきる。大きな片手鍋に丈夫で清潔な布ま
たは豚背脂のシートを敷き、入れてみょうばん
10 g を加え、布または豚背脂のシートを折り畳
んで米を包む。鍋に蓋をして、弱火のオーブン
かエチューヴ7) に入れ、3 時間加熱する。
その後、米を力をこめてすり潰す。ラードを
塗った布のナフキンで包んで揉み、ラードを
塗った器に手早く詰めて、冷ます。
充分に冷めたら、米の塊を彫って装飾する。みょ
うばんを加えた水に漬けて、こまめに水を替え
てやれば長期保存も可能だ。

ポルチュゲーズ8) /トマトのフォンデュ

Fondue de tomate ou Portugaise
玉ねぎ大 1 個をみじん切りにしてバターまたは
植物油で炒める。トマト 500 g は皮を剥いて潰
し、粗みじん切りにして鍋に加える。潰したに
んにく 1 片と塩、こしょうを加える。弱火にか
けて水分がすっかりなくなるまで煮詰める9) 。
時季、つまりトマトの熟し具合に応じて必要な

1) 表面に焦げ目を付けることを gratiner(グラティネ)という。
2) pocher(ポシェ)。本来は沸騰しない程度の温度で茹でることを指すが、この場合は比較的低温のオーブンで加熱調理するとい
う意味。

3) bonne femme(ボヌファム)は「おばさん」くらいの意。家庭風、田舎風の素朴さを感じさせる料理に付けられる名称。
4) ブラウン系の派生ソースの節で、明示的にこのトマトエッセンスの使用に言及しているレシピは 2 つのみだが、必ずしもその
ことにこだわず、適宜、必要に応じて使うのがいい。

5) 実際、本書においてこれらを用いる指示は非常に少ないが、まったくないわけでもない。ただ、エスコフィエが乗り越えたい
と願ったデュボワとベルナールの『古典料理』がこれらの装飾的な台の作り方にかなりのページを割いていることと比較する
と、驚くほどに素気なく短かい説明で終わっている。
6) 説明的に訳したが、原文は repère の 1 語。白い生地で作る縁飾りおよび訳注参照。
7) étuve 主として野菜の乾燥などを目的とした低温専用のオーブン。
8) portugais(e)(ポルチュゲ/ポルチュゲーズ)は形容詞の場合は「ポルトガルの」の意。名詞の場合はポルトガル人。ここでは大
文字で書き出していることから名詞と考えられる(なお現代フランス語の正書法では文頭以外の語は固有名詞のみ大文字で始
めることになっており、普通名詞を文中で大文字にすることはないが、料理名などの場合は比較的自由に大文字を使う傾向に
ある)
。すなわち「ポルトガルの女」くらいの意味にとることが可能。ちなみに、このレシピとはまったく関係ないが、
、Lettres
ぶみ

Portugaises(レットルポルチュゲーズ)『ぽるとがる文』という題名の本が 17 世紀にフランスで出版され人々の感動を誘った。
リルケや佐藤春夫が自国語に翻訳、翻案したものも有名。実在したポルトガルの修道女マリアナ・アルコフォラドがフランス
軍人に宛てた恋文をまとめた、事実にもとづく書簡集と考えられていたが、20 世紀になってから、ガブリエル・ド・ギユラー
グという男性文筆家によるまったくの創作であることが証明された。いわゆる「書簡体小説」である。とはいえ作品の文学的
価値はまったく減じることのない名作。書簡体小説という形式は 18 世紀に流行し、ゲーテ『若きウェルテルの悩み』やラクロ
『危険な関係』
、ルソー『新エロイーズ』などの名作がある。19 世紀前半にはその流行も落ち着き、バルザック『二人の若妻の
手記』などはこの小説形式の流行の最後を飾る名作のひとつとして名高い。なお、トマトは 16 世紀に既にフランスにもたらさ
れており、16 世紀末に出版されたオリヴィエ・ド・セール『農業経営論』では「美しいが食べても美味しくない」と記されて
いる。食材として広く普及したのは 19 世紀以降であり、爆発的な流行現象とさえいえるほどだった。第二帝政期を代表する小
説家のひとりフロベールの遺作『ブヴァールとペキュシェ』にも農業に挑戦した 2 人の主人公がトマトの芽掻きをする必要が
あることを知らなかったために失敗したエピソードが描かれている。「オマール・アメリケーヌ」や「舌びらめ デュグレレ」
などトマトが重要な役割を果している料理が多く創案され、フランス料理の歴史において 19 世紀という時代を象徴する食材
のひとつともいえる。
9) トマトは品種にもよるが、混ぜずに弱火で加熱すると固形物が沈殿し、水分が上澄みになる。ここでは濃縮トマトペーストに
なるほどは煮詰めず、その上澄みがなくなるまで、という解釈でいいだろう。
1) フランス語では kache(カシュ)、Kacha(カシャ)とも。日本語ではカーシャと呼ばれるほうが多いようだ。もとはロシアをは
じめとするスラブ諸国における粥の総称でロシア語では каша。フランス料理に取り入れられ、そば粉またはセモリナ粉でつ

81

温製ガルニチュール用アパレイユなど
ら粉砂糖をほんの 1 つまみ加えるといい。

ポタージュ用そば粉のカーシャ1)

Kache de Sarrazin pour Potages
(仕上がり約 10 人分2) )
粗挽きのそば粉 1 kg に塩を加えたゆるま湯を
7〜8 dL 加えてデトランプ3) を作ってまとめる。
これを深手の片手鍋4) に入れて押し潰す。高温
のオーブンに入れて約 2 時間加熱する。
オーブンから出したら、表面の固くなった皮の
部分は取り除く。鍋の中のパン状になったもの
を、鍋の周囲にこびりついた焦げの部分に触れ
ないようにして取り出す。
これにバター 100 g を加えて捏ねる。厚さ 1 cm
になるように重しをして冷ます。直径 26〜27
mm 位の5) の丸い型抜きで抜く。これを澄まし
バターで色よく焼く。オードブル皿か、ナフキ
ンに盛り付けて供する。

【原注】このカーシャをオーブンから出してそ
のままの状態で供してもいい。その場合は専用
の容器に盛りつける。
クリビヤック6) 用セモリナ粉のカーシャ

Kache de Semoule pour le Coulibiac
(仕上がり約 10 人分)
大粒のセモリナ粉 200 g に溶き卵 1 個をよく混

ぜる。天板の上に広げて弱火で乾燥させる。
これを目の粗い漉し器で裏漉しする。コンソメ
に入れて約 20 分間、沸騰しない程度の温度で
加熱する7) 。気をつけて水気をきる。
マティニョン8)

Matignon

にんじん 125 g、玉ねぎ 125 g、セロリ 50 g、生
ハム 100 g を 1 cm 弱のさいの目に刻む。ロー
リエの葉 1 枚とタイム 1 枝とともに鍋に入れ
て、バターで弱火にかけ蓋をして蒸し煮し、少
量の白ワインでデグラセする。

くったクレープのようなものを意味するようになった。このカーシャはポタージュのガルニチュールそのもの、つまり「浮き
実」となる。
2) 原文 pour un service(プランセルヴィス)フランス宮廷料理の時代から、ロシア式サービスの普及しはじめた頃まで、格式あ
る宴席での料理を作る際の単位として service が用いられた。1 service は概ね 10 人分。現実には 8〜12 人くらいの間で融通を
効かせて運用されていたようだ。本書のレシピの分量は多くが 1 service すなわち約 10 人分で書かれている。
3) ここでは動詞 détremper(デトロンペ)が使われているが、faire un détrempe(フェランデトロンプ)と同義で粉が吸水して捏
ねる前の状態(塊)のこと。
4) casserole russe(カスロールリュス)直訳すると「ロシアの片手鍋」だが、通常は深い片手鍋をそう呼ぶ。
5) 原文 un emporte-pièce rond de la grandeur d’une pièce de 2 francs「2 フラン硬貨の大きさの円形の抜き型」。フランはヨーロッ
パ通貨統合前のフランスの通貨単位。2 フラン硬貨は概ね 26〜27 mm。
6) サーモンなどをブリオシュ生地で包んで焼いた料理。これを作る際に、厚さ 1 cm くらいに切ったサーモンの身とこのカーシャ
または米を互いに層になるようにして、ブリオシュ生地で包んで焼く。
7) pocher(ポシェ)。
8) 1935 年以来首相官邸として使われているマティニョン館を 18 世紀に所有していたジャック・ド・マティニョンの料理人が創
案したものといわれているが真偽は不明。料理用語としての初出はおそらく 1856 年刊デュボワ、ベルナール共著『古典料理』
。
ここでは「マティニョンのフォン」として、
「器具でお削りおろした豚背脂、同量のバター、生ハムのスライス数枚、薄切りに
したにんじんと玉ねぎ、マッシュリュームの切りくずを弱火にかけて軽く色付くまで炒め、ローリエの葉、塩、こしょうを加
えてからマデイラ酒かソテルヌのワインをひたひたに注ぎ、強火でグラス状になるまで煮詰める。これを串焼きあるいはオー
ブン焼きにする塊肉を覆うのに使う。魚料理の場合には豚背脂とハムをバターか植物油に代える (p.71)」となっている。これ
以前の主要な料理書に matignon の語はまったく見られないが、1858 年版のオドにおいて「ミルポワとマティニョンは野菜と
豚背脂、ハムを煮てグラス状に煮詰めたガルニチュール。鶏やジビエを串刺しでローストする際にこれで覆ってさらにバター
を塗った紙で包む。高級料理でしかほとんど用いられない (p.167)」とされている。
1) 18 世紀にガストン・ピエール・レヴィ・ミルポワ公爵(1699〜1757)の料理人が考案したといわれているが真偽は不明。料理
書における初出はおそらく 1814 年刊ボヴィリエ『調理技術』(p.61) だが、非常に厄介な問題を含んでいる。というのも、まず
poêle(ポワル)という名称のソースがあり(これがのちの à la poêle > poêlé という調理の歴史につながる)、 それは、さいの
目に切った仔牛腿肉 2 kg とハム 750 g、器具を使っておろすかさいの目に刻んだ豚背脂 750 g、さいの目に切ったにんじん 5〜
6 本、玉ねぎ 8 個は切らずにそのまま、ブーケガルニとしてパセリ、シブール(≒ 葱)、クローブ、ローリエの葉 2 枚、タイム、
バジル少々と外皮を剥いて種を取り除いたレモンのスライスを、500 g のバターで弱火で炒め、ブイヨンかコンソメを注ぎ、4
〜5 時間アクを引きながら煮込み、漉す、というもの。そして、ミルポワとはこのポワルにブイヨンの 1/4 量をシャンパーニュ
か上等の白ワインにして作ったもの、となっている。1833 年のカレーム『19 世紀フランス料理』第 1 巻におけるミルポワも同
工異曲であり、さいの目に切った材料をブイヨンで煮込んで布で絞り漉したもの。さて、1856 年のデュボワ、ベルナール共著
『古典料理』においては「ミルポワのフォン」としてソースのベースとして掲載されている。概要は、器具を用いておろすか細
かく刻んだ豚背脂 300 g を鍋に入れて溶かし、玉ねぎ 1 個とにんじん 1 本の薄切りを加え、弱火でゆっくり色付かないよう炒
める。さらに大きめのさいの目に切ったハム 250 g とブーケガルニ、パセリ、マッシュルームの切りくず、にんにく、クロー
ブを加えて 2 L のブイヨンと 1/2 L の白ワインを注ぐ。強火にかけ沸騰したら端に寄せて弱火にし、沸騰状態を保ったまま 2/3
量まで煮詰める。最後に漉し器で漉す、というもの (pp.70-71)。1867 年のグフェ『料理の本』においても「ミルポワすなわち
肉と野菜のエッセンス」となっている (p.406)。つまり、デュボワとベルナールあるいはグフェの頃、つまり 19 世紀後半まで、
ミルポワとは「出汁」の一種あるいは液体調味料のようなものだったと考えていい。前項のマティニョンの訳注でも見たよう
に、1858 年版のオドでやや違った認識がされていることは注目に値しよう。19 世紀末のファーヴルの『料理および食品衛生事
典』ではアパレイユとして定義している。さいの目に刻んだハム、にんじん、玉ねぎを白こしょう、タイム、バジル、ローリ
エの葉、クローブとともに色付くまで炒め、ソースやブレゼの調理に用いる、とある。おそらくはファーヴルの示したミルポ
ワがもっとも本書のものに近いが、ファーヴルはマティニョンに言及していないため、さいの目に刻む大きさによって呼び名

82
ミルポワ1)

Mirepoix

材料はマティニョンとまったく同じだが、より
小さなさいの目2) に刻むことと、ハムではなく
塩漬け豚バラ肉の脂身の少ないところをさいの
目に切って下茹でしたものを使う場合もある。
バターで色よく炒める3) 。

ボルドー風ミルポワ

II.

ガルニチュール

Garnitures

玉ねぎのみじん切り 75 g をバターでブロンド
色になるまで炒める。皮を剥いて洗い、水気を
きってさらに布で水気を取り除いた大麦 250 g
を加える。木のヘラで混ぜながら炒める。沸か
した白いブイヨン10) 3/4 L を注ぐ。こしょう 1 つ
まみを加えたら蓋をしてごく弱火のオーブンで
約 2 時間加熱する。焦がしバター 50 g をかけ
て仕上げる。

Mirepoix fine, dite à la Bordelaise
標準的な大きさに刻んだミルポワを料理に加え
ると、普通は即座にその料理にふさわしい香り
付けが出来るが、ボルドー風ミルポワはとりわ
けエクルヴィス4) やオマール5) の料理の風味付
けにいい。これはあらかじめ用意しておくべき
もので、次のように作業する。
にんじん 125 g と玉ねぎ 125 g、パセリ 1 枝を
出来るだけ細かいさいの目に刻む6) 。これにタ
イム 1 つまみと粉末にしたローリエの葉 1 つま
みを加える。
材料をバター 50 g とともに片手鍋に入れ、完全
に火が通るまで蓋をして弱火で蒸し煮する7) 。
小さな陶製の器に広げ、フォークの背を使って
器に押し込む。バターを塗った白い円形の紙で
蓋をして、使用するまで保存する。
【原注】より細かいミルポワを作るには、材料を
みじん切りにして、トーション8) の端で材料を
強く圧して野菜の水気を出してしまうだけでい
い。こうすると蒸し煮している間にその水分は
蒸発しきれないで残る。ただし、こうしてミル
ポワに残った水分は、長い時間保存する場合に
はカビや腐敗の原因になるので注意すること。

丸鶏の詰め物その他に用いる真珠麦9)

Orge perlé pour volailles farcies et autres usages

調理用シュー生地

Pâte à chou d’office
水 1 L とバター 200 g、塩 10 g を片手鍋に入
れて火にかけ、沸騰したら火から外す。ふるっ
た小麦粉 625 g を加える。強火にかけて混ぜな
がら余計な水分をとばす。次に、卵の大きさに
よって 12〜14 個の全卵を生地に加える。
このシュー生地はじゃがいものドフィーヌや
ニョッキなどのアパレイユとして使用されるの
がほとんどなので、通常のシュー生地よりも固
く作らなくてはいけない。

脳、白子のベニェやフリトー11) 用の揚げ衣

Pâte à frire pour Beignets de cervelles et de
laitances, fritots, etc.
陶製の器に、ふるった小麦粉 125 g、塩 1 つま
み、植物油か溶かしバター大さじ 2 杯、微温湯
2 dL を入れる。木のヘラで生地を持ち上げなが
ら混ぜる。すぐに使う場合は決して生地を捏ね
まわさないこと。弾力が出てしまい、揚げる具
材を漬けたときに生地が上手く付かなくなって
しまうからだ。事前に用意しておく場合には、
捏ねまわしても大丈夫。生地を休ませている間
に弾力性は失なわれる12) 。
この生地は、使う直前に、ふんわりと泡立てた
卵白 2 個分を加える。

を変えているのは本書が文献上最初のものと思われる。なお、ファーヴルはミルポワ公爵の料理人が創案したという説をとっ
ている。いずれにしてもミルポワという言葉の指す内容、用途が 19 世紀後半の 30 年くらいの間に大きく変化したと考えてい
いだろう。なお、現代日本の調理現場ではミルポワとマティニョンを厳密に区別することなく、また、豚背脂やハムは用いず、
にんじんや玉ねぎなどの香味野菜を細かいさいの目に刻んだものをミルポワの用語で統一しているケースも多いようだ。
2) brunoise(ブリュノワーズ)厳密には 1〜2 mm のさいの目に刻んだものを指す。
3) 原文 faire revenir(フェールルヴニール)熱した油脂で色付くまで焼く、炒める ≒ rissoler(リソレ)。
4) ecrevisse ヨーロッパザリガニ。
5) homard ロブスター。
6) 原文 brunoise excessivement fine 直訳すると「過度なまでに細かいブリュノワーズ(1〜2 mm 角のさいの目)」。
7) étuver(エチュヴェ)。
8) ソース・ヴェルト訳注参照。
9) このレシピは第四版のみ。
10) 原文どおりに訳したが、第四版に bouillon blanc は掲載されていない。ここでは「白いコンソメ」すなわちコンソメ・サンプ
ルと解釈するのがいいだろう。
11) かえるの腿、牡蠣、ムール貝、サーモン、鶏のレバーなどをマリネして揚げ衣を付けて油で揚げた料理。friteau(フリトー)と
も綴る。とくに frite(s)(フリット)と混同しないように注意したい。名詞としての frites はフライドポテトのこと。過去分詞
(形容詞)としての frit(e)(フリ/フリット)は「油で揚げた」の意。例えば courgette frite(クルジェットフリット)は油で揚げ
たズッキーニのこと(frite は形容詞)だが、steak frites(ステックフリット)フライドポテト添えのステーキを意味する(こ
の場合の frites は名詞)。
12) いったん形成されたグルテンはそうそう崩れないので、内容としてはやや疑問に思う部分だが、日本の「てんぷら」の常識を
ここで適用すべきではない。実際のところ、フリトーの衣はグルテンが形成されていてもまったく問題ないだろう。
1) salsifis キク科の根菜、見た目は牛蒡に似ているが風味や調理特性はまったく異なる。
2) crosne ちょろぎ。シソ科の根菜(正確には塊茎が食用となる)。中国原産で日本には江戸時代に伝わった。同様に中国からヨー

83

温製ガルニチュール用アパレイユなど

野菜用の揚げ衣

Pâte à frire pour Légumes

(サルシフィ1) 、セロリ、クローヌ2) など)
陶製の器に小麦粉 125 g と塩 1 つまみ、溶かし
バター大さじ 2 杯、全卵 1 個、水適量を混ぜて
薄めの衣をつくる。
出来るだけ、1 時間前に用意しておくこと。
大皿仕立ての丸鶏に詰める米

Riz pour farcir les volailles servies en Relevé
ou en Entrée
玉ねぎ 1/2 個のみじん切りをバター 50 g でさっ
と炒める。カロライナ米またはパトナ米 250 g

を加え、米が白くなるまで混ぜながら炒める。
白いコンソメ 1/2 L を注ぎ、蓋をして 15 分間煮
る。生クリーム 1 1/2 dL とフォワグラの脂3) ま
たはバター 125 g、ソース・シュプレーム大さ
じ数杯と、この米を詰める鶏料理に添えること
になっているガルニチュールの一部を加える。
【原注】米は鶏を焼いている間に完全に火が通
るよう、詰め物をする段階では 3/4 程度に火が
通っているようにする。鶏に詰めた米は膨らむ
ので、きっちりとは鶏に詰め込まないこと。
サルピコン4)

Salpicons divers

サルピコンという用語は普通、ある調理の種類
を指すものと理解されよう。

サルピコンにはサンプルとコンポゼ5) がある。
素材が 1 種類だけの場合はサンプルと呼ぶ。例
えば鶏やジビエの肉、羊や牛の肉、仔牛胸腺
肉6) 、あるいはフォワグラ、魚、甲殻類、ハム、
舌肉など。
素材が複数からなる場合はコンポゼと呼ぶ。本
書に掲載されている組み合わせのほか、相性の
よさそうなものの組み合わせ、マッシュルーム
やトリュフで嵩を増したもの、などがそうだ。
サルピコンの作り方は、各種の素材を、小さな
規則正しいサイズ、すなわち一辺が 0.5 cm 程
度のさいの目に刻む。
各種サルピコンのレシピ集を作るとしたら7) 、
上記のような素材の組み合わせから始まり、
それによって使い途も名称も決まることに
なる。例えば8) ロワイヤル、フィナンシエール、
パリ風、モングラ、シャスールなど。

ピロシキ用トヴァローグ9)

Twatogue pour Piroguis

よく水気をきったフロマージュ・ブラン10) 250
g をナフキンでしっかり絞る。これを陶製の器
に入れ、ヘラで滑らかになるまで練る。あらか
じめ捏ねてポマード状に柔らかくしておいたバ
ター 250 g と全卵 1 個を加える。
塩、こしょうで調味する。

ロッパにも伝わり、フランスでは最初に栽培された地名から crosne、あるいは日本由来のものとして crosne du Japon(クロー
ヌデュジャポン)と呼ばれる。絵画などの分野でジャポニスムが流行したこともあって、日本の食材として注目を浴びたため
か、(à la) japonaise(アラジャポネーズ)「日本風」を冠したものには、このちょろぎを用いた料理が多い。
3) フォワグラのテリーヌなどを作る際に余分な脂が出るのでそれを利用するといい。
4) この項は第二版で全面的に書き換えられ、分量も大幅に増えた。初版の記述は以下のとおり。
「この用語は一般的に火を通した
肉、フアルス、マッシュルーム、トリュフなどをさいの目切りにしたもののこと。大きさは合わせる料理に応じて加減する。
たった 1 種類の肉、あるいは野菜のさいの目切りにしたものでもサルピコンと呼ぶ。
(例)フォワグラのサルピコン、トリュフ
のサルピコン、など (p.188)」。
5) simple(サンプル)単一の、シンプルな。composé(e)(コンポゼ)組み合わせた。
6) ris de veau(リドヴォ))
7) 原文は直説法現在という時制で書かれており「事実を述べる」ニュアンスだが、本書にサルピコンのレシピをまとめた章も節
もないため、やや仮定法的に訳した。なお『ラルース・ガストロノミック』初版には salpicon の項に代表的なレシピがまとめ
られている。
8) ここに挙げられている例が第二版での加筆者の「思い付き」かそれとも本書の全体の構想にかかわるものだったかは不明だ
が、結果として本書第四版にはおろか肝心の第二版にさえ具体的な素材が記されていない例が含まれている。
「ロワイヤル」と
「シャスール」がそれにあたる。以下、ひとつずつ見ていくと、(1) ロワイヤル royale 王宮風、王家風、の意で、これほど料理
そのものと関連なく料理名に濫用されている語も珍しいとさえ言えるが、サルピコン・ロワイヤル salpicon à la royale の場合
は『ラルース・ガストロノミック』初版によると「トリュフとマッシュルームを鶏のピュレであえたもの」を指す。(2) フィナ
ンシーエル salpicon à la financière……クネル、雄鶏のとさかとロニョン(精巣)、マッシュルーム、トリュフ、すなわちガル
ニチュール・フィナンシエールの構成素材をさいの目に切ってを煮詰めたソース・フィナンシエールであえたもの。(3) パリ
風 salpicon à la parisienne はパリ風ガルニチュール参照。(4) モングラ salpicon à la Monglas は本節冒頭のアパレイユ・モング
ラそのもの。(5) シャスール salpicon chasseur……さいの目に切ってバターで炒めた鶏のレバーとマッシュルームを、煮詰めた
ソース・シャスールであえたもの。
9) このレシピは第三版から。なお第四版=現行版の綴りは tawrogue になっているが、明らかに第三版にある twarogue の誤植。
ロシア語の綴りは творог。
10) ヨーグルトに見た目のよく似た半固形チーズ。デザートなどとして砂糖をかけて食べるなどが一般的。

84

II.

ガルニチュール

Garnitures

冷製ガルニチュール用アパレイユなど1)

Série des Appareils et Préparations diverses pour Garnitures
froides
冷製のムース、ムスリーヌ、スフレ

Mousse, Moussseline, et Soufflé froids
温製の場合でも冷製の場合でも、ムースとムスリーヌはどちらも同じ材料から作られる。
ムースとムスリーヌの違いは、温製でも冷製でも、通常は 10 人分が入る大きな型に詰めて作るの
がムースと呼ばれ、いっぽう、ムスリーヌはスプーンで整形したり絞り袋を使ったり、あるいは大き
なクネルの形をした専用の型に入れたりして作るが、基本的に1 つで 1 人分と決まっている。スフレ
は小さなスフレ型に詰める。

冷製のムースとムスリーヌのアパレイユ

Composition de l’Appareil pour Mousses et
Mousseline froides
• 材料……主素材のピュレ2) 1 L すなわち鶏の
ピュレ、ジビエ、フォワグラや魚、甲殻類の
ピュレ。溶かしたジュレ 2 1/2 dL、ヴルテ 4 dL、
生クリーム 4 dL はちょうどいい固さに立てて
6 dL 相当にしておく。
素材の特性によって、これらの分量比率は多少
変更してもいい。同様に、ある種のムースを作
る際にはジュレまたはヴルテのどちらかしか用
いなくてもいい。
• 作業手順……まずベースとなるピュレを入れ
たボウルを氷の上に置いて、軽く混ぜながら、
ジュレとヴルテを加える(どちらかしか使わ
ない場合は使うもののみ)。次に泡立てた生ク
リームを加える。
味付けを確認する。これは冷製料理ではとても
重要なことだ。いつも気をつけて確認し、修正
を加えるようにすること。
【原注】生クリームは五分立てすること。完全
に立ててしまうと、ムースに滑らかさが失なわ
れてパサついた仕上りになってしまう。

冷製ムースの型詰め

Moulage des Mousses froides
いまもそうしている料理人は少なくないようだ
が、かつては、プレーンな型あるいは浮き彫り
模様の付いた型の中に透明なジュレを流して層

をつくってやり3) 、ムースの主素材と関連ある
ものを装飾要素として貼り付けていた。
こんにちでは次の方法がむしろ好ましい。銀製
のタンバル型4) の底面だけに透明なジュレの薄
い層をつくる。型の側面の外側に紙の帯を冷た
ふち

いバターで貼り付ける。型の縁から 2〜3 cm く
らい高くなるようにすること。そうするとスフ
レのような見た目のムースになる。紙の帯は型
の内側に貼り付けてもいい。この紙の帯は提供
直前に、ぬるま湯で濡らしてナイフの刃を使っ
てムースからそっと引き剥してやる。
タンバル型の用意が整ったら、ムースを詰めて
冷やす。アイスクリーム用の冷凍庫に入れるほ
うがいいだろう。この方法は、小さな銀製のス
フレ型に詰めてやってもいいが、それは冷製の
スフレにとっておいたほうがいいだろう。アパ
レイユの構成が同じであるにもかかわらず、冷
製ムースと冷製スフレの違いをはっきりさせる
ことが出来るからだ。
とりわけジビエのムースやフォワグラのムース
については、近代的な料理の提供方法に合わせ
て作られた銀製かガラス製の容器を用いてもい
い。その場合は、型の底面だけジュレの層をつ
くってやり、アパレイユをそのまま流し込めば
いい。表面はパレットナイフなどで丁寧に滑ら
かにならしてやってから、ムースを冷やす。そ
の後、ムースに直接装飾を施し、ジュレをかけ

1) この節は、初版で「冷製料理」の章の冒頭に概説としてまとめられていたものを、第二版の改訂時に、ほぼそのままの内容で
現在の位置に移動させられている。もちろん順序および内容の加筆も行なわれており、異同は少なくない。

2) 本書では加熱した肉や魚、甲殻類のピュレを作る方法への言及はないが、本章冒頭にあるファルス・ムスリーヌをそのまま使
おうなどと考えてはいけない。ここで説明されている冷製のムース、ムスリーヌ、スフレの作り方に加熱の工程がまったく含
まれていないのは、主素材のピュレが既に加熱済みであることを当然の前提としているからだ。つまりここで材料として示さ
れているピュレはすべて加熱済みのものをピュレにしたものだと考えなければならない。
『料理の手引き』の当時はローストす
るか茹でるなどの加熱後に、鉢に入れてすり潰し、裏漉ししてから何らかのソース(ここではヴルテ)を加えて漉さ(固さ)を
調節するなどしていた。現代ではフードプロセッサーや冷凍粉砕調理機などを利用すればより容易に滑らかなピュレを作るこ
とが可能だろう。また、第 3 章ポタージュにポタージュ・ピュレについての概説があるが、そこではポタージュにすることを前
提として「つなぎ」の使用が作業のプロセスに組込まれて説明されているために、あくまで参考程度に読むのがいいだろう。
3) chemiser(シュミゼ)ジュレなどを型の内側に流して薄い層を作ること。
4) timbale(タンバル)円筒形の比較的浅い型。野菜料理用の深皿もこの語で呼ぶので注意。

85

冷製ガルニチュール用アパレイユなど
て艶を出させる。
ジビエのムースの場合には、そのジビエの胸肉
を冷やして、ムースの周囲に飾るようにする。
冷製ムスリーヌの整形

Moulage des Mousselines froides
冷製ムスリーヌの型詰めには 2 つの方法があ

る。たんに、型にジュレの層を作ってやるか、
ソース・ショフロワの層を作ってやるかの違い
でしかない。どちらの場合でも、卵形の型に詰
めるか、大きなクネルの形状のものにするか、
ということになる。
方法 1…… 型の内側に透明なジュレを流して薄
い層を作ってやる1) 。その上にアパレイユを張
るように塗り、アパレイユのベースとなって
いる素材とおなじもの— 鶏、ジビエ、甲殻類の
身など、とトリュフ—で構成されたサルピコン
を盛り込む。その上からアパレイユを塗って覆
い、パレットナイフなどを使ってドーム形に滑
らかにならす。冷蔵庫に入れて冷し固める。
方法 2…… 型の内側にアパレイユを詰め、さら
にサルピコンをその内側に射込む。アパレイユ
で覆って、冷し固める。
型から外す。ムスリーヌのアパレイユの素材と
関連性のあるソース・ショフロワを表面を覆う
ように塗る2) 。トリュフおよびその他の素材(こ
れもムスリーヌと関連性があること)を装飾用
に細工したものを飾り付ける。装飾が剥れない
ように、上からジュレを塗って艶を出させる。
銀製またはガラス製の深皿の底に透明なジュレ
の層を作り、その上にムスリーヌを並べる。再

度ジュレを上からかけてやり、冷蔵庫に入れて
提供するまで保管しておく。
冷製スフレ

Soufflés froids

冷製スフレはムースそのものに他ならない。だ
から構成はまったく同じだ。ただ、先に見たよ
うにスフレが 10 人分3) を確保できるだけの大
きな型に詰めるのに対して、スフレはそもそ
も、小さなスフレ型に入れてひとり 1 つ宛で作
るものだ。
アパレイユを型に詰める方法はムースの場合と
同様、つまり、スフレ型の底にジュレの層を敷
いてその上にアパレイユを盛り、型の縁より高
くなるように周囲に巻いた紙の帯を利用して縁
より高くアパレイユを盛る。そうすると、冷や
し固めた後で紙の帯を取り除けば、まるで温製
のスフレのように見えることになる。
【原注】ここまで述べた 3 種の作り方の基礎は
おなじだから、ポイントは次のようにまとめら
れる。
1. ムースは「スフレ」の名称で供してもいいもの
だが、混同されるのを避けるために「ムース」
の名称で約 10 人分をひとつの型に入れて作る。
2. ムスリーヌはサルピコンを射込んだものであっ
てもそうでなくても、大きなクネルであって、
ひとりあたり 1 つにする。
3. スフレは小さなムースであって、スフレ型ある
いは似たような型に詰めて、これもひとりあた
り 1 つとする。

アスピック4)

Aspics

アスピックを作る際に、肝に銘じておくべき第一のポイントは、どんなアスピックでも、ジュレが
ジューシー5) で美味しく、完全に透き通ったもので、ちょうどいい加減に固まっていなければならな
いことである。
アスピックを作る際には、昔もそうだったが現代でも、中央に穴の空いたアスピック型6) でプレー

1)
2)
3)
4)

chemiser(シュミゼ)。
napper(ナペ)。覆いかける(ように塗る)こと。
1 service(アンセルヴィス)、格式のある宴席料理などを作る際の単位。基本は 10 人分。
いわゆる「ゼリー寄せ」のやや大掛かりな仕立てだが、aspic という語は本来、フランスやイタリアに生息する蛇の名称。本文

にあるように高さがあり中央に穴のあいたリング形にジュレとともに具材を詰め、装飾をおこなうが、その完成した姿が、ア
スピックという蛇がとぐろを巻いた姿を思わせるというところから付けられた名称といわれている。ジュレが柔らかいもので
あればそれだけ、大きな型に入れる場合、中空になっているリング型を用いないと自重で崩壊することになる。逆にいえば、
リング型を使うのは自重で崩壊するのを防ぐための経験的な知恵なのだろう。
5) 原文 succulent(スュキュロン)は suc(スュック=肉汁)から派生した形容詞で、もともとは「汁気の多い」の意味だったが、
そこから転じて「美味な、滋味に富んだ」の意味で一般的に用いられている。ここでは、両方のニュアンスで表現されている
と解釈できる。
6) moule à douille(ムーラドゥイユ)サヴァラン型のような中央に穴が空いた型。現代では「アスピック型」というと楕円形で中
央に穴のないものを指すことが多いが、それとは異なる。あるいはクグロフ型のようなものをイメージするとわかりやすいだ
ろう。19 世紀、アスピックには高さのある型が多く用いられたようだ。なお、現代では一般にサヴァラン型というと、型の高
さや穴の大きさ等さまざまなタイプのものをまとめて指すことになるので注意。高さのない(低い)
、中央の穴が大きな型につ
いて、エスコフィエはボルデュール型 moule à bordure(ムーラボルデュール)と呼んで区別している。

86

II.

ガルニチュール

Garnitures

ンなもの、波模様等の装飾のあるものが用いられている。
ボルデュール型1) も使われることがあるが、一般的に、アスピックの中心にガルニチュールを盛り
込む場合のみである。
アスピックを型に入れる時には、まず、型の底と周囲に装飾をする。
そのために、型は砕いた氷の中に入れてよく冷やしておく。やや固まりかけたジュレ少量を流し入
れ、型を氷の上で転がしながらジュレを周囲に貼り付かせる2) 。次に、装飾するパーツを、固まらな
い程度に冷たいジュレに浸してからすぐに貼り付ける。装飾については料理人のセンスとアイデア次
第なので、ここで明確に述べておくべきことはほとんどない。ひとつだけ言えるのは、常に正確な作
業をし、型からアスピックを出したときに装飾がはっきりと見えるようにすべき、ということのみ。
装飾に用いる素材はアスピックの主素材と関連性のあるものでなくてはならない。一般的には、ト
リュフ、ポシェした卵白、コルニション3) 、ケイパー、いろいろな香草の葉先、ラディッシュの薄い
輪切り、オマールのコライユ4) 、赤く漬けた舌肉、等。
アスピックの具材が種々のエスカロップ5) や長方形に切ったフォワグラ等で、型の大きさから何度
も並べなければならない場合、ジュレの層と交互に重ねて型に入れていく。新しい層を並べる際には
先に入れたジュレがある程度固まってからにする。
アスピックの型入れでは常に、最後のジュレの層を充分な厚みにする。できるだけ、型を氷に埋め
るようにしながらジュレを流し込んでいくが、早く冷やすために氷に塩を加えてはいけない。塩を使
うとジュレの透明さが損なわれるからである。
型から外す方法……型を湯につけてただちに水気を拭い、折ったナフキンや彫刻した氷のブロック等
に、アスピックを裏返して型から出す。
菱形や正方形に切ったジュレのクルトン6) 、またはアシェしたジュレで周囲を飾る。
【原注】アスピックを型に入れて作るには、必然的に、ジュレが相当に固いものでなければならない
が、これはまことによろしくない。そもそも固いジュレは口あたりがよくないのだ。だから現代の調
理現場では、以下のような方法を採っている。タンバル型か、氷に嵌め込むようにした銀やガラスあ
るいは陶製の深皿の底に予めジュレの層を作って固めておき、その上にアスピックの素材を並べる。
次に、固まりかけのジュレをたっぷり覆いかける。この方法では、装飾をする必要がある場合は、ア
スピックの調理をおこなう前に、主素材にじかに装飾することになる。

ショフロワ7)

Chauds-froids
ソース・ショフロワには大抵の場合、切り分けた素材を浸す。が、時として大きな塊肉全体をソー
ス・ショフロワで覆わなくてはならない場合もある。ただ、そういう仕立てにする場合には、別の料
理名となっている。
ショフロワが複数のばらばらのパーツからなる場合には、それらをソース・ショフロワに漬けたら
網の上に並べておく。ソースが冷えたら、それぞれのパーツに装飾をし、ジュレを覆いかけて艶を出

1) moule à bordure(ムーラボルデュール)料理の縁り飾りを作るための、やや丈が低く中央の穴が大きいリング型。
2) chemiser(シュミゼ)。
3) cornichon 主としてピクルスにする小型のきゅうり、およびそのピクルスのこと。日本では、ハンバーガーによく用いられて
いるドイツ系のピクルス用品種であるガーキンス (英 gherkins 独 Einlegegurken) と混同されることがあるが、コルニションは
4)
5)
6)
7)

より小さなサイズで収穫し、フレッシュな状態では「いぼ」が尖っているのが特徴。
胴の背側にあるオレンジ色がかった「内子」。
escalope(エスカロップ)筋線維とは垂直方向に、厚さ 1〜2 cm に薄切りにした仔牛などの肉や魚の薄い切り身。
パンで作るクルトンとは別に、菱形やさいの目に切った冷製料理装飾用のジュレもクルトンと呼ぶ。
ショフロワという仕立てについては茶色いソース・ショフロワ) 訳注参照。なおこの chaud-froid という語の複数形は、それぞ
れに s を付け chauds-froids となる。合成語の複数形はいろいろなパターンがあるので、必要が出たらその都度覚えるようにし
たほうがいい。

87

冷製ガルニチュール用アパレイユなど

してやる。さらに盛り付けの際にはみ出す余分なソースについてはきれいに取り除いておくこと。
大きな塊肉の場合は、よく冷えてはいるけれどまだ流動性のある状態のソース・ショフロワを一気
に塗りつけて、その後に装飾をし、ジュレを塗って艶出しすること。
切り分けた素材からなるショフロワの盛り付けは、皿の上の台の上に盛り付けてもいいし、縁飾り
の内側に、パンまたは米、セモリナ粉で作った台を置いてその上に盛り付けてもいい。あるいは、銀
製か陶製、ガラス製の深皿に盛り付けてもいい。
大きな塊肉のショフロワの場合、皿の上の台にのせてもいいし、あるいは、氷のブロックに料理が
嵌まるようにブロックを削ってからそこに盛り付けるのもいい。
ショフロワ仕立ての鶏やジビエについては、正確に切り分けて1) 皮は剥いでおくこと。手羽や下腿
肉は使わないので、別の用途に取り置いておくといい。
細かく切った素材のショフロワ仕立ての場合、添えてやるマッシュルームや雄鶏のとさかとロニョ
ン2) にもソース・ショフロワを塗ってやること。トリュフはただジュレをかけて艶を出すだけでいい。

パンフロワ3)

Pains froids

古典料理におけるパンフロワとは、ファルスで出来たアパレイユを型に詰めて比較的低温で加熱調
理し、冷ましてから型から出して装飾を施し、ジュレをかけて艶を出させたものでしかない。
近代の料理においてこの方法は用いられなくなっており、一般的にいって、パンフロワの代わりと
してムースが作られるようになったわけだ4) 。

冷製料理のガルニチュール

Garnitures de Mets froids
料理に合わせて、ガルニチュールは以下のようなもので構成すること。

• 固茹で卵を半割りまたは四つ割りにして詰め物をし、装飾を施してジュレをかけて艶を出したもの
• 小さなトマトファルシが、いろいろな食材を添えたもの、または大きなトマトに何らかの詰め物をし
て正確に櫛切りにしたもの

• 小さな野菜皿または舟形の皿に盛った野菜サラダ
• トマトピュレにジュレを混ぜて塗った小さなパンまたはタルトレット
• 真っ白なレチュ5) の中心部分
• アンチョビのフィレ、オリーブなど……

1)
2)
3)
4)

基本的に鶏および鳥類のジビエの可食部は胸肉のみとされていたことに留意。

rognon(ロニョン)牛、羊などの場合は腎臓だが、雄鶏の場合は精巣のこと。高級食材として珍重された。
pain froid 直訳すると「冷たいパン」だが、いわゆるパンとはまったく違う。語の概念としては「パンに似た塊」のこと。

この段落は第四版でかなり分量が減らされ、内容も書き換えられている。結果として大きく削られた後半部分の初版の文章は
以下のとおり。「(近代の)パンフロワはいずれも、その中心となるアパレイユが次の構成になる。(1) そのパンフロワの主素
材からひいた香りゆたかなフュメをほとんどグラス状に煮詰めたものと、卵黄とバターをオランデーズソースのように立てた
もの。(2) このアパレイユが温いかどうかくらいまで冷めたら、溶かしたゼラチンを布で漉しながら流し入れ、さらに主素材
のピュレと、それと同量の泡立てた生クリームを加える。(3) 最後にこのアパレイユに、主素材から切り出した薄切り肉(エ
スカロップ)にトリュフのスライスを重ねていく。あるいは単純に、肉とトリュフをさいの目に切ったものでもいい。このよ
うにして作ったアパレイユを、あらかじめジュレを内側に流して層を作っておいた型に流し入れ、冷やす、もしくは氷室に入
れる。提供直前に、ぬるま湯にさっと型を浸していから米かセモリナ粉で作った台の上に裏返してのせてやる。あるいは皿の
底にジュレを敷いただけでもいい。このパンフロワの周囲に、きちっと正確な形状に切ったジュレのクルトンを飾る。【原注】
ジュレによるクルトンについては、冷製料理全般にあてはまる」(p.582)。
5) いわゆる「サラダ菜」に属する系統の結球レタスのこと。

88

II.

ガルニチュール

Garnitures

ガルニチュール

Série des Garnitures
ガルニチュールの見た目を変えることについて
Considérations sur le modifications de forme que peuvent subir les Garnitures.
他のどんなレシピでもそうだが、それぞれのガルニチュールの構成上の約束事を勝手に変えてはい
けない。もし、どうしても何らかの変更が必要なら、料理本体に合わせて、配置を変えるとか、見た
目の形状を変えるだけにすること。ガルニチュールを構成している素材を変えてはいけない。
そうすれば、「牛フィレ肉」のような大きな塊で供する料理か、「トゥルヌド1) 」のような調理かに
かかわらず、同じガルニチュールを合わせることが出来るが、その場合は必然的に、ガルニチュール
の形状や盛り付けにおける配置などは変更せざるを得ないわけだ。そうしないと、主素材とガルニ
チュールの関係性が保てなくなる。
これは、薄切りにしたフィレ肉とシャトーブリヤン2) の場合も同様だ。理屈からいって当然だろう。
だから、この節において示しているガルニチュールの分量は 10 人分を基本としているが、大きな
塊肉の料理に添えるか、1 人分ずつに切って調理して供するかで、量を増やしたり減らしたりするこ
とになる。
これはとても重要なことだ。というのも、本書はフランス料理の伝統的な作り方を集めた本なのだ
から、多種多様なガルニチュールを収録せざるを得なかったが、その中には近代的な料理にはもはや
いと

ふさわしくないものだって含まれている。近代的な料理は何よりもまず複雑さを厭い、ガルニチュー
ルをシンプルなものにする傾向にある。そうすれば皿出しが早くなるし、結果は完璧だ。料理という
のは熱々の状態で供されてこそ、完璧な状態で味わっていただけるものだ。ガルニチュールがごくシ
ンプルなものなら、素早い盛り付けにも対応出来る。
同様に、もし可能なら、ガルニチュールを料理の周囲に配置するよりは、別添で供したほうがいい
だろう3) 。そうすればどんな料理であっても、本体は事前に切り分けて、ソースにまみれていない状
態で盛り付けられた姿を、お客様方にご覧いただくことが可能だ。それからすぐにガルニチュールと
ソースを回していけばいい。この方式以外に、盛り付けを素早くおこない、清潔で熱々の状態で料理
をご提供する手段はなかろう。
これはとりわけ、ルルヴェ4) と呼ばれる大掛かりな仕立ての料理の場合にあてはまることだ。ノワ
ゼット5) やトゥルヌドのようなさして大規模ではない仕立てのアントレ6) と呼ばれる料理については、
給仕の際に切り分けてガルニチュールを盛り付けてからお客様にお出しするよりは、おひとり様分ず
つ盛り付けて供することにすれば、
「アントレ」の存在理由はますます低いものとなる。
それでも、アントレについてはそうしたほうがいい。この問題に関しては、料理本体の盛り付けと
ガルニチュールを切り離したほうが、毎回確実により早く料理をご提供できるのだから、どんな盛り
付けの料理だろうと、ぜひためらうことなくこの方式を採用していただきたい。

1) 牛フィレ肉を厚さ約 2 cm に切ったもの。周囲に豚背脂のシートを巻いて調理することが多いが、アメリカもしくはイギリス

2)
3)
4)
5)
6)

経由で周囲にベーコンを巻く調理法が日本に伝わったために、混同されやすいので注意。フランス料理としては、豚背脂
のシートを巻く。
牛フィレ肉の太い部分、およびそれを約 3 cm の厚さに切ったもの。
大皿に約 10 人分をまとめて盛り付けるケースを想定して言っていることに留意。
第二版序文訳注および本章「ファルス」訳注参照。
約 80 g の牛フィレ肉の筒切り、および、円筒形に切った羊、仔羊の背肉の中心部分。
Entrée 現代フランス語では「前菜」のことを指すが、かつては約 10 人分を大きな皿にまとめて盛り付け、給仕の際に取り分
ける肉料理(さらに古くは魚料理も)を意味していた。

89

ガルニチュール

牛、羊肉料理に野菜を添える場合にふさわしいソースについて
Remarque importante sur les sauces applicables aux Entrées de Boucherie garnies de Légumes.
エスパニョル系の派生ソースは野菜を添えた牛、羊肉料理にはふさわしくない。とろみを付けた
ジュのほうが圧倒的にいい。
だが、いちばんいいのは、軽く仕上げたグラスドヴィアンド 1 dL に 125 g のバターを加えて1) 、レ
モン果汁ほんの数滴で仕上げたものだ。とはいえ、このバターを加えたグラスドヴィアンドは野菜を
包み込んでしまわない程度に充分に軽い仕上がりにすること。
アスパラガスの穂先とかプチポワ2) 、アリコヴェール3) 、マセドワーヌ 4) などの野菜は、ソースを
ある意味、分解してしまう。それは野菜そのものが持つ水分によってだったり、野菜をあえているア
パレイユのせいだったりする。
その結果、大皿から取り皿に分けてお客様のところに運ばれた時には、ほとんど食欲を失なわせる
ような見た目になってしまう。こういう事態はソース・シャトーブリヤンか、バターを加えたグラス
ドヴィアンドを料理に合わせれば解決する。これらのソースは分解しないどころか、野菜のガルニ
チュールととてもよく合う。同時に、野菜のガルニチュールにもこれらのソースはとても素晴らしい
ふんわりとした食感を与えてくれるからだ。
そんなわけで、以下の点にぜひとも留意していただきたい。出来るだけ、エスパニョル系の派生
ソースやトマトソースは、ガルニチュール・フィナンシエールやゴダールのような、トリュフ、雄鶏
のとさかとロニョン、クネル、マッシュルームなどを添える料理にとっておくべきだ。野菜のガルニ
チュールには、とろみを付けたジュ、もしくはバターを加えたグラスドヴィアンドのほうがずっと好
ましい。

ガルニチュールのレシピ

Garnitures

(ここで示す分量はすべて仕上がり 10 人分)

• ソース……薄く仕上げたトマトソースに、グリ
ガルニチュール・アルジェリア風

Garniture à l’Algérienne

(牛、羊の塊肉5) の料理に添える)
• ワインの栓の形にしたさつまいものクロケット
10 個
• 小さなトマト 10 個は中をくり抜いて味付けを
し、植物油少々で弱火で蒸し煮する

ルして皮を剥き、細かい千切りにしたポワヴロ
ン6) を加える

ガルニチュール・アルザス風

Garniture à l’Alsacienne

(牛、羊の塊肉、牛フィレ、トゥルヌドに添える)
• ブレゼ7) したシュークルート8) を詰めてハムの

1) ソースを仕上げる際にバターを加えてより滑らかで艶やかな仕上がりにする。monter au beurre(モンテオブール)日本では
ブールモンテとも呼ばれる。

2) petits pois いわゆるグリンピースのことだが、フランスではより若どりの、直径 7〜8 mm 程度のものが好まれる。
3) haricots verts いわゆる、さやいんげん。これもごく細い若どりのもの(太さ 8〜9 mm)程度のものが好まれる。
4) macédoine 多くの場合、小さめのさいの目に切った蕪(navet ナヴェ)やアリコヴェール、プチポワ、にんじんなどを混ぜ合わ

5)

6)
7)
8)

せたもの。日本のマセドアンサラダの原型となった。ただし言葉の意味としては「各種の野菜を混ぜあわせたもの」であり、
料理用語として切り方が決まっているわけではない。
原文 Pour les pièce de boucherie より正確に訳すなら、
「肉屋 (boucherie) が伝統的に扱かってきた、白身肉を除く畜産精肉、具
体的には牛、羊(馬も含まれる)の塊肉」であり、牛の場合は基本的にランプ、イチボに相当する部位、羊の場合は鞍下肉か
ら腿上部にかけての部位を塊のまま調理したものを意味することがほとんど。
いわゆる青果としてのパプリカ。
キャベツのブレゼを参考にすること。
生食出来ないくらい固くて大きな専用品種であるキャベツを千切りにして香辛料などとともに塩蔵、醗酵さたもの。ドイツの
ザワークラウトが原型だが、歴史的にフランスとドイツで領土の取り合いとなったアルザス地方で独自に発展した。温めた
シュークルートにソーセージなどの豚肉加工品を添えた choucoûte garnie(シュークルートガルニ)はアルザスの名物料理の
ひとつ。

90
脂身のないところを円く切ってのせたタルト
レット 10 個
• ソース……とろみを付けた仔牛のジュ

ガルニチュール・アメリケーヌ1)

Garniture à l’Américaine

(魚料理に添える)
• このガルニチュールは必ず、オマール・アメリ
ケーヌの方法で調理した尾の身をやや斜めに 1
cm 程度の薄切り2) にして供する
• ソース……オマール・アメリケーヌのソース

ガルニチュール・アンダルシア風3)

Garniture à l’Andalouse

(牛、羊の塊肉料理や鶏料理に添える)
• 中位の大きさのポワヴロン 10 個をグリル焼き
して中をくり抜き、ギリシャ風ライスを詰める

II.

ガルニチュール

Garnitures

• なす4) を 4 cm の厚さの輪切りにして面取りを
し、中に窪みをつくって油で揚げ、提供直前に
油で炒めたトマトをのせる
• ソース……とろみを付けたジュ

ガルニチュール・アルル風5)

Garniture à l’Arlésienne

(トゥルヌドやノワゼットの料理に添える)

• なす6) は 1 cm 程の厚さにスライスして塩こしょ
うをし、小麦粉をまぶして油で揚げる
• トマト皮を剥いてスライスし、バターでソテー
する
• 玉ねぎは輪切りにして指輪のようにばらばらに
し、小麦粉をまぶして油で揚げ、花束のように
盛る
• ソース……トマト風味のソース・ドゥミグラス

1) ソース・アメリケーヌも参照されたい。
2) escalope(エスカロップ)肉などを筋線維と直角に、丸くスライスしたもの。
3) アンダルシア風、つまりスペイン風といいながら、ギリシャ風ライスを使うという点からも、料理名に付けられた地名がしば
しば不確かで大雑把な理由さえないことが多いことが理解されよう。

4) フランスで伝統的なタイプのなすはヘタが緑色で、風味や調理特性はいわゆる米なすに近いが、形状は比較的細長い。直径 4
〜6 cm、長さ 25 cm くらいのものが多い。
5) 南フランスの都市 Arles(アルル)の形容詞および名詞形。名詞の場合は「アルルの人」の意味になる。アルルはオランダ出
身の印象派〜ポスト印象派の画家フィンセント・ファン・ゴッホ Vincent van Gogh(フランス語では昔からヴァンソンヴァン
ゴーグと呼ぶ習慣が付いてしまっており、現代フランス語の原語発音尊重の風潮にもかかわらず、そのように発音されること
は多いようだ)が 1888 年から 1889 年までアトリエを構え、「ひまわり」など多くの傑作を描いた。有名な、自分の耳を切り
落すという「事件」を起こしたのもアルルでのことだ。この時期の作品のひとつに、「アルルの女(ジヌー夫人)
」と呼ばれる
一連のものがある。モデルはアルルのカフェの経営者だといわれている。もっとも、フランスにおいて画家としてのゴッホお
よび彼の作品は生前はほとんど評価されることがなく、生前に売れた絵は 1 枚だけだったとさえいわれている。このレシピは
初版つまり 1903 年から収められているため、ゴッホの絵との関連はほぼないと考えていいだろう。むしろ、小説化アルフォ
ンス・ドーデ原作を戯曲化してジョルジュ・ビゼーが劇音楽を付けた『アルルの女』(1872 年初演、1878 年再演)との関連が
あると見るのがいいだろう。この作品は初演時点ではあまり好評ではなかったが、再演で大ヒットとなった。ソース・ボヘミ
アの娘のように、人気のある劇やオペラのタイトルを料理名につけて、その人気にあやかろうという風潮が 19 世紀後半には
比較的多かった。そのため、トマトとなすという南フランスを思わせる食材を使ってはいてもアルルという土地に何の関係も
ないと思われる、内容的にも凡庸なこのガルニチュールに、当時の人気作品の名をつけて、いかにも流行のものであるかのよ
うに供したのが定着した、と考えることも可能だろう。その場合は「ガルニチュール・アルルの女」と訳すべきかも知れない。
なお、ビゼーが最初に作曲したのは 27 曲からなる舞台音楽であって、独立した音楽作品でもなければ、オペラでもなかった
が、そのなかから数曲を選んで編曲し(あるいは作曲しなおし)
、
『アルルの女 組曲』としてこんにち広く知られている。第 1
組曲と第 2 組曲があり、前者はビゼー自身によるオーケストラ用編曲。後者はビゼーの死後 1879 年に友人エルネスト・ギロー
が完成させた。第 1 組曲の「メヌエット」や第 2 組曲の「ファランドール」など、曲名は知らずとも、メロディーを聴いたこ
とのある読者も少なくないとと思われる。
6) なす、トマト、玉ねぎの分量は記されていないので適宜判断すること。
1) 原文の à la Banquière をここでは文字通り訳した。料理名において [à la + 形容詞の女性形] は通常、à la manière/façon 〜の
manière もしくは façon が省力されたものと考えられている。これら manière, façon いずれも女性名詞であるために、この後
に付ける形容詞も女性形となる。ところが「〜風」」
「〜を記念して/〜を称揚して」の意味で [à la + (固有) 名詞] という用法も
ある。これは à la manière de + 名詞、の manière de が省略されたものと考える。Banquier(ボンキエ)は「銀行家」を意味す
る名詞であり、女性の場合は banquière となり、女性銀行家あるいは銀行家夫人ということになる。そのため、従来は「銀行家
風」と訳されていたが、あえて文法の原則に忠実に「銀行家夫人風」を訳した。さて、この料理名だが、日仏料理協会編『フラ
ンス 食の事典』(白水社、2000 年)には「産業革命に伴う産業の隆盛を支えた銀行は、現代にいたるまで資本主義社会の根
幹をなすもので、その経営者は 19 世紀において金持ちの代名詞ともなった。当時、「銀行家風」は王風、王妃風にかわる新し
い表現だった (pp.162-163」と説明されている。ところが、料理書においてこの à la Banquière という表現は 1856 年のデュボ
ワ、ベルナール共著『古典料理』以前には見つからない。しかも、
「冷製料理用ガルニチュール・銀行家夫人風」Garniture à la
banquière, pour froid (t.1, p.259) および「若鶏のガランティーヌ・銀行家夫人風」Galantine de poulet à la banquière (t.2, p.40)
の 2 つでのみ料理名に使われているのみ。ガルニチュールの概要は、オマール 2 尾の身をやや斜めの円形(エスカロップ)に
スライスする。これをひとつずつ別々の陶製の器に入れ、小さなアーティチョークの基底部を茹でたもの、大きな黒または白
トリュフのスライス、マッシュルームのスライス、コルニションのスライスを盛り込み、塩、こしょう、植物油、パセリとエ
ストラゴンのみじん切りで味付けし、銘々に供する、というもの。本書のガルニチュールと温製、冷製の違いはあっても、同
じ名称とは思い難いくらい異なった内容。その前後および以前については、毎年のように版を重ねながら増補されたために料
理の流行、変遷を見るのに非常に便利なヴィアールにもオドにも収録されておらず、グフェ『料理の本』(1867 年)にも見あ
たらない。本書よりやや時代が下って、1838 年の『ラルース・ガストロノミック』初版の「ガルニチュール・銀行家夫人風」
は「鶏、仔牛胸腺肉(リドヴォー)の料理、ヴォロヴァン用。クネル、マッシュルーム、トリュフのスライス、ソース・バンキ

91

ガルニチュール

ガルニチュール・銀行家夫人風1)

• 小玉ねぎ 20 個と大粒のマロン 20 個はこのガル

(肥鶏の料理に添える)
• ひばり2) 10 羽を背側から開いて骨をすべて取り
除き3) 、ファルス・グラタンを詰めて、表面を
色よく焼き、カスロールで火を通す4)
• 鶏のファルスで小さなクネル 10 個
• トリュフのスライス 10 枚
• ソース……トリュフエッセンスを加えたソー
ス・ドゥミグラス
ガルニチュール・ベリー風5)

• ソース……アロールート7) でとろみを付けた、

Garniture à la Banquière

Garniture à la Berrreichonne

(牛、羊肉の大がかりな料理6) に添える)
• 卵の大きさにしたサヴォイキャベツのブレゼ
20 個
• キャベツとともに火を通した塩漬け豚バラ肉の
小さなスライス 10 枚

ニチュールを添える肉の煮汁で火を通す
ブレゼの煮汁
ガルニチュール・ベルニ8)

Garniture à la Berny

(ジビエおよびマリネした牛、羊肉料理9) 用)
• 小さな俵形にしたじゃがいものクロケット・ベ
ルニ10) 10 個
• 空焼きしたタルトレット 10 個にバターを加え
たマロンのピュレをドーム状に詰め、バターで
軽くソテーして艶を出させたトリュフのスライ
スをタルトレットに 1 枚ずつのせる
• 軽く仕上げたソース・ポワヴラード。
ガルニチュール・ブザンソン風11)

Garniture à la Bizontine

(牛、羊の塊肉料理およびトゥルヌドに添える)

エール (p.136)」と定義されている。ソース・バンキエール sauce banquière については「卵料理、鶏料理、牛や羊の副生物(リ
ドヴォーなど)、ヴォロヴァン用。ソース・シュプレーム 2 dL にマデイラ酒 1/2 dL を加え、布で漉す。トリュフのみじん切り
大さじ 2 杯を加えて仕上げる (p.959)」とある。2007 年版の『ラルース・ガストロノミック』でもほぼ同様の内容だが、ソー
ス・バンキエールのレシピはこの版では欠落している。また、20 世紀についても、1950 年に刊行されたレシピ集『フランス料
理技法』(Flammarion) にソース・バンキエールのレシピは見られるが (p.147)、これはモンタニェの『料理大全』
(1929 年)か
らの引用であり、ガルニチュール・バンキエールについては何も出ていない。1952 年のペラプラ『近代料理技術』にも、1953
年のキュルノンスキー編『フランスの料理とワイン』にもこれらへの言及なない。ところが 2018 年現在、インターネットで
検索すると poularde à la banquière「肥鶏 女銀行家風」のような、ここで見てきたものとはかなり内容の違うレシピが見つか
る。
「銀行家風」にしろ「女銀行家風」
「銀行家夫人風」にしろ、銀行家という語には肯定的な「富の象徴」というイメージがあ
りんしょく

2)

3)
4)
5)

6)
7)
8)

9)
10)
11)

ると同時に、「吝 嗇 家」あるいは「カネ貸し」場合によっては「官僚主義的」のようなマイナスイメージが伴なわれ得ること
もまた事実だろうし、銀行家が出席している宴席で「銀行家風」の料理を出す場合にはいろいろな誤解やトラブルの原因とな
る可能性さえあるかも知れない。このことから、『ラルース・ガストロノミック』が初版から 2007 年版までほぼ記述を変えな
かった、つまり誰もこの名称のガルニチュールに手を加えなかった、ということの証左ともなろう。
mauviette(モヴィエット)、ひばりの食材としての名称。生物としては alouette(アルエット)と呼ぶ。なお、オルレアネ地方
の郷土料理に、pithiviers de mauviettes という、脳と鶏のファルスを詰めたひばりを折込みパイ生地で包んで焼いた料理があ
るが、pithiviers(ピティヴィエ)とだけ言う場合は、バターと砂糖、アーモンドパウダーなどを折込みパイ生地で包んで上部
を渦巻模様に装飾したオルレアネ地方発祥の菓子を指すので注意。
désosser(デゾセ)。日本の調理現場でも比較的よく使われる用語。この語に含まれる os は「骨」のこと、dé は「反対、除去」
などを意味する接頭辞、er は動詞であることを示す語尾。したがって、文字どおり「骨を取り除く」の意になる。
en casserole(オンカスロール)カスロール仕立てと解釈も可能。ソース・スミターヌ訳注参照。
berrichon(ne)(ベリション/ベリショーヌ)はフランス中央部にある地方名 Berry の形容詞。ここでは女性形 berrichonne とな
る。山羊乳のチーズで有名。なおフランス史関連の書物ににおいてよく見かける、ベリー公 duc de Berry(デュックドベリー)
という公爵位はフランスの王族(つまりその時の王の近縁者)に与えられた爵位で、その後フランス王となった者も多い。こ
のため、いわゆる「世襲」はされてこなかった。また、中世フランスでもっとも豪華で美しい写本とされる数部の『ベリー公
のいとも豪華なる時祷書』(14 世紀)は当時のベリー公ジャン 1 世が作成させたもの。
ルルヴェ relevé のこと。第二版序文訳注参照。
Allow-root 南米産クズウコンを原料とした良質のでんぷん。現代の日本ではコーンスターチで代用することがほとんど。
ピエール・ド・ベルニ Pierre de Bernis (1715〜1794) のこと。なぜか料理名としては Berny の綴りが一般的だが、個人名なので
もちろん誤り。29 才でアカデミーフランセーズに入った俊才。ポンパドゥール夫人の庇護のもとルイ 15 世からも重用された。
駐ヴェネツィア大使として食卓外交を展開したが、フランス革命後、ローマで客死した。
シュヴルイユ仕立てのこと。ソース・ポワヴラードおよびマリナード参照。
本書の温製オードブルの節に「クロケット・ベルニ」は掲載されていない。野菜料理の章にある「じゃがいも・ベルニ」をア
パレイユとしてクロケットを作ることになる。
Besonçon(ブゾンソン)フランス東部、ブルゴーニュ=フランシュ=コンテ圏の都市。形容詞は通常 bisontin(e)(ビゾンタン/
ビゾンティーヌ)だが、本書のように bizontin(e) と綴ることもある。なお、1980 年代に画期的といわれたフランス語教材
C’est le printemps の第 1 課においてはじめて出てくる地名がブザンソンだった。この教材は会話例のリアリティや題材として
documents authentiques(ドキュモンオトンティック=現実にあるドキュメントすなわち言語を用いたさまざまな書類、看板、
広告など)を積極的に採用したこととともに、アプレ 68(フランスの学生運動および現代思想における転換期のひとつとなっ
た 1968 年の「五月革命」以後に多方面において展開された時代特有の雰囲気)が強く表われているのが特徴だった。同時期の
フランス語教材の傑作とされる(やや保守的な傾向の)通称「カペル」Le français en direct と並び、フランス語教育・教授法
において現在の EU およびフランスで定められ運用されている「外国語としての言語コミュニケーション能力」の概念形成の
先駆けとなった。アプレ 68 的なものは食文化、料理の世界においても、ゴ&ミヨの批評と店の格付けにおける、既存のミシュ
ランのガイドブックのオルタナティヴとしての方向性、ヌーヴェルキュイジーヌ宣言などによく表われている。

92

II.

ガルニチュール

Garnitures

• クルスタード・ポム・デュシェス1) 10 個は提供

• にんじん 250 g と蕪 250 g はスプーンで中をく

色よく焼く。生クリームを加えたカリフラワー
のピュレを詰めてクルスタードの中に絞り袋を
使って詰める
• 半割りにしたガルニチュール用レチュのファル
シ 10 個
• ソース……バターを加えて仕上げたとろみを付
けたジュ

•

直前にドリュール2) を塗り、オーブンに入れて

•
•

ガルニチュール・ブランジェール3)

Garniture à la Boulangère

(羊、乳呑み仔羊、鶏料理に添える)

1. 玉ねぎ 250 g は薄切りにし4) て、バターで色よ
く炒める

2. じゃがいも 750 g は櫛切りか薄切りにする
3. 塩 15 g とこしょう 5 g
• 1〜3 を混ぜ合わせて、このガルニチュールを
添える肉を油を熱したフライパンで表面を焼き
固め5) とともにオーヴンに入れて、一緒に火を
通す
• 鶏の場合は、じゃがいもはオリーブ形に成形
し6) 、小玉ねぎをあらかじめバターでこんがり
焼き色を付けておく。
• ソース……美味しい肉汁(ジュ)少々

ガルニチュール・ブクティエール7)

Garniture à la Bouquetière

(牛、羊の大掛かりな仕立ての料理8) に添える)

•

り抜いて下茹でし、バターで色艶よく炒める9)
小さなじゃがいも 250 g はシャトー10) に成形
する11)
プチポワ12) 250 g と、さいの目に切ったアリコ
ヴェール13) 250 g
カリフラワー 250 g は花束の形状にバラして
おく
以上の材料をそれぞれ加熱調理した後に、塊肉
の周囲に、ブーケ状に、それぞれを離してニュ
アンスが明確になるように盛り付ける。カリフ
ラワーのブーケにはオランデーズソースを薄く
塗ること。
ソース……塊肉を調理した際の肉汁の浮き脂を
取り除き14) 、澄ませたもの

ガルニチュール・ブルジョワーズ15)

Garniture à la Bourgeoise

(牛、羊の塊肉料理に添える)
• にんじん 500 g は、にんにくのような形に成形
して16) 下茹でし、バターで色艶よく炒める17)
• 小玉ねぎ18) 500 g は下茹でした後にバターで色
艶よく炒める
• 塩漬け豚バラ肉19) 125 g はさいの目に切ってバ
ターでこんがり炒める
• このガルニチュールは、塊肉にほぼ火が通った
段階で、鍋の中の肉の周囲に入れてやり、ブレ
ゼの煮汁で火入れを完全にすること

1) ポム・デュシェスをバターを塗ったダリオル型(小さな円筒形の型)に詰めて成形してからイギリス式パン粉衣を付けて油で
揚げ、中をくり抜いてケースにする。詳細は温製オードブルの節参照。

2) 色艶よく焼き上げるために卵黄を溶いたもの、あるいは卵黄に水を加えて溶いたものを dorure(ドリュール)と呼び、それを
塗ることを dorer(ドレ)という動詞で表現する。
3) boulanger/boulangère は「パン屋、パン職人」の意。
4) émincer(エマンセ)。
5) rissoler (リソレ)。
6) tourner(トゥルネ)
7) 花売り娘、の意。
8) ルルヴェ relevé のこと。第二版序文訳注参照。
9) glacer(グラセ)。
10) 長さ 6 cm 程度の細長い樽の形状にすること。両端は切り落すので、ラグビーボール形ではない。
11) いずれも適切に加熱調理するが、この節では細かく説明されていないので、対応する野菜のページを参照すること。
12) petits pois(プティポワ)いわゆるグリンピースのことだが、日本でよく知られているものよりも若どりで小さく、風味も軽や
かで甘みがある。

13) haricots verts さやいんげんのことだが、これも日本のものより若どりに適した品種が好まれる。
14) dégraisser(デグレセ)。
15) bourgeois(e)(ブルジョワ/ブルジョワーズ)。ブルジョワ風の意。中世においては都市に住む貴族ではないある種の特権階級を
意味したが、19 世紀以降は、肉体労働をせずに快適できわめて豊かな生活をおくれる社会階層、の意に変化した。社会が物質
的に、経済的に豊かになるにともない petit bourgeois(プティブルジョワ)なる階層も出現したが、ブルジョワの本義はあく
までも「大金持ち」であり、現代日本語でいうところの「セレブ」に相当すると思っていい。

16) tourner(トゥルネ)。
17) glacer(グラセ)。もともとは「鏡のようにする」ところから「艶を出す」の意となり、野菜の場合はもっぱら下茹でした後に
バターで軽く炒めて艶を出すことをいうが、場合によっては茹でる段階で砂糖を煮含めたりもする。

18) 日本のいわゆる「ペコロス」は黄色系品種が多いが、フランスの小さな玉ねぎはもっぱら白系品種であり、甘さや風味がまっ
たく異なるので注意。

19) 原文 lard de poitrine(ラールドポワトリーヌ)は豚バラ肉のことだが、通常は塩蔵、熟成させたもの、およびそれを冷燻にか
けたものを指す。しばしば「ベーコン」と誤訳されているが、日本語のいわゆるベーコンとは違うので注意。

1) 現在はベルギー中部の州ブラバント Brabant の、の意。なお、この名称のガルニチュールは『ラルース・ガストロノミック』
初版にも掲載されているが、内容がまったく異なる。アンディーヴとじゃがいものピュレ、ホップの若芽を茹でてバターか生
クリームであえたもので構成するという (p.239)。なおブラバントは中世においてブラバント公国として独立した国家であっ

93

ガルニチュール

ガルニチュール・ブラバント風1)

ス参照)であえる、パセリのみじん切りを振り
かける。
• ソース……塊肉の肉汁(ジュ)

バターで蒸し煮した2) 芽キャベツ3) をピュレに
して詰め、ソース・モルネーを塗る
• ポムデュシェスで作った小さな円盤形のクロ
ケット 10 個
• ソース……とろみを付けたジュ
ガルニチュール・ブレオン4)

ガルニチュール・ブリヤサヴァラン7)

Garniture à la Brabançonne
(牛、羊の塊肉の料理に添える)
• 空焼きしたタルトレット 10 個に、下茹でして

Garniture Bréhan
(牛、仔牛の塊肉の料理に添える)
• 小さなアーティチョークの基底部に、そら豆の
ピュレをドーム状に詰める。

• カリフラワーの小房 10 個はソース・オランデー
ズを軽く塗っておく5)

• 小さなじゃがいも 10 個はバターで火を通し、
パセリのみじん切りを振る
• ソース……塊肉をブレゼした際の煮汁をソース
に仕上げる
ガルニチュール・ブルターニュ風

Garniture à la Bretonne
(羊料理に添える)

• 茹でた白いんげん豆またはフラジョレ6) 1 L を
ブルターニュ風ソース(ブラウン系の派生ソー

Garniture Bréhan

(鳥類のジビエ料理に添える)

• 空焼きしたごく小さなタルトレットに、トリュ
フを加えたベカスのスフレ8) のアパレイユをピ
ラミッド形に盛り、提供直前にやや低温のオー
ブンで焦がさないように火を通す。
• 大きなトリュフのスライス。
• ソース……このガルニチュールを添えるジビエ
のフュメで作った上等なソース・ドゥミグラス

ガルニチュール・ブリストル9)

Garniture Bristol

(牛、羊の塊肉料理に添える)

• アプリコットの形状、大きさの米のクロケッ
ト10) 10 個。
• 茹でたフラジョレ11) 1/2 L をヴルテであえる。
• くるみ大の丸い小さなじゃがいも 20 個はバ
ターで火を通し、溶かしたグラスドヴィアンド
を塗る。
• 塊肉をブレゼした煮汁をソースとして仕上
げる。

た。ベルギー王国成立後は、儀礼称号としてベルギー王家の法定推定相続人にブラバント公の称号が授けられるようになった。
なお、エスコフィエによるピーチメルバ創案のきっかけとなったといわれるワーグナーの楽劇『ローエングリン』においてネ
リー・メルバ Nellie Melba(1861〜1931)が演じていたエルザ・フォン・ブラバントはブラバント公国の公女という設定。
2) étuver(エチュヴェ)。
3) 芽キャベツは choux de Bruxelles(シュドブリュクセル、ブリュッセルのキャベツの意)と呼ぶ。
4) このガルニチュールについては、初版から掲載されているにもかかわらず、Bréhan がブルターニュ地方の町の名であることし
かわかっていない。ファーヴルにもデュボワ、ベルナール『古典料理』にも言及は見られない。いささか疑問なのは、Bréhan
の住人は bréhannais という語で表わすことから、形容詞も同様であり、garniture à la bréhannaise(ガルニチュールアラブレ
アネーズ)の名称でもおかしくないのだが、第二版および第三版では Garniture à la Bréhan となっており、まるで人名のよう
に扱われていることだろう。なお、ブルターニュ地方はアーティチョークの生産で有名だが旬は晩春から初夏にかけてであり、
このガルニチュールの構成要素に初版はトリュフのスライスをそら豆のピュレを詰めたアーティチョークの上にのせる指示が
ある。カリフラワーも基本的には冬の野菜である。それに対してそら豆は乾物であれば 1 年中、フレッシュのものはやはり晩
春から初夏が旬である。レシピには乾物を使うかフレッシュを使うかの指示がないが、
「季節感」を演出するためには、フレッ
シュのそら豆を用いたいところだろう。
5) 茹でてよく水気をきっておくこと
6) flageolet 白いんげん豆の一種で、通常のものより小粒。
7) ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン(Jean Anthelme Brillat-Savarin)(1755〜1826)。法律家であり、弁護士、一時はア
メリカに亡命し、のちに裁判官として活躍したが、とりわけ、はじめ匿名で出版した『美味礼讃』Physiologie du Goût (1825
年、タイトルを直訳すれば「味覚の生理学」
)で知られる。この著作は食をめぐる考察からなる随筆集だが、必ずしも生真面目
な哲学的記述ばかりではない。むしろ「食をめぐる知的な面白読み物」ともいうべき内容であり、のちに「生理学もの」とい
うジャンルが流行する嚆矢となった。これにインスパイアされたバルザックが『結婚の生理学』(1829 年)を出版し文筆家バ
ルザックとして最初のヒット作となった。その後に続けとばかりに「○○の生理学」と題した書物が 19 世紀中頃まで数多く出
版された。その多くはほとんど文学的にも省みられることのないもので、
「丸わかり○○」あるいは「○○のすべて」的なもの
ばかりだった。このため、「生理学もの」のうちで文学史において一般的に価値を認められている作品は『美味礼讃』および
『結婚の生理学』くらいしかない。
8) 現行版の原書でベカスのスフレの項を見ると、ベカス・ファヴァールと同じ、とある。なお、ファヴァール Favart というのは
劇場の名称で、オペラコミック座が 19 世紀以来本拠地にしていたが、2 度の火災に遭い、その度に再建された。19 世紀にはイ
タリアオペラを主な演目とする「イタリア座」
(テアトル・イタリアン)が間借りのようなかたちでファヴァール劇場を本拠に
していた時期もある。現在のファヴァール劇場は 1898 年に再建され、2005 年以降国立となったオペラコミック座の本拠地と
なっている。
9) Bristol はイギリス西部の港湾都市。このガルニチュールの名称となった由来などは不明。
10) 本書の「米のクロケット」はアントルメすなわちデザートとして砂糖を加えて甘くつくるレシピであり、そのとおりにすべき
かどうかは一考の余地がある。
11) ガルニチュール・ブルターニュ風訳注参照。

94
ガルニチュール・ブリュッセル風1)

Garniture à la Bruxelloise

(牛、羊の塊肉料理に添える)
• アンディーヴ 10 個は白さを保つようにしてブ
レゼする。
• シャトー2) に成形したじゃがいも 10 個。
• 芽キャベツ 500g は下茹でした後バターで蒸し
煮する3) 。
• ソース……やや薄めのマデイラ酒風味のソー
ス・ドゥミグラス。
ガルニチュール・カンカル風4)

Garniture à la Cancalaise

(魚料理に添える)
• 牡蠣 20 個の剥き身は、沸騰しない程度の温度
の湯で火を通し、周囲をきれいに掃除する。殻
を剥いたクルヴェットの尾 125g
• ノルマンディ風ソース
ガルニチュール・カルディナル5)

Garniture à la Cardinal
(魚料理に添える)

• 立派なオマールの尾の身をやや斜めに厚さ 1cm
程度にスライスしたもの 10 枚。
• 真黒なトリュフのスライス 10 枚。
• さいの目に切ったオマールの身 60 g とトリュフ
50 g。

II.

ガルニチュール

Garnitures

• ソース・カルディナル
ガルニチュール・カスティリア風6)

Garniture à la Castillane

(トゥルヌド、ノワゼットに添える)
• ポム・デュシェスで作ったた小さなケースにド
リュールを塗ってオーブンで焼き色を付ける。
そこに、軽くにんにく風味を効かせたトマトの
フォンデュを詰める。
• 皿の周囲に、輪切りにして塩こしょうし、小麦
粉をまぶして油で揚げた玉ねぎを飾る。
• トマト風味を加えたデグラセした肉汁(ジュ)7)

ガルニチュール・シャンボール8)

Garniture Chambord

(魚のブレゼの大掛かりな仕立てに添える9) )
• トリュフを加えてスプーンで成形した魚のファ
ルスで作ったクネル 10 個。
• 長卵形の大きな、表面に装飾を施したクネル
4 個。
• 渦巻模様を付けた10) 小さなマッシュルーム 200
g。
• 鯉の白子を 1 cm 程度の厚さにスライスして塩
こしょうし、小麦粉をまぶしてソテーしたもの
10 枚。
• オリーブ形に成形した11) トリュフ 200 g。

1) 芽キャベツ choux de Bruxelles とアンディーヴ endive はいずれもベルギーで品種改良、開発された野菜であり、これらを組み
合わせてブリュッセル風とするのはいささか安易なようにも思われる。

2) ガルニチュール・ブクティエール訳注参照。
3) étuver (エチュヴェ)。下茹での段階で 2/3〜3/4 くらいまで火を通しておくこと。サヴォイキャベツもそうだが、下茹でにはアク

4)

5)

6)
7)
8)

9)

10)
11)
1)
2)

を除去する意味もあり、エチュヴェの段階で変色してしまうことがあるため、アクを充分に取り除いてから比較的短時間でエ
チュヴェするのが望ましい。
ブルターニュ地方の地名 Cancale (カンカール)の形容詞 cancalais(e)(カンカレ/カンカレーズ)。牡蠣の産地として知られ、
cancale という牡蠣の品種もある。17 世紀、ルイ 14 世は、ヴェルサイユ宮殿へカンカル産カキを取り寄せていたといわれてい
る。なお、ブルターニュ地方とはいえノルマンディ地方に非常に近い位置にあるため、牡蠣を中心にしたこのガルニチュール
にブルターニュの地名を冠し、ノルマンディ風ソースを合わせるのは、一種の洒落とも考えられなくもないが、ブルターニュ
が言語文化的にフランスにおいてやや異質な歴史を持っていることを考慮すると、無神経な命名ともとられかねない。
カトリック教会における枢機卿のこと。枢機卿の衣が真紅であることからオマールを用いた料理に付けられた名称とも、オ
マールが「海の枢機卿」と呼ばれるから、ともいわれている。なお、à la + 男性名詞の形態は、固有名詞の場合および、対応する
女性名詞がない場合にも成立する。これはà la manière de + 名詞の manière de が省略されたものと解釈される。さらに、料理
名において à la も省略される傾向にあるため、garuniture Cardinal あるいは garniture cardinal という表現も料理名においては
正しいとされている。
Castilla(カスティーリャ、カスティージャ)はスペイン中部の地域で、中世はカスティリア王国だった。
「カステラ」の語源と
もいわれる。
トゥルヌド、ノワゼットをフライパンでソテーし、デグラセしてトマトピュレまたは本文にあるトマトのフォンデュを加えて
ソースにするということ。
シャンボールとは 16 世紀、ロワール河の近くに建てられた瀟洒な城の名。このガルニチュールを添えた場合、料理名にシャン
ボールが冠される。鯉、サーモンが代表的だが、とりわけ 19 世紀は鯉が好まれ、カレーム『19 世紀フランス料理』第 2 巻では
鯉のシャンボールだけで近代風、ロヤイヤル、レジャンスの 3 種の仕立てについて詳述されている (pp.181-189)。なお、このガ
ルニチュールの構成も時代や料理人によって多少の変化があり、
『ラルース・ガストロノミック』初版では、魚でつくった大小
のクネル、マッシュルーム、舌びらめのフィレ、バターでソテーした白子、オリーヴ形に成形したトリュフ、クールブイヨン
で火を通したエクルヴィス、揚げたクルトン、となっている (p.516)。
ルルヴェのこと。第二版序文訳注参照。19 世紀前半くらいまではカトリックの習慣としての「小斉」が比較的厳格に守られて
おり、料理人たちは四旬節やその他の小斉の日の献立としていかに豪華で美味な魚料理を提供するかに腐心していたのが、17
〜18 世紀の料理書を読むとよくわかる。カレームの著書にも魚の大掛かりな仕立てのレシピが数多く収められている。
原文 canneler(カヌレ)。この場合は tourner(トゥルネ)とほぼ同義だが、凹凸の刻み模様を付けた、の意。
tourner(トゥルネ)。原義は「回す」。野菜などを包丁ではなく材料を回すようにして皮を剥いたり成形するところから。
ecrevisse ヨーロッパザリガニ。
court-bouillon(クールブイヨン)。court は少量の意。つまり、原則としてはできるだけ少量の液体を煮汁として魚介類その他
を加熱調理するのに用いる。また、とりわけ魚介類の場合は沸騰しない程度の温度で火を通す(pocher ポシェする)のが原則。

95

ガルニチュール

• エクルヴィス1) 6 尾はクールブイヨン2) で火を
通し、はさみを背に回すように成形する3) (し
なくてもよい)
。

• 食パンを鶏のとさかの形に切りバターで揚げた
クルトン 6 枚。
• 魚をブレゼした際の煮汁をベースにしたソー
ス。

ガルニチュール・シャトレーヌ4)

Garniture Châtelaine

(牛、羊の塊肉や鶏料理に添える)

• アーティチョークの基底部 10 個に、固く作っ
たスビーズを詰める。

煮汁を加えたソース・ドゥミグラス

ガルニチュール・ショワジー7)

Garniture Choisy

(トゥルヌドおよびノワゼットに添える)
• 半割りにしたレチュのブレゼ 10 個。
• シャトーに成形した小さなじゃがいも 20 個。
• ソース……バターを加えたグラスドビアンド

ガルニチュール・ショロン8)

Garniture Choron

(トゥルヌドおよびノワゼットに添える)

• 中位か小さいアーティチョークの基底部をにバ

• 殻を剥いて塊肉をブレゼした煮汁で蒸し煮した
マロン 30 個。
• じゃがいものノワゼット 300 g。
• ブレゼした煮汁を加えたソース・マデール

ターであえたアスパラガスの穂先を詰める。ア
スパラガスがなければ、バターであえた小粒の
プチポワでもいい。
• じゃがいものノワゼット 30 個。
• トマト入りソース・ベアルネーズ。

ガルニチュール・シポラタ5)

ガルニチュール・クラマール9)

Garniture à la Chipolata

(牛、羊の塊肉および鶏料理に添える)

• 小玉ねぎ 20 個は下茹でしてバターで色艶よく

炒める6) 。
• シポラタソーセージ 10 本。
コンソメで煮たマロン 10 個。
塩漬け豚バラ肉 125 g はさいの目に切って、強
火でこんがり炒める。
• オリーブ形に成形して下茹でし、バターで色艶
よく炒めたにんじん 20 個(なくてもよい)
。
• ソース……このガルニチュールを添える料理の

Garniture à la Clamart

(牛、羊の塊肉の料理に添える)

• プチポワ・アラフランセーズに細かく刻んだレ
チュの葉を加えてバターであえ、空焼きしたタ
ルトレット 10 個に詰める。
• じゃがいものマケールで作った円形の小さな台
の上に、タルトレットをひとつずつのせる。
• ソース……とろみを付けたジュ10)

ガルニチュール・コンポート11)

Garniture de Compote

(鳩およびプレ・ド・グラン12) に添える)

たんなる水、塩水だけでなく、ワインや香味野菜、香辛料などを加えて風味付け(および場合によっては臭みのマスキング効
果)も兼ねて事前に用意しておくこともある。ただしこれらはあくまでも原則論にすぎない。詳細は魚料理のクールブイヨン
およびエクルヴィス・ナージュ参照のこと。なお、エクルヴィスの場合は上記の「少量」にあまりこだわらず、後ではさみを
背に回しやすくなるように鍋に入れて加熱すればいいだろう。エクルヴィスはジストマ(寄生虫)のリスクがあるためしっか
り加熱すること。またエクルヴィスは腕が取れやすいが、その場合でも可食部である尾の身には問題がないので装飾以外の利
用はもちろん可能であり、装飾用としてはロス分を見込んで用意しておくのがいいだろう。
3) trousser(トゥルセ)。
4) châtelain(e)(シャトラン/シャトレーヌ)。城館の主の意。城館に住む者を思わせる豪華な、の意で料理名として使われるよう
になったようだ。
5) もとはイタリアで玉ねぎとソーセージを煮込んだ料理(cipollata チポッラータ < cipolla チポッラ=玉ねぎ)を意味していたが、
フランスに伝わった際に、語本来の意味に含まれていた玉ねぎが脱落して、羊腸に豚挽肉を詰めた小さなソーセージをこう呼
ぶようになったといわれている。
6) glacer(グラセ)。本文下のにんじんも同様の指示。
7) パリのセーヌ川上流(=東側)約 12 km のところにある Choisy-le-Roi の地名に由来。17 世紀にショワジー城が建てられ、18
世紀にこれを相続したルイ 15 世が狩りの際に使う邸宅として利用し、現在の名称ショワジールロワになった。その後、ポンパ
ドゥール夫人がここに移り住み、豪華な夕食会がしばしば開かれたという。ショワジーの名称はレチュを用いた料理に付けら
れることが多い。
8) 19 世紀にあったパリの有名レストラン、ヴォワザンの料理長の名。ソース・ショロンも参照。
9) パリ郊外の町の名。プチポワを使った料理にこの名が冠されるものがいくつかある。
10) このガルニチュールを添える料理がポワレ(ソース・ビガラード訳注および肉料理参照)の場合には、鍋に残った香味野菜(マ
ティニョン)にフォン少量を注いで風味を引き出し、それにコーンスターチでとろみを付けることになるだろう。
11) compote(コンポート)。果物のシロップ煮のイメージが強いが、肉や野菜をばらばらになるまで煮込んだ料理のことも指す。
12) poulet de grain 鶏の大きさや飼育方法による区別についてはソース・ショフロワ・ヴェールプレ参照。
1) lard de poitrine(ラールドポワトリーヌ)、lard maigre(ラールメーグル)あるいは原文のように合わせて lard de poitrine maigre
(ラールドポワトリーヌメーグル)とも呼ぶが、塩漬けにして熟成させた豚バラ肉のこと。通常、lard だけの場合は lard gras
(ラールグラ)すなわち豚背脂のことを意味するので注意。
2) lardon(ラルドン)。たんに lardon というだけで、この豚バラ肉の塩漬けを拍子木状に切ったものを意味することはごく一般的
で、塩漬け後に冷燻にかけた lard de poitrine fumé を拍子木に切ったものは lardon fumé(ラルドンフュメ)と呼ばれる。
3) rissoler(リソレ)油脂を熱して、素材の表面をこんがり焼くこと。語源は中世からある rissole(リソール)という円形または
半円形、塩味または甘い焼き菓子(揚げ菓子)— つまり時代や地域とともに非常にバリエーションに富むものだが、こんがり

96
• 塩漬け豚バラ肉1) 250 は拍子木2) に切り、下茹で
してからバターでこんがり炒める3) 。

• 小玉ねぎ 300 g は下茹でしてバターで色艶よく

炒める4) 。
• 小さなマッシュルーム 300 g は生のまま 2 つに
切り、バターで炒める。
• これらは鳩とともに火入れを仕上げ、供する際
には鳩を覆うようにガルニチュールを盛る。

ガルニチュール・コンティ5)

Garniture Conti

(牛、羊の塊肉のブレゼに添える)
• レンズ豆6) のピュレ 750 g。
• 脂身のほとんどない豚バラ肉の塩漬け 250 g は
長方形に切って、レンズ豆を煮る際に一緒に煮
ておく。
• ブレゼの煮汁をソースとして仕上げて添える。

ガルニチュール・コモドール7)

Garniture à la Commodore

(魚の大掛かりな仕立てに添える)
• エクルヴィスの尾の身を入れた小さなグラタン
皿 10 個。
• メルラン8) のファルスにエクルヴィスバターを
加え、スプーンで成形したクネル 10 個。
• 大きなムール貝のヴィルロワ 10 個。
• 仕上げにエクルヴィスバターを加えたノルマン
ディ風ソース。

II.

ガルニチュール

Garnitures

ガルニチュール・キュシー9)

Garniture Cussy

(トゥルヌド、ノワゼット、鶏料理に添える)

• マロンのピュレを詰めてグリル焼きした大きな
マッシュルーム 10 個。
• 完全に球形に成形し、マデイラ酒風味で火を通
した小さなトリュフ 10 個。
• 大きな雄鶏のロニョン10) 20 個。
• ソース・マデール
ガルニチュール・ドモン11)

Garniture Daumont
(魚料理に添える)

• バターで鍋に蓋をして弱火で火を通した12) マッ
シュルーム 10 個に、それぞれエクルヴィスの
尾の身を半分に切ったもの 6 枚ずつ添える。
• 生クリーム入り魚のファルスを小さな球形に
し、トリュフで装飾を施したクネル 10 個。
• 厚さ 1cm 程にスライスした13) 白子 10 枚はイギ
リス式パン粉衣14) を付けて油で揚げる。
• ソース・ナンチュア

ガルニチュール・ドフィーヌ15)

Garniture à la Dauphine

(牛、羊の塊肉の料理に添える)

• じゃがいものドフィーヌをアパレイユにしたク
ロケット 20 個。大きな塊肉料理に添える場合
はコルクの栓の形状に、トゥルヌドやノワゼッ
トに添えるときは平たい円盤の形にする。

とした色合いに仕上げるのは共通している。

4) glacer(グラセ)。
5) ブルボン王家のひとつ Condé(コンデ)家の傍流(いわゆる分家筋) で、代々のコンティ大公 le prince de Conti(ルプランスド
コンティ)がいる。もとはピカルディ地方アミアンの近くにある Conty というところを領地にしていたのが家名の起源。コン
ティの名は本書でも、レンズ豆のポタージュ、ピュレ・コンティが収められている。このガルニチュールは 18 世紀のコンティ
大公ルイ・フランソワ・ド・ブルボン(1727〜1776)の料理人が考案したと伝えられているが、たとえ事実であったとしても、
あまりにシンプルなものなので、ガルニチュールとして供することを考えた、というのがせいぜいのところか。

6) lentille(ロンティーユ)。西アジア原産。レンズ豆はおそらく農耕がはじまったごく初期からの作物で、エジプトや地中海沿岸

7)
8)
9)
10)
11)
12)
13)
14)

15)
1)

で多く栽培されていた。温暖な気候に向いた作物であり、その意味ではフランス北部に縁があるコンティ大公の名はふさわし
くないかも知れない。旧約聖書の「創世記」にも出てくる。アブラハムの息子イサクの双子のうちのひとりエサウはすぐれた
狩人に、もうひとりのヤコブは「穏かな人で天幕の周りで働くのを常として」いた。
(中略)ある日のこと、ヤコブが煮物をし
ていると、エサウが疲れきって野原から帰ってきた。エサウはヤコブに言った。『お願いだ、その赤いもの(アドム)、そこの
赤いものを食べさせてほしい。わたしは疲れきっているんだ。
』
(中略)エサウは誓い、長子の権利をヤコブに譲ってしまった。
ヤコブはエサウにパンとレンズ豆の煮物を与えた。(中略)こうしてエサウは長子の権利を軽んじた。(「創世記」25-27〜34、
新共同訳『聖書』)」。これを踏まえると、Condé すなわちコンデ大公の名を冠した料理、とりわけポタージュピュレ・コンデ
が赤いんげん豆のポタージュであることと、レンズ豆を主素材とした「ガルニチュール・コンティ」およびポタージュ「ピュ
レ・コンティ」の関係には考えさせられるところがある。
もとは英語 commodore であり、イギリスでは艦隊司令官、アメリカでは准将の意。
merlan(メルロン)タラ科の海水魚。
キュシー侯爵(1767〜1841)。基本ソース 概説訳注参照。
rognon 仔牛などでは腎臓のこと。鶏の場合は rognon blanc(ロニョンブロン)とも呼び、精巣のこと。この場合は後者。もち
ろんきちんと加熱調理したものをガルニチュールの構成要素とする。
ドモン公爵家 duché d’Aumon(デュシェドモン)にちなんだ名称をいわれている。
étuver au beurre(エチュヴェオブール)
escalope(エスカロップ)肉や魚を 1〜2 cm の厚さで、筋腺維と直角にスライスした円形または楕円形にスライスしたもの。
paner à l’anglaise(パネアロングレーズ)。素材に小麦粉をまぶしてから、卵液に浸し、細かいパン粉で衣を付けること。日本
でフライなどをつくる際に一般的な方法とよく似ているが、日本では粗いパン粉が好まれるのに対して、フランスやイギリス
では細かいパン粉を使うのが一般的。
à la Dauphine(アラドフィーヌ)王太子妃風、の意。この料理名には由来や理由がないことがほとんど。あえていえば「豪華」
であるという程度だが、存外、簡素な仕立ての料理にも付けられることがある。
dieppois(e)(ディエポワ/ディエポワーズ)< Dieppe(ディエープ)ノルマンディ地方の港町の名。

97

ガルニチュール

• マデイラ酒風味のソース・ドゥミグラス。
ガルニチュール・ディエープ風

1)

Garniture à la Dieppoise
(魚料理に添える)

• 殻を剥いたクルヴェット2) の尾の身 100g。
• 3/4 L(約 30 個)のムール貝は白ワインを加えた
湯で沸騰させない程度の温度で火を通し3) 、周
囲をきれいに掃除する4) 。
• このガルニチュールを添える魚の煮汁を煮詰め
て加えた白ワインソース。

ガルニチュール・ドリア5)

Garniture Doria

(魚料理に添える)
• オリーブ形に剥いたきゅうり6) 30 個をバターで
蒸し煮する7) 。
• 表皮を剥いて種を取り除いたレモンのスライス
を魚の上に並べる。魚はムニエルにしたもの。

ガルニチュール・デュバリー8)

Garniture Dubarry

2)
3)
4)
5)

(牛、羊の塊肉やノワゼット、トゥルヌドに添
える)
• 小さく分けたカリフラワーの花房を小さなボウ
ルに詰め半球形にまとめて裏返しソース・モル
ネーで覆ったもの 10 個。おろした9) チーズを振
りかけて高温のオーブンでこんがり焼く10) 。
• じゃがいものフォンダント 10 個。
• 塊肉をブレゼあるいはポワレした際のフォン、
もしくはノワゼットやトゥルヌドをソテした後
にデグラセしてソースに仕上げる。

ガルニチュール・デュシェス11)

Garniture à la Duchesse

(牛、羊の塊肉の料理やノワゼット、トゥルヌ
ドに添える)
• じゃがいものデュシェスを舟形または円盤状か
ブリオシュ型に詰めて成形し、溶き卵12) を塗っ
て、提供直前にオーブンでこんがり焼いたもの
20 個。

小海老。小さめの crevette grise(クルヴェットグリーズ)とやや大きめの crevette rose(クルヴェットローズ)が代表的。
pocher(ポシェ)
ébarber(エバルベ)貝類の身の周囲をきれいにすること。帆立貝の場合は「ひもを取る」ともいう。
原書現行版では Dorla となっているが初版〜第三版は Doria。19 世紀パリのカフェ・アングレの顧客として知られていた名家
ドリアの名を冠したといわれている。このドリア家は 12 世紀ジェノヴァの de Auria(ラテン語の filiis Auriae すなわちアウリ
アの子孫の意)から発する由緒ある家系として有名。なお、日本の洋食のドリアは 1930 年頃横浜ホテルニューグランド総料

理長サリー・ワイルが発案したものといわれており、上記のドリア家とはまったく関係がない。また古代ギリシア時代の民族
ドーリア人とも関係がない。ちなみに、バルザックの小説『幻滅』におなじ発音の名の Dauriat という登場人物がいる。
6) concombre(コンコンブル)日本で一般的なきゅうりと品種系統も異なるものが多く、サイズも太さ 4〜5 cm、長さ 30〜45 cm
で収穫する(品種によって異なる)。青臭さがなく、加熱調理することが多い。
7) étuver(エチュヴェ)。
8) Madame du Barry(マダムデュバリー)デュバリー夫人(1743〜1793)のこと。ルイ 15 世の公妾であり、フランス革命により
断頭台に送られ命を落したことで知られる。もとはシャンパーニュ地方の貧しい家庭の生まれ。パリに出てのち「お針子」な
どの仕事や娼婦をしていたが、デュ・バリー子爵に囲われ、いわゆる demi-mondaine(ドゥミモンデーヌ)、courtisane(クル
ティザーヌ)すなわち高等娼婦として知られるようになる。その後、ポンパドゥール夫人を亡くしたルイ 15 世が彼女を妾にす
ることにし、形式上、デュ・バリー子爵の弟と結婚したことにして、正式な社交界デビューを果たした。フランス史において
「女性」であることを最大限利用して社会的にのしあがった典型例のひとつ。フランス革命のさなか、捕えられて断頭台へ連れ
ていかれる際に、ほとんどの貴族の女性が取り乱さず凛として死に臨んだのに対し、デュバリー夫人ただひとりだけが狂乱し
泣き叫んで命乞いした、という逸話が残っている。ただし、それはロベスピエールによる恐怖政治への警鐘になり得たという
見解も少なくない。
9) râper(ラペ)
10) gratiner(グラティネ)。また、原文 moulés en boules を文字通りに読むと「完全な球形」にするようにも解釈出来なくはない
が、そのためには強力な「つなぎ」が必要になる。ソース・モルネー以外に「つなぎ」の役割を果たすものの指定がないため、
これでは球形を維持する「つなぎ」として熱に弱過ぎるだろう。ここはカリフラワーのグラタンにあるように moulé dans un
bol「ボウルに詰める」と同様と解釈していいと思われる。。
11) duc(デュック=公爵)、duchesse(デュシェス=公爵夫人)。ここではたんに、じゃがいものデュシェスを用いるからこの名称に
なっているが、デュシェスそれ自体にも料理名としての由来や根拠はほとんどない。
12) dorer(ドレ)< dorure(ドリュール)焼いた際に艶を出すために塗る溶き卵。水や牛乳などを混ぜることもある。
1) 『愛の妙薬』や『ランメルモールのルチア』で知られる作曲家ガエタノ・ドニゼッティ(1797〜1848)のグランドオペラ La
Favorite (1840 年初演)にあやかって付けられた名称。グランドオペラ(grand opéra グロントペラ、複数形 grands opéras グ
ロンゾペラ)とは 19 世紀前半から中葉にかけて、パリのオペラ座において、豪華な舞台装置と派手な演出、大編成のオーケ
ストラ、歴史的題材などをテーマとしたわかりやすい悲劇的筋書きなどを特徴としたオペラ作品の様式のこと。ジャコモ・マ
イアベーア『悪魔ロベール』(1831 年)や『ユグノー教徒』(1836 年)などが代表的。なお、ロッシーニはこの様式が流行る
前のオペラ作曲家と位置付けられていることが多いが、『ウィリアム・テル』(1829 年。フランス語原題 Guillaume Tell ギヨー
ム・テル)あるいはそれに先立つ 1827 年の『モーセとファラオン』をこのジャンルの嚆矢と見なす場合もある。その他の代
表的なグランドオペラの作曲家にダニエル=フランソワ・オーベール (1782〜1871) やジャック=フロマンタル・アレヴィ(1799
〜1862)がいる。ドニゼッティのこの作品もロッシーニやマイアベーアの諸作品同様、フランス語の台本、歌詞であり、原題
もフランス語で La Favorite (ラファヴォリット)だが、どういうわけか、こんにちの日本ではイタリア語式に直した『ラファ
ヴォリータ』と呼ばれることが多いためにここではそれに合わせた。なおこのオペラのリブレット(台本、歌詞)はアルフォ
ンス・ロワイエとギュスターヴ・ヴァエズによるものだが、18 世紀バキュラール・ダルノー(1718〜1805)の戯曲『不幸な
恋人たち』を原作としている。さらにいえば、バキュラール・ダルノーの戯曲もまた、クロディーヌ・ゲラン・ド・トンサン

98

II.

ガルニチュール

Garnitures

• ソース・マデール

ガルニチュール・フェルミエール3)

ガルニチュール・ラファヴォリータ1)

(鶏料理に添える)
• にんじん 150 g と蕪 150 g は厚さ 1 mm 程度、
長さ 1 cm 程度の四角形に切る4) 。
• 玉ねぎ 50 g とセロリ 50 g も同様に切る。
• これらを鍋に入れてバターと、塩 3g、粉砂糖 5
g を加えて蓋をして弱火で軽く蒸し煮する5) 。
• 野菜を鶏の周囲に盛り、野菜の火入れを仕上
げる6) 。
ガルニチュール・フィナンシエール7)

Garniture à la Favorite

(ノワゼット、トゥルヌドに添える)
• 小さめのフォワグラを厚さ 1 cm 程にスライ
ス2) し、塩こしょうしてから小麦粉をまぶして
バターでソテーしたもの 10 枚。
• 大きなトリュフのスライスをソテーしたフォラ
グラに 1 枚ずつのせる。
• アスパラガスの穂先を束にしたもの。
• ソース……とろみを付けたジュ。

Garniture à la Fernière

Garniture à la Financière

(1682〜1749)の小説『コマンジュ伯爵の手記』を翻案したもの。『ロメオとジュリエット』の物語のバリエーションのひとつ
ともいえるこの小説は 18 世紀に大きな反響を呼び、多くの小説、戯曲に影響を与えた。ダルノーの戯曲はその代表例。
2) éscalope(エスカロップ)。
3) 日本語にすれば「農場主風」。野菜を厚さ 1 mm くらい、長さ 1 cm 程度の四角形に切ることを détailler en paysanne(デタイエ
オンペイザーヌ)というが、その paysanne とは paysan(ペイゾン=農民)の女性形であり、このガルニチュールでは野菜をす
べてそのように切るところにかけての名称。
4) 原文 émincer en paysanne(エマンセオンペイザーヌ)。ペイザーヌに切る場合、動詞には émincer 薄くスライスする、も使わ
れる。
5) étuver(エチュヴェ)。
6) このガルニチュールは鶏のソテー・フェルミエールに添えるという前提がある。表面に焼き色を付けた鶏を、あらかじめ軽く
蒸し煮しておいたこのガルニチュール・フェルミエールとともに陶製の鍋に入れて、さいの目に切ったハムを加え、蓋をして
オーブンに入れて鶏と野菜の火入れを仕上げることになる。
7) 徴税官風の意。名称について詳しくはソース・フィナンシエール訳注参照のこと。なお、カレームは『19 世紀フランス料理』で、
多少の違いはあるが、これらの具材とソースを合わせることで「ラグー・フィナンシエール」と呼んでいる (t.3, pp.146-148)。
これはつまり、ソース・フィナンシエールの訳注でも述べたように、もともとはガルニチュールとソースが別々のものではな
く、一体化したものとして調理されていたことを示唆している。実際、このフィナンシエールという料理名の初出と思われる
1755 年ムノン『宮廷の晩餐』第 2 巻「肥鶏・フィナンシエール」および第 3 巻「鯉・フィナンシエール」は 19 世紀のものと
内容、素材は違えどラグーとして扱われている。前者は肥鶏を掃除して中抜きした後、背から開いて骨を取り除き、大きなト
リュフ 4 個とフォワグラとマッシュルーム、おろした豚背脂、卵黄、粒こしょう、バジルの粉末を混ぜて詰める。これを豚背
脂のシートで包んで鍋に入れ、液体は注がずに熱い灰の上に鍋を置く。加熱していると肉汁などが出てくる。そこにビガラー
ド(南フランスのビターオレンジ)の搾り汁と塩、こしょうで調味する (p.280)。後者は大きな鯉を掃除し、舌を残すようにし
てエラは取り除く。片側の包丁を入れていない面の皮を剥がし、細かく刻んだ豚背脂を表面に刺す。鯉の中に詰めるラグーを
作る。仔牛胸腺肉、トリュフ、フォワグラ、マッシュルームを鍋にバター 1 片とともに入れ、パセリ、シブール、にんにく、ク
ローブ、バジルのブーケガルニを加える。鍋を火にかけて、小麦粉を振りかけ、シャンパーニュをグラス 2 杯注ぐ。塩こしょ
うで調味し、具材に火を通す。浮き脂を取り除き、冷めたら鯉の腹に詰め、ラグーが出てこないようしっかり鯉の腹を縫う。
鯉の大きさにぴったりの魚用鍋に、ハムのスライスとたっぷりの仔牛腿肉のスライスを敷き、その上に鯉をのせる。豚背脂の
シートで多い、玉ねぎのスライス、根菜の皮、パセリ、シブール、にんにく、クローブ、タイム、ローリエの葉、バルジのブー
ケガルニを入れる。中火にかけて汗をかかせるイメージで少し火を通し、それから上等のブイヨンとシャンパーニュを同量ず
つ、鯉が液体に浸るまで注ぐ。塩こしょう。弱火にかける。火が通ったら鍋から鯉を取り出して水気をきる。縫った糸を取り
除き、仔牛のグラスを塗って艶を出す。周囲にはお好みでエクルヴィスやまるごとのトリュフ、大きな鶏のとさか、鶏の胸肉、
ペルドロー、こんがり焼いた鳩などをセンスよく配する。ソース・エスパニョルを添えて供する (pp.43-44)。その後、19 世紀
になるとヴィアール『帝国料理の本』1806 年において「鳩・フィナンシエール」のレシピが掲載される。概要は、鳩 6 羽をバ
ター、塩こしょう、レモン果汁を入れた鍋でさっと表面を色付けないように焼き固めたら、豚背脂で包んで鍋に入れ、ポワル
(ここではソースの一種と考えていい)を注ぎ、柔らかく火を通す。提供直前に水気をきり、皿の周囲に鳩を配置する。その中
央に雄鶏のとさかとロニョン、フォワグラ、トリュフのラグーを流し入れる (p.332)。残念ながらヴィアールの 1806、1807 年
版は不完全なもののため、このラグーのレシピそのものは 1820 の第 10 版でようやく掲載に至る。概要は、マッシュルーム大
24 個、ボール形にしたトリュフ 24 個は辛口のマデイラ酒 1/2 瓶とともに鍋に入れ、唐辛子 2 本、トマト少々、仔牛のグラス 1
オンスを加えて火にかけてほとんどシロップ状になるまで煮詰める。それからソース・エスパニョルをレードル 4 杯、仔牛の
ブロンド(ソース)スプーン 2 杯を注いでよく混ぜる。沸騰させたら火の弱い場所に移して浮き脂を取り除き、煮詰めていく。
このソースを布で漉し、きれいな鍋にマッシュルームとトリュフを移し入れて漉したソースを注ぐ。ここに雄鶏のとさかとロ
ニョン 24 個ずつ、スプーンで成形したクネル 24 個、仔羊または仔牛の胸腺肉のスライス 24 枚を入れる (p.67)。この時点つま
り 1820 年頃には、カレームが記した「ラグー・フィナンシエール」とほぼ同じ内容になっていることが注目されよう。カレー
ムの「ラグー・フィナンシエール」は、トリュフ 500 g を円く成形し、マデイラ酒を加えて 10 分間弱火で蒸し煮する。ここに
ソース・フィナンシエールを注ぐ。ひと煮立ちさせたら、マデイラ酒から出たアクを取り除き、マッシュルーム 12 個、鶏のと
さか 12 個(マデイラ酒少々を煮立たせて火を通しておく)、雄鶏のロニョン 12 個を加える。ひと煮立ちさせたらバター少々、
鶏のクネル、フォラグラの 1〜2 cm のスライス、仔羊胸腺肉を加える。このラグーの半量はこれを添える料理上に盛り、周囲
に白い立派な鶏のとさかとロニョンを配する。ソースが皿の上の料理をのせる台からはみ出ないようにしないと優美さが失な
われ、皿の縁飾りが乱れてしまうことに注意。ラグーの残りはソース入れで別添で供する (pp.146-147)。カレームはもうひと
つ、「フォワグラのラグー・フィナンシエール」というレシピも残している (pp.147-148)。デュボワ、ベルナール共著『古典料

99

ガルニチュール
(牛、羊の塊肉あるいは鶏料理に添える)
• 仔牛か鶏のファルスでつくった標準的なクネル
20 個。ファルスに仔牛を使うか鶏を使うかは、
このガルニチュールを添える料理に合わせて決
めること。
• 渦巻状の刻み模様を入れた小さなマッシュ
ルーム 150 g。
• 雄鶏のとさかとロニョン1) 100 g。
• トリュフのスライス 50 g。
• 皮を剥いて下茹でしたオリーブ 12 個。
• ソース・フィナンシエール

ガルニチュール・フランドル2) 風

Garniture à la Flamande
• 球形に成形した小さなサヴォイキャベツのブレ
ゼ 10 個。
• オリーブ形に成形し、コンソメで煮たにんじん
と蕪、各 10 個ずつ。
• じゃがいものアラングレーズ3) 小 10 個。
• 塩漬け豚バラ肉 250 g は 10 枚の長方形の板状
に切り、キャベツとともにブレゼする。

• 輪切りにしたソシソン4) 10 枚(150 g)。
• 塊肉をブレゼした煮汁5) をソースに仕上げる。
ガルニチュール・フィレンツェ風6)

Garniture à la Florentine

(魚料理に添える場合)
• ほうれんそうの葉 250 g は下茹でしてから、バ

1)
2)

3)
4)
5)
6)
7)
8)
9)
10)
11)
12)
13)
14)
15)
1)

ターで蒸し煮する7) 。
• このほうれんそうを皿の底に敷き、その上に
煮立たせないように茹で8) て火を通した魚をの
せ、ソース・モルネーを覆いかける。高温のオー
ブンに入れて焼き色を付ける。
(牛、羊の塊肉の料理に添える場合)
• ほうれんそうのシュブリック 10 個。
• セモリナ粉を獣脂で加熱し、卵とおろしたチー
ズを混ぜ込んだアパレイユで円盤状につくった
小さなクロケット 10 個。
• トマト風味を効かせ、ただしよく澄んだ状態の
ソース・ドゥミグラス。

ガルニチュール・フローリアン9)

Garniture Florian

(乳呑仔羊10) の料理に添える11) )
• 大きめのレチュ 3 個は四つ割りにして外葉を取
り除き、ブレゼする12) 。
• オリーブの大きさと形にしたにんじん 20 個は
下茹でしてバターで色艶よく火を通す13) 。
• 小玉ねぎ 20 個は下茹でしてバターで色艶よく
炒める。
• 小さなじゃがいものフォンダント 10 個。
• ソース……仔羊の肉汁14) 。

ガルニチュール・フォレスティエール15)

Garniture à la Forestière

(牛、羊の塊肉や鶏の料理に添える)

理』
(1868 年)では「ガルニチュール・フィナンシエール」の項目は見られず、
「サルピコン・フィナンシエ」(p.65)…… これは
黒トリュフ、鶏胸肉、赤く漬けた舌肉、マッシュルームに火を通して小さなさいの目に切り、茶色いソース・フィナンシエー
ルであえたもの、となっている。この他、「仔牛の耳・フィナンシエール (p.167)」「ほろほろ鳥のフィレ・フィナンシエール
(p.179)」「ベカシーヌのグラタン・フィナンシエール (p.187)」「雉のクネル・フィナンシエール (p.190)」「温製パイ包み焼き・
フィナンシエール (p.210)」
「うずら・フィナンシエール (p.228)」
「鳩・フィナンシエール (p.223)」といったレシピが収録されて
いる。これらのレシピを見ると「ガルニチュール・フィナンシエール」を用いる指示になっているものがほとんどのため「ガル
ニチュール・フィナンシエール」の項が抜けているのは執筆あるいは何らかのミスによるものに過ぎないだろうと思われる。
rognon は通常「腎臓」を指すが、雄鶏の場合は rognon blanc(ロニョンブロン)= testicule(テスティキュル)すなわち精巣
のこと。
flamand(e)(フラモン/フラモンド)< Flandre(フロンドル)フランドル地方 = 現在のベルギー西部からフランス北部にかけて
の北海に面する地域。フランダース。ただし『フランダースの犬』はイギリスの児童文学なので、フランスおよびベルギーで
はあまり知られていない。
à l’anglaise イギリス風、の意だが、必ずしもイギリス料理に由来するとは限らない。野菜の場合、アラングレーズとはすなわ
ち「塩を加えた湯で茹でる」ことを意味するが、本書の該当個所にも、イギリスでは塩を加えない、とある。
熟成、乾燥させてつくる太いソーセージ。多くの場合、調理せず薄切りにして食べる。
このガルニチュールは牛塊肉・フランドル風に添えるのを前提に書かれているため、ブレゼと特定出来るが、本書におけるポ
ワレの手法でももちろん可能だろう。
florentin(e)(フロロンタン/フロロンティーヌ)< Florence(フロロンス)フィレンツェのこと。
étuver au beurre(エチュヴェオブール)
pocher(ポシェ)。
ヴェネツィア、サンマルコ広場にある 18 世紀からあるカフェ。
本書で agneau という場合には、いわゆるプレサレ(agneau de pré-salé アニョドプレサレ)は mouton(ムトン=羊の成獣)に
準ずる扱いであり、それ以外は基本的に agneau de lait(アニョドレ)乳呑仔羊を指すことに留意。
乳呑仔羊肩肉・フローリアンに添えるのを前提としたガルニチュールであることに留意。
。
レチュのブレゼ参照。
glacer(グラセ)。これらの野菜の場合は下茹でして半ば火を通しておくことと、必要に応じて砂糖を加える場合があることに
留意。
原文では fonds となっているが、前提となっている仕立て「乳呑仔羊肩肉・フローリアン」の場合はバターをかけながらロー
ストするので、いわゆる「ジュ」と考えていい。
forestier(フォレスティエ)形容詞は森林の、の意。名詞の場合は森林管理人。一般には「森番風」などと訳されることが多い
ようだ。
茸の一種。和名アミガサタケ。生食出来ないので注意。

100
• モリーユ1) 300 g はバターと植物油同量ずつで
ソテーする。

• 脂身の少ない豚バラ肉の塩漬け 125 g は拍子木

に切って下茹でし、バターでこんがりと焼く2) 。
• じゃがいも 300 g は大きめのさいの目に切って
バターでソテーする。
• ブレゼの煮汁あるいはデグラセした液体を加え
たソース・デュクセル

ガルニチュール・フラスカーティ3)

Garniture Frascati

(牛、羊の塊肉の豪華な仕立てに添える4) )

• 厚さ 1〜2 cm 程度スライスした5) フォワグラ
(出来るだけ生のものがいい)10 枚に小麦粉を
まぶし、バターでソテーする。

• アスパラガスの穂先 300 g は茹でてからバター
であえる。

• 小さめの真っ白なマッシュルーム 10 個は軸を
落とし、渦巻状に飾り模様を入れる。

• 大きめのオリーブくらいのサイズに成形したト

II.

ガルニチュール

Garnitures

リュフ 10 個はバターでかるく炒めて艶を出す。
• トリュフ風味にしたじゃがいものデュシェス
をアパレイユにして細長く作ったクロワッサン
10 個は提供直前に溶き卵を塗り、オーブンで焼
いて艶を出す。このクロワッサンを並べてでガ
ルニチュールの外枠にする。
• 軽くとろみを付けた肉汁(ジュ)6) 。

ガルニチュール・ガストロノーム7)

Garniture à la Gastronome

(牛、羊の塊肉および鶏の料理に添える)
• 大きめのマロン 20 個は、皮を剥いてコンソメ
で煮、小玉ねぎのようにバターで色艶よく炒
める8) 。
• 中位のサイズのトリュフ 10 個はシャンパー
ニュ風味に茹でる。
• 立派な雄鶏のロニョン9) 20 個はブロンド色のグ
ラスドヴィアンドでコーティングする。
• 大きなモリーユ10) は縦二つ割りにし、バターで
ソテーする。

2) rissoler(リソレ)。油脂を鍋に熱し、高温で素材の表面に焼き色を付けること。
3) フラスカーティは古代ローマの避暑地として有名だったところ。18 世紀末にナポリ出身のアイスクリーム職人ガルキがパリの

4)
5)
6)
7)
8)
9)
10)
1)

ブルヴァール・モンマルトルにカフェ・フラスカティという店名のカジノ兼レストラン、パティスリを開き盛況だったという。
とりわけアイスクリームが評判を呼んだらしい。その後経営者が何度か代わり、1857 年に建物は取り壊された。このガルニ
チュールおよび「牛フィレ肉・フラスカーティ」がどちらに由来しているかは不明。フランス語風に発音するなら「フラスカ
ティ」となる。
直訳すると「牛、羊の塊肉のルルヴェ用」
(ルルヴェについては「第二版序文訳注」参照)だが、本書では「牛フィレ肉・フラ
スカーティ」くらいしか目ぼしいレシピがない。
escalope(エスカロップ)。
「牛フィレ肉・フラスカーティ」の場合はポワレするので、適量のフォンを肉を加熱する際鍋の底に敷いたマティニョンに注
ぎ、肉汁の風味をひき出してから布で漉し、でんぷんでとろみを付けることになる。
美食家、食通、の意。
glacer(グラセ)。
rognons de coq(ロニョンドコック)ここでは鶏の睾丸のこと。
morille 茸の一種。和名アミガサタケ。生食不可なのでよく加熱する必要がある。
18 世紀の徴税官 (つまりフィナンシエ) であり作家としても活動したクロード・ゴダール・ドクール Claude Godard d’Aucour
(1716〜1795) の名を冠したものと考えられる。ソース・ゴダールも参照のこと。本書のレシピだけを見ているとガルニチュー
ル・フィナンシエールと非常によく似ているけれどもソースの違うパターン、くらいにしか見えないかも知れぬが、このガル
ニチュールのほうが圧倒的に大掛かりで豪華な仕立てにすることを前提としており、ガルニチュール・ゴダールあるいはゴ
ダールという名称の仕立てはフィナンシエールの完成形というべきか、究極の到達点のひとつだったのではないか? 19 世紀
前半をとおして版を重ね、そのたびに増補されたヴィアールの本を版ごとに見ていくと、初版から 1817 年の第 9 版まではフィ
ナンシエールのみ。1820 年の第 10 版以降から「牛アロワイヨ・ゴダール」というレシピが登場する。長いレシピなので要点だ
け見ると、約 7〜8 kg の牛アロワイヨ(日本語では「腰肉」すなわちフィレを含むサーロインからランプ、イチボにかけての
部分)を四角形に切り整えて骨は取り除き、紐で縛ってからマデイラ酒を加えて 6 時間ブレゼする。肉を取り出したら煮汁を
漉して、卵白でクラリフィエし、さら布で漉して煮詰める。その煮汁の半分にコンソメを足して、肉を鍋に戻し入れてさらに
2 時間弱火で煮込む。肉を皿に盛り付け、周囲に若鳩 4 羽、拍子木に切った豚背脂やトリュフ、赤く漬けた舌肉を表面に刺し
て装飾した仔羊胸腺肉 4 枚、スプーンで成形した大きなクネル 8 個、大きなエクルヴィス 8 尾、鶏またはその他の揚げものを
刺した飾り串 8 本をアロワイヨの上から刺す。ドゥミグラス半量と合わせたラグー・フィナンシエールをかける。強火のオー
ブンで照りを付け、熱々を供する (p.101)。これを見るかぎり、本質的にはフィナンシエールの変形もしくは豪華版と考えてい
いだろう。カレーム『19 世紀フランス料理』では「牛アロワイヨのブレゼ・ゴダール」に 2 種のレシピが記述されており、ひ
とつは上記と似たアロワイヨ全体をブレゼしたもの。もうひとつはアロワイヨの一部をブレゼし、残りはローストにした仕立
てになっている。いずれにしても、非常に豪華な仕立てであり、ものすごいコストがかかるため、きわめて格式の高い荘厳な
宴席でしか出来ないだろうが「食卓外交に携わる料理人はこうした料理の知識を大切にして、これらの料理を供すべきだ」と
述べている (t.3, p.327)。デュボワ、ベルナール共著『古典料理』に至るとむしろゴダールという仕立ては簡略される方向に向
かい、本書と同様に「ルルヴェ用ガルニチュール・ゴダール」として記述される。
「このガルニチュールはトリュフで装飾を施
した大きなクネル、表面に装飾をしてソースをかけてオーブンで焼き色を付けた仔牛胸腺肉、トリュフ、マッシュルームで構
成される。これらを各まとまりごとに料理の周囲に添える。クネルとマッシュルームには軽くソースをかけてやり、トリュフ
と仔牛胸腺肉には艶を出させてやる(グラセ)こと」(p.94) とある。こうしたことから、フィナンシエールおよびその発展形と
しての仕立てであるゴダールが 19 世紀後半にむかってだんだんと広まっていき、盛んに作られるようになったが、ゴダール
についてはそのコストゆえに簡素化していく傾向にあった。いずれにしても両者ともにきわめて 19 世紀的なソースとガルニ

101

ガルニチュール

• トリュフエッセンス入りソース・ドゥミグラス。
ガルニチュール・ゴダール1)

Garniture Godard

(牛、羊、鶏の大掛かりで豪華な仕立てに添える)
• マッシュルームとトリュフのみじん切りを加え
た、バター入りのファルスをスプーンで成形し
たクネル 10 個。
• トリュフと赤く漬けた舌肉で装飾を施した大き
な楕円形のクネル 4 個。
• 小さめのマッシュルーム 10 個は軸を除き、螺
旋状に切れ込み模様を付ける。
• 雄鶏のとさかとロニョン 125 g。
• 上等の仔羊胸腺肉 200 g は高温のオーブンで焼
き色を付ける。または仔牛胸腺肉の喉側を高温
のオーブンで焼き色を付け、スライスする
• オリーブ形に成形したトリュフ 10 個。
• ソース・ゴダール

ガルニチュール・グランデュック

2)

Garniture Grand-Duc

(魚料理に添える)
• アスパラガスの穂先 200g は下茹でしてバター
であえる。
• 殻をむいたエクルヴィスの尾の身 10。
• 大きなトリュフのスライス 10 枚。

ガルニチュール・ギリシア風3)

Garniture à la Grecque

(乳呑仔羊および鶏料理に添える)
• ギリシア風ライス4) 250 g(野菜料理「米」の項
参照)。
• トマトソース

ガルニチュール・アンリ 4 世亭風

Garniture Henri IV

(ノワゼットやトゥルヌドに添える)

• 肉に合わせて中くらいから小さめのアーティ

チョークの芯5) に、溶かしたグラスドヴィアン
ドの中に入れて転がしてグラスをコーティン
グさせた小さなじゃがいものノワゼットを詰
める。

ガルニチュール・ハンガリー風6)

Garniture à la Hongroise

(いろいろな料理に添えられる)

• 小房に分けたカリフラワーをクリームであえ
て、いくつかの小さな容器に詰め、バターを
塗ったグラタン皿に裏返して並べ、上からおろ
したチーズを振りかけ、みじん切りにしたハム
を加えたパプリカ風味のソース・モルネーで覆
い、高温のオーブンに入れてこんがりと焼く。
• パプリカで風味付けした軽いソースを添える。

ガルニチュール・イタリア風

Garniture à l’Italienne

(牛、羊の塊肉および鶏料理に添える)

• 小さなアーティチョークを縦 4 つに切って、
イタリア風に調理する(野菜料理「アーティ
チョーク」参照)20 個。
• 茹でたマカロニにたっぷりチーズをあえて円盤
型にしたクロケット 10 個。
• イタリア風ソース。

ガルニチュール・インド風

Garniture à l’Indienne

(魚、牛、羊の塊肉や鶏料理に添える)

• インド風に調理したパトナ米7) 125 g(野菜料理
「米」参照)
。

• インド風ソース。
ガルニチュール・日本風8)

Garniture à la Japonaise
(牛、羊の塊肉の料理に添える)
• ちょろぎ 625 g はヴルテであえ、ブリオシュ型
でつくりオーブンでこんがり焼いたクルスター

チュールの組み合わせ、あるいは料理の仕立てといえよう。

2) grand-duc(グロンデュック)大公およびロシアの皇太子の意。Prince(プランス)大公とほぼ同義だが使われる場面などで違
いがある。料理においてはアスパラガスの穂先とトリュフを用いた料理に付されることが多い。

3) grec / grecque は「ギリシアの」の意。ここではあえて「ギリシア風」訳したが、ギリシアに起源あるいは縁のないと思われる
調理が少なくないので注意。

4) ピラフの一種だが、実際のところまったくギリシア風ではないことに注意。
5) 比較的小ぶりであっても完熟のアーティチョーク(開花がやや近い状態のもの)は下茹で後に花萼をすべて取り除く。この状
態を fond d’artichaut(フォンダルティショー)または cul d’artichaut(キュダルティショー)と呼ぶ。とりわけ大きなアーティ

6)
7)
8)

1)

チョークは花萼部が完全に固いことが多いために、上半分よりやや下で切り離して、繊毛を取り除いてから下茹でする。花萼
を全て剥いて皿のような形状の基底部のみを取り出す。丸い皿のような底面になるので、そこに詰め物をすることが多い。小
さく比較的若どりのアーティチョークは花萼を全部は取り除かず、周囲の固いところを 2 周くらい剥いて使う。これを coeur
d’artichaut(クールダルティショー)と呼ぶ。サイズによっては縦半分または四つ割りにして繊毛を取り除いてから下茹です
る。四つ割りの場合は quartiers d’artichaut(カルティエダルティショー)と呼ぶ。若どりのアーティチョークの内側の花萼は
柔らかく火が通り、とても美味。また、生食できるくらい若どりのアーティチョークは poivrade(ポワヴラード)とも呼ばれ
る。ただし若どりであればそれだけ、アーティチョーク特有の風味は弱い。
この名称の根拠となっているのはパプリカを使用していることのみ。ハンガリー風ソース訳注も参照。
パトナはコメの品種名。いわゆる「長粒種」だがバスマティのような香り米ではない。
このガルニチュールが「日本風」であるのは、ちょろぎを用いているから。中国原産のシソ科の根菜で、現代日本では慶事な
どの際に用いられる程度だが、どういうわけか日本原産と誤解されたまま 19 世紀にフランスで栽培されるようになり、以来、
日本風の名を付けた料理にはほとんど必ずといっていい程、ちょろぎが用いられる。
初版〜第三版は「じゃがいものクロケット 10 個」となっている。「じゃがいものクロケット」は初版からレシピが掲載されて
いるが、初版〜第四版すなわち現行版において「米のクロケット」のレシピはアントルメすなわちデザートとして砂糖を加え
て甘くつくるレシピしか掲載されておらず、そのとおりにすべきかは一考の余地がある。また、
「インド風クロケット」も米を

102

II.

ガルニチュール

ドに詰める。
• 米のクロケット 10 個1) 。

ヴェット 8 尾を刺す。
• ソース・ジョワンヴィル。

ガルニチュール・ジャルディニエール2)

ガルニチュール・ジュディック7)

Garniture à la Jardinière

(牛、羊の塊肉の料理に添える)

• にんじん 125 g と蕪 125 g は、プレーンな、あ

•

•
•

•

るいは刻み模様の入ったスプーンでくり抜く。
あるいは円柱形にしてもいい。これをコンソメ
で煮て、最後にバターで色艶よく炒める。
プチポワ 125 g。小さなフラジョレ 125 g。アリ
コヴェール 125 g は小さな菱形に切る。これら
を別々にバターであえる3) 。
茹であげたばかりのカリフラワーの小房 10 個。
以上の構成要素を肉の周囲に、別々にはっきり
とニュアンスが代わるように配置する。カリフ
ラワーの小房はオランデーズソース小さじ 1 杯
程度をそれぞれに塗ってやる。
ソース……澄んだジュ(肉汁)
。

ガルニチュール・ジョワンヴィル4)

Garniture Joinville

(魚料理に添える)

• 以下のものを 5 mm 角くらいの小さな角切り5)

か短かい拍子木状6) に刻む……茹でたマッシュ
ルーム 125 g、トリュフ 50 g。これにクルヴェッ
トの尾の身 125 g を加え、スプーン数杯のソー
ス・ジョワンヴィルであえる。
• 追加として……トリュフのスライス 10 枚。白
くて大きなマッシュルームに殻をむいたクル

Garnitures

Garniture Judic

(ノワゼットやトゥルヌド、鶏料理に添える)

• 小さめのレチュを縦半割りにしてきれいに掃除
し、ブレゼしたもの 10 個。
• 大きな雄鶏のロニョン 10 個。
• トリュスのスライス 10 枚。
• 上等な仕上りのソース・ドゥミグラス。
ガルニチュール・ラングドック風8)

Garniture Languedocienne

(牛、羊の塊肉、鶏料理に添える)
• なすは 1 cm 厚の輪切りを 10 枚用意し、小麦粉
をまぶして油で揚げる。
• セープ9) 400 g はスライスして植物油でソテー
する。
• トマト 400 g は河を剥いて圧しつぶし、粗く刻
んで、にんにく 1 片を加えて油でソテーする。
• パセリのみじん切り。
• ソース……とろみを付けたジュ。

ガルニチュール・ロレット10)

Garniture Lorette

(ノワゼット、トゥルヌドに添える)

• 小さくつくった鶏のクロケット 10 個。
• アスパラガスの穂先またはプチポワをバターで
あえる。
• トリュフのスライス。

使用している。

2) jardinier/jardinière(ジャルディニエ、ジャルディニエール)には名詞で「庭師」の意味もあるが、ここでは jardin potager(ジャ
ルダンポタジェ)すなわち野菜畑、菜園、の意。
しっかり加熱調理してからバターであえること。
フランソワ・ドルレアン・ジョワンヴィル海軍大将 (1818〜1900) のこと。ソース・ジョワンヴィルも参照。
salpicon(サルピコン)。
julienne courte(ジュリエーヌクルト)。
女優アンナ・ジュディック(1849〜1911)の名を冠したもの。
languedocien(ne)(ラングドスィヤン、ラングドスィエーヌ)< Languedoc ラングドック地方。フランス南西部の地方名。もと
は「オック語」langue d’oc から。中世プロヴァンス語と考えていい。オック oc とは古語で、現代フランス語の oui に相当する
肯定の語。ラテン語の格変化の消失が比較的遅かった。バスク地方を除く(バスク語は別言語として扱われる)ロワール河以
南で話された諸語の総称。これに対し、オイル語 langue d’oil(ラングドイル)があり、oil が肯定の語であるというところが代
表的な違い。主としてロワール河以北で話された諸語の総称。現代フランス語は後者の系統にあたるが、語彙の面などではラ
ングドックの影響を大きく受けている。
9) cèpe(セープ)、茸の一種、和名ヤマドリタケ。イタリアのポルチーニと同種だが、フランス産、イタリア産で風味や調理特性
が異なる。また日本に多いのはヤマドリタケモドキという種で、食用できるが風味などはまったく及ばないという。類似のも
のにウツロイグチ、ドクヤマドリという毒茸があるので注意が必要。
10) 19 世紀の 7 月王政期に娼婦たちの一部がロレットと呼ばれていた。ノートルダム・ド・ロレット(現在のパリ 9 区にある 19
世紀に建てられた教会)に因んでいるという。つまりこの「ロレット」とは特定の女性の固有名ではなく「ある職業および階
層の女性たち」を意味する集合名詞。かつて「洗濯娘」を意味する grisettes(グリゼット)と呼ばれた社会階層のやや下に位
置する者が多かったため、いわゆる高等娼婦を意味する courisane(クルティザーヌ)と区別されることもある。グリゼットお
よびロレットの例としては、バルザックの小説『幻滅』や『高等娼婦の栄華と悲惨(浮かれ女盛衰記)
』にこの種の娼婦が主要
人物として登場する。また、ロレットと呼ばれる娼婦たちは、第二帝政期には cocotte(ココット)と呼ばれる高等娼婦にとっ
て代わられた(たとえばゾラの『ナナ』やデュマ・フィス原作ヴェルディ作曲のオペラ『椿姫』の主人公……原作ではマルグ
リット、オペラではヴィオレッタ、などがこれに相当する)。また、高等娼婦の中には、18 世紀末のデュバリー夫人(ガルニ
チュール・デュバリー訳注参照)や、19 世紀末から 20 世紀初頭にかけての女優サラ・ベルナールのように社会的に成功した
例も少なくはない。貴族やブルジョワがこうした高等娼婦との「社交の場」として 19 世紀にはレストランや高級カフェを利
用することが多かった。これを demi-monde(ドゥミモンド、半社交界)と呼び、そこでの華やかな主役たる高等娼婦たちは
demi-mondaine(ドゥミモンデーヌ)とも呼ばれた。このため、19 世紀〜20 世紀初頭にかけて創案された料理のなかには高等
娼婦の名を冠したものも存外少なくない。

3)
4)
5)
6)
7)
8)

103

ガルニチュール

• とろみを付けたジュ
ガルニチュール・ルイジアナ風1)

Garniture Louisiane

(家禽2) の料理に添える)
• とうもろこし 500 g はクリームであえる。
• リオグラ3) をダリオル型4) に詰めて形づくった
小さなタンバル5) 10 個。
• バナナの輪切り 20 個を油で揚げる。
• 家禽を調理した際のフォンを煮詰めて仕上げた
ソース。

置いておいた蓋をして、鶏のファルスでつくっ
た小さなリボンで蓋とトリュフをつなぐ。低温
のオーブンでファルスに火を通す。
2. トリュフをくり抜いた中身を混ぜ込んだ鶏の滑
らかなファルスをスプーンで成形して 10 個の
クネルを用意する。混ぜ込むトリュフはあらか
じめすり潰して裏漉しすること。
• カールさせた大きな鶏のとさか 10 個。
• トリュフエッセンス入りソース・ドゥミグラス。

ガルニチュール・マセドワーヌ7)

ガルニチュール・ルクッルス6)

Garniture Macédoine

(牛、羊の塊肉や鶏料理に添える)
1. 平均 60 g のトリュフ 10 個はミルポワにマデイ
ラ酒風味で火を通す。中はくり抜き、蓋になる
部分を取り置く。雄鶏のロニョンをトリュフ 1
つにつき 2 つ、バターを加えたグラスドヴィア
ンドをまぶしてコーティングして詰める。取り

• このガルニチュールはジャルディニエールと

Garniture Lucullus

(牛、羊の塊肉の料理に添える)
まったくおなじ構成要素だが、すべての材料
を混ぜてあえてしまう点が異なる。これを野
菜料理用の深皿に別途盛り付けるか、アーティ
チョークの基底部に詰めるか、もしくは皿の中
心にドーム状に盛り、その周囲に肉料理を並べ

1) アメリカ合衆国のルイジアナ州のこと。とうもろこしは伝統的なフランス料理ではあまり好まれる食材ではないが、それを用
いているところからの命名だろう。

2) 原文は volaille(ヴォライユ)。本来は家禽全般つまり鶏、鴨(あひる)、七面鳥、鳩なども含まれるが、本書ではほとんどの場
合、鶏(大きさや肥育方法により名称が多数ある)を意味するため、そのように訳しているが、ここでは七面鳥もしくはがちょ
うを前提としていると考えるのが妥当であり、調理方法も、ソースの指示からブレゼであると解釈される。なお、七面鳥は 16
世紀にアメリカ大陸からフランスにもたらされ、17 世紀には流行の食材となった。当初は poulet d’Inde(プレダンド、インド
の鶏の意)などと呼ばれていたが、やがて dinde(ダンド、七面鳥のメス)、dindon(ダンドン、七面鳥のオス)、dindonneau
(ダンドノー、七面鳥の雛、若いオスの七面鳥)のように用語が定着していった。
3) riz au gras 直訳すると脂気の多い米、だが、実際には下茹でした米を脂気がやや残ったままのブイヨンで煮込んだもの。
4) 小さな円筒形の型。
5) timbale 直径に対してやや背の低い円筒形にする仕立て。大きなものはタンバル型 moule à timbale(ムーラタンバール)に料
理を詰めるが、ここでは小さなものを 10 個つくるので、ダリオル型を用いている。なお、timbale は元来「小太鼓、スネアド
ラム」の意。ただし、料理においては上述のような仕立てとともに、野菜料理用のやや深い皿のこともタンバルと呼ぶ。
6) ルキウス・ルキニウス・ルクッルス (前 118〜前 56)。共和政ローマの軍人、政治家で美食家として知られた。
7) この語の初出は匿名で出版された『ガスコーニュ料理の本』(1740 年)であり、Macedoine à la Paysanne というレシピが掲載
されている。ただしこの本はいわゆる「偽書」あるいは「奇書」に類するもので、ガスコーニュ地方の料理などひとつも掲載
されていない。パリで印刷、出版されたにもかかわらず、アムステルダム(18 世紀にアムステルダム版といえば「海賊版」の
代名詞だった)出版として匿名で上梓された。匿名なので著者名はないのだが、献辞に「ドンブ大公閣下へ」とあり、実際の
著者はまさにそのドンブ大公であるルイ・オーギュスト・ド・ブルボンそのひとであったと考えられている(17 世紀にルイ 14
世の子で同名の者がいるが混同しないよう注意)
。狩猟と料理が趣味であったという。一般的な言い回しとして「料理上手」の
意味で cuisinier gascon(キュイジニエガスコン)「ガスコーニュの料理人」ということがあり、しかも内容は料理書として見
た場合、どこまで真面目でどの程度冗談めいたものなのか判断に苦しむところがある。要は「殿様」の道楽本ともいえる。一
例として「徴税官風鶏の袋詰め」Poulette en musette à la Financière というほとんど冗談としか思えぬ、けれども歴史的に非常
に興味深いレシピがある。茹でたプレ・レーヌ(若鶏と肥鶏の中間くらいの大きさ)を羊の膀胱にサルピコンとともに詰めて、
息を吹き込んで膀胱を膨らませて口を縛る。1 皿に 3 袋のせるべし。というもの (pp.128-129)。20 世紀にフェルナン・ポワン
が「鶏の膀胱包み」という歴史に残る名作料理をスペシャリテのひとつとしていたが、おそらくは膀胱に鶏を入れて膨らませ
るというプレゼンテーションについてはこれが最初の例であろう(この例では調理において膀胱を用いる必然性はまったく
なく、たんに見せ方だけの問題だが)。また、「徴税官風」すなわちフィナンシエールという語が、後代のラグー・フィナンシ
エールあるいはフィナンシエール仕立てとはまったく関係ない文脈で使われている点も興味深い。要は税として徴収した財貨
を詰め込んだ袋のイメージを演出するための小道具に過ぎないということ。マセドワーヌについては、えんどう豆とそら豆と
アリコヴェール(これらはえんどう豆とおなじ大きさに刻む)、細切りにしたにんじんをバターを入れた鍋で弱火にかけ汗を
かかせるようなイメージで蒸し煮し、時々混ぜながら、火が通ったら味付けしてソースを少量のソースとともに供するという
もの (pp.139-140)。マセドワーヌの語は料理とは関係なく、同じ 18 世紀のラクロの小説『危険な関係』において「カードを混
ぜる行為」という意味で用いられており、よく混ぜる、という意味において間違いはない。なお、一般にマセドワーヌという
と小さなさいの目に切った蕪やにんじん、アリコヴェール、プチポワなどを混ぜたものであり、日本のマセドアンサラダの原
型にもなったが、料理用語の原義としては、必ずしも「さいの目」に刻む必要はない。このガルニチュール・マセドワーヌも
『料理の手引き』における「ガルニチュール・ジャルディニエール」の指示どおりに野菜を下ごしらえして混ぜても成立するだ
ろうし、切り方を揃えるという方法もあるだろう。
1) マドレーヌといえば誰もが焼き菓子を想い浮かべるだろうが、このガルニチュールにはそれと類似する、あるいは想起させる
要素がまったくない。マドレーヌは聖マドレーヌに由来し、教会の名称として珍しくないばかりか、女性の名前としてもごく
一般的なものだ。他の料理書に同名のガルニチュールが見あたらないこと、本書初版から掲載されているものであることを考

104

II.

るようにして盛り付ける。

ガルニチュール・マドレーヌ1)

Garniture Madelaine

(牛、羊の塊肉、鶏料理に添える)

• 小さめのアーティチョークの基底部 10 個に固
めにつくったスビーズを詰める。

• 白いんげん豆のピュレ 1 L あたり卵黄 6 個と全
卵 1 個を加えてとろみを付け、仕上げにバター
150 g を加えたものを、ダリオル型に詰めて湯
をはった天板にのせて低めの温度のオーブンで
火を通したタンバル 10 個。
• ソース・ドゥミグラス。
2)

ガルニチュール・マイヨ

Garniture Madelaine

(牛、羊の塊肉、とりわけハムの料理に添える)

• 大きなオリーブ形に成形した3) にんじん 10 個
と蕪 10 個は、コンソメで煮る。
• 小玉ねぎ 20 個は下茹でしてからバターで色艶
よく炒める4) 。
• 縦半割りにしたレチュのブレゼ 10 個。
• プチポワ 100 g とアリコヴェール 100 g はバ
ターであえる。
• とろみを付けたジュ。

ガルニチュール・マレシェール5)

Garniture à la Maraîchère

(牛、羊の塊肉の料理に添える)

ガルニチュール

Garnitures

• サルシフィ6) は長さ 4 cm の筒切りにして柔ら
かく茹で、固めにつくったヴルテであえる。

• 大きめのじゃがいも 10 個はシャトー7) にする。
• 芽キャベツ(小)300 g は下茹でしてからバター
を入れた鍋で弱火で蒸し煮する8) 。
• 肉をブレゼまたはポワレした際のフォンをソー
スに仕上げて添えるガルニチュール・ブクティ
エール訳注参照。

ガルニチュール・マレシャル9)

Garniture Maréchal
A. 仔牛胸腺肉、牛、羊の塊肉の料理に添える
場合……

• トリュフ入りの鶏のファルスをスプーンで成形
したクネル 10 個。
• 50〜60g のトリュフをスライスし、イタリア風
ソースであえる10) 。
• マデイラ酒風味のソース・ドゥミグラス
B. 鶏胸肉のフィレ、仔牛胸腺肉の薄切り、ノワゼ
ット、乳呑仔羊の骨付き背肉に添える場合……
• ガルニチュールはバターで色艶よく炒めたト
リュフの大きなスライスのみをメインの素材の
上にのせる。バターであえたアスパラガスの穂
先、季節でない場合にはごく小さなプチポワを
添える。
このガルニチュールを合わせる料理は必ず、細
かい生パン粉に 1/3 量のトリュフのみじん切り

えると、あえていうなら、オクターヴ・ミルボー作の戯曲『酷い羊飼いども』初演(1897 年)の際にサラ・ベルナールが演じ
て話題となった主人公の名がマドレーヌであることくらいか。資本家に虐げられた労働者階級が反乱を起こして失敗するとい
う悲劇で、テーマとしてはゾラの『ジェルミナル』に近い。もしこのガルニチュールがミルボーの戯曲の登場人物を示唆して
いるなら、その料理を食べる側すなわち富裕層、資本家と、その料理を作る側の労働者との対立の図式が透けて見える、いわ
ば強烈な風刺とも考えられるだろう。もっとも、エスコフィエは、その真意まではわからぬが常に資本家、富裕層の側に寄り
添った料理人であったのもまた事実だ。オクターヴ・ミルボーについては、自然主義文学の作家としてスタートしたとはいえ、
1964 年にルイス・ブニュエルがジャンヌ・モロー主演で映画化した小説『小間使いの日記』で知られるように、いわゆる自然
主義文学の枠にとどまることなく、独自の文学活動を展開した。画家ファン・ゴッホをモデルとした小説『天空にて』
(新聞連
載 1892〜1893 年)や、発表後にバルザックの遺族の抗議により作品の撤回を余儀なくされた『バルザックの死』などにより、
フランス文学史においては世紀末文学の作家として位置付けられている。
2) maillot(マイヨ、男性名詞)には、産着、肌着、maillot de danseuse(マイヨドドンスーズ、踊り子のタイツ)、maillot jaune
(マイヨジョーヌ、トゥールドフランスでトップの走者が着る黄色いウェア)などいろいろな意味があるが、ここではハムの料
理に合わせること(ハムは本来、豚腿肉を加工したもの)から cancan(コンコン、いわゆるフレンチカンカン……例えばロー
トレックの版画、絵画に描かれたような)で踊り子がタイツを履いた脚を高く上げて踊る姿を示唆していると解釈されよう。
3) tourner(トゥルネ)。
4) glacer(グラセ)。
5) maraîcher/maraîchère 比較的小規模な野菜生産者のこと。そのため、既出のガルニチュール・ジャルディニエールと非常に似
た意味、すなわちあえて日本語にするならどちらも「菜園風」くらいの訳になろう。
6) Salsifis こんにちフランス語で一般的にサルシフィと呼ばれているのは和名キバナバラモンジン。キク科の根菜。表皮が黒く、
ごぼうに似ているが風味は異なる。また、じっくり時間をかけて加熱すれば筋っぽさがなくなり、とても柔らかくなる。別名
scorzonère(スコルゾネール)。本来のサルシフィは表皮がやや白く、風味もやや異なるが、生産量はスコルゾネールと逆転す
るかたちで減少しつつある。
7) 大きめのオリーブのような形に剥き、塩こしょうして澄ましバターでゆっくり柔らかく火を通す。仕上げにパセリのみじん切
りを散らす。
8) étuver(エテュヴェ)。
9) 元帥の意。
10) 原文 lié à l’italienne 訳文は英訳第 5 版の「イタリア風ソースであえる」としているのに倣ったが、この表現自体は細かいさい
の目に刻んだマッシュルーム(茸)であえる、の意。そのため、可能性としてはデュクセル・セッシュであえるということも
あり得るが、実際には「つなぎ」に相当するものが必要になるだろう。
1) 素材に小麦粉をまぶして卵液にくぐらせ、パン粉衣を付けて油で揚げる方法。ただし日本と異なりパン粉は粒子の細かいもの
が一般的。
2) 初版「これらの素材はパン粉衣を付けるか、トリュフのみじん切りをまぶし付けるか、パン粉の 1/3 量のトリュフを混ぜた衣

105

ガルニチュール
を混ぜたイギリス式パン粉衣1) を付けて揚げ焼
きしたもの2) 。

てサイズを選び、バターで蒸し煮して、スビー
ズを 1/4 量加えたマッシュルームの固めのピュ
レを絞り袋でドーム状に詰める。
• ソース……とろみを付けたジュ。

ムレット9) 250 g をやや低温で火を通して小さ
な筒切りにする。アスパラガスの穂先 125 g、太
さ 1〜2 mm の千切り10) にしたトリュフ 50 g、
これらを、エクルヴィスバターを仕上げに加え
たソース・アルマンド 1 1/2 dL であえる。
2. 濃いトマトピュレを混ぜ込んだじゃがいもの
デュシェスを絞り袋で天板に小さな卵形に絞り
出し、縦中央にナイフなどで切れ込みを入れ、
オーブンに入れて提供数分前にこんがりと焼き
あげたもの11) 20 個。

ガルニチュール・マリニエール5)

ガルニチュール・マルセイエーズ12)

(魚料理に添える)
• 小さなムール貝 3/4 L (35 個)は白ワインで蒸
し煮して、身の周囲をきれいに掃除する6) 。
• 殻をむいたクルヴェット7) の尾の身 100 g。

(牛、羊の塊肉の料理に添える)
• 小さめのトマト 5 個を半割りにして中をくり抜
き、にんにく 1 片と油をひとたらししてオーブ
ンで焼く。立派なアンチョビのフィレを円環状
になるようトマトに盛り込み、さらに成形した
大きなオリーブを詰める。
• それぞれのトマトの間に、細かく切って揚げた
フライドポテトを配する。
• プロヴァンス風ソース

ガルニチュール・マリ=ルイーズ3)

Garniture Marie-Louise

(ノワゼット、トゥルヌド、鶏料理に添える)

• アーティチョークの基底部4) は添える肉に応じ

Garniture à la Marinière

ガルニチュール・マルキーズ8)

Garniture Marquise

(ノワゼット、トゥルヌド、鶏料理に添える)
1. 縁に波形の飾り模様の付いた小さなタルトレッ
ト 10 個を空焼きする。これに以下を詰める。ア

Garniture à la Marseillaise

を付けて調理する」。第二版〜第三版「これらの素材は必ず、トリュフのみじん切りをまぶし付けるか、細かい生パン粉に 1/3
量のトリュフのみじん切りを混ぜた衣を付けて調理する」
。なお、このように直接素材にパン粉衣がうまく付くとはかぎらない
ので、通常は溶かしバターを素材に塗ってからパン粉の衣を付ける。これをフランス式パン粉衣 pané à la française(パネアラ
フロンセーズ)という。
3) マリア・ルイーザ(1791〜1847)。神聖ローマ皇帝フランツ 2 世の娘で、フランス皇帝ナポレオン 1 世の皇后。ナポレオンを憎
み恐れて育ったにもかかわらず、ナポレオンがジョゼフィーヌとの離婚後に名家との婚姻を望んだため、オーストリアの外務
大臣メテルニヒの計略により婚姻させられる。ナポレオン失脚後はパルマ公国の女公となる(在位 1814〜1847)。ドイツ語で
は Maria Ludovica von Österreich(マリア ルドウィカ フォンエスターライヒ)
、フランス語では Marie-Louise d’Autriche(マリ
ルイーズドートリッシュ)と呼ばれる。
4) fond d’artichaut(フォンダルティショー)。
5) marinier/marinière < mare ラテン語「海」から派生した語。ソース・マリニエールも参照。
6) ébarber(エバルベ)。
7) crevette 小海老。小さめで生のときは灰色がかった crevette grise(クルヴェットグリーズ)とやや大きめで美味な crevette rose
(クルヴェットローズ)の 2 種が代表的。
8) marquis / marquise 侯爵、侯爵夫人の意。
9) 牛、仔牛、仔羊の脊髄(=moelle モワル)。
10) julienne(ジュリエーヌ)。
11) ここで説明されているのは、じゃがいものマルキーズのレシピそのものといっていい内容で、かなりの部分が野菜料理の節に
あるレシピと重複している。じゃがいものマルキーズにおいて形状は 2 パターン提示されており、これはそのうちのひとつで
あり、こんにちではあまりつくられなくなったパターンの方。大雑把なイメージとしては大きなコーヒー豆のあるいはキド
ニービーンズのような形を想像すればいいだろう。ここではかなり意訳したが、直訳すると「じゃがいものデュセスでつくっ
た Pain de la Mecque(パンドラメック=メッカのパンの意)」とある。本来これはシュー生地を卵形に天板に絞り出して溶き卵
を塗り、グラニュー糖を振ってから縦中央にナイフで切れ込みを入れて焼くという、19 世紀には比較的ポピュラーだった焼き
菓子。グフェ『パティスリの本』(1873 年)にもレシピが 2 種掲載されている (pp.287〜288)。シュー生地とほぼ同じものを使
うため、内部に空洞が出来るが、そこにクレーム・シャンティイなどを絞り袋を使って詰めるバリエーションもあった。この
焼き菓子になぜ「メッカ」の地名が付けられているのか、また、トマトピュレを加えたじゃがいものデュシェスをその形状に
似せて焼いたものをなぜ、じゃがいものマルキーズ(=侯爵夫人)と呼ぶのかといった理由、由来は不明。ちなみに貴族の格と
しては公爵夫人(デュシェス)のほうが侯爵夫人よりも一般的に上位とされた。
12) marseillais(e)(マルセイエ / マルセイエーズ)マルセイユ Marseille の、の意。現在のフランス国歌 La Marseillaise はフランス
革命期の 1792 年に作曲され、同年 8 月 10 日のチュイルリー宮襲撃事件の際にマルセイユの義勇兵たちが口ずさんでいたこと
をきっかけにパリ市民の間で流行した。ただしマルセイユの義勇兵たちが作曲、作詞したわけでもなければ、その内容がマル
セイユと関連があるわけでもない。いずれにしても第一帝政から王政復古期にかけては歌詞の「暴君を倒せ」という部分に問
題があるいう理由から禁止され、1830 年の七月革命以降解禁、第三共和政(1870〜1940)において正式に国歌として制定され
た。日本ではあまり知られていないが、決して平和的な内容の歌詞ではなく、むしろ激しい戦意を鼓舞する内容。とりわけル
フラン(繰り返し部分)の「武器を取れ 市民らよ 隊列を組め 進もう 進もう 穢れた血が 我らの畝を満たさんことを」
にその激烈さがよく表われている。1979 年にセルジュ・ゲンズブールがこの曲をレゲエ風に編曲して発表したところ、「愛国
者」からの脅迫が相次いだというエピソードは有名。
1) エドモン・オドロン(1842〜1901)作曲のオペラコミック『ラ・マスコット』(1880 年初演)にちなんだ名称。

106
ガルニチュール・マスコット1)

Garniture Mascotte

(ノワゼット、トゥルヌド、鶏料理に添える)
• アーティチョークの芯2) 10 個は生のまま四つ割
りに切り、バターでソテーする。
• 小さなじゃがいも 20 個はオリーブ形に剥き、
バターで火を通す。
• 小さな玉にくり抜いたトリュフ 10 個。
• 肉を焼いた鍋に白ワインを注いでデグラセ3)
し、仔牛のフォンを加えてソースに仕上げる。
【原注】このガルニチュール・マスコットは、必
ずココット仕立て4) の肉の周囲を飾るようにし
て供する。
ガルニチュール・マセナ5)

Garniture Masséna

(ノワゼット、トゥルヌドに添える)
• 中位か小さめのアーティチョークの基底部6) に
固く仕上げたソース・ベアルネーズを詰める。
• 新鮮で大きな牛骨髄を輪切りにしてコンソメで
沸騰しないよう火を通した7) もの 10 枚。

II.

ガルニチュール

Garnitures

• トマトソース。
ガルニチュール・マトロット8)

Garniture Matelote

(魚料理その他に添える)
• 小玉ねぎ 300 g は下茹でしてバターで色艶よく
炒める9) 。
• マッシュルーム(小)200 g は茹でる。
• 食パンをハート形に切ってバターで揚げたクル
トン 10 枚。場合によってはクールブイヨンで
火を通したエクルヴィスも添える。

ガルニチュール・メディシス10)

Garniture Médicis

(牛、羊の塊肉、ノワゼット、トゥルヌドに添
える)
• 空焼きしたタルトレット 10 個に、マカロニと
さいの目に切ったトリュフをフォワグラのピュ
レであえて詰める。
• バターであえたプチポワ。
• ソース……とろみを付けたジュ。

2) 原文は fonds d’artichaut なので字義通りに解すれば「アーティチョークの基底部」だが、下茹でしないということは比較的若

3)
4)
5)

6)
7)
8)
9)
10)

どりのアーティチョークを用いる必要がある。その場合は花萼部の上半分程を切り捨て、茎の皮を剥いて四つ割りにするのが
一般的。
déglasser ソテーしている際に肉から流れ出た肉汁が煮詰まって鍋底にシロップ状に貼り付いたのを、何らかの液体を注いで溶
かし出すこと。決して「焦げ」を取ることではないので注意。
こんにちのココット仕立てを同じだが、本書においては「ポワレ」のバリエーションのひとつとして位置付けられている。特
殊なポワレ、カスロール仕立て、ココット仕立て参照。
ナポレオン軍の元帥を務めたアンドレ・マセナ(1758〜1817)のこと。スイス戦役や半島戦争で著しい功績をあげた。ナポレ
オン失脚後の王政復古の際にもマルセイユの司令官を務め続けた。いわゆる百日天下の際に、軍に加わることはなかったがナ
ポレオンを支持したために、全ての軍務を解任された。また、1898 年就役、1915 年退役となったフランス海軍の戦艦マセナは
彼の名にちなんで命名された。
あらかじめ適切に下処理をし、火を通しておくこと。
pocher(ポシェ)。
水夫風の意。ソース・マトロットおよび魚料理「マトロット」も参照。
glacer(グラセ)。
ルネサンス期のイタリア、フィレンツェにおいて金融業などにより実質的な支配者として君臨した名家。フランス史において
もっとも有名なカトリーヌ・ド・メディシス(1519〜1589)は後のフランス国王アンリ 2 世のもとに嫁ぎ、アンリ 2 世の死後
15 才で即位した長男フランソワ 2 世の摂政として権力を掌握、フランソワ 2 世が病死してシャルル 9 世が即位した後も実権を
握り続けた。カトリックとプロテスタントが対立したユグノー戦争の時代であり、サン・バルテルミの虐殺(1572 年)に関与
したさえ当時はまことしやかに語られたという。また、カトリーヌがフランスの宮廷にフィレンツェの、とりわけ食文化を紹
介、導入したという逸話は、アーティチョークからフォークにいたるまで非常に多いが、逸話の域を出ないものがほとんどで、
史料として残っているものは非常に少ない。逆に言えば、ルネサンス期に文化的先進国だったイタリアから王妃を娶るという
ことそれ自体が象徴するように、イタリア文化がさまざまなルート、形態でフランス文化に吸収された時代と見るのが妥当だ
ろう。また、メディチ家はカトリーヌの後もフランス王アンリ 4 世(1553〜1610)にマリー・ド・メディシス(1575〜1642)を
嫁がせている。なお、イタリア語の家名 Medici(メディチ)はフランス語で伝統的に Médicis(メディシス)と呼ばれている
ため、ここではその慣習に倣って表記した。

107

III.

ポタージュ Potages
概説

Considérations Générales
こんにちポタージュと呼ばれている料理は、少なくともいま目にする形態のものとしては、比較的
新しい料理であり、せいぜい 19 世紀初頭までしか起源を遡ることができない。
古典料理におけるポタージュは一皿に何もかもが入った料理だった1) 。こんにちポタージュという
名称は液体の料理だけを意味するが、古くは、その液体を作るのに用いた牛、羊肉、鶏、
、ジビエ、魚
そのものと、こんにちでは浮き実として使われている野菜もポタージュの一部として必ず含まれて
いた。
いくつか例を挙げるなら、フランドルの「オシュポ2) 」
、スペインの「オジャ3) 」
、そして我が国の
「プチットマルミット4) 」もまた、古くから残されてきたポタージュの代表例と言える。もっとも、こ
んにちではこれらの料理を作る際に、多かれ少なかれ単純な構成にしているから、こう書いただけで
は明確なイメージが得られないかも知れない。
これらの料理にはごった煮のようなイメージがあるだろうが、大昔の献立というのはつまるところ
そういうものだったのだ。食べ進むにつれ食欲がだんだん満たされていくのに合わせて、順序よく料
理を進行させるようなことなどしなかった5) 。昔の献立に非常に多くの種類のポタージュが見られる
のは、適切に料理を配した結果というよりは、まさにそのこと自体が献立の特徴なのだと言える6) 。
他の多くの調理技術についても同じだが、ポタージュにおいてカレームの功績は大きい。文字通り
の意味でカレームが近代のポタージュを発案したわけではないにしても、少なくとも、こんにちのポ
タージュのつくり方に移行する導き手のひとりとして新たな料理理論の普及に大いに貢献したのだ。
けれど、カレーム以後の料理人たちはポタージュをこんにちの姿に完成させるまで、1 世紀近くか
かってしまった。
彼らは風味豊かで軽やかな、理想的なまでに繊細で美味な料理を創案したのだが、それらの新しい
ポタージュに正しい料理名をつけることにはあまり頓着しなかったのだろう。とりわけ、とろみをつ
けたポタージュに関しては、しばしば同じルセットについてビスクやピュレ、クリ、ヴルテ、クレーム

1) potage の語源は pot「壺、鍋」。古くは、鍋に肉や野菜を入れて煮込んだ料理 (シヴェ、ラグー、ブルゥエなど) の総称であっ

2)

3)
4)

5)
6)

た。こんにちのようにポタージュが専ら液体料理の意味で用いられるようになったのは、エスコフィエがここで述べているよ
うに、19 世紀以降である。なお、日本語では一般的に「ポタージュ」という語はとろみがあるスープを意味し、
「コンソメ」が
澄んだスープを指すが、これは英語由来。
hochepot フランドルの地方料理としては、牛の尾を主素材としたポトフの一種を指す。他に、豚の耳と尾、煮込み用牛肉と野
菜の煮込みを意味する場合もある。料理名自体は非常に古く、14 世紀のタイユヴァン『ル・ヴィアンディエ』には「鶏のオ
シュポ」hochepot de poullaille がある。
olla (olla podrida) カタカナではオジャ、オヤとも表記される。豚肉と各種内臓肉、豆、野菜の煮込み料理。南西フランスのウ
イヤ ouillat (オイユ oille とも) の原型になったと言われている。また、日本語の「おじや」の語源になったという説もある。
petite marmite 小ぶりの陶製の鍋に具材と汁を入れてオーヴンで熱して供するポトフに似た料理。牛肉、牛の尾、骨髄、鶏な
どをブイヨンで煮込む。19 世紀パリのレストランで大流行した。澄んだポタージュ (コンソメ) に分類されるが、クラリフィエ
(澄ませる作業) は行なわない。また、必ず鶏を用いるのが特徴。
現代のように、料理を食べる順に提供する「ロシア式サーヴィス」が行なわれるようになったのは 19 世紀後半のこと。それ以
前は大きな皿に盛られた複数の料理をまとめて食卓に供する「フランス式サーヴィス」であった。
典拠不明。確かに、17 世紀以前の料理書ではポタージュに多くのページを割いているものも少なくないが、17 世紀に L.S.R. と
いう筆名で出版された『饗応術』や、同じく 17 世紀マシアロの著作にある献立例では、必ずしもポタージュの数が突出して
多いとは言えない。大規模な宴席を除けば、通常の献立におけるポタージュは 2〜3 種であり、同時に供されるアントレ、オ
ル・ドゥーヴルの方が種類が多い。また、
『ル・ヴィアンディエ』巻末の献立例では料理が 4 回に分けて供されるが、1 回目は
ポタージュ、2 回目はロ (ロティ) があてられており、料理の種類はほぼ同数ずつになっている。

108

III.

ポタージュ Potages

の名称を頓着なく与えていた。理屈から言って、これらの名称はそれぞれまったく異なった料理を意
味しなくてはいけないにもかかわらず、だ。結果として、残念なことに用語の混乱が起きてしまった
わけだ。本書では、それぞれのポタージュの特徴をはっきりさせて、さまざまなレシピを合理的に分
類することによってこの問題を正してある。
基本的な考え方は次のとおり。ヴルテとクレームの語がポタージュについて用いられるようになっ
たのは比較的近年に過ぎない。その理由としては、ビスクやクーリの語感が古めかしい印象を与える
うえに、ピュレはあまりに俗っぽくて品位に欠ける印象だから、ビスク、クーリ、ピュレの代りに
ヴルテとクレームの語が用いられるようになったのだろう。
だから、ポタージュのそれぞれの種類をはっきりと定義し、調理技術体系の欠落を埋める必要が
ある。
それぞれの種類のポタージュの特徴について以下にまとめておいた。これをお読みいただければ、
本書で企図したこの改革の意義がお解りいただけることだろう。

ポタージュの種類

Classification des Potages
料理を提供するという観点からは、ポタージュは大きく 2 つに分類される。
澄んだポタージュととろみのあるポタージュである。
格式ある正餐の献立では常に、それぞれの分類から 1 つ以上のポタージュが供される。通常の献立
では、ポタージュを 1 つだけにする場合、献立全体の流れに応じて、上記 2 つの分類のうちどちらか
一方とする。

澄んだポタージュ

Les Potages claires
澄んだポタージュは、主素材として畜肉、家禽、ジビエ、魚、甲殻類、海亀などのどれを用いたも
のでも、分類としてはただひとつとなる。つまり、澄んだコンソメ1) である。タピオカでんぷんでご
く軽くとろみをつける場合もあるが、いずれにせよ、それぞれのポタージュの性格に合わせて浮き実
は少量とする。

とろみを付けたポタージュ

Les Potages Liés

とろみのあるポタージュは5つに分類される。すなわち

1. ピュレ、クーリ、ビスク
2. クレーム
3. ヴルテ
4. とろみをつけたコンソメ
5. 特殊なポタージュ。上記のうち複数のポタージュの性格を持ち、バリエーションを展開出来ないもの。
より単純な分類にするため、本書では、ジェルミニのようなとろみを付けたコンソメは特殊なポ
タージュに含めている。その理由は「とろみを付けた特殊なポタージュ」の節の冒頭で述べることに

1) consommé 語源は動詞 consommer「完遂する、完成させる」。つまり「完全に仕上げたもの」の意。もともとは必ずしも液体
料理を指す語ではなかった。例えば 18 世紀マラン『食の贈り物』には以下のような「コンソメ」が出ている。まず「最初のブ
イヨン」をとり、それを用いて「ブイヨン・ミトナージュ」をとり、ブイヨン・ミトナージュを用いて「ブイヨン・コルディア
ル」をとり、さらにブイヨン・コルディアルを用いて「コンソメ」を作る。最終的にはとろみがつく程度に煮詰める。このコ
ンソメは単体で料理として供するものではなく、調味料的にポタージュにこくを与えたり、ソースを作るのに用いると記され
ている。つまりは本書におけるグラスドヴィアンドに近いものと考えられる。

109

ポタージュの種類
する。

上記のポタージュのうち最初の 3 種はベースとして何らかのピュレを用いるが、主に何によってと
ろみをつけるかで違いが出てくる。
「ピュレ」
「クーリ」
「ビスク」でとろみをつけるのは、主素材に応じて、米、油で揚げたパン、じゃ
がいも、いんげん豆、レンズ豆などのでんぷん質の野菜。これらのつなぎと主素材との分量比率はき
ちんと守らなければならないので、
「とろみをつけたポタージュ」の節の冒頭を参照されたい1) 。
「クレーム」と「ヴルテ」のとろみは白いルーがベースになるが、実際に用いるつなぎは違う2) 。ま
た、仕上げ方も異なる。
ヴルテの仕上げには必ず卵黄とバターを加えてとろみ付けをする。クレームはとろみ付けの要素は
足さず、バターではなく良質の生クリーム適量を加えて仕上げる。
つまり、最終的にとろみ付けの要素が違うわけだから、クレームとヴルテはまったく違うものとし
て区別すべきなのだ。
ピュレ、クーリ、ビスクは、いずれも作り方がほぼ同じわけだが、にもかかわらず、これらの語は
同義ではない。むしろ明らかに違う意味を持っていることに注意。
慣習としてピュレの名称は野菜をベースにしたものに用いるが、この名称には俗っぽい印象がある
ため、避けられる傾向にある。
クリの名称は鶏、ジビエ、魚および甲殻類のピュレについて用いる。
甲殻類のピュレについては、ビスク ̆ の名称を用いる方が多い。むしろ、ビスクと言えば甲殻類の
ピュレを指すことになっている。ただし、ビスクはその発祥から 18 世紀末まで、鶏やと鳩を主素材
にしたポタージュを意味する語だった。
とろみを付けたポタージュの多くは、主素材はそのままで単に調理法を変えれば、ピュレ、クレー
ムおよびヴルテとして展開出来るのだが、これについては後で記すことにする3) 。
本書の初版ではポタージュはこれらのとろみを付けたポタージュを 3 つに分類していた。すなわち

1. ピュレとしてでもヴルテあるいはクレームとしてでも提供可能なもの。
2. ピュレもしくはクレームとしてのみ提供可能なもの。
3. ヴルテまたはクレームとして調理可能なもの。
このように分類することはしたが、読者がレシピを探すのを容易にするためにも、もっとシンプル
な構成にする必要があることがわかった。そのため、上記 3 つの分類にしていたとろみを付けたポ
タージュは 1 つにまとめて、ポタージュの名称のアルファベット順に掲載し、それぞれのレシピの最
後にバリエーションが可能な場合は付記することにした。
結果として、ポタージュのレシピのパートは以下のような構成となった。

1. ガルニチュール(浮き実)を添えた澄んだコンソメ
2. ピュレ、ヴルテ、クレームのかたちで調理可能なポタージュ、およびピュレかクレームとして調理可
能なもの、ヴルテかクレームとしてしか調理できないもの

3. 特殊なポタージュ、つまり作り方のバリエーションがないもの。および、とろみを付けたコンソメ
4. ブルジョワ家庭料理やいろいろな地方料理からそのまま採り上げたスープとポタージュ
5. 外国のポタージュ

ポタージュを供するにあたっての注意

Considérations sur le Service des Potages
1) 原書 p.135
2) ポタージュ・ヴルテは基本ソースのヴルテをつなぎとして用いるのに対し、ポタージュ・クレームはベシャメル (原書
pp.136-138)。
3) 原書 pp.134-138

110

III.

ポタージュ Potages

ポタージュの基礎
プチットマルミット、グランドブイヨン、
コンソメのクラリフィエ

Précis des éléments nurtirifs, aromatiques
et de l’assaisonnement pour la Petite Marmite,
les Grands Bouillons, et la clarification des Consommé divers

白いコンソメ・サンプル1)

(仕上がり 10 L 分)
• 主素材……牛赤身肉 4 kg と牛骨付きすね肉 3 kg。
• 香味素材……にんじん 1.1 kg (5〜6 本)、かぶ 900 g(5〜6 ヶ)、ポワロー 200 g、パース ニップ2) 200 g、
玉ねぎ (中)2 ヶ (200 g)、クローブ 3 本、にんにく 3 片 (20 g)、セロリ 120 g。

• 加える液体……水 14 L。
• 調味料……粗塩 70 g。
• 加熱時間……5 時間。
作り方に関する補足3)
……コンソメ・サンプルを作る際、一般的には 5 時間かけて煮ることになっている。肉汁を抽出する
には充分な時間である。
しかし、骨の組織を壊して可溶性物質を確実に抽出するには 5 時間では絶対に足りない。骨から可
溶性物質を抽出することはとても重要だが、そのためには弱火で 12〜15 時間煮る必要がある。
だから、グランド・キュイジーヌでは、粗く砕いた骨を 12 時間以上煮て第1のコンソメをとるよ
うになってきている。
この第1のコンソメを第2のコンソメをとる鍋に注ぐ。この鍋で肉を約4時間、すなわち肉を煮る
のに最低限必要な時間、火にかける。
肉を野菜を塊のままではなく細かく刻めば、2つめの作業時間をさらに短かくすることも可能だ。
その場合は、通常のクラリフィエと同様の作業となる。(「クラリフィエ」の項参照)。

クラリフィエ4)

Clarifications
通常のコンソメ

(仕上がり 4 L 分)
• 白いコンソメ・サンプル……5 L。
1) consommé simple「単純な (簡素な) コンソメ」の意。肉や魚、野菜を煮て漉しただけのもの。ここでは具体的な作業手順は記
されていないが、モンタニェの『ラルース・ガストロノミーク』初版 (1937 年) の記述は概ね以下のとおり (材料はエスコフィ
エとほぼ同じ)。(a) 牛肉を紐で縛り、大鍋 (陶製が良い) に入れて水 7 L を注ぐ。火にかけて沸騰したら、表面にアルブミンの
軽く固まった膜が張るので、丁寧にこの膜を取り除く。鍋に野菜を加える。かすかに沸騰する火加減で 5 時間煮る。浮き脂を
丁寧に取り除き、布または目の細かい漉し器で漉す。5時間以上煮込んではいけない。だが、5 時間では骨に含まれているお
いしさを全て抽出出来ないので、砕いた骨を長時間煮て第 1 のブイヨンをとり、これで肉と野菜を煮るようにすると良い。(b)
鍋に砕いた骨を入れ、水をかぶる程度注ぐ。沸騰させ、あくを引き、塩を加える。弱火で 2 時間半煮る。この「沸騰したブイ
ヨン」に、骨を外して紐で縛った肉を入れる。再び沸騰させ、あくを引いて味を調える。野菜を加え、弱火で約 4 時間煮る。
塩は最初に全量を入れないこと。必要なら作業の最終段階でも塩を加える。

2) panais パネ。和名アメリカボウフウ。セリ科の根菜で、香りが良い。白く、にんじんに似た円錐形のため、俗に「白にんじん」
と呼ばれることもあるが、にんじんとは別種。でんぷん質が豊富で、ピュレ等の調理にも適している。

3) この部分は第二版で加筆された。
4) 原文 clarifications クラリフィカシオン (動詞 clarifier「澄ませる」の名詞形)。字義通りには「澄ませる作業」だが、実際にはコ
ンソメ・ドゥーブル consommé double (コンソメ・リッシュ consommé riche コンソメ・クラリフィエ consommé clarifié とも
呼ばれる) を作ることを意味する。本来はその工程のひとつであった「澄ませる作業」が作業全体を指す語として定着したのだ
ろう。

ポタージュの基礎

111

• 主素材……牛赤身肉 1.5 kg。丁寧に筋を除き、挽いておく1) 。
• 香味素材……にんじん 100 g、ポワロー 200 g。小さなさいの目2) に刻んでおく。
• 澄ませるための素材……卵白 2 ヶ分。
• 所要時間……1 時間半。
• 作業……片手鍋3) または小ぶりの寸胴鍋4) に牛挽肉、小さなさいの目に刻んだ野菜、卵白を入れ、全
体をよく混ぜる。白いコンソメ・サンプルを注ぎ入れ、時々混ぜながら5) 沸騰させる。軽く沸騰させ
ながら 1 時間半煮る。
布で漉して仕上げる。

鶏のコンソメ

(仕上がり 4 L 分)**
*白いコンソメ・サンプル……同上。
• 主素材と香味素材……同上に、以下を加える。オーヴンで軽く色づけた鶏 1 羽。鶏の首づる、手羽先、
足など6) を刻んだもの 6 羽分。ロティールした鶏のがら7) 2 羽分。

• 澄ませるための素材、方法、時間は通常のコンソメと同様にする。

1) 原文 hacher アシェ (細かく刻む)。語源は hache アーシュ (斧)。日本語の「刻む」は包丁を用い、「挽く」はミートチョッパー
のような器具を用いる場合を指すが、フランス語では区別せずどちらも hacher と表現する。
2) brunoise ブリュノワーズ
3) casserole カスロール
4) marmite マルミート。一般的には、大型で深さが直径以上ある両手鍋を指す。
5) ここは原文に忠実に訳したが、実際には常に混ぜ続けないと卵白が鍋底にくっついて無駄になってしまう。
『ラルース・ガスト
ロノミック』初版では「絶えず混ぜる」ように指示されている。

6) 原文 abatis アバティ。鶏肉として食べられる以外の部位の総称。鶏の「内臓」と訳されることが多いが、とさか、頭、首づる、
手羽先、足なども含まれる。

7) 鶏のロティ (ローストチキン) を提供した際に出る「がら」。

112

III.

ポタージュ Potages

ポタージュの主な浮き実(ガルニチュール)

Elémtent divers de Garnitures pour Potages

113

とろみを付けたポタージュ

とろみを付けたポタージュ

Potages Liés

ポタージュ・ピュレ

les Purées

主素材とつなぎ:ポタージュ・ピュレの主素材として用いるのは次のとおり。1種類または数種を
組み合わせた野菜、鶏、ジビエ、甲殻類。
ほぼ全てのポタージュ・ピュレにはつなぎを加える。すなわち、
米……鶏、甲殻類のポタージュ・ピュレおよび野菜のポタージュ・ピュレのいくつか。
じゃがいも……香草や、かぼちゃのように水分の多い野菜のポタージュ・ピュレ。
レンズ豆……ジビエのポタージュ・ピュレ。
バターで揚げたクルトン……クラシックなポタージュ・ピュレ。
昔の料理では、他にもつなぎに用いるものはあったが、とりわけクーリとビスク1) には、クルトンが
主に用いられていた2) 。とてもまろやかな仕上りになるので、現代でもこの手法を用いる価値はある。
いんげん豆やレンズ豆、じゃがいものようなでんぷん質の素材のポタージュ・ピュレにはつなぎを
加える必要はない。主素材である野菜それ自体がつなぎとなるからだ。
加える液体とつなぎの分量:ポタージュ・ピュレに加える液体は、主素材の種類に応じて、白いコ
ンソメ、ジビエのコンソメ、魚のコンソメを用いる。野菜のポタージュ・ピュレでは牛乳を用いる場
合もある。
加える液体……ベースとなるピュレ 1 L に対して 2 L。
つなぎ……

1. 米……野菜 500 g あたり 85〜120 g。鶏、ジビエ、甲殻類の身 500 g あ たり 75〜100 g。
2. レンズ豆……ジビエの肉 500 g あたり 190 g。
3. じゃがいも……香草と野菜 500 g あたり 250 g。
4. バターで揚げたクルトン……野菜または甲殻類の身 500 g あたり 270 g。
作業と仕上げ:野菜は次のいずれかの方法で処理する。(a) 薄切りにした野菜 600〜700 g あたり 80
〜100 g のバターでエテュヴェする。(b) 薄切りにした野菜を湯通し3) してからバターでエテュヴェす
る。どちらの方法を用いるかは、本書では個々のルセットに記してある。
ジビエはサルミを調理する際と同様にロティール4) してから、レンズ豆とともに煮る。火が通った
ら骨を外す。肉とレンズ豆を摺り潰し、布漉しした後、濃さを調節する。
鶏は白いコンソメでポシェする。つなぎに用いる米も一緒に煮る。火が通ったら骨を外し、その後
はジビエのピュレと同様にする。鶏およびジビエにちょうど火が通ったところで、浮き実にする分の
胸肉は別にとっておくこと。
野菜のポタージュ・ピュレは、濃さを調節したらデプイエ、つまり微沸騰の状態で 25〜30 分間か
けて不純物を取り除く。

1) 「昔の料理」におけるビスクは甲殻類のポタージュ・ピュレのことではなく、鳩などの煮込み料理のこと (本連載「ポタージュ
(1)」2012 年 6 月号 p.115 参照)。
2) 中世〜18 世紀には、とろみをつけるために、硬くなったパンを加えて弱火で煮込む (mitonner ミトネ) ことが一般的だった。
3) 原文 blanchir (ブランシール)。下茹でする、湯がくこと。野菜類のブランシールは塩を加えた湯で行なうが、素材の性質によ
り2種に分けられる。ひとつは大量の湯で素材に完全に火が通るまで茹でること。もうひとつは刳味 (アク) を除くための下茹
で、湯通し (原書 p.726)。ここでは後 者。
4) 鶏、猟鳥の胸肉の部分を豚背脂のシートで包んでセニャンにロティールする。なお、「サルミ」は古くは「猟鳥肉の煮込み」の
意であった。
『ル・ギード・キュリネール』では、ロティールした猟鳥の肉を切り分けて保温し、摺り潰したガラと端肉を煮込
んで作ったソースと合わせる (本連載「雉のサルミ」2011 年 11 月号 pp.128-129 参照)。

114

III.

ポタージュ Potages

このデプイエの作業の際、時折、冷たいコンソメを若干量加えるとよい。ピュレの中に紛れている
不純物が表面に浮かび上がって、取り除きやすくなる。
鶏、ジビエ、甲殻類のピュレは沸騰したら湯煎にかける。デプイエする必要はない。
どのポタージュ・ピュレも、仕上げにバターを加える直前に、目の細かいシノワで漉すこと。
仕上げは提供直前に行なう。火から外し、ポタージュ 1 ℓあたり 80〜100 g のバター を加える。
つなぎに白いんげん豆、じゃがいも、米などのような白いでんぷん質やクルトンを用いるポター
ジュは、さらにつなぎとして卵黄を補ってもよい。
バターを加えたら、再沸騰させてはいけないと肝に銘じること。沸騰するとバターの風味が失なわ
れてしまう。ポタージュにおいて、バターの風味は明瞭でフレッシュでなくてはいけない。

(略)
ピュレの展開1):以下に記す方法で、ピュレの多くはポタージュ・ヴルテ、ポタージュ・クレームに
することが出来る。ポタージュ・ピュレに用いるつなぎの代わりに、鶏または魚のヴルテや薄いソー
ス・ベシャメルを主素材に加えるのだ。
ただし、素材によっては、ポタージュ・ピュレ以外の仕立てに出来ないものもある。

ポタージュ・ヴルテ

les Veloutés

ベースとなるヴルテ2) :

1. 野菜のポタージュ・ヴルテの場合は、やや薄い通常のヴルテ。
2. 鶏や魚のポタージュ・ヴルテの場合は、それぞれ対応するヴルテ。
ポタージュのベースにするヴルテは、主素材となる野菜、鶏、ジビエおよび魚に応じて、通常の白
いコンソメ、鶏のコンソメ、ジビエのコンソメ、魚のコンソメ 1 ℓあたり白いルゥ 100 g を加えて
作る。
材料比率:この方法で作るポタージュは全て、次の分量配分となる。
・ベースとなるヴルテはポタージュ全体の半量。
・ポタージュの性格を決めるピュレは全体の 1/4。
・濃さを整えるのに加えるコンソメも 1/4。ただし、つなぎとして加える生クリームの分量もこれ
に含める。
例えば、仕上がり 2 ℓの「ポタージュ・ヴルテ王妃風3) 」の場合には分量は 次のようになる。
鶏のヴルテ 1 ℓ。鶏のピュレ 5dl。仕上げに加える白いコンソメ 3dl。つなぎ (生クリーム)2dl。計

2 ℓ。
作業:

(1) 主素材が鶏や魚の場合は、予め骨を外してからベースとなるヴルテで素材を煮る。次に、肉を取り出
して摺り潰し、肉を煮たヴルテでのばしてから布漉しする。このピュレにコンソメを加えて濃さを整
える。

(2) 野菜の場合は、素材の性質に応じて、湯通ししたものをバターでエテュヴェするか、生の野菜をバ
ターでエテュヴェしてから、ベースとなるヴルテに加える。野菜に火が通った後は上記と同様にする。

(3) 甲殻類の場合は、通常どおりミルポワを用いて火を通し、細かく摺り潰してからベースとなるヴルテ
に加えて煮、布漉しする。
つなぎと仕上げ:ポタージュ・ヴルテのつなぎには、仕上り 1 ℓあたり卵黄 3 ヶと生クリーム 1dl
1) 本連載「ポタージュ (1)」2012 年 6 月号 p.115 参照。
2) 基本ソースとしてのヴルテ (原書 p.15) がベースとなる。
3) à la reine (ア・ラ・レーヌ) 優美で繊細な料理に用いる表現。この名称の料理には鶏を素材としたものが多い。「ポタージュ・
ピュレ王妃風」のルセットは原書 p.146。

115

とろみを付けたポタージュ
を加える。
提供直前に、鍋を火から外して、1 ℓあたりバター 80〜100 g を加えて仕上げる。(略)

ポタージュ・クレーム

les Crèmes

ポタージュ・クレームの作り方はポタージュ・ヴルテと同じだが、以下の点が違う。

(1) ヴルテではなく薄いソース・ベシャメルをベースとして用いる。牛乳 1 ℓあたり白いルゥ 100 g で
作る。

(2) 多くの場合、仕上げに濃さを調節する際、コンソメではなく牛乳を加える。
材料比率:ポタージュ・ヴルテと同様。つまり、ベシャメルはポタージュ全体の半量、ポタージュ
の性格を決めるピュレが 1/4、濃さを整えるための白いコンソメまたは牛乳が 1/4(仕上げに加える生
クリームもこれに含める)。
作業:主素材が鶏、ジビエ、野菜、甲殻類いずれの場合も、作業はポタージュ・ヴルテの項で示し
たのと同じ。(略)
仕上げ:提供直前に、ポタージュ 1 ℓあたり 2dl の生クリームを加える。
原注:ポタージュ・ヴルテもポタージュ・クレームもデプイエは行なわない。ポタージュの濃さを
整えたら、沸騰寸前まで温め、湯煎にかけて保温しておく。表面が乾かないようバターのかけら数片
を載せる。ポタージュ・ヴルテは、供する前に卵黄、生クリーム、バターを加えて仕上げる。ポター
ジュ・クレームの仕上げは供する前に生クリームだけを加える。

116

索引

ail
Beurre d’—, 54
Aïoli
Sauce —, 46
airelle
Sauce aux Airelles
(Cranberries-Sauce), 41
Albert
Sauce — (Albert-Sauce), 41
Albuféra
Sauce —, 25
algérien(nne)
garuniture à l’—ne, 89
allemand
Sauce allemande (— Parisienne),
12
alsacien(ne)
garuniture à l’—ne, 89
amande
Beurre d’—, 54
américain(e)
garuniture à l’—e, 90
sauce —e, 25
anchois
Beurre d’—, 54
Sauce —, 25
andalou(se)
garuniture à l’—se, 90
Andalous(e)
Sauce Andalouse, 46
anglais(e)
sauces —es chaudes, 41
Sauce aux Airelles
(Cranberries-Sauce), 41
Sauce Albert (Albert-Sauce), 41
Sauce aux Aromates
(Aromatic-Sauce), 41
Sauce au Beurre à l’anglaise
(Butter Sauce), 42
Sauce brune aux Huîtres
(Brown Oyster Sauce), 43
Sauce aux Câpres
(Capers-Sauce), 42
Sauce au Céleri (Celery-Sauce),
42
Sauce Chevreuil (Roe-buck
Sauce), 42
Sauce Crème à l’anglaise
(Cream-Sauce), 42
Sauce Crevettes à l’anglaise
(Shrimps-Sauce), 42
Sauce au Fenouil (Fennel
Sauce), 43
Sauce aux Groseilles
(Gooseberry Sauce), 43
Sauce Homard à l’anglaise
(Lobster Sauce), 43

Sauce aux Huîtres (Oyster
Sauce), 43
Jus coloré (Brown Gravy), 43
Sauce aux OEufs à l’anglaise
(Eggs Sauce), 44
Sauce aux OEufs au beurre
fondue (Eggs and butter
Sauce), 44
Sauce aux Oignons (Onions
Sauce), 44
Sauce au Pain (Bread Sauce), 44
Sauce au Pain frit (Fried bread
Sauce), 44
Sauce Persil (Perseley Sauce),
44
Sauce Persil pour Poissons, 44
Sauce aux Pommes (Apple
Sauce), 45
Sauce au Porto (Porto Wine
Sauce), 45
Sauce au Raifort chaude (Horse
radish Sauce), 45
Sauce Réforme (Reform Sauce),
45
Sauce Diable (Devilled Sauce),
42
Sauce Ecossaise (Scotch eggs
Sauce), 43
Sauce Sauge et Oignons (Sage
and onions Sauce), 45
Sauce Yorkshire, 45
sauces —es froides
Sauce Cambridge
(Cambridge-Sauce), 52
Sauce Cumberland
(Cumberland-Sauce), 52
Sauce Gloucester
(Gloucester-Sauce), 52
Sauce Menthe (Mint-Sauce), 52
Sauce Raifort (Cold horseradish
sauce), 52
sauces froides —es, 52
appareil
bordures en farce, 78
bordures en légumes, 78
bordures en pâte blanche, 78
bordures en pâte à nouille, 78
—s à cromesquis et à croquettes,
77
croûtons, 79
duxelles pour garnitures diverses,
79
duxelles à la bonne femme, 80
duxelles pour légumes farcis, 79
duxelles sèche, 79
essence de tomate, 80
fonds de plats, tampons et
croustades, 80

fondue de tomate ou Portugaise,
80
— et préparations diverses pour
garnitures chaudes, 77
— et préparations diverses pour
garnitures froides, 84
composition de l’appareil pour
mousses et mousselines
froides, 84
aspics, 85
chauds-froids, 86
garnitures de mets froids, 87
moulage des mousselines
froides, 85
moulage des mousses froides,
84
pain froids, 87
soufflés froids, 85
Kache de Sarrazin pour Poatages,
81
Kache de Semoule pour le
Coulibiac, 81
— Maintenon, 77
matignon, 81
mirepoix, 82
mirepoix fine, dite à la Bordelaise,
82
— à l Montglas, 77
orge perlé pour volailles farcies et
autres usages, 82
pâte à chou d’office, 82
pâte à frire pour Beignets de
cervelles et de laitances,
fritots, etc., 82
pâte à frire pour Légumes, 83
—s à pomme Dauphine, Duchesse
et Marquise, 77
— à la Provençale, 77
riz pour farcir les volailles servies
en relevé ou en entrée, 83
salpicons divers, 83
twarogue pour piroguis, 83
arlésien(ne)
garuniture à l’—ne, 90
aromate
Sauce aux Aromates, 41
aspics (généralité), 85
aurore
Sauce —, 26
Sauce Chaud-froid —, 28
Sauce — maigre, 26
aveline
Beurre d’—, 54
banquier(ère)
garuniture à la Banquière, 91
bâtard
Sauce Bâtarde, 27

117

索引
bavarois(e)
Sauce —(e), 26
béarnais
Sauce Béarnaise à la glace de
viande, 27
Sauce Béarnaise tomatée, 26
béarnais(e)
Sauce —e, 26
Béchamel (sauce), 13
Bercy
Beurre —, 54
Sauce —, 27
Berny (Bernis)
garuniture à la Berny, 91
berrichon(ne)
garuniture à la Berrichonne, 91
beurre
Beurre de Provence (Aïoli), 46
Beurres Composés, 53
Beurre de Paprika, 57
Beurre Bercy, 54
Beurre de Caviar, 54
Beurre Chivrya, 54
Beurre Colbert, 54
Beurre Colorant rouge, 54
Beurre Colorant vert, 55
Beurre de Crevette, 55
Beurre d’Ail, 54
Beurre d’Amande, 54
Beurre d’Anchois, 54
Beurre d’Aveline, 54
Beurre d’Echalote, 55
Beurre d’Ecrevisse, 55
Beurre pour les Escargots, 55
Beurre d’Estragon, 55
Beurre de Hareng, 55
Beurre de Homard, 56
Beurre de Laitance, 56
Beurre à la Maître d’hôtel, 56
Beurre Manié, 56
Beurre Marchand de vin, 56
Beurre à la Meunière, 57
Beurre de Montpellier pour
croûtonnage de plats, 57
Beurre de Montpellier, 57
Beurre de Moutarde, 57
Beurre noir pour les grands
services, 57
Beurre de noisette, 57
Beurre de Pimentos, 57
Beurre de Pistache, 57
Beurre à la Polonaise, 58
Beurre de Raifort, 58
Beurre Ravigote, 54, 58
Beurre de Saumon fumé, 58
Beurre de Truffe, 58
Beurre vert, 58
Beurres Printaniers, 58
Coulis divers, 58
Huile de Crustacés, 58
Sauce au Beurre, 27
Sauce au Beurre à l’anglaise
(Butter Sauce), 42
beurre manié, 56
bigarade
Sauce —, 14
bizontin(e) ⇒ bisontin(e)
garuniture à la —e, 91
bohémien(ne)
Sauce Bohémienne, 46
bonne femme
duxelles à la —, 80
Bonnefoy

Sauce —, 27
bordelais
Sauce Bordelaise au vin blanc, 27
bordelais(e)
mirepoix fine, dite à la —e, 82
Sauce Bordelaise, 14
bordure
— en farce, 78
— en légumes, 78
— en pâte blanche, 78
— en pâte à nouille, 78
boulanger/boulangère
garuniture à la —ère, 92
bouquetière
garuniture à la —, 92
bourgeois(e)
garuniture à la —, 92
bourguignon(ne)
Sauce Bourguignonne, 14
brabançon(ne)
garuniture à la —ne, 93
Bréhan
garuniture —, 93
breton
Sauce Bretonne (blanche), 27
breton(ne)
garuniture à la —ne, 93
Sauce Bretonne (brune), 14
Brillat-Savarin
garuniture —, 93
Bristol
garuniture —, 93
bruxellois(e)
garuniture à la —e, 94
Cambridge
Sauce — (Cambridge-Sauce), 52
cancalais(e)
garuniture à la —e, 94
canotier(ère)
Sauce Canotière, 27
câpre
Sauce aux Câpres, 28
Sauce aux Câpres (Capers-Sauce),
42
cardinal
garuniture à la —, 94
Sauce —, 28
castillan(e)
garuniture à la —e, 94
caviar
Beurre de —, 54
céleri
Sauce au Céleri (Celery-Sauce), 42
céleris
pâte à frire pour Légumes, 83
cervelle
pâte à frire pour Beignet de
cervelles et de laitances,
fritots; etc., 82
Chambord
garuniture —, 94
champignon
Sauce aux Champignons
(blanche), 28
Sauce aux Champignons (brune),
15
champisnon
duxelles à la bonne femme, 80
duxelles pour légumes farcis, 79
duxelles pour garnitures diverses,
79
duxelles sèche, 79

Chantilly
Sauce —, 28
Sauce — (froide), 46
charcutier(ère)
Sauce Charcutière, 15
chasseur
Sauce —, 15
Sauce — (Procédé Escoffier), 15
Chateaubriand
Sauce —, 28
Châtelaine
garuniture —, 95
chaud-froid
Sauce — Aurore, 28
Sauce — blanche ordinaire, 28
Sauce — blonde, 28
Sauce — brune, 15
Sauce — brune pour Canards, 16
Sauce — brune pour Gibier, 16
Sauce — maigre, 29
Sauce — tomatée, 16
Sauce — au Vert-pré, 29
chauds-froids (généralité), 86
chevreuil
Sauce —, 16
Sauce Chevreuil (Roe-buck
Sauce), 42
chipolata
garuniture à la —, 95
Chivry
Beurre —, 54
Sauce —, 29
Choisy
garuniture —, 95
Choron
garuniture —, 95
Sauce —, 26
chou (pâte)
pâte à — d’office, 82
Clamart
garuniture à la —, 95
clarification
— des gelées, 65
gelée
— de gibier, 65
—s grasses ordinaires, 65
— de poisson blanche, 66
— de poisson au vin rouge, 66
— de volaille, 65
Colbert
Beurre —, 54
Sauce —, 16
colorant
Beurre — rouge, 54
Beurre — vert, 55
commodore
garuniture de —, 96
compote
garuniture de —, 95
garnitures de mets froids (généralité),
88
Conti
garuniture de —, 96
coulis
Coulis divers, 58
Coulis d’oignons Soubise, 38
cranberry
Cranberries-Sauce, 41
crème
Sauce à la —, 29
Sauce Crème à l’anglaise
(Cream-Sauce), 42
crème aigre

118
Sauce Smitane, 37
crevette
Beurre de —, 55
Sauce aux Crevettes, 29
Sauce Crevettes à l’anglaise
(Shrimps-Sauce), 42
cromesqui
appareils à — et à croquettes, 77
croquette
appareils à cromesquis et à —, 77
crosnes
pâte à frire pour Légumes, 83
croustade, 80
crustace
Huile de —s, 58
cuisine russe
twarogue pour piroguis, 83
Cumberland
Sauce — (Cumberland-Sauce), 52
currie
Sauce —, 30
Sauce — à l’Indienne, 30
Cussy (marquis de)
garuniture —, 96
Daumont
garuniture —, 96
dauphin(e)
appareil à pomme —e, 77
garuniture —e, 96
diable
Sauce —, 16
Sauce Diable (Devilled Sauce), 42
Sauce — Escoffier, 16
Diane
Sauce —, 17
dieppois(e)
garuniture —e, 97
diplomat(e)
Sauce —e , 30
Doria
garuniture —e, 97
Dubarry
garuniture —, 97
duc / duchesse
appareil à pomme duchesse, 77
garuniture à la Duchesse, 97
duxelles
— à la bonne femme, 80
— pour garnitures diverses, 79
— pour légumes farcis, 79
Sauce —, 17
— sèche, 79
echalote
Beurre de —, 55
écossais(e)
Sauce —e, 30
ecrevisse
Beurre d’—, 55
Sauce Nantua, 34
escargot
Beurre pour les —, 55
espagnol
Sauce —e, 10
Sauce Espagnole maigre, 11
essence
—s diverses (fonds), 7
— de poisson, 7
— de tomate, 80
estouffade
— (fonds brun), 5
estragon

索引
Beurre d’—, 55
Jus lié à l’Estragon, 19
Sauce — (blanche), 31
Sauce — (brune), 17
farce, 69
A. — à la Panade et au beurre, 70
B. — à la Panade et à la crème, 70
B. — fine à la crème, ou
Mousseline, 70
— de veau pour Bordures de
dressage, fonds, quenelles
fourrées, etc., 73
Godiveau, 71
— de veau à la graisse de boeuf, 71
farce, 67
bordures en —, 78
— pour les pièces froides A (Porc),
75
— pour les pièces froides B (Veau
et Porc), 75
— pour les pièces froides C
(Volaille et Gibier), 75
Godiveau A. Godeiveau mouillé à
la glace, 71
Godiveau B. Godeiveau à la
crème, 72
Godiveau C. Godeiveau Lyonnais
ou Farce de Brochet à la
graisse, 72
— gratin, 73
— Gratin A, 73
— Gratin B, 74
— Gratin C, 74
orge perlé pour volailles farcies et
autres usages, 82
les panades pour farces, 68
panade A, 68
panade B, 68
panade C, 69
panade D, 69
panade E, 69
— pour les pièces froides, 74
—s spéciales pour les poissons
braisés A, 75
—s spéciales pour les poissons
braisés B, 75
pour farcir les volailles servies en
Relevé ou en Entrée, 83
Favorige (La)
garuniture à la Favorite, 98
fenouil
Sauce au Fenouil (Fennel Sauce),
43
fermier/fermière
garuniture à la Fermière, 98
financier(ère)
Sauce Financière, 17
financier/financère
garuniture à la Financière, 99
fines herbes
Sauce aux —, 17
Sauce aux — (blanche), 31
flamand(e)
garuniture à la —e, 99
florentin(e)
garuniture à la —e, 99
Florian
garuniture —, 99
fonds, 1
— blanc ordinaire, 5
— brun, 5
estouffade (fonds brun), 5

— de gibier, 6
— de poisson au vin rouge, 6
— de veau brun, 5
fumet de poisson, 6
— de plats, 80
— de volaille, 5
forestier/forestière
garuniture à la Forestière, 99
Foyot
Sauce —, 27
Frascati
garuniture —, 100
frire
pâte à —
pâte à frire pour Beignet de
cervelles et de laitances,
fritots; etc., 82
pâte à frire pour Légumes, 83
fritot
pâte à frire pour Beignet de
cervelles et de laitances,
fritots; etc., 82
fumet
— de poisson, 6
garniture
farce, 69
A. Farce à la Panade et au
beurre, 70
B. Farce à la Panade et à la
crème, 70
C. Farce fine à la crème, ou
Mousseline, 70
Godiveau, 71
panade, 68
Farce de veau pour Bordures de
dressage, fonds, quenelles
fourrées etc., 73
Farce de veau à la graisse de
boeuf, 71
panade, 68
garniture
— à l’Algérienne, 89
— à l’Alsacienne, 89
— à l’Américaine, 90
— à l’Andalouse, 90
appareil
bordures en farce, 78
bordures en légumes, 78
bordures en pâte blanche, 78
bordures en pâte à nouille, 78
appareils à cromesquis et à
croqeuttes, 77
croûtons, 79
duxelles à la bonne femme, 80
duxelles pour garniture
diverses, 79
duxelles pour légumes farcis, 79
duxelles sèche, 79
essence de tomate, 80
fonds de plats, tampons et
croustades, 80
fondue de tomate ou
Portugaise, 80
Kache de Sarrazin pour
Potages, 81
Kache de Semoule pour le
Coulibiac, 81
appareil Maintenon, 77
matignon, 81
mirepois, 82
mirepoix fine, dite à la
Bordelaise, 82

119

索引
appareil à la Montglas, 77
orge perlé pour volailles farcies
et autres usages, 82
pâte à chou d’office, 82
pâte à frire pour Beignets de
cervelles et de laitances,
fritots, etc., 82
pâte à frire pour Légumes, 83
appareils à pomme Dauphine,
Duchesse et Marquise, 77
appareil à la provençale, 77
riz pour farcir les volailles
servies en relevé ou en
entrée, 83
salpicons divers, 83
twarogue pour piroguis, 83
appareils et préparations diverses
pour garnitures chaudes, 77
appareils et préparations diverses
pour garnitures froides, 84
composition de l’appareil pour
mousses et mousselines
froides, 84
aspics, 85
chauds-froids, 86
garnitures de mets froids, 87
moulage des mousselines
froides, 85
moulage des mousses froides,
84
pain froids, 87
soufflés froids, 85
— à l’Arlésienne, 90
— à la Banquière, 91
— à la Berny, 91
— à la Berrichonne, 91
— à la Bizontine, 91
— à la Boulangère, 92
— à la Bouquetière, 92
— à la Bourgeoise, 92
— à la Brabançonne, 93
— Bréhan, 93
— à la Bretonne, 93
— Brillat-Savarin, 93
— Bristol, 93
— à la Bruxelloise, 94
— à la Cancalaise, 94
— à la Cardinal, 94
— à la Castillane, 94
— Chambord, 94
— Châtelaine, 95
— à la Chipolata, 95
— Choisy, 95
— Choron, 95
— à la Clamart, 95
— à la Commodore, 96
— de Compote, 95
Considération sur les
modificqtions de forme que
peuvent subir les Garnitures,
88
— Conti, 96
— Cussuy, 96
— Daumont, 96
— à la Dauphine, 96
— à la Dieppoise, 97
— Doria, 97
— Dubarry, 97
— à la Duchesse, 97
farce
Farce pour les pièces froides A
(Porc), 75

Farce pour les pièces froides B
(Veau et Porc), 75
Farce pour les pièces froides C
(Volaille et Gibier), 75
Farce Gratin B, 74
Farce Gratin C, 74
Farce spéciale pour les poissons
braisés A, 75
Farce spéciale pour les poissons
braisés B, 75
farce
Farce Gratin, 73
Farce Gratin A, 73
— à la Favorite, 98
— à la Fermière, 98
— à la Financière, 99
— à la Flamande, 99
— à la Florentine, 99
— Florian, 99
— Frascati, 100
— à la Forestière, 99
— à la Gastronome, 100
— Godard, 101
— Grand-Duc, 101
— à la Grecque, 101
— Henri IV, 101
— à la Hongroise, 101
— à l’Indienne, 101
— à l’Italienne, 101
— à la Japonaise, 101
— à la Jardinière, 102
— Joinville, 102
— Judic, 102
— Languedocienne, 102
— Lorette, 102
— Louisiane, 103
— Lucullus, 103
— Macédoine, 103
— Madeleine, 104
— à la Maraîchère, 104
— Marie-Louise, 105
— à la Marinière, 105
— Marquise, 105
— Maréchal, 104
— à la Marseillaise, 105
— Mascotte, 106
— Masséna, 106
— Matelote, 106
— Médicis, 106
Remarque importante sur les
sauces applicables aux
Entrées de Boucherie garnies
de Légumes, 89
garnitures, 67
farces, 67, 68
panade A, 68
panade B, 68
panade C, 69
panade D, 69
panade E, 69
garnitures de mets froids (généralité),
87
gastronome
garuniture à la —, 100
gelée, 63
Fonds pour gelée de gibier, 64
Fonds pour gelée ordinaire, 63, 64
Fonds de poisson pour gelée
ordinaire, 64
Fonds pour gelée de poisson au
vin rouge, 64
Fonds pour gelée de volaille, 64
geléé

Clarification
— de gibier, 65
—s grasses ordinaires, 65
— de poisson blanche, 66
— de poisson au vin rouge, 66
— de volaille, 65
Clarification des —s, 65
genevois(e)
Sauce Genevoise, 17
Génois(e)
Sauce —e (froide), 46
gibier
fonds de —, 6
glace de —, 8
gibier
gelée
Fonds pour gelée de —, 64
glace
—s diverses, 7
— de gibier, 8
— de poisson, 8
— de viande, 7
— de volaille, 8
Gloucester
Sauce — (Gloucester-Sauce), 52
Godard
garuniture —, 101
Sauce —, 18
godiveau, 71
godiveau
A. — mouillé à la glace, 71
B. — à la crème, 72
C. — Lyonnais ou Farce de
Brochet à la graisse, 72
grand-duc
garuniture —, 101
grand-veneur
Sauce —, 18
Sauce — (Procédé Escoffier), 18
gratin
farce —, 73
Sauce —, 18
gravy
Jus coloré (Brown Gravy), 43
grec/grecque
garuniture à la grecque, 101
gribiche
Sauce — (froide), 47
groseille
Sauce — au Raifort (froide), 47
Sauce —s, 31
Sauce aux Groseilles (Gooseberry
Sauce), 43
haché(e)
Sauce Hachée, 19
Sauce Hachée maigre, 19
hareng
Beurre de —, 55
Henri IV
garuniture —, 101
hollandais(e)
Sauce —e, 31
homard
Beurre de —, 56
Sauce —, 31
Sauce Homard à l’anglaise
(Lobster Sauce), 43
hongrois(e)
garuniture à la —e, 101
Sauce —e, 32
huître
Sauce aux Huîtres, 32

120
Sauce aux Huîtres (Oyster Sauce),
43
Sauce brune aux Huîtres (Brown
Oyster Sauce), 43
Hussard(e)
Sauce Hussarde, 19
indien(ne)
garuniture à l’ —ne, 101
Sauce —ne, 32
italien(ne)
garuniture à l’ —ne, 101
Sauce Italienne, 19
Sauce —ne (froide), 47
ivoire
Sauce —, 32
japonais(e)
garuniture à la —e, 101
jardinier/jardinière
garuniture à la Jardinière, 102
Joinille
garuniture —, 102
Joinville
Sauce —, 32
Judic
garuniture —, 102
jus
— de veau brun, 5
— de veau lié, 11
— lié à l’Estragon, 19
— lié tomaté, 19
kache
— de Sarrazin pour Potages, 81
— de Semoule pour le Coulibiac,
81
Laguipière
Sauce —, 32
laitance
Beurre de —, 56
pâte à frire pour Beignet de
cervelles et de laitances,
fritots; etc., 82
languedocien(ne)
garuniture —, 102
légume
bordures en —s, 78
legumes
pâte à frire Légumes, 83
livonien(ne)
Sauce —ne, 33
lyonnais(e)
Sauce Lyonnaise, 19
lorette
garuniture —, 102
Louisiane
garuniture —, 103
Lucullus
garuniture —, 103
macédoine
garuniture —, 103
Madeleine
garuniture —, 104
madère
Sauce —, 20
Maintenon
appareil —, 77
maître d’hôtel
Beurre à la —, 56
maltais(e)

索引
Sauce —e, 33
maraîcher/maraîchère
garuniture à la Maraîchère, 104
marcand de vin
Beurre —, 56
maréchal
garuniture —, 104
Marie-Louise (d’Autriche)
garuniture —, 105
marinade, 59
conservation des marinades, 61
marinade crue ou cuite pour
grosse venaison, 60
marinade crue pour viande de
boucherie ou venaison, 60
marinade cuite pour le mouton en
chevreuil, 60
marinade cuite pour viande de
boucherie ou venaison, 60
marinade instantanée, 59
marinade et saumures, 59
marinier(ère)
Sauce Marinière, 33
marinière
garuniture à la —, 105
marquis(s)
appareil à pomme —e, 77
marquise
garuniture —, 105
marseillais(e)
garuniture —e, 105
Mascotte
garuniture —, 106
Masséna
garuniture —, 106
matelote
garuniture —, 106
Sauce —, 20
Sauce — blanche, 33
matignon, 81
mayonnaise
Sauce —, 47
Sauce Mayonnaise collée, 48
Sauce — fouettée à la Russe, 48
Sauces — diverses, 49
médicis
garuniture —, 106
menthe
Sauce — (Mint-Sauce), 52
meunière (à la)
Beurre à la —, 57
mirepoix, 10
mirepoix, 82
— fine, dite à la Bordelaise, 82
moelle
Sauce —, 20
Montpellier
Beurre de —, 57
Beurre de — pour Croûtonnage de
plats, 57
Montglas
appareil à la —, 77
Mornay
Sauce —, 34
moscovite
Sauce —, 20
mousquetaire
Sauce —, 49
mousse
— froide, 84
froide
Composition de l’appareil pour
mousses et mousseline

froides, 84
moulage des mousses froides,
84
mousseline
farce mousseline, 70
mousseline
— froide, 84
froide
Composition de l’appareil pour
mousses et mousseline
froides, 84
moulage des mousselines
froides, 85
Sauce —, 34
mousseux/mousseuse
Sauce Mousseuse, 34
moutarde
Beurre de —, 57
Sauce —, 34
Sauce — à la crème (froide), 49
Nantua
Sauce —, 34
New-burg
Sauce — avec le homard cru, 35
Sauce — avec le homard cuit, 35
noir
Beurre — pour les grands services,
57
noisette
Beurre de —, 57
Sauce —, 35
noix
sauce
Sauce Raifort aux — (froide), 49
normande
Sauce —, 35
nouille
bordures en pâte à —, 78
oeuf
Sauce aux OEufs à l’anglaise
(Eggs Sauce), 44
Sauce aux OEufs au beurre fondu
(Eggs and butter Sauce), 44
oignon
Sauce aux Oignons (Onions
Sauce), 44
Sauce Sauge et Oignons (Sage and
onions Sauce), 45
orge perlé, 82
oriental(e)
Sauce —e, 36
pain
Sauce au Pain (Bread Sauce), 44
Sauce au Pain frit (Fried bread
Sauce), 44
pains froids (généralité), 87
palois
Sauce Paloise, 36
panade, 68
A. — au pain, 68
B. — à la farine, 68
C. — à la Frangipane, 69
D. — au Riz, 69
E. — à la pomme de terre, 69
paprika
Beurre de —, 57
parisien
Sauce Parisienne = Sauce
Allemande, 12
pâte

121

索引
chou
pâte à chou d’office, 82
— à frire
pâte à frire pour Beignets de
cervelles et de laitances,
fritots, etc., 82
pâte à frire pour Légumes, 83
pâte blanche
bordures en —s, 78
Pau
Sauce Paloise, 36
périgourdin(e)
Sauce Périgourdine, 20
Périgueux
Sauce —, 20
persil
Sauce Persil (Perseley Sauce), 44
Sauce Persil pour Poissons, 44
pimentos
Beurre de —, 57
piquant(e)
Sauce Piquante, 20
pistache
Beurre de —, 57
poisson
gelée
Fonds de — pour gelée
ordinaire, 64
Fonds pour gelée de poisson au
vin rouge, 64
poivrade
Sauce — pour Gibier, 21
Sauce — ordinaire, 21
poivron
beurre pimentos
Beurre de Pimentos, 57
polonais(e)
Beurre à la —e, 58
pomme
Sauce aux Pommes (Apple Sauce),
45
Porto
Sauce au —, 21
porto
Sauce au Porto (Porto Wine
Sauce), 45
portugais(e)
foudue de tomate ou Portugaise,
80
Sauce Portugaise, 21
poulette
Sauce —, 36
printanier(ère)
Beurres Printaniers, 58
provençal(e)
Sauce Provençale, 22
Provence
Beurre de Provence (Aïoli), 46
provençale(e)
appareil à la —e, 77
raifort
Beurre de —, 58
Sauce — (Cold horseradish sauce),
52
Sauce Groseilles au — (froide), 47
Sauce au Raifort chaude (Horse
radish Sauce), 45
Sauce — aux noix (froide), 49
ravigote
Beurre —, 58
Sauce —, 36

Sauce — , ou vinaigrette (froide),
49
ravitote
Beurre —, 54
reform
Sauce Réforme (Reform Sauce), 45
Régence
Sauce —, 22
Sauce — pour garnitures de
Volaille, 37
Sauce — pour Poissons, 37
rémoulade
Sauce —, 50
riche
Sauce —, 37
riz
— pour farcir les volailles servies
en Relevé ou en Entrée, 83
Robert
Sauce —, 22
Sauce — Escoffier, 22
romain(e)
Sauce Romaine, 22
rouannais(e)
Sauce Rouannaise, 23
roux, 8
— blanc, 9
— blond, 9
— brun, 8
cuisson du —, 8
Rubens
Sauce —, 37
russe
Sauce — (froide), 50
Sauce Mayonnaise fouettée à la —,
48
Saint-Malo
Sauce —, 37
salmis
Sauce —, 23
salpicon, 83
salsifis
pâte à frire pour Légumes, 83
sarrazin
Kache de — pour Potages, 81
sauce
*Grandes —s de Base, 3, 10
— Allemande, 12
— Béchamel, 13
— Demi-glace, 11
— Espagnole, 10
— Espagnole maigre, 11
— de veau lié, 11
— Suprême, 12
— tomate, 13
Velouté, 12
— Albuféra, 25
— américaine, 25
— Anchois, 25
— Andalouse, 46
— anglaie chaude
— aux Câpres (Capers-Sauce),
42
—s anglaises chaudes, 41
— aux Airelles
(Cranberries-Sauce), 41
— Albert (Albert-Sauce), 41
— aux Aromates
(Aromatic-Sauce, 41
— au Beurre à l’anglaise (Butter
Sauce), 42

— brune aux huitres (Brown
Oyster Sauce), 43
— au Céleri (Celery-Sauce), 42
— Chevreuil (Roe-buck Sauce),
42
— Crème à l’anglaise
(Cream-Sauce), 42
— Crevettes à l’anglaise
(Shrimps-Sauce), 42
— Diable (Devilled Sauce), 42
— Ecossaise (Scotch eggs
Sauce), 43
— au Fenouil (Fennel Sauce), 43
— aux Groseilles (Gooseberry
Sauce), 43
— Homard à l’anglaise (Lobster
Sauce), 43
— aux huitres (Oyster Sauce), 43
Jus coloré (Brown Gravy), 43
— aux OEufs à l’anglaise (Eggs
Sauce), 44
— aux OEufs au Beurre fondu
(Eggs and butter Sauce), 44
— aux Oignons (Onions Sauce),
44
— au Pain (Bread Sauce), 44
— au Pain frit (Fried bread
Sauce), 44
— Persil (Perseley Sauce), 44
— Persil pour Poissons, 44
aux Pommes (Apple Sauce), 45
— au Porto (Port Wine Sauce),
45
— au Raifort Chaude (Horse
radish Sauce), 45
— Réforme (Reform Sauce), 45
— Sauge et Oignons (Sage and
onions Sauce), 45
— Yorkshire, 45
— Aurore, 26
— Aurore maigre, 26
— Bâtarde, 27
— Bavaroise, 26
— Béarnaise, 26
— Béarnaise à la glace de viande,
27
— Béarnaise tomatée, 26
— Béchamel, 13
— Bercy, 27
— au Beurre, 27
— Bigarade, 14
— Bohémienne, 46
— Bonnefoy, 27
— Bordelaise, 14
— Bordelaise au vin blanc, 27
— Bourguignonne, 14
— Bretonne (blanche), 27
— Bretonne (brune), 14
— Canotière, 27
— aux Câpres, 28
— Cardinal, 28
— aux Cerises, 15
— aux Champignons (brune), 15
— aux Champignons (blanches),
28
— Chantilly, 28
— Chantilly (froide), 46
— Charcutière, 15
— Chasseur, 15
— Chasseur (Procédé Escoffier), 15
— Chateaubriand, 28
— Chaud-froid Aurore, 28

122
— Chaud-froid blanche ordinaire,
28
— Chaud-froid blonde, 28
— Chaud-froid brune, 15
— Chaud-froid brune pour
Canards, 16
— Chaud-froid brune pour Gibier,
16
— Chaud-froid maigre, 29
— Chaud-froid tomatée, 16
— Chaud-froid au Vert-pré, 29
— Chevreuil, 16
— Chivry, 29
— Choron, 26
— Colbert, 16
— à la Crème, 29
— aux Crevettes, 29
— Currie, 30
— Currie à l’Indienne, 30
— Demi-glace, 11
— Diable, 16
— Diable Escoffier, 16
— Diane, 17
— Diplomate, 30
— Duxelles, 17
— Ecossaise, 30
— Espagnole, 10
— Espagnole maigre, 11
— Estragon (blanche), 31
— Estragon (brune), 17
— Financière, 17
— aux Fines Herbes, 17
— aux Fines Herbes (blanche), 31
— Foyot, 27
—s froides anglaises, 52
— Cambridge
(Cambridge-Sauce), 52
— Cumberland
(Cumberland-Sauce), 52
— Gloucester
(Gloucester-Sauce), 52
— Menthe (Mint-Sauce), 52
—s froides anglaises06
— Raifort (Cold horseradish
sauce), 52
— Genevoise, 17
— Génoise (froide), 46
— Godard, 18
— Grand-Veneur, 18
— Grand-Veneur (Procédé
Escoffier), 18
— Gratin, 18
— Gribiche (froide), 47
— Groseilles au Raifort (froide), 47
— Groseilles, 31
— Hachée, 19
— Hachée maigre, 19
— Hollandaise, 31
— Homard, 31
— Hongroise, 32
— aux Huîtres, 32
— Hussarde, 19
— Indienne, 32
— Italienne, 19
— Italienne (froide), 47
— Ivoire, 32
— Joinville, 32
Jus lié à l’Estragon, 19
Jus lié tomaté, 19
— Laguipière, 32
— Livonienne, 33
— Lyonnaise, 19
— Madère, 20

索引
— Maltaise, 33
— Marinière, 33
— Matelote, 20
— Matelote blanche, 33
— Mayonnaise, 47
— Mayonnaise collée, 48
— Mayonnaise fouettée à la Russe,
48
—s Mayonnaises diverses, 49
— Moelle, 20
— Mornay, 34
— Moscovite, 20
— Mousquetaire, 49
— Mousseline, 34
— Mousseuse, 34
— Moutarde, 34
— moutarde à la crème (froide), 49
— Nantua, 34
— New-burg avec le homard cru,
35
— New-burg avec le homard cuit,
35
— Noisette, 35
— Normande, 35
— Orientale, 36
— Paloise, 36
— parisienne (ex-Allemande), 12
— Périgourdine, 20
— Périgueux, 20
Petites —s Blanches Composées,
25
— Albuféra, 25, 26
— Américaine, 25
— Anchois, 25
— Aurore maigre, 26
— Bavaroise, 26
— Béarnaise, 26
— à la glace de viande, 27
— Béarnaise tomatée, 26
— Bercy, 27
— au Beurre, 27
— Bonnefoy, 27
— Bretonne, 27
— Canotière, 27
— qux Câpres, 28
— Cardinal, 28
— aux Champignons, 28
— Chantilly, 28
— Chateaubriand, 28
— Chaud-froid Aurore, 28
— Chaud-froid blanche
ordinaire, 28
— Chaud-froid blonde, 28
— Chaud-froid maigre, 29
— Chaud-froid au Vert-pré, 29
— Chivry, 29
— à la Crème, 29
— aux Crevettes, 29
— Currie, 30
— Currie à l’Indienne, 30
— Diplomate, 30
— Ecossaise, 30
— Estragon, 31
— aux Fines Herbes, 31
— Groseilles, 31
— Hollandaise, 31
— HOmard, 31
— Hongroise, 32
— aux Huîtres, 32
— Indienne, 32
— Ivoire, 32
— Joinville, 32
— Laguipière, 32

— Livoinienne, 33
— Maltaise, 33
— Marinière, 33
— Matelote blanche, 33
— Mornay, 34
— Mousseline, 34
— Mousseuse, 34
— Moutarde, 34
— Nantua, 34
— New-burg avec le homard
cru, 35
— New-burg avec le homard
cuit, 35
— NOisette, 35
— NOrmande, 35
— Orientale, 36
— paloise, 36
— Poulette, 36
— Ravigote, 36
— Régence pour garnitures de
Volaille, 37
— Régence pour Poissons, 37
— Riche, 37
— Rubens, 37
— Solférino, 37
— Saint-Malo, 37
— Smitane, 37
— Soubise, 38
— Soubise tomatée, 38
— Souchet, 38
— Tyrolienne, 39
— Tyrolienne à l’ancienne, 39
— Valois, 39
— Vénitienne, 39
— Véron, 39
— Villageoise, 39
— Villeroy, 39
— Villeroy Soubisée, 40
— Villeroy tomatée, 40
— Vin blanc, 40
Petites —s Brunes Composées, 14
— Bigarade, 14
— Bordelaise, 14
— bourguignonne, 14
— Bretonne, 14
— aux Cerises, 15
— aux Champignons, 15
— Charcutière, 15
— Chasseur, 15
— Chasseur (Procédé Escoffier),
15
— Chaud-froid brune, 15
— Chaud-froid tomatée, 16
— Chaud-froid pouir Canards,
16
— Chaud-froid pour Gibier, 16
— Chevreuil, 16
— Colbert, 16
— Diable, 16
— Diable Escoffier, 16
— Diane, 17
— Duxelles, 17
— Estragon, 17
— Financière, 17
— aux Fines Herbes, 17
— Genevoise, 17
— Godard, 18
— Grand-Veneur, 18
— Grand-Veneur (Procédé
Escoffier), 18
— Gratin, 18
— Hachée, 19
— Hachée maigre, 19

123

索引
— Hussarde, 19
— Italienne, 19
Jus lié à l’estragon, 19
Jus lié tomatée, 19
— Lyonnaise, 19
— Madère, 20
— Matelote, 20
— Moelle, 20
— Moscovite, 20
— Périgourdine, 20
— Périgueux, 20
— piquante, 20
— Poivrade pour Gibier, 21
— Poivrade, 21
— Porto, 21
— Portugaise, 21
— Provençale, 22
— Régence, 22
— Robert, 22
— Robert Escoffier, 22
— Romaine, 22
— Rouannaise, 23
— Salmis, 23
— Tortue, 24
— Venaison, 24
— au Vin rouge, 24
— Zingara A, 24
— Zingara B, 24
— Piquante, 20
— Poivrade pour Gibier, 21
— Poivrade ordinaire, 21
— au Porto, 21
— Portugaise, 21
— Poulette, 36
— Provençale, 22
— Raifort aux noix (froide), 49
— Ravigote, 36
— Ravigote, ou Vinaigrette
(froide), 49
— Régence, 22
— Régence pour garnitures de
Volaille, 37
— Régence pour Poissons, 37
— Rémoulade, 50
— Riche, 37
— Robert, 22
— Robert Escoffier, 22
— Romaine, 22
— Rouannaise, 23
— Rubens, 37
— Russe (froide), 50
— Saint-Malo, 37
— Salmis, 23
sauce froide
— Aïoli, 46
— Andalouse, 46
Beurre de Provence, 46
— Bohémienne, 46
— Chantilly, 46
— Génoise, 46
— Gribiche, 47
— Grroseilles au Rifort, 47
— Italienne, 47
— Mayonnaise, 47
— Mayonnaise collée, 48
— fouettée à la Russe, 48
— Mayonnaise diverses, 49
— Mousquetaire, 49
— moutarde à la crème, 49
— Raifort aux noix, 49
— ravigote, ou vinaigrette, 49
— Rémoulade, 50
— Russe, 50

— Suédoise, 51
— Tartare, 50
— Verte, 51
— Vincent, 51
sauces froides, 46
— Smitane, 37
— Solférino, 37
— Soubise, 38
— Soubise tomatée, 38
— Souchet, 38
— Suédoise (froide), 51
— Suprême, 12
— Tartare (froide), 50
— tomate, 13
— Tortue, 24
Traitement des Éléments de Base
dans le Travail des —s, 5
— Tyrolienne, 39
— Tyrolienne à l’ancienne, 39
— Valois, 27, 39
Velouté de Poisson, 12
Velouté de Volaille, 12
— Venaison, 24
— Vénitienne, 39
— Véron, 39
— Verte, 51
— Villageoise, 39
— Villeroy, 39
— Villeroy Soubisée, 40
— Villeroy tomatée, 40
— vin blanc, 40
— au Vin rouge, 24
— Vincent, 51
— Zingara A, 24
— Zingara B, 24
sauge
Sauce Sauge et Oignons (Sage and
onions Sauce), 45
saumon fumé
Beurre de —, 58
saumure, 61
grande —, 62
— liquide pour langues, 61
— au sel, 61
Scotland
Sauce Ecossaise (Scotch eggs
Sauce), 43
sel épicé, 75
semoule
Kache de — pour le Coulibiac, 81
smitane
Sauce —, 37
Solférino
Sauce —, 37
Soubise
Sauce —, 38
Sauce — tomatée, 38
Souchet
Sauce —, 38
soufflé
— froid, 84
—s froids, 85
suédois(e)
Sauce —e (froide), 51
suprême
Sauce —, 12
tampon, 80
tartare
Sauce — (froide), 50
tomate
essence de —, 80
fondue de — ou Portugaise, 80

Jus lié tomaté, 19
Sauce —, 13
tortue
Sauce —, 24
truffe
Beurre de —, 58
twarogue, 83
Tyrolien
Sauce Tyrolienne à l’ancienne, 39
tyrolien(ne)
Sauce —ne, 39
Valois
Sauce —, 27, 39
veau
fonds ou jus de — brun, 5
jus de — lié, 11
velouté, 12
— de Poisson, 12
sauce blanche grasse, 12
— de Volaille, 12
venaison
Sauce —, 24
vénitien(ne)
Sauce —ne, 39
Véron
Sauce —, 39
vert(e)
Beurre —, 58
Sauce —e, 51
vert-pré
Sauce Chaud-froid au —, 29
villageois
Sauce Villageoise, 39
Villeroy
Sauce —, 39
Sauce — Soubisée, 40
Sauce — tomatée, 40
vin
Sauce au — rouge, 24
Sauce vin blanc, 40
vinaigrette ⇒ sauce ravigote (froide),
49
Vincent
Sauce —, 51
Yorkshire
Sauce Yorkshire, 45
Zingara
Sauce — A, 24
Sauce — B, 24
アイヨリ, 46
アヴリーヌ
ブール・—, 54
赤ピーマン
—バター, 57
赤ワイン
—ソース, 24
悪魔 ⇒ ディアーブル
ソース
ソース・ディアーブル, 16
デビルソース(イギリス風),

42
ソース・ディアーブル・エスコ
フィエ, 16
揚げ衣
脳、白子のベニェやフリト用の揚
げ衣, 82
野菜用の揚げ衣, 83
アスピック(概説), 85
アパレイユ

124

索引

大皿仕立ての丸鶏に詰める米, 83
温製ガルニチュールのための—
など, 77
ガルニチュール用デュクセル, 79
クリビヤック用セモリナ粉のカー
シャ, 81
クルトン, 79
クロケットとクロメスキの—, 77
皿に敷いて料理をのせる台, 80
サルピコン, 83
じゃがいものドフィーヌ、デュ
シェス、マルキーズの—, 77
白い生地で作る縁飾り, 78
丸鶏の詰め物その他に用いる真
珠麦, 82
調理用シュー生地, 82
デュクセル・セッシュ, 79
デュクセル・ボヌファム, 80
トマトエッセンス, 80
トマトのフォンデュ/ポルチュ
ゲーズ, 80
ヌイユ生地で作る縁飾り, 78
脳、白子のベニェやフリト用の揚
げ衣, 82
ピロシキ用トヴァローグ, 83
ファルスで作る縁飾り, 78
プロヴァンス風—, 77
ポタージュ用そば粉のカーシャ,

81
ポルチュゲーズ/トマトのフォン
デュ, 80
ボルドー風ミルポワ, 82
マティニョン, 81
—・マントノン, 77
ミルポワ, 82
—・モングラ, 77
野菜のファルシ用デュクセル, 79
野菜で作る縁飾り, 78
野菜用の揚げ衣, 83
冷製ガルニチュールのための—
など, 84
アスピック(概説), 85
ショフロワ(概説), 86
パンフロワ(概説), 87
冷製スフレ, 85
冷製のムースとムスリーヌのア
パレイユ, 84
冷製ムスリーヌの型詰め, 85
冷製ムースの型詰め, 84
冷製料理のガルニチュール
(概説), 87
アメリカン/アメリケーヌ
ガルニチュール・アメリケーヌ,

90
ソース・アメリケーヌ, 25
アルザス風
ガルニチュール・—, 89
アルジェリア風
ガルニチュール・—, 89
アルバート
—ソース, 41
アルビュフェラ
ソース・—, 25
アルマン(ド)
ソース・アルマンド, 12
アルル風
ガルニチュール・—, 90
合わせバター, 53
赤ピーマンパプリカバター, 57
アンチョビバター, 54
アーモンドバター, 54
色付け用の赤いバター, 54
色付け用の緑のバター, 55

ブール・ヴェール, 58
エクルヴィスバター, 55
エシャロットバター, 55
エスカルゴ用バター, 55
エストラゴンバター, 55
オマールバター, 56
格式ある宴席用焦がしバター, 57
キャビアバター, 54
クリ各種, 58
クルヴェットバター, 55
甲殻類のオイル, 58
ブール・シヴリ, 54
白子バター, 56
スモークサーモンバター, 58
装飾用モンペリエバター, 57
トリュフバター, 58
にしんバター, 55
にんにくバター, 54
パプリカバター, 57
ピスタチオバター, 57
ブール・コルベール, 54
ブール・ダヴリーヌ, 54
ブール・ベルシー, 54
ブール・ド・ノワゼット, 57
ブール・プランタニエ, 58
ブールマニエ, 56
ブール・マルシャンドヴァン, 56
ポーランド風バター, 58
マスタードバター, 57
ムニエル用バター, 57
メートルドテルバター, 56
モンペリエバター, 57
ブール・ラヴィゴット, 54, 58
レフォールバター, 58
アンダルシア
—風ソース, 46
アンダルシア風
ガルニチュール・—, 90
アンチョビ
—ソース, 25
—バター, 54
アンリ 4 世亭風
ガルニチュール・—, 101
アーモンド
—バター, 54
イヴォワール
ソース・—, 32
イギリス風
—ソース(冷製), 52
—ソース(温製), 41
アップルソース, 45
アルバートソース, 41
アロマティックソース, 41
エッグアンドバターソース, 44
エッグソース, 44
オニオンソース, 44
牡蠣入りソース, 43
牡蠣入りブラウンソース, 43
クランベリーソース, 41
クリームソース, 42
グーズベリーソース, 43
ケイパーソース, 42
シュリンプソース, 42
スコッチエッグソース, 43
セロリソース, 42
セージと玉ねぎのソース, 45
デビルソース, 42
パセリソース, 44
パセリソース(魚料理用), 44
バターソース, 42
フェンネルソース, 43
フライドブレッドソース, 44
ブラウングレイビヴィー, 43

ブレッドソース, 44
ホースラディッシュソース, 45
ポートワインソース, 45
ヨークシャーソース, 45
リフォームソース, 45
ロブスターソース, 43
ローバックソース, 42
—ソース(冷製)
カンバーランドソース, 52
グロスターソース, 52
ケンブリッジソース, 52
ホースラディッシュソース, 52
ミントソース, 52
イタリア風
ガルニチュール・—, 101
—ソース, 19
—ソース(冷製), 47
インド風
ガルニチュール・—, 101
—ソース, 32
ヴァロワ
ソース・—, 27, 39
ヴァンサン
ソース・—, 51
ヴィネグレット ⇒ ソース・ラヴィ
ゴット(冷製), 49
ヴィルロワ
ソース・—, 39
スビーズ入りソース・—, 40
トマト入りソース・—, 40
ヴェネツィア風
—ソース, 39
ヴェロン
ソース・—, 39
ヴェール/ヴェルト
ソース・ヴェルト, 51
ヴェールプレ
ソース・ショーフロワ・—, 29
ヴォライユ
ヴルテドヴォライユ(鶏のヴ
ルテ), 12
ジュレ
ヴォライユのジュレ用のフォン
⇒ 鶏のジュレ用のフォン, 64
フォンドヴォライユ, 5
ヴネゾン
ソース・—, 24
海亀 ⇒ トルチュ
ソース・トルチュ, 24
ヴルテ
魚料理用—, 12
鶏の—(ヴルテドヴォライユ), 12
標準的なソース・—, 12
エクルヴィス
ソース・ナンチュア, 34
—バター, 55
エシャロット
—バター, 55
エスカルゴ
—用バター, 55
エストゥファード, 5
エストラゴン
ソース・—(ホワイト系), 31
ソース・—(ブラウン系), 17
—バター, 55
エスパニョル
ソース・—, 10
ソース・— (魚料理用), 11
エッセンス
—について(フォン), 7
魚の—, 7
トマト—, 80
大型ジビエ ⇒ ヴネゾン

125

索引
ソース・ヴネゾン, 24
大麦
精白— ⇒ 丸鶏の詰め物その他に
用いる真珠麦, 82
オマール
ソース
ロブスターソース(イギリ
ス風), 43
ソース・—, 31
—バター, 56
オランダ風
オランデーズソース, 31
オランデーズ
—ソース, 31
オリエント風
—ソース, 36
オーロール
ソース・—, 26
魚料理用ソース・—, 26
ソース・ショーフロワ・—, 28
牡蠣
牡蠣入りソース, 32
牡蠣入りソース(イギリス風),

43
牡蠣入りブラウンソース(イギリ
ス風), 43
家禽
鶏のヴルテ, 12
鶏のフォン, 5
カーシャ
ポタージュ用そば粉の—, 81
クリビヤック用セモリナ粉の—,

81
カスティリア風
ガルニチュール・—, 94
ガストロノーム
ガルニチュール・—, 100
カノティエール
ソース・—, 27
狩人風 ⇒ ソース・シャスール, 15
狩人風 ⇒ ソース・シャスール(エス
コフィエ流), 15
カルディナル
ガルニチュール・—, 94
ソース・—, 28
ガルニチュール, 67
アパレイユ
大皿仕立ての丸鶏に詰める米,

83
ガルニチュール用デュクセル,

79
クリビヤック用セモリナ粉の
カーシャ, 81
クルトン, 79
クロケットとクロメスキのアパ
レイユ, 77
皿に敷いて料理をのせる台、ト
ンポン、クルスタードトマト
エッセンス, 80
サルピコン, 83
じゃがいものドフィーヌ、デュ
シェス、マルキーズのアパレ
イユ, 77
白い生地で作る縁飾り, 78
丸鶏の詰め物その他に用いるの
真珠麦, 82
調理用シュー生地, 82
デュクセル・セッシュ, 79
デュクセル・ボヌファム, 80
トマトエッセンス, 80
トマトのフォンデュ/ポルチュ
ゲーズ, 80
ヌイユ生地で作る縁飾り, 78

脳、白子のベニェやフリト用の
揚げ衣, 82
ピロシキ用トヴァローグ, 83
ファルスで作る縁飾り, 78
プロヴァンス風アパレイユ, 77
ポタージュ用そば粉のカー
シャ, 81
ポルチュゲーズ/トマトのフォ
ンデュ, 80
ボルドー風ミルポワ, 82
マティニョン, 81
アパレイユ・マントノン, 77
ミルポワ, 82
アパレイユ・モングラ, 77
野菜のファルシ用デュクセル,

79
野菜で作る縁飾り, 78
野菜用の揚げ衣, 83
温製ガルニチュールのためのアパ
レイユなど, 77
冷製ガルニチュールのためのアパ
レイユなど, 84
アスピック(概説), 85
ショフロワ(概説), 86
パンフロワ(概説), 87
冷製スフレ, 85
冷製のムースとムスリーヌのア
パレイユ, 84
冷製ムスリーヌの型詰め, 85
冷製ムースの型詰め, 84
冷製料理のガルニチュール
(概説), 87
—・アメリケーヌ, 90
—・アルザス風, 89
—・アルジェリア風, 89
—・アルル風, 90
—・アンダルシア風, 90
—・アンリ 4 世亭風, 101
—・イタリア風, 101
—・インド風, 101
牛、羊肉料理に野菜を添える場合
にふさわしいソースにつ
いて, 89
—・カスティリア風, 94
—・ガストロノーム, 100
—・カルディナル, 94
—・カンカル風, 94
—・キュシー, 96
—・銀行家夫人風, 91
—・クラマール, 95
—・グランデュック, 101
—・グレック, 101
—・ゴダール, 101
—・コモドール, 96
—・コンティ, 96
—・コンポート, 95
—・シポラタ, 95
—・シャトレーヌ, 95
—・ジャルディニエール, 102
—・シャンボール, 94
—・ジュディック, 102
—・ショロン, 95
—・ショワジー, 95
—・ジョワンヴィル, 102
—・ディエープ風, 97
—・デュシェス, 97
—・ドフィーヌ, 96
—・ドモン, 96
—・デュバリー, 97
—・ドリア, 97
—・日本風, 101
—・ハンガリー風, 101
ファルス, 67, 69

A. パナードとバターを用いる
ファルス, 70
B. パナードと生クリームを用
いるファルス, 70
C. 生クリームを用いる滑らか
なファルス/ファルス・ムス
リーヌ, 70
ファルス・グラタン, 73
—・グラタン A, 73
—・グラタン B, 74
—・グラタン C, 74
盛り付けの縁飾りおよび底に敷
いたり、詰め物をしたクネル
に用いる仔牛の—, 73
仔牛肉とケンネ脂のファルス/
ゴディヴォ, 71
ゴディヴォ, 71
魚のブレゼのガルニチュー
ル用— A, 75
魚のブレゼのガルニチュー
ル用— B, 75
パナード, 68
パナード A. パンの—, 68
パナード B. 小麦粉の—, 68
パナード C, 69
パナード D. 米の—, 69
パナード E, 69
冷製料理用— A, 75
冷製料理用— B, 75
冷製料理用— C, 75
—・フィナンシエール, 99
—・フィレンツェ風, 99
—・フェルミエール, 98
—・フォレスティエール, 99
—・ブクティエール, 92
—・ブザンソン風, 91
—・フラスカーティ, 100
—・ブラバント風, 93
—・ブランジェール, 92
—・フランドル風, 99
—・ブリストル, 93
—・ブリヤサヴァラン, 93
—・フリュッセル風, 94
—・ブルジョワーズ, 92
—・ブルターニュ風, 93
—・ブレオン, 93
—・フローリアン, 99
—・ベリー風, 91
—・ベルニ, 91
—・マスコット, 106
—・マセドワーヌ, 103
—・マセナ, 106
—・マドレーヌ, 104
—・マトロット, 106
—・マリニエール, 105
—・マリ=ルイーズ, 105
—・マルキーズ, 105
—・マルセイエーズ, 105
—・マレシェール, 104
—・マレシャル, 104
—の見た目を変えることについて,

88
—・メディシス, 106
—・ラファヴォリータ, 98
—・ラングドック風, 102
—・ルイジアナ風, 103
—・ルクッルス, 103
—・ロレット, 102
カレー
—ソース, 30
インド—ソース, 30
カンカル風
ガルニチュール・—, 94

126
カンバーランド
—ソース, 52
生地
シュー
調理用シュー生地, 82
白
白い生地で作る縁飾り, 78
ヌイユ
ヌイユ生地で作る縁飾り, 78
基本ソース
—・アルマンド, 12
ヴルテ(標準的な), 12
—・エスパニョル, 10
魚料理用—・エスパニョル, 11
魚料理用ヴルテ, 12
—・シュプレーム, 12
—・ドゥミグラス, 11
トマト—, 13
鶏のヴルテ, 12
とろみを付けた仔牛のジュ, 11
ベシャメル—, 13
キャビア
—バター, 54
キュシー
ガルニチュール・—, 96
ギリシャ風⇒ グレック
ガルニチュール・—, 101
銀行家夫人風
ガルニチュール・—, 91
グラス
—について, 7
—ドヴォライユ, 8
—ドヴィアンド, 7
魚の—, 8
ジビエの—, 8
鶏の—(—ドヴォライユ), 8
グラタン
ソース・—, 18
ファルス・—, 73
クラマール
ガルニチュール・—, 95
クラリフィエ
ジュレの—, 65
赤ワインを用いた魚の—, 66
ヴォライユの—, 65
魚の白い—, 66
ジビエの—, 65
鶏の—, 65
標準的な—, 65
グランヴヌール
ソース・—, 18
ソース・—(エスコフィエ流), 18
グランデュック
ガルニチュール・—, 101
クランベリー
—ソース, 41
クリ
玉ねぎのクリ・スビーズ, 38
クリ各種, 58
グリビッシュ
ソース・—(冷製), 47
クリーム
ソース・クレーム, 29
—ソース(イギリス風), 42
クルヴェット
ソース・—, 29
シュリンプソース(イギリス風),

42
—バター, 55
クルスタード, 80
クルトン, 79
くるみ
—入りソース・レフォール, 49

索引
グレイヴィー
ブラウングレイヴィー(イギリス
風ソース), 43
グレック
ガルニチュール・—, 101
黒
—バター, 57
クロケット
クロメスキと—のアパレイユ, 77
グロスター
—ソース, 52
グロゼイユ
ソース
グーズベリーソース(イギリ
ス風), 43
—・スリーズ, 15
ソース・—, 31
レフォール風味のソース・—
(冷製), 47
クロメスキ
—とクロケットのアパレイユ, 77
グーズベリー
グーズベリーソース(イギリ
ス風), 43
ケイパー
—入りソース, 28
—ソース(イギリス風), 42
ケンブリッジ
—ソース, 52
甲殻類
甲殻類のオイル, 58
仔牛
—の茶色いフォン (ジュ), 5
とろみを付けた—のジュ, 11
香辛料入りの塩 ⇒ スパイスソルト, 75
香草
アロマティックソース, 41
—ソース(ホワイト系), 31
—ソース(ブラウン系), 17
ゴダール
ガルニチュール・—, 101
ソース・—, 18
骨髄 ⇒ モワル
ソース・モワル, 20
ゴディヴォ, 71
A. 氷を入れて作る—, 71
B. 生クリーム入り—, 72
C. リヨン風—/ケンネ脂入りブロ
シェのファルス, 72
米
大皿仕立ての丸鶏に詰める米, 83
コモドール
ガルニチュール・—, 96
コルベール
ソース・—, 16
ブール・—, 54
コンティ
ガルニチュール・—, 96
コンポート
ガルニチュール・—, 95
魚
ジュレ
標準的なのジュレ用の—の
フォン, 64
赤ワインを用いた—のジュレ用
のフォン, 64
サクランボ
ソース
—・スリーズ, 15
サルシフィ
揚げ衣
野菜用の揚げ衣, 83
サルピコン, 83

サルミ
ソース・—, 23
サワークリーム
ソース・スミターヌ, 37
ザンガラ
ソース・— A, 24
ソース・— B, 24
サンマロ風
—ソース, 37
シヴリ
ソース・—, 29
ブール・—, 54
ジェノヴァ風
ソース・—(冷製), 46
ジビエ
—のグラス, 8
ジュレ
—のジュレ用のフォン, 64
—のフォン, 6
ジプシー風
ソース・ザンガラ A, 24
ソース・ザンガラ B, 24
シポラタ
ガルニチュール・—, 95
シャトーブリヤン
ソース・—, 28
シャスール
ソース・—, 15
ソース・—(エスコフィエ流), 15
シャトレーヌ
ガルニチュール・—, 95
シャルキュトリ風
—ソース ⇒ ソース・シャルキュ
ティエール, 15
ジャルディニエール
ガルニチュール・—, 102
シャンティイ
ソース・—, 28
ソース・—(冷製), 46
シャンピニョン
ソース・—(ブラウン系), 15
シャンボール
ガルニチュール・—, 94
ジュ
仔牛の—(とろみを付けた), 11
仔牛の茶色い—, 5
とろみを付けた— エストラゴン
風味, 19
とろみを付けた— トマト風味,

19
シュー生地
調理用—, 82
シュヴルイユ
ソース・—, 16
ローバックソース(イギリス風),

42
ジュディック
ガルニチュール・—, 102
ジュネーヴ風
—ソース, 17
シュプレーム
ソース・—, 12
ジュレ, 63
赤ワインを用いた魚のジュレ用の
フォン, 64
ヴォライユのジュレ用のフォン
⇒ 鶏のジュレ用のフォン, 64
—のクラリフィエ, 65
赤ワインを用いた魚の—, 66
ヴォライユの—, 65
魚の白い—, 66
ジビエの—, 65
鶏の—, 65

127

索引
標準的な—, 65
ジビエのジュレ用のフォン, 64
白いジュレ用のフォン, 64
鶏のジュレ用のフォン, 64
標準的なジュレ用の魚のフォン,

64
標準的なジュレ用のフォン, 63
ショロン
ソース・—, 26
ショフロワ
魚料理用ソース—, 29
茶色いソース・—(ジビエ用), 16
白いソース—(標準), 28
トマト入りソース・—, 16
茶色いソース・—, 15
茶色いソース・—(鴨用), 16
ショフロワ(概説), 86
ショーフロワ
ソース・—・ヴェールプレ, 29
ソース・—・オーロール, 28
ブロンドのソース—, 28
ショロン
ガルニチュール・—, 95
ショワジー
ガルニチュール・—, 95
ジョワンヴィル
ガルニチュール・—, 102
ソース・—, 32
白子
揚げ衣
脳、白子のベニェやフリト用の
揚げ衣, 82
—バター, 56
白ワイン
—ソース, 40
真珠麦
丸鶏の詰め物その他に用いる真
珠麦, 82
スウェーデン風
—ソース(冷製), 51
枢機卿 ⇒ カルディナル
ガルニチュール・カルディナル,

94
すぐり
ソース
グーズベリーソース(イギリ
ス風), 43
スコットランド
スコッチエッグソース(イギリ
ス風), 43
スコットランド風
—ソース, 30
スパイスソルト, 75
スビーズ
ソース・—, 38
トマト入りソース・—, 38
スフレ
冷製—, 85
冷製の—, 84
スペイン風(エスパニョル)
ソース・エスパニョル, 10
ソース・エスパニョル(魚料
理用), 11
スミターヌ
ソース・—, 37
スモークサーモン
—バター, 58
スーシェ
ソース・—, 38
セモリナ粉
クリビヤック用セモリナ粉—の
カーシャ, 81
セロリ

揚げ衣
野菜用の揚げ衣, 83
—ソース(イギリス風), 42
セージ
セージと玉ねぎのソース(イギリ
ス風), 45
そば粉
ポタージュ用—のカーシャ, 81
ソミュール, 61
グランド—, 62
塩漬け用—, 61
舌肉用の液体—, 61
ソルフェリノ
ソース・—, 37
ソース
赤ワイン—, 24
—・アシェ, 19
魚料理用—・アシェ, 19
—・アメリケーヌ, 25
—・アルビュフェラ, 25
アンダルシア風—, 46
アンチョビ—, 25
—・イヴォワール, 32
イギリス風—(温製), 41
アップルソース, 45
アルバート—, 41
アロマティック—, 41
エッグアンドバターソース, 44
エッグソース, 44
オニオンソース(イギリス風),

44
牡蠣入り—, 43
牡蠣入りブラウン—, 43
クランベリー—, 41
クリーム—, 42
グーズベリー—, 43
ケイパー—, 42
魚料理用パセリソース, 44
シュリンプ—, 42
スコッチエッグ—, 43
セロリ—, 42
セージと玉ねぎのソース, 45
デビル—, 42
パセリソース, 44
バター–, 42
フェンネル—, 43
フライドブレッドソース, 44
ブラウングレイヴィー(イギリ
ス風), 43
ブレッドソース, 44
ホースラディッシュソース, 45
ポートワインソース, 45
ヨークシャーソース, 45
リフォームソース, 45
ロブスター—, 43
ローバック—, 42
イギリス風—(冷製), 52
カンバーランド—, 52
グロスター—, 52
ケンブリッジ—, 52
ホースラディッシュ—, 52
ミント—, 52
イタリア風—, 19
イタリア風—(冷製), 47
インド風—, 32
インドカレー—, 30
—・ヴァロワ, 27, 39
—・ヴァンサン, 51
—・ヴィルロワ, 39
スビーズ入り—・ヴィルロワ, 40
トマト入り—・ヴィルロワ, 40
ヴェネツィア風—, 39
—・ヴェルト, 51

—・ヴェロン, 39
—・ヴネゾン, 24
ヴルテ (魚料理用), 12
ヴルテ(鶏), 12
ヴルテ(標準的な), 12
—・エストラゴン(ホワイト系),
31
—・エストラゴン(ブラウン系),
17
—・エスパニョル, 10
—・エスパニョル (魚料理用), 11
—・オマール, 31
オランデーズ—, 31
オリエント風—, 36
—・オーロール, 26
魚料理用—・オーロール, 26
牡蠣入り—, 32
—・カノティエール, 27
—・カルディナル, 28
カレー—, 30
基本—, 3, 10
—・アルマンド, 12
ヴルテ(標準的な), 12
—・エスパニョル, 10
魚料理用—・エスパニョル, 11
魚料理用ヴルテ, 12
—・シュプレーム, 12
—・ドゥミグラス, 11
トマト—, 13
鶏のヴルテ, 12
とろみを付けた仔牛のジュ, 11
ベシャメル—, 13
—・グラタン, 18
—・グランヴヌール, 18
—・グランヴヌール(エスコフィ
エ流), 18
—・グリビッシュ, 47
—・クルヴェット, 29
くるみ入り—・レフォール
(冷製), 49
—・クレーム, 29
—・グロゼイユ, 31
ケイパー入り—, 28
香草—(ホワイト系), 31
香草—(ブラウン系), 17
—・ゴダール, 18
—・コルベール, 16
コーティング用マヨネーズ, 48
魚料理用—・ショフロワ, 29
—・サルミ, 23
—・ザンガラ A, 24
—・ザンガラ B, 24
サンマロ風—, 37
—・シヴリ, 29
ジェノヴァ風—, 46
—・シャトーブリヤン, 28
—・シャスール, 15
—・シャスール(エスコフィ
エ流), 15
シャルキュトリ風 ⇒ —・シャル
キュティエール, 15
—・シャンティイ, 28, 46
—・シュヴルイユ, 16
ジュネーヴ風—, 17
—・ショロン, 26
—・ショーフロワ・ヴェールプレ,
29
—・ショーフロワ・オーロール, 28
白い—・ショフロワ(標準), 28
茶色い—・ショフロワ(鴨用), 16
茶色い—・ショフロワ, 15
茶色い—・ショフロワ(ジビ
エ用), 16

128

索引

トマト入り—・ショフロワ, 16
ブロンドの—・ショーフロワ, 28
—・ジョワンヴィル, 32
白ワイン—, 40
スウェーデン風—(冷製), 51
スコットランド風—, 30
—・スビーズ, 38
トマト入り—・スゥビーズ, 38
—・スミターヌ, 37
—・スリーズ, 15
—・スーシェ, 38
—・ソルフェリノ, 37
—・シュプレーム, 12
—のベース作り, 5
タルタル—(冷製), 50
チロル風—, 39
チロル風— クラシック, 39
—・ディアーヌ, 17
—・ディアーブル, 16
—・ディアーブル・エスコフィエ,

16
—・ディプロマット, 30
—・デュクセル, 17
—・ドゥミグラス, 11
トマト—, 13
—・トルチュ, 24
とろみを付けた仔牛のジュ, 11
とろみを付けたジュエストラゴン
風味, 19
とろみを付けたジュ トマト
風味, 19
—・ナンチュア, 34
活けオマールを使う—・ニュー
バーグ, 35
茹でたオマールを使う—・ニュー
バーグ, 35
ノルマンディ風—, 35
バイエルン風—, 26
—・バタルド, 27
ハンガリー風—, 32
パリ風— ⇒ —・アルマンド, 12
—・ビガラード, 14
—・ピカント, 20
—・フィナンシエール, 17
—・フォイヨ, 27
ブラウン系の派生—, 14
赤ワイン—, 24
—・アシェ, 19
魚料理用—・アシェ, 19
—・ヴネゾン, 24
—・エストラゴン, 17
—・グラタン, 18
—・グランヴヌール, 18
—・グランヴヌール(エスコ
フィエ流), 18
香草—, 17
—・ゴダール, 18
—・コルベール, 16
—・サルミ, 23
—・ザンガラ A, 24
—・ザンガラ B, 24
—・シャスール, 15
—・シャスール(エスコフィ
エ流), 15
—・シャルキュティエール, 15
—・シャンピニョン, 15
—・シュヴルイユ, 16
ジュネーヴ風—, 17
茶色い—・ショフロワ(エスコ
フィエ流), 15
茶色い—・ショフロワ(鴨用),

16

茶色い—・ショフロワ(ジビ
エ用), 16
茶色い—・ショフロワ, 15
—・スリーズ, 15
—・ディアーヌ, 17
—・ディアーブル, 16
—・ディアーブル・エスコ
フィエ, 16
—・デュクセル, 17
トマト入り—・ショフロワ, 16
—・トルチュ, 24
とろみを付けたジュ エストラ
ゴン風味, 19
とろみを付けたジュ トマト
風味, 19
—・ビガラード, 14
—・ピカント, 20
—・フィナンシエール, 17
ブルゴーニュ風—, 14
ブルターニュ風—, 14
プロヴァンス風—, 22
—・ペリグルディーヌ, 20
—・ペリグー, 20
—・ポルト, 21
ポルトガル風—, 21
ボルドー風—, 14
—・ポワヴラード(標準), 21
—・ポワヴラード(ジビエ用),

21
マッシュルーム ⇒ —・シャン
ピニョン, 15
—・マデール, 20
—・マトロット, 20
モスクワ—, 20
—・モワル, 20
—・ユサルド, 19
リヨン風—, 19
ルーアン風—, 23
—・レジャンス, 22
—・ロベール, 22
—・ロベール・エスコフィエ, 22
ローマ風—, 22

—, 19
ブルゴーニュ風—, 14
ブルターニュ風—(ホワイト系),

27
ブルターニュ風—(ブラウン系),

14
—・プレット, 36
プロヴァンス風—, 22
—・オ・ブール, 27
—・ベアルネーズ, 26
—・ベアルネーズ (グラス・ド・
ヴィアンド入り), 27
トマト入り—・ベアルネーズ, 26
ベシャメル—, 13
—・ペリグゥルディーヌ, 20
—・ペリグー, 20
—・ベルシー, 27
—・ノワゼット, 35
—・ボヌフォワ, 27
—・ボヘミアの娘, 46
—・ポルト, 21
ポルトガル風—, 21
ボルドー風—, 14
ボルドー風— (白), 27
ホワイト系の派生—, 25
—・アメリケーヌ, 25
—・アルビュフェラ, 25
アンチョビ—, 25
—・イヴォワール, 32
インド風—, 32
インド風カレー—, 30

—・ヴィルロワ, 39
スビーズ入り—・ヴィルロワ, 40
トマト入り—・ヴィルロワ, 40
ヴェネツィア風—, 39
—・ヴェロン, 39
—・ヴァロワ, 39
—・エストラゴン, 31
—・オマール, 31
オランデーズ—, 31
オリエント風—, 36
—・オーロール, 26
魚料理用—・オーロール, 26
牡蠣入り—, 32
—・カノティエール, 27
—・カルディナル, 28
カレー—, 30
—・クルヴェット, 29
—・クレーム, 29
—・グロセイユ, 31
ケイパー入り—, 28
香草—, 31
サンマロ風—, 37
—・シヴリ, 29
—・シャトーブリヤン, 28
—・シャンティイ, 28, 34
—・ショフロワ・ヴェールプレ,
29
—・ショフロワ・オーロール, 28
魚料理用—・ショフロワ, 29
白い—・ショフロワ(標準), 28
ブロンドの—・ショフロワ, 28
—・ジョワンヴィル, 32
白ワイン—, 40
スコットランド風—, 30
—・スビーズ, 38
トマト入り—・スビース, 38
—・スミターヌ, 37
—・スーシェ, 38
—・ソルフェリノ, 37
チロル風—, 39
チロル風— クラシック, 39
—・ディプロマット, 30
—・ナンチュア, 34
活けオマールで作る—・ニュー
バーグ, 35
茹でたオマールで作る—・
ニューバーグ, 35
ノルマンディ風—, 35
—・ノワゼット, 35
バイエルン風—, 26
ハンガリー風—, 32
ブルターニュ風—, 27
—・プレット, 36
—・オ・ブール, 27
—・ベアルネーズ, 26
グラスドヴィアント入り—・ベ
アルネーズ, 27
トマト入り—・ベアルネーズ, 26
—・ベルシー, 27
—・ボヌフォワ, 27
ポー風—, 36
マッシュルーム入り—, 28
—・マトロット, 33
—・マリニエール, 33
マルタ風—, 33
—・ムスリーヌ, 34
—・ムスーズ, 34
—・ムタルド, 34
村人風—, 39
—・モルネー, 34
—・ラヴィゴット, 36
—・ラギピエール, 32
リヴォニア風—, 33

129

索引
—・リッシュ, 37
—・ルーベンス, 37
魚料理用—・レジャンス, 37
鶏料理のガルニチュール用—・
レジャンス, 37
—・ポワヴラード(標準), 21
—・ポワヴラード(ジビエ用), 21
ポー風—, 36
マッシュルーム ⇒ —・シャンピ
ニョン, 15
マッシュルーム—(ホワイト系),
28
—・マデール, 20
—・マトロット, 20
白い—・マトロット, 33
マヨネーズ, 47
マヨネーズのバリエーション, 49
—・マリニエール, 33
マルタ風—, 33
—・ムスクテール, 49
—・ムスリーヌ, 34
—・ムスーズ, 34
—・ムタルド, 34
生クリーム入り—・ムタルド
(冷製), 49
村人風—, 39
モスクワ風—, 20
—・モルネー, 34
—・モワル, 20
—・ユサルド, 19
—・ラヴィゴット, 36
—・ラヴィゴット(冷製), 49
—・ラギピエール, 32
リヴォニア風—, 33
—・リッシュ, 37
リヨン風—, 19
ルーアン風—, 23
—・ルーベンス, 37
冷製—
アイヨリ, 46
アンダルシア風—, 46
イタリア風—, 47
—・ヴァンサン, 51
—・ヴェルト, 51
—・グリビッシュ, 47
くるみ入り—・レフォール, 49
コーティング用マヨネーズ, 48
ジェノヴァ風—, 46
—・シャンティイ, 46
スウェーデン風—, 51
タルタル—, 50
生クリーム入り—・ムタルド, 49
プロヴァンスバター, 46
—ボヘミアの娘, 46
マヨネーズ, 47
マヨネーズのバリエーション,
49
—・ムスクテール, 49
ラヴィゴット(ヴィネグ
レット), 49
レフォール風味の—・グロゼ
イユ, 47
—・レムラード, 50
ロシア風—, 50
ロシア風ホイップマヨネーズ,

48
冷製ソース, 46
—・レジャンス, 22
魚料理用—・レジャンス, 37
鶏料理のガルニチュール用—・レ
ジャンス, 37
レフォール風味の—・グロゼイユ,

47

—・レムラード, 50
ロシア風ホイップマヨネーズ, 48
ロシア風—(冷製), 50
—・ロベール, 22
—・ロベール・エスコフィエ, 22
ローマ風—, 22
台
皿に敷いて料理をのせる—, 80
大公(風)⇒ グランデュック
ガルニチュール・—, 101
卵
エッグソース(イギリス風), 44
エッグアンドバターソース(イギ
リス風), 44
玉ねぎ
セージと玉ねぎのソース(イギリ
ス風), 45
オニオンソース(イギリス風),

44
タルタル
—ソース(冷製), 50
着色素材
色付け用の赤いバター, 54
色付け用の緑のバター, 55
徴税官風 ⇒ フィナンシエール
ソース・フィナンシエール, 17
チョロギ
揚げ衣
野菜用の揚げ衣, 83
チロル風
—ソース, 39
—ソース クラシック, 39
ディアーヌ
ソース・—, 17
ディアーブル
ソース
ソース・—・エスコフィエ, 16
ソース・—, 16
デビルソース(イギリス風), 42
ディエープ風
ガルニチュール・—, 97
ディプロマット
ソース・—, 30
デュクセル
ガルニチュール用—, 79
—・セッシュ, 79
ソース・—, 17
—・ボヌファム, 80
野菜のファルシ用—, 79
デュシェス
アパレイユ
じゃがいものドフィーヌ、—、
マルキーズのアパレイユ, 77
ガルニチュール・—, 97
ドイツ風
ソース・アルマンド(ドイツ風
ソース), 12
トヴァローグ, 83
東方風
オリエント風ソース, 36
ドファン/ドフィーヌ
ガルニチュール・ドフィーヌ, 96
ドフィーヌ
アパレイユ
じゃがいもの—、デュシェス、
マルキーズのアパレイユ, 77
トマト
—エッセンス, 80
—のフォンデュ/ポルチュゲーズ,

80
—ソース, 13
ドモン
ガルニチュール・—, 96

デュバリー
ガルニチュール・—, 97
鶏
ジュレ
—のジュレ用のフォン, 64
ドリア
ガルニチュール・—, 97
トリュフ
—バター, 58
トルチュ
ソース・—, 24
トンポン, 80
ナンチュア
ソース・—, 34
にしん
—バター, 55
日本風
ガルニチュール・—, 101
ニューバーグ
活けオマールを使うソース・—, 35
茹でたオマールを使うソース・—,

35
にんにく
—バター, 54
脳
揚げ衣
脳、白子のベニェやフリト用の
揚げ衣, 82
ノルマンディ風
—ソース, 35
ノロ鹿 ⇒ シュヴルイユ
ソース
ソース・シュヴルイユ, 16
ローバックソース(イギリ
ス風), 42
ノワゼット
ブール・ド・—, 57
ヘーゼルナッツソース, 35
バイエルン風
—ソース, 26
パセリ
パセリソース(イギリス風), 44
パセリソース(魚料理用、イギリ
ス風), 44
バタルド
ソース・—, 27
バター
合わせバター
赤ピーマンバター, 57
アンチョビバター, 54
アーモンドバター, 54
色付け用の赤いバター, 54
色付け用の緑のバター, 55
ブール・ヴェール, 58
エクルヴィスバター, 55
エシャロットバター, 55
エスカルゴ用バター, 55
エストラゴンバター, 55
オマールバター, 56
格式ある宴席用焦がしバター,

57
キャビアバター, 54
クリ各種, 58
クルヴェットバター, 55
甲殻類のオイル, 58
ブール・シヴリ, 54
白子バター, 56
スモークサーモンバター, 58
装飾用モンペリエバター, 57
トリュフバター, 58
にしんバター, 55
にんにくバター, 54
パプリカバター, 57

130

索引
ピスタチオバター, 57
ブール・コルベール, 54
ブール・ダヴリーヌ, 54
ブール・ド・ノワゼット, 57
ブール・プランタニエ, 58
ブール・ベルシー, 54
ブールマニエ, 56
ブール・マルシャンドヴァン,

56
ポーランド風バター, 58
マスタードバター, 57
ムニエル用バター, 57
メートルドテルバター, 56
モンペリエバター, 57
ブール・ラヴィゴット, 54, 58
レフォールバター, 58
エッグアンドバターソース(イギ
リス風), 44
焦がし—, 57
ソース・オ・ブール, 27
—ソース(イギリス風), 42
プロヴァンスバター, 46
バター ⇒ 合わせバター, 53
花売り娘 ⇒ ブクティエール
ガルニチュール・ブクティ
エール, 92
パナード, 68
A. パンの—, 68
B. 小麦粉の—, 68
C. —・フランジパーヌ, 69
D. 米の—, 69
E. じゃがいもの—, 69
パプリカ
—バター, 57
パリ風
—ソース ⇒ —・アルマンド, 12
パン
フライドブレッドソース(イギリ
ス風), 44
ブレッドソース(イギリス風),

44
ハンガリー風
ガルニチュール・—, 101
—ソース, 32
パンフロワ(概説), 87
パン屋 ⇒ ブランジェ/ブランジェール
ガルニチュール・ブラン
ジェール, 92
パート ⇒ 生地
ヌイユ
白い生地で作る縁飾り, 78
ブランシュ
白い生地で作る縁飾り, 78
ハーブ ⇒ 香草
香草ソース(ホワイト系), 31
香草ソース(ブラウン系), 17
ビガラード
ソース・—, 14
美食家風 ⇒ ガストロノーム
ガルニチュール・—, 100
ピスタチオ
—バター, 57
ファルス, 67, 69
A. パナードとバターを用いる—,

70
B. パナードと生クリームを用
いる—, 70
C. 生クリームを用いる滑らか
な—/—・ムスリーヌ, 70
大皿仕立ての丸鶏に詰める米, 83
ファルス・グラタン, 73
—・グラタン A, 73
—・グラタン B, 74

—・グラタン C, 74
盛り付けの縁飾りおよび底に敷い
たり、詰め物をしたクネルに
用いる仔牛の—, 73
牛仔牛肉とケンネ脂の—/ゴディ
ヴォ, 71
ゴディヴォ, 71
A. 氷を入れて作るゴディヴォ,

71
B. 生クリーム入りゴディヴォ,
72
C. リヨン風ゴディヴォ/ケンネ
脂入りブロシェのファルス,
72
魚のブレゼのガルニチュール用—
A, 75
魚のブレゼのガルニチュール用—
B, 75
—用パナード, 68
A. パンのパナード, 68
パナード B. 小麦粉の—, 68
パナード C, 69
D. 米のパナード, 69
パナード E, 69
—で作る縁飾り, 78
冷製料理用— A, 75
冷製料理用— B, 75
冷製料理用— C, 75
冷製料理用の—, 74
フィナンシエ/フィナンシエール
ガルニチュール・フィナンシ
エール, 99
フィナンシエール
ソース・—, 17
フィレンツェ風
ガルニチュール・—, 99
フェルミエ/フェルミエール
ガルニチュール・フェルミ
エール, 98
フェンネル
フェンネルソース(イギリス風),

43
フォイヨ
ソース・—, 27
フォレスティエール
ガルニチュール・—, 99
フォン, 1
赤ワインを用いた魚の—, 6
仔牛の茶色い—, 5
魚の—, 6
ジビエの—, 6
白い—, 5
茶色い—, 5
鶏の—, 5
フォンデュ
トマトの—/ポルチュゲーズ, 80
ブクティエール ⇒ 花売り娘
ガルニチュール・ブクティ
エール, 92
ブザンソン
ガルニチュール・—風, 91
縁飾り
白い生地で作る野菜—, 78
ヌイユ生地で作る野菜—, 78
ファルスで作る—, 78
野菜で作る—, 78
フュメ
魚の—, 6
フュメドポワソン, 6
フラスカーティ
ガルニチュール・—, 100
ブラバント風
ガルニチュール・—, 93

ブランジェ/ブランジェール ⇒ パン屋
ガルニチュール・ブラン
ジェール, 92
プランタニエ
ブール・—, 58
フランドル風
ガルニチュール・—, 99
ブリストル
ガルニチュール・—, 93
フリト
揚げ衣
脳、白子のベニェやフリト用の
揚げ衣, 82
ブリヤサヴァラン
ガルニチュール・—, 93
ブリュッセル風
ガルニチュール・—, 94
ブルゴーニュ風
—ソース, 14
フルジョワ風 ⇒ ブルジョワーズ
ガルニチュール・ブルジョ
ワーズ, 92
ブルジョワーズ
ガルニチュール・ブルジョ
ワーズ, 92
ブルターニュ風
ガルニチュール・—, 93
—ソース(ホワイト系), 27
—ソース(ブラウン系), 14
ブルーテ ⇒ ヴルテ, 12
ブレオン
ガルニチュール・—, 93
プレット
ソース・—, 36
プロヴァンス風
—アパレイユ, 77
—ソース, 22
プロヴァンス
プロヴァンスバター, 46
フローリアン
ガルニチュール・—, 99
ブール・コンポゼ ⇒ 合わせバター, 53
ブールマニエ, 56
ベアルヌ風
ソース・—, 26
グラスドヴィアンド入りソース・
ベアルネーズ, 27
トマト入りソース・ベアル
ネーズ, 26
ベアルネーズ
ソース・—, 26
ベシャメル
—ソース, 13
ペリグー
ソース・—, 20
ペリゴール風 ⇒ ペリグルダン/ペリグ
ルディーヌ
ソース・ペリグルディーヌ, 20
ベリー風
ガルニチュール・—, 91
ベルシー
ソース・—, 27
ブール・—, 54
ベルニ
ガルニチュール・—, 91
ヘーゼルナッツ
ソース・ノワゼット, 35
ブール・ダヴリーヌ, 54
ボヌファム
デュクセル・—, 80
ボヌフォワ
ソース・—, 27
ボヘミア

131

索引
ソース・—の娘, 46
ポルチュゲーズ/トマトのフォンデュ,

80
ボルデュール ⇒ 縁飾り
白い生地で作る縁飾り, 78
ヌイユ生地で作る縁飾り, 78
ファルスで作る縁飾り, 78
野菜で作る縁飾り, 78
ポルトガル風
—ソース, 21
ポルチュゲーズ/トマトのフォン
デュ, 80
ポルト酒
ポートワインソース(イギリ
ス風), 45
ポルト酒 ⇒ ポルト
ソース・—, 21
ボルドー風
—ソース, 14
—ソース (白), 27
—ミルポワ, 82
ポワヴラード
ソース・—(標準), 21
ソース・—(ジビエ用), 21
ポワヴロン ⇒ 赤ピーマン, 57
ホースラディッシュ
—ソース, 52
ポー風
—ソース, 36
マスコット
ガルニチュール・—, 106
マスタード
—バター, 57
マスタード(ムタルド)
ソース・ムタルド, 34
生クリーム入りソース・ムタ
ルド, 49
マセドワーヌ
ガルニチュール・—, 103
マセナ
ガルニチュール・—, 106
マッシュルーム ⇒ シャンピニョン, 15
マッシュルーム
—ソース(ホワイト系), 28
デュクセル
ガルニチュール用デュクセル,

79
デュクセル・セッシュ, 79
野菜のファルシ用デュクセル,

79
マティニョン, 81
マデイラ酒 ⇒ マデール
ソース・マデール, 20
マドレーヌ
ガルニチュール・—, 104
マトロット
ガルニチュール・—, 106
ソース・—, 20
白いソース・—, 33
マヨネーズ, 47
コーティング用—, 48
—のバリエーション, 49
ロシア風ホイップ—, 48
マリナード, 59
牛、羊肉および大型ジビエ用
加熱—, 60
牛、羊肉および大型ジビエ用非
加熱—, 60
即席—, 59
とりわけ大型のジビエ用非加熱お
よび加熱—, 60
羊のシャモワ仕立て用加熱—, 60

羊のシュヴルイユ仕立て用加熱—,

60
—の保存方法, 61
マリナードとソミュール, 59
マリニエール
ガルニチュール・—, 105
ソース・—, 33
マリ=ルイーズ
ガルニチュール・—, 105
マルキーズ
アパレイユ
じゃがいものドフィーヌ、デュ
シェス、—のアパレイユ, 77
ガルニチュール・—, 105
マルシャンドヴァン
ブール・マルシャンドヴァン, 56
マルセイエーズ
ガルニチュール・—, 105
マルタ風
—ソース, 33
丸麦 ⇒ 真珠麦
丸鶏の詰め物その他に用いる真
珠麦, 82
マレシェール
ガルニチュール・—, 104
マレシャル
ガルニチュール・—, 104
マントノン
アパレイユ・—, 77
ミックスバター ⇒ 合わせバター, 53
緑 ⇒ ヴェール, 58
ミルポワ, 10, 82
ボルドー風ミルポワ, 82
ミント
—ソース, 52
ムスクテール
ソース・—, 49
ムスリーヌ
ソース・—, 34
ファルス・—, 70
冷製
ムスリーヌの型詰め, 85
ムースとムスリーヌのアパレ
イユ, 84
冷製の—, 84
ムスー(ズ)
ソース・ムスーズ, 34
ムタルド(マスタード)
ソース・ムタルド, 34
生クリーム入りソース・—
(冷製), 49
ムニエル
—用バター, 57
村人風
—ソース, 39
ムース
冷製
ムースとムスリーヌのアパレ
イユ, 84
ムースの型詰め, 84
冷製の—, 84
メディシス
ガルニチュール・—, 106
メディチ家 ⇒ メディシス
ガルニチュール・—, 106
メートルドテル
—バター, 56
モスクワ風
—ソース, 20
モルネー
—ソース, 34
モングラ
アパレイユ・—, 77

モンペリエ
装飾用—バター, 57
—バター, 57
野菜
—で作る縁飾り, 78
ユサルド
ソース・—, 19
ヨークシャー
ヨークシャーソース(イギリ
ス風), 45
ラヴィゴット
ソース・—, 36
ソース・—(冷製), 49
ブール・—, 54, 58
ラギピエール
ソース・—, 32
ラファヴォリータ
ガルニチュール・—, 98
ラングドック風
ガルニチュール・—, 102
リヴォニア風
—ソース, 33
リッシュ
ソース・—, 37
リフォーム
リフォームソース(イギリス風),

45
リヨン風
—ソース, 19
リンゴ
アップルソース(イギリス風),

45
ルイジアナ風
ガルニチュール・—, 103
ルクッルス
ガルニチュール・—, 103
ルー, 8
白い—, 9
茶色い—, 8
—の火入れについて, 8
ブロンドの—, 9
ルーアン風
—ソース, 23
ルーベンス
ソース・—, 37
冷製料理のガルニチュール(概説), 87
レジャンス
ソース・—, 22
魚料理用ソース・—, 37
鶏料理のガルニチュール用ソー
ス・—, 37
レフォール
—風味のソース・グロゼイユ, 47
—バター, 58
ホースラディッシュソース(イギ
リス風), 45
レフォール(ホーシュラディッシュ)
くるみ入りソース・—(冷製), 49
レムラード
ソース・—, 50
ロシア風
—ソース(冷製), 50
ピロシキ用トヴァローグ, 83
—ホイップマヨネーズ, 48
ロブスター
ロブスターソース(イギリス風),

43
ロベール
ソース・—, 22
ソース・—・エスコフィエ, 22
ロレット
ガルニチュール・—, 102
ローバック

132
—ソース(イギリス風), 42
ローマ風
—ソース, 22
ワイン

索引
白ワイン
—ソース, 40
ワイン商人 ⇒ マルシャンドヴァン
ブール・マルシャンドヴァン, 56

ポーランド
—風バター, 58



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Author                          : 五島 学
Title                           : エスコフィエ『料理の手引き』全注解
Subject                         : 
Creator                         : LaTeX with hyperref package
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